ーside美波ー
「それじゃあ、少しの間辛抱してねー」
「うん。よろしくお願いします」
最後に頭を下げると、シャルロットちゃんは部屋を出て行った。
「シャルロットちゃん、すぐに女の子に戻れないのは可哀想だけどー……」
「仕方ない、ちゃんと仕込みを済ませてからじゃないとな」
「……そうだねー。それじゃあ」
私はスマホを取り出すと、最近も掛けた番号をコールした。
『やっほーナミママ! どしたのー?』
掛けた先は束ちゃん。
「束ちゃん、ちょっとお願いがあるんだー」
そう言って、私は束ちゃんにこれまでのことを話した。
『う~ん……』
「あ、もしかして、忙しかったー?」
束ちゃんだって、いつも暇なわけじゃないもんねー。
『いやぁ、手は空いてるんだけどねぇ』
「?」
『ねぇ、ナミママ……』
束ちゃんは、いつもと違う真剣な声で
『どうして、
「どうして、かー……」
それらしい理由は色々言える。シャルロットちゃんに貸しを作るためとか、デュノア家に恩を売るためとか。
でも、束ちゃんには本心を伝えたいなー……。
「……"似てたから"、かなー?」
『似てた?』
「うんー」
そう、似てたんだー。
「周りに自分の境遇を理解してくれる人がいない。助けを、手を伸ばせる相手もいない。それって、すごく辛いことだよねー」
天才過ぎて周囲とのギャップを埋められずに孤立した、かつての
「だから、手を伸ばしてくれたなら、ちゃんと理解して、助けてあげたいんだー」
『……そっか』
そういう束ちゃんの声は、得心が行ったような感じだった。
『いいよ、そういうことなら束さんも協力しよう!』
「ありがとー」
『あ、でも最後に確認しときたいことがあるんだ』
「なにー?」
『その子、"ナミママの子"にならないよね?』
「ほ?」
えーっと、つまり、鈴ちゃんみたいになるかってことー?
「たぶん無いと思うな―」
『あっ、そうなんだ! 良かった良かった!』
そ、そんなに喜ぶことかなー……?
『それじゃあ、準備が出来るまですこーし……学年別トーナメント、だっけ? その辺りまで時間頂戴ねー』
「うん、分かったよー」
その後は少し雑談をして、束ちゃんとの通話を終えた。
ーside美波 outー
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ーsideシャルロットー
北山さん達と話をした翌日。僕はいつも通り登校していた。
北山さん曰く、情報工作をするための時間が必要で、それまでは僕が女だってバレないようにしてほしいって。
だから、いつも通り……。
「シャルル、行こうぜ」
……こんな感じで、昨日から一夏がずっと付きっ切りなんだけど。
どうも、僕が昨日帰りが遅かったのが原因らしい。
「お前が女だってバレないように、俺が守ってみせる、な?」
「う、うん……」
一昨日までなら、その言葉にすごく安心できたと思う。でも……
(だけど、一夏。君は僕を
『
北山君が昨日言っていた言葉だ。
今なら分かる。そうなる前に、僕は自分の足で足掻くべきだったんだ。
僕を助けようとしてくれたこと、守ると言ってくれたこと、それは本心からだと信じられる。だけど……
(ごめんね一夏……でも僕は、守られるだけのお姫様はやめるよ)
ーsideシャルロット outー
ーside翔ー
「今年の学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、2人組での参加とする。なお、ペアが出来なかった場合は抽選で選ばれた生徒同士で組んでもらう」
今日のSHRは、織斑先生のその言葉から始まり、それだけで終わった。
「トーナメントまであと2週間、いや、ペアの締切は6日後か」
「そうみたいだねー」
SHRの終わり際に配られた申込書を見ながら、締め切りまでの日数を逆算していた。
さて、誰と組むべきか……。
「翔さん?」
「ん?」
振り向くと、にっこにこ笑顔のセシリアが立っていた。
「わたくしと組んで、くださいますよね?」
「お、おう……」
思わず返事をしてしまったが、まぁセシリアならいいかな。
「あ、美波はどうす――」
「ナミママー!あたしと組もー!!」
……うん、パートナーには困らなさそうだな。
ーーーーーーーーーーーーー
「失礼しました」
トーナメントの申込書を職員室に持って行った帰り道、曲がり角の先から
「それでは、ドイツで再びご指導いただくことは無い、と?」
「ああ。私には私の役目がある」
この声……織斑先生と、ラウラか?
「役目ですか……生徒の大半が危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている、この学園でですか?」
「そうだ。むしろ、そういった連中の勘違いを正すのが、私の役目だ」
「……分かりました」
それだけ言うと、ラウラは去っていった。
「それで? 盗み聞きは感心せんぞ」
「なら、こんな廊下でシリアスな話はしないでくださいよ」
別に気配を消してたわけじゃないが、やっぱり気付かれてたか。
「……北山」
「何ですか?」
織斑先生は真剣な顔をすると
「対抗戦の件、本当にすまなかった」
頭を下げた。いやいや、こんな廊下ですることじゃないでしょ!
「ちょ、織斑先生」
「大丈夫だ。次の授業は移動教室だから、こっちに来る生徒はいない」
「そういう意味では……」
いや、そういうのも心配はしてましたけど……。
「私の、現場指揮官としてのミスであり、
「……謝罪は受け取りました」
出来れば公の場でとも思ったが、織斑先生も立場があるのは理解できる。
「それで? 織斑はその件については何と?」
「いや、それは……」
織斑先生がどもる。ということは、まぁ、そういうことだろう。
「織斑先生、他人の家庭の事に口出しするべきでは無いとは思いますが、一度あいつと話し合うべきだと思いますよ」
「話し合う?」
「ええ」
首を捻られるが、そんな難しい話じゃない。ただ――
「言わなきゃ、伝わらないことだってありますから」
束さん然り、デュノア然り。たぶん、織斑姉弟も――
ーside翔 outー
ーside千冬ー
「言わなきゃ伝わらない、か……」
北山がいなくなった廊下で、私はあいつの言葉を呟いていた。
会話自体は今もしている。ただ、それは教師と生徒という枠内でだけだ。
思えば、最後に一夏と家族の会話というものをしたのは、いつだったろう?
少なくとも、IS学園の教師になってからは一度も無かったと思う。
(臨海学校が終われば、夏休みだ。それなら、まとまった時間が取れるはず……)
その時が来たら、一夏と腹を割って話そう。
あいつの本音を聞いて、私の本音を話して。お互いに、思っていることを全て吐き出そう。
今まであいつの保護者として、家族としてやれなかったことをしよう――
ーside千冬 outー
ーsideラウラー
(教官は、やはり動かないか……)
そう思いつつ、意外と冷静な自分に少し驚いている。
司令部から指令が来た時は、日本行きにかこつけて、教官にドイツへ戻ってもらおうとばかり考えていた。
だが日本に、IS学園に来てから、その考えに自分の中で待ったがかかった。
『生徒の大半が危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている』、それは私の本心だ。
だからこそ、こうも思ってしまう。『教官ほどの人でなければ、ここにいる連中を正せないのではないか』と。
かつてのモンド・グロッソ第2回大会での
で、あれば……
(私自身が強くなるしかない……教官のように、もっと力を……)
ーsideラウラ outー
彼女もなんだね……:
束→美波の好感度up(小)
お姫様はやめる:
シャルロット→織斑の好感度down(中)
謝罪:
翔→千冬の好感度up(微小)
ちーちゃん、夏休みまで先延ばしにせず、さっさと話し合っていれば……(壮大なネタバレ)