ーside翔ー
昨日散々遊んでいた砂浜で、専用機持ち全員が集合していた。
「じゃあ、箒。よろしく頼む」
「本来なら女の上に男が乗るなど言語道断だが、今回は特別だぞ」
そう言いつつ、妙に機嫌がいい篠ノ之。まぁそうなるか。
「織斑君と箒ちゃんだけで終わればいいねー」
「そうですわね……」
「あたしとしては、出番がないのは微妙だけどねぇ」
「僕は出番が無い方がいいと思うけどなぁ」
「同感だな。後詰など、出番が無いに越したことは無いからな」
そんな2人のやり取りを見て、俺を含めた他の専用機持ち達が微妙顔をした。
ーーーーーーーーーーーーー
――30分前
「千冬姉! 俺にやらせてくれ! 俺なら、俺の零落白夜ならやれる!!」
「織斑、これは訓練ではない。実戦だぞ」
「分かってるさ! チャンスが1,2回だけで、一撃必殺の攻撃が必要なら、零落白夜が最適なんだ!」
「うむ……」
織斑先生も、零落白夜がこの作戦に最適なのは否定できないだろう。織斑がそれを使いこなせるかは別として。
「だが、どうやってお前を福音まで運ぶ? 福音がこちらに来るまで待って迎撃は許可できんぞ」
「はいぃ、周囲の被害を考えると、できれば海上で迎撃したいところですね……」
山田先生も困った顔をして同意する。
「……姉さん」
「箒ちゃん?」
「この紅椿・改なら、一夏を目標ポイントに運ぶことは可能ですか?」
「……」
そう篠ノ之に聞かれ、束さんが困ったような、悲しそうな顔をする。
篠ノ之の望みは叶えたい、だけど危険な事をしてほしくもない。そんな気持ちなのだろう。
「束」
「……可能、だよ」
織斑先生に促されて、観念したように束さんは首を縦に振った。
「そうか……では、本作戦を伝える。篠ノ之が織斑を目標ポイントまで運搬。織斑の零落白夜による強襲により、対象を無力化させる」
「よし! 絶対やり切ろうぜ、箒!」
「あ、ああ!」
作戦は決まったが、これだと不安が残るな……。
「きょうか、織斑先生」
途中で言い直しながら、ラウラが挙手した。
「なんだ?」
「意見具申。不測の事態に備え、私を含めた残りの専用機持ちを後詰に付けるべきです」
「なるほど……」
「そんなのは必要ねぇよ! 俺と箒でやり切ってみせる!」
「いいだろう」「千冬姉!?」
――ゴンッ!
「織斑先生だ。実戦では何が起こるか分からん。不安の穴は出来る限り塞いでおくべきだろう」
織斑にいつもの鉄拳制裁を入れると、こちらに向き直り
「30分後に作戦を開始する。それまで各自ISの調整を行え。以上だ!」
ーーーーーーーーーーーーー
そして現在、先ほど出発した織斑・篠ノ之組の後詰として、俺達も目標ポイントを目指していた。
『もう少しで目標ポイントだ。用意はいいか、一夏!』
『ああ! 絶対に成功させるぞ!』
オープン・チャネルで2人の会話も聞こえてくる。
『見えた! 一夏!』
もう接敵するのか!? 早すぎるだろ!
『いくぜぇぇぇぇぇぇぇ!!』
織斑の威勢のいい声が聞こえたと思ったが
『一夏!?』
篠ノ之の驚く声が被る。
「な、何があったの!?」
「不測の事態か!?」
後を追っていた俺達にも、動揺が走った。
『一夏! せっかくのチャンスになぜ――!?』
『船がいるんだ! 海上は先生達が封鎖したはずなのに――密漁船か!』
「密漁船!? なぜそのようなものが……!」
「ああもうっ! 段取り台無しじゃない!」
通信越しに何が起こったのか知ったセシリアと鈴が声を上げる。
そして目標ポイントに着いた俺達の前には、福音に追い回される織斑と篠ノ之、海上をのそのそと動く船があった。
「織斑君も箒ちゃんも、攻撃を避けるので精一杯みたいだよー」
「不味い状況だね……」
シャルロットの言うように、非常にまずい状況だ。
何より、まともな回避行動が取れない船が下にいるのが問題だ。篠ノ之はともかく、織斑は流れ弾を恐れてか、被弾が増えている。
「北山より織斑先生へ」
『こちら織斑だ』
こうなった以上、現場指揮官の指示を仰ぐしかない。
「緊急事態発生です」
『何があった?』
「作戦区域に密漁船が迷い込んだ模様。その船を織斑が庇ったため、強襲は失敗です」
『何だと!?』
通信越しで織斑先生が驚いているが、それより問題なのは――
「それで、どうしますか?」
『どうする、とは?』
「作戦を中断して船を助けますか? それとも、作戦を続行して福音撃破を優先しますか? 現場指揮官である織斑先生の指示を願います」
『……』
「おい翔! 船を見捨てるっていうのかよ!?」
通信を聞いていたであろう織斑が怒鳴り散らすが、実戦とはそういうものだ。
不測の事態に陥った時、何を優先させるのか。船と日本本土、どちらを危険に晒すのか。
それを決める権利と、それに伴う責任を持つのが指揮官というものだ。
「千冬姉! 俺達なら大丈夫だから――!」
『……作戦参加中の各員に通達』
『作戦を強襲から包囲戦へ変更する。各個で福音に対して攻撃を行え』
「「「「了解!」」」」
「そ、そんな……」
俺のホワイト・グリント、美波の不知火、セシリアのブルー・ティアーズ、鈴の甲龍、シャルロットのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ、ラウラのシュヴァルツェア・レーゲン。
呆然としている織斑と、その織斑を後退させる篠ノ之以外の専用機持ちは、福音を囲むように展開した。
そして攻撃を、と思った矢先に
「La……」
甲高いマシンボイスと共に、福音のウイングスラスターに付いた砲門から、エネルギー弾の一斉射が飛んできた――俺にだけ。
「なっ!?」
どういうことだよ!? なんで俺だけ!?
そう思いながらも、福音は他の連中には目もくれず、俺にだけ総攻撃を仕掛けてくる!
「どうして翔さんだけ……!?」
「あたしらは、眼中にないってこと!?」
そんな中、俺はこの状況に
そう、ほんの数日前。IS学園のアリーナで……
(まさか、ラウラのVTSの時と同じで、こいつの狙いは……!)
それと同時だった。
本来誰もいないはずの背後から、衝撃と激痛を感じたのは――
ーside翔 outー
ーside織斑ー
「そんな……千冬姉、どうして……」
どうして、あんな指示を出したんだ……。
あの船には人が乗ってるはずなんだ。それなのに、どうしてそれを見捨てるようなことを言うんだ……。
「一夏! しっかりしろ!」
「ほう、き?」
「お前の零落白夜も、あと1回が限度だろう!? なら、最後のチャンスを逃すな!」
「最後の、チャンス……?」
「そうだ! 北山達が福音を引き付けてくれてる間に、お前がとどめを刺すんだ!」
「俺が……とどめを……」
そうだ。俺はまだ戦えるんだ……なら、戦わないと……!
そう自分を奮い立たせて顔を上げると、
「……あれ?」
おかしなことに気付いた。
福音はなぜか、翔にしか攻撃をしていないのだ。
周りには他の専用機もいるのに、まったく意に介していないように。
(もしかして、福音の目的は翔なのか?)
その時、俺の中に妙案が思いついた。いや、これは天啓と言ってもいいかもしれない。
(もし福音の目的が翔を倒すことなら、あいつが
あいつは千冬姉に、船と作戦、どちらを取るかの選択をさせた。
どちらを見捨てるのかの選択を、
でももし、俺の予想通りなら――
(
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
残っていたエネルギーで零落白夜を展開した俺は
「一夏!?」
その刃で、
――ザシュゥッ!!
「がっ……! おりむ、ら……お、まえ……!」
翔の背中を切り裂いた。
ーside織斑 outー
好感度? もう箒以外、一夏への好感度は0よ!