一夏のくせになまいきだ   作:シシカバブP

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第22話 叫び

ーside翔ー

 

2人の転校生(デュノアとラウラ)がやってきて、1週間が経った。

 

まず、織斑とデュノアが同室になった。気になったのは、元々同室だった篠ノ之がこれといった抵抗もせず部屋を出て行ったことだ。大丈夫だろうか?

織斑はクラス内で孤立していたし、仲良く出来そうな相手を見つけてご機嫌らしいが、どうなることやら……。

 

と思っていたら、昨日から織斑とデュノアの様子がおかしい。

あ、(男装が)バレたなこれ。

 

そのデュノアだが、時折考え事をしているのか、明後日の方向を向きながらため息をついている場面をよく見る。

原作で織斑が口にした『俺が守る!』という言葉を真に受けてのものなのか、はたまた――

 

一方、ボーデヴィッヒは孤立して

 

いなかった

 

ラウラは反応こそ薄いが、話し方に傲慢な感じはない。そのため、最初こそ取っ付きにくそうだったクラスメイト達だったが、『ああ、そういう人なんだ』と分かってしまえば、それなりにコミュニケーションが取れているらしい。

ロキが言っていた『原作との乖離』が、織斑の次に大きいのがこいつじゃないだろうか?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

と、そんなことを考えていた放課後。アリーナで自主練をしようと、更衣室で着替えていると

 

「あれ? 北山君?」

 

「デュノアか」

 

件のデュノアが、更衣室に入ってきた。

 

「デュノアもこれから自主練か?」

 

「うん。織斑君とね」

 

「そうか」

 

織斑がこの後来るのか……早めに出よう。

 

「ねぇ、北山君」

 

と思ってたら、デュノアに呼び止められた。

 

「なんだ?」

 

「もしもの話だけど……」

 

デュノアが目を細める。

 

「もし自分が鳥籠の中の鳥で、それでも大空を飛びたかったら……北山君ならどうするかな?」

 

「鳥籠を出て、大空を飛ぶだろうな」

 

「……即答なんだね」

 

俺の回答に対して羨ましそうにしているが、

 

「どうしてそんなことを聞いてきたかは聞かないけどな……」

 

 

 

「誰かが鳥籠の扉を開けてくれるのを待ってたら、飛べないまま終わっちまうぞ」

 

 

 

それだけ言うと、俺は更衣室を出て行こうとした。だが、

 

「え、それってどういう――」

 

少し離れたロッカーの陰で着替えていたデュノアが、俺に聞き返そうとして――

 

「……デュノア、とりあえず前を隠せ」

 

俺はそれだけ言うと、顔を背けた。

 

「え? き、きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

そう、デュノアは着替えの途中……つまり、上半身裸の状態で――

俺は織斑じゃないんだがなぁ……。

 

ーside翔 outー

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――その夜、1210号室

 

ーside美波ー

 

「じとー……」

 

「あのー、美波さん?」

 

「翔ちゃん、いつから織斑君になったのー?」

 

「いや別に、そんなつもりじゃ……すまん」

 

はい、素直に謝ってよろしー。

 

「それで、シャルロットちゃんでいいんだよねー?」

 

「う、うん……でも、どうして僕のことを?」

 

「むふふー、私の情報網を甘く見ちゃいけないぜー」

 

とはいっても、束ちゃんとこの機材を借りてだけどねー。

 

「一応、こちらはデュノアのことをある程度は知ってる。デュノア社が追い込まれていること、情報を得るためにスパイを命じられたこと」

 

「ぜ、全部知ってたんだ……」

 

シャルロットちゃんが唖然とした顔をする。まぁ、最近知り合ったクラスメイトが、自分の事情を全て知ってたらそうもなるよねー。

 

「俺の予想だが、デュノアが女だってこと、織斑にもバレてんだろ」

 

「……うん」

 

シャルロットちゃんは一瞬驚いてたけど、翔ちゃんの問いに頷いた。

 

「で、だ。織斑のことだから、『俺が守る!』とか言いながら、IS学園特記事項第21項辺りを盾に時間を稼ごうとか言ったんだろ」

 

「ど、どうしてそこまで分かるの……?」

 

原作知識様様だねー。

 

「無意味だな」

 

「……っ!」

 

うわー、翔ちゃんばっさり切るねー。

 

「そもそも時間稼ぎ(籠城戦)なんて、問題解決(援軍)の当てがあって初めて意味がある。そうじゃなきゃジリ貧になるだけだ」

 

「……」

 

ダンマリってことは、シャルロットちゃんも思うところはあったわけだー。

 

「……なら、どうしろっていうのさ!」

 

俯いてたシャルロットちゃんが、顔を上げて叫ぶ。

 

「デュノア社って大企業が相手なんだよ!? しかも男装させて転校なんて無茶が通るってことは、フランス政府だって絡んでるかもしれないんだ! そんな状況で、どうしろっていうのさ!?」

 

涙を流しながら、それでもシャルロットちゃんは叫び続ける。やっぱり、シャルロットちゃんもそれぐらいは分かってたか―。

 

「それとも何!? 『助けて』って言えばいいの!?」

 

「そうだ」

 

「え……?」

 

翔ちゃんの言葉に、シャルロットちゃんが固まる。

 

「もちろん、助けを求めたからと言って、必ずしも助かるとは限らない」

 

「なら……!」

 

「けどな、助けも求めず、ただ自分の不運を嘆くだけの奴を、誰が助けるんだ? いや、織斑は守るんだったか。何の打開策もなく」

 

「……」

 

「翔ちゃん、いじめすぎだよー」

 

そろそろ止めに入るかなー?

 

「ねぇ、シャルロットちゃんー」

 

「北山、さん?」

 

まだ目に涙を溜めているシャルロットちゃんの頭を撫でる。

 

「辛い時は、誰かを頼ったっていいんだよー」

 

「たよ、る……」

 

「うん。だから、困った時は『助けてー』って言えばいいんだよー」

 

「だって、助けを求めても……」

 

「それでも、シャルロットちゃんが思ってること、話してほしいなー。解決できないかもしれないけど、理解したいからー」

 

「美波……」

 

だってもう、あの(束さんの)時のようなこと、嫌だもんー。

 

「……言って、いいのかな……?」

 

「いいんだよー」

 

「助けて、くれるの……?」

 

「少なくとも、私や翔ちゃんは出来る限り手を貸してあげるよー」

 

そう言って、シャルロットちゃんを撫でていた手をよける。

 

「……すけて」

 

最初は小さかった声。けれど

 

 

 

「誰か助けてよぉ! 僕は普通の女の子として生きたかったんだ! こんな、男装してスパイみたいなマネなんてしたくないんだぁ!!」

 

 

 

喉を枯らさんばかりに叫んだそれは、間違いなくシャルロットちゃんの本心だったんだと思う――

 

ーside美波 outー

 

 

ーsideシャルロットー

 

「さて、デュノアを助ける方法についてだが……」

 

「え? あ、あるの?」

 

だって、大企業や国が相手なんだよ? そんな簡単に……

 

「一番簡単なのは、学園に助けを求めることだ。『無理やりスパイにさせられました』ってな。そこから国際IS委員会に告発して、フランス政府とデュノア社――場合によってはIS委員会の欧州支部もだが――に強制査察が入れば、お前を縛るものはほぼほぼ無くなる」

 

「そうだねー。そのタイミングでフランスから亡命すれば、シャルロットちゃんは専用機を渡されるぐらい優秀なんだし、日本政府も亡命を受け入れるんじゃないかなー」

 

確かにそれなら……でも……

 

「ただしこの方法を取った場合、デュノアの父親はもちろん、今回の件に絡んだデュノア社の社員やフランス政府の人間も牢屋行きになるだろう」

 

「そう、だね……」

 

つまり僕は、自分とお父さん達、どちらかを取るしか――

 

「だからここでプランBだ」

 

「え?」

 

プラン、B?

 

「翔ちゃーん、それフラグだよー」

 

ふ、フラグ?

 

「まぁフラグはともかく、これを見てくれ」

 

そう言って、北山君は紙の束を渡してきた。

 

「これは……!」

 

そこに書いてあったのは、僕が聞いていた話とは違っていた。

社長派と副社長派の派閥争い。僕の暗殺計画。お父さんが、僕を逃がそうとIS学園への編入を決めたこと――

 

「でも、それならどうして……」

 

今まで、あんな冷たい態度で、僕を娘とも思わないようなことを……。

 

「シャルロットちゃんを守るためだろうねー」

 

僕を、守る?

 

「わざと不仲を演じることで、副社長派の標的から外そうとしたんだろうな。結局暗殺計画は立てられて、慌ててIS学園へ送ったわけだが」

 

「そん、な……」

 

それが本当なら、僕はそんなお父さんを……

 

「それを踏まえてだな……」

 

 

 

「これまでの罪、全部副社長派に押し付けちまおうか」

 

 

 

ニヤッと笑った北山君は、事も無げにそう言った。

 

ーsideシャルロット outー

 




自爆だけど見られた:
シャルロット→翔の好感度down(微小)

助けてあげよう:
シャルロット→美波の好感度up(大)


すまんなーショウママ。シャルとの繋がりを作るためには、こうするしかなかったんや……。
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