ただ、物語はもうちょっとだけ続きます。
翔を斬り、船の誘導を終え、意気揚々と帰還した織斑を待っていたのは、国際IS委員会の男と、武装した委員会直属のIS部隊だった。
「ど、どういうことだよ!?」
「どういう、とは?」
「俺は福音を止めて戻ってきたんだぞ!? なんで銃を突き付けられなきゃいけないんだ!」
そう怒鳴る織斑の言う通り、彼はIS部隊のラファール6機から、アサルトライフルの銃口を突き付けられていた。
「千冬姉を出してくれ! こんなの間違ってるって――」
「彼女は君とは別に移送中だ」
「移送……お前ら、千冬姉に何を……!」
――ドンッ!
「がっ!」
委員の男に襲い掛からんとした織斑だったが、正面にいたラファールのアサルトライフルの射撃を受けて仰け反った。
「はぁ……。織斑一夏、国際IS委員会及び日本政府の決定により、君の白式を剥奪する」
そう言って男が手に持った端末を操作すると、織斑の白式が強制的に展開解除された。
「なっ!?」
「そのISを手配したのは誰だと思っているんだね? このくらいの手段は用意しているよ」
男の言う通り倉持技研、ひいては日本政府は、クラス対抗戦での失態で織斑が懲罰房行きになった時、取り上げていた白式に対して、緊急用の解除手段を用意していたのだ。
「くそっ! 離せ!」
白式が解除された織斑に抵抗する手段などあるはずもなく、あっという間にラファール部隊に取り押さえられ、待機状態の白式を右腕から取り上げられる。
「そして同時に、君は研究所行きになることが決まっている」
「け、研究所!?」
「そう。君が帰る場所はもう、IS学園じゃない。国立IS研究所の隔離室だ」
「ふ、ふざけんな! なんで俺がそんなところに……!」
「『次に何か問題を起こした場合、織斑一夏は専用機剥奪の上、研究所送りとする』。君が先月の学年別トーナメントで馬鹿をやった折、国際IS委員会と日本政府でそう決定したのだよ。もちろん、織斑先生にも伝えて、きちんと手綱を握るよう要請していたのだがね」
「そ……そんな……千冬姉!」
「どうやら、彼女は何も説明していなかったようだな……愚かな」
重要なことは何一つ弟に話さなかった、千冬の悪癖が響いた形だった。そう、彼女は何も話さなかったのだ。今回のことも、何一つ……。
「そもそも、俺がどんな問題を起こしたっていうんだ!」
「ほう? 味方である北山翔を背後から斬った裏切り行為について、君はどんな言い訳をするつもりかね?」
「裏切ってなんかいない! 福音の狙いが翔だったから、あいつを墜とせば全て丸く収まるから、そうしただけだ!」
そんな織斑の言い訳を聞いて、男は頭が痛くなったのか、額を手で押さえた。
(何なのだ、こいつは。まるで支離滅裂ではないか……)
そもそもどうしたら、福音の狙いが北山翔だと状況証拠だけで断定し、彼を斬ろうという思考になるのか。男には目の前の織斑一夏が理解できなかった。
もはや、ため息しか出なかった。
「連行しろ。味方を背後から斬る愚か者とは言え、貴重なサンプルであることに変わりはない。自害などさせるな」
部隊長と思われるラファールが頷くと、6機の内4機が織斑を取り押さえながら、ミニバンに偽装した護送車に向かっていった。
「さて、篠ノ之博士。情報提供いただき、ありがとうございました」
「それはどーも」
委員の感謝の言葉に、束は適当に返事をした。
そう、織斑のやらかしが発生してから30分と経っていないのに、なぜ委員会の人間がこの花月荘にいたのか。
それは、美波の不知火から送られてきた映像を、束が国際IS委員会にリークしたからであった。
翔が織斑に斬られたあの時、彼女の中で織斑一夏は身内の対象外になった。
"親友の弟"から"討つべき敵"に変わったのだ。
「それでは私共もこれで」
そう言って頭を下げると、委員と護衛として残っていたラファールは引き揚げていった。
ーーーーーーーーーーーーー
ーside箒ー
負傷した北山と、停止した福音の残骸を回収して花月荘に戻ってきた私達を、山田先生と姉さんが迎えてくれた。
「山田先生、織斑先生は?」
「それは……」
シャルロットの問いに、山田先生が口ごもってしまった。何かあったのか……?
「ちーちゃんは……連行されたよ」
「れ、連行!?」
「どういうことですの!?」
れん、こう? 千冬さんが……なぜ……
「
「ゴミって……姉さん?」
姉さんの発言に、私は寒気を感じた。
千冬さんが姉……ということは、姉さんが言った『ゴミ』って……まさか……
「そう、かー」
そんな中で、北山兄妹だけが理解したような顔をしていた。
「ちょっとナミママ、どういうことなの……?」
「つまりねー……」
「織斑姉弟は、"見限られた"ってことだよー」
「見限、られた?」
千冬さんが……一夏が……見限られた? 一体誰に?
「ごめんね、箒ちゃん」
混乱している私を、いつの間にか姉さんが抱きしめていた。
「箒ちゃんが
「姉、さん?」
なんだ、その言い方は……それじゃあ、まるで、姉さんが一夏のことを……
「うん……福音との戦闘映像を国際IS委員会にリークしたのは、私だよ」
「っ!?」
姉さんが……姉さんが一夏達を……!?
「ずっと見てたんだ……クラス対抗戦からずっと。あの時から
「……」
それは……否定できない。確かに一夏はクラス対抗戦の時、観客席のバリアを破って皆を危険に晒した。
だからと言って、どうして……
「だから、箒ちゃんの想いを無視して、ごめんね……」
「……なぜだ」
「箒ちゃん……?」
「なぜ貴女はそんな悲しそうな顔をする!」
そう一度口にしたら、もう止められなかった。
「いつものように堂々としていればいいだろう! 勝手にISを作って、勝手に家族を離散させて! いつも勝手していた頃のように!」
そんな姉さんだから、私は貴女を恨むことができた。憎むことができた。これまでの不幸を、貴女の所為にできた。なのに――!
「なぜ今更になってそんな顔をする!? 私に謝る!?」
「箒ちゃん……」
「ああ分かってるさ! 姉さんがISを認められず悩んでいたことも、本来の宇宙開発用ではなく兵器扱いされて苦しい思いをしていたことも!」
だからと言って、家族は離散し、私は要人保護の名目で各地を転々とすることを余儀なくされた事実は変わらないのだ。
「だから、そんな悲しそうな顔をしないでくれ……謝らないでくれ……」
そんなことをされたら、私は――
「そんなことをされたら、私は……貴女を憎めなくなってしまうではないか……」
ああ、そうか……ここまで口にして、私はやっと理解した。
きっと私は、心のどこかで、
一夏を切り捨てた姉さんの行動に、理解を示しているのか……
「……姉さん、お願いがあります」
「何、かな?」
「些細な事でもいいです。もっと私に思ったことを言ってください」
「箒ちゃん……?」
ああ、そうだ。あの頃の姉さんが相手では無理だったろう。でも、今の私なら、今の姉さんなら――
「今の私なら、今の姉さんを"理解"したいと思えるから……」
「箒、ちゃん……!」
姉さんが泣いた顔、初めて見た気がする。
「ごめんね、箒ちゃん……!」
そんな姉さんを、私も抱きしめた。そして泣いた。周りに皆がいるのも関係なく、姉さんと一緒になって泣いた。
その時、私と姉さんは、本当の意味で家族に、
ーside箒 outー
やっと分かり合えた:
箒⇔束の好感度up(特大)
篠ノ之姉妹の和解、強引すぎないかって? 何の事かな~(明後日の方向を向きながら)
臨海学校編ラストと思い色々詰め込んだ結果、