もうあと2~3話ぐらいで学園入学(原作開始)にたどり着けると思います。
ーside翔ー
本当に、色々ありすぎた。
俺はあの日、篠ノ之道場であったことを思い返していた。
ーーーーーーーーーーーーー
マルチフォームスーツ(後にISと呼ばれるであろうもの)の感想を言った。
それだけだったはずが、なぜか目の前の女性――恐らくこの人が、篠ノ之束なのだろう――に泣かれ、かと思えば、突然笑顔になって俺と美波の手を引いて歩き出してしまった。
「さぁさぁこっちだよ!」
そうして案内されたのは、どこぞの開発室かと言わんばかりの部屋だった。
ちなみに、篠ノ之神社の境内、その隅っこに隠されていた地下への階段を通って。
…完全に秘密基地だなこりゃ。
「おおー!翔ちゃん翔ちゃん、すっごいよここ!」
「でしょでしょ!?」
美波は美波で、なんか普通に意気投合してるし。
「ええっと…」
「おっと私としたことが、自己紹介がまだだったね。私は篠ノ之束だよ」
「は、はい。北山翔です」
「北山美波でーす!」
「しょーちゃんとなーちゃんだね、よろしくねー」
――ロキの手紙には『人付き合いが壊滅的』と書いてあったし、初対面時もすごい睨まれてたから、接点なしで終わると思っていたんだが…
まさか、その篠ノ之束から自己紹介+握手を求められるとは、俺も美波も思ってなかったぞ。
その後は2,30分ほど他愛のない話をしていた。
とはいえ、束さんの話に付いていくのはなかなか大変だった。
なぜなら話の内容が
「最初はね、ISの動力源は融合炉を使おうと思ってたんだよ。でもそれだとねぇ」
「原子炉ほどじゃないけど、デブリとかぶつかって壊れた時危なそうだねー」
「そう、そうなんだよ! さすがなーちゃん、分かってるぅ!」
めっちゃ技術的な話だったからだ。
恐らく普通の人が聞いてれば『そもそも融合炉自体が研究段階の技術であって、空想の域を出ないだろ』とツッコミを入れるだろう。
ただ、俺と美波の場合は、束さんの技術力を(物語開始時点――これから10年ほど先の話――ではあるが)知っているため、『近いうちにやるだろう』ぐらいに思っている。
「それで、融合炉の代案に目途はついてるんですか?」
「もちのろん! それっていうのはね――」
I'm a thinker I could break it down~~♪
美波のポケットから音楽が鳴りだした。確か携帯電話に登録した着うたなんだろうが、なぜその曲にした…
「もしもし? あ、お父さん? ごめんごめん、今束さんの一緒にいるの。…うん、翔ちゃんも一緒だよ」
どうやら父さんかららしい。そういえば、外の空気を吸うとか言ってから、結構な時間になるのか。
「翔ちゃん、お父さんがもう帰るからって」
「分かった。それじゃあ束さん、俺達はこの辺で」
「う~、名残惜しいけど仕方ないかぁ」
そう言って、束さんはスマホ?(市販っぽくない形状してるんだが)を取り出し、何やらポチポチし始めた。
「これでよぉし! しょーちゃん、自分のスマホ見てみて」
「はい?」
言われるがままスマホを取り出すと、何やら通知が1件…って、何か知らないアドレスと電話番号が登録されてるんですけど!?
「私の連絡先を入れたから、またお話しようね! あ、もちろんなーちゃんのスマホにも登録済みだよ!」
「おー! しゅげー!」
「りょ、りょうかいです」
さすが篠ノ之束。この時期からすでに、ハッキングの腕は一流だったのか…
ーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで、気付けば篠ノ之束との初接触から早数か月が経っていた。
俺も美波も近所の小学校に入学し、平和な生活を続けている。
ただ、その平和も長くは続かないだろうと思い始めてもいる。
それは昨日、(あの日から)月1で来るようになった、束さんからの電話だった。
『しょーちゃん、なーちゃん! ついに! ついに完成したんだよ!』
『完成って、あのマルチフォームスーツがですか?』
『確か、インフィニット・ストラトスでしたよねー?』
『そうそう! 論文もさっきまとめ終わってね! 来週学会に持っていくんだ!』
通話口から聞こえる束さんの声から、明らかに舞い上がっているのがよく分かる。
そして、俺や美波からすれば『ついに来たか…』という感想でもあった。
今日、今この時間にも、束さんはISの有用性と、将来性を懸命に発表しているのだろう。
そして、束さんはまた全てを否定されるだろう。
それから数日後だった。
各国の軍事基地が何者かのハッキングを受け、日本に向けて何千というミサイルが飛来するというニュースが流れたのは。
そしてそのミサイルを、正体不明の人型が一切の被害を出さずに迎撃したと伝えられたのは。
この一件は、後に『白騎士事件』と呼ばれることになる。
そして、本来宇宙を目指すはずだったISに、『兵器』という業を背負わせることにも。
それは、篠ノ之束の、世界にISを認めさせたいという『希望』が、宇宙進出という『未来』を焼き尽くしたことを意味していた――
ーside翔 outー