10/30の初投稿から約1か月という、長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
束の電波ジャックから数日。世界はまた、色々と変わっていった。
女性権利団体は消滅した。
福音事件を含めた様々な悪行の証拠、それらが束によってネット上にばら撒かれ、それによって世界規模の逮捕劇が繰り広げられたのだ。
これまで女権団の権力を笠に着た圧力によって、悪事を見逃すしかなかった警察および司法組織の熱意はすさまじく、とある国では『国内受刑者の大半が元・女権団関係者』という、冗談のような話もあった。
これによりIS学園でも、少なくない人数の女尊男卑主義者が姿を消す事態となったが、残った生徒達からは哀れみも同情も無かった。
ISが男でも乗れる。これも事実であった。
アメリカ合衆国が、『陸軍内で緊急検査を行ったところ、1個旅団約5000人中2人という、女性に比べ低い割合ではあったが、確かに起動させることが出来た』と、束の電波ジャックから2時間も経たずに発表したのだ。
その報を受けて、各国もアメリカに倣って軍内で緊急検査を実施。その結果、各国で最低1人は男性操縦者が見つかるという、1年前では想像もできない事態となった。
女性権利団体の消滅と男性操縦者。この2つによって、10年前の白騎士事件から続いていた女尊男卑思想は急速に廃れていくことになる。
IS学園もそれを受けて、方針の転換を行っていくことになった。
元々明記はされていなかったが、ISが女性しか乗れない以上、IS学園も実質女子校と呼べるものであったし、設備等もそのようになっていた。
しかし、今後男性操縦者が増えることを想定し、現在もIS委員会と協議しつつ、共学化および男子寮の建設を検討し始めていた。
あのIS開発者・篠ノ之束がいつの間にか会社を設立していたこともだが、その発表とほぼ同時に、最近息を吹き返したフランスのデュノア社が、突然SRCと事業提携を結ぶことを発表したのだ。
さらに、IS学園に在籍している"2人目の男性操縦者"北山翔と、妹の北山美波を名指ししたことで、各国首脳、特に日本政府は混乱の極みにあった。
そんな北山兄妹が、今どこにいるかというと――
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ーside翔ー
真っ暗な世界。目は開いているのに、目の前に映るものが何もない、
宇宙空間。ISが、
そんな世界に今、俺と美波はいる。
「翔ちゃん、こっちの準備は終わったよー」
「おう。こっちも終わりそうだ」
『ショウママ、ナミママ。こっちも2人が設置した装置の信号をキャッチしたよー!』
「了解です。そんじゃ、一旦離れるか」
「そうだねー」
俺達はISのスラスターを全開にして、今さっきまで立っていた場所――火星から離れていった。
そう、俺達は今、火星に来ているのだ。
夏休み初日にSRCに行くと、そこにはなぜかリュックサックを背負った束さんがいて
「さあ二人とも、さっそく出発だよ!」
と言い出し、何が何だか分からぬうちに人参型ロケットに乗せられ、気付けばほんの10分で地球の大気圏を突破していた。
そこからさらにロケットは、ISのPICを笠に着た加速を行って、半日もかからずに火星圏まで来てしまったのだ。
そして俺達はそのまま、束さんからロケット内で渡された装置を、火星の地表に設置したわけなのだが……。
「なぁ美波、あの装置って何だと思う?」
「うーん、そうだねぇ……」
俺の問いに、美波はIS・不知火に乗ったまま器用に腕を組んでいたが、
「翔ちゃん、『トータル・リコール』って映画見たことある?」
「何だよ突然。たぶん見たことないけど」
まっとうな人間だった頃の記憶も掘り返してみるが、今言われたタイトルは出てこない。
「火星が舞台の映画なんだけど、もし私の予想が合ってたらー――」
『二人ともー、こっちの準備が整ったよー! それじゃ、ポチッとな!』
「え、ちょ、束さん!?」
束さんからの唐突な開始コールに、変な声が出た。
――ゴゴゴゴゴゴゴ……!
「……おかしいな。宇宙空間なのに、変な音が聞こえてくる気が……」
「翔ちゃん、たぶん本当に聞こえてるんだと思うよー……」
――ゴゴゴゴゴゴゴ……!
「えーっと……」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
「た、束さん!?」
『よーし、もうちょっとで……!』
だめだ、全然聞いてねぇ!
――ドゴォォォォォォォォンッ!
「うおっ!」「きゃっ!」
宇宙空間からでも分かる轟音に、俺と美波は身を竦ませた。
「翔ちゃん、あれ!」
美波が指さす方を見ると
「マジ、かよ……」
『やったーーーーーー!! 成功だよーーーーー!!』
ここから見えていた火星が、見えなくなった。いや違う、火星自体はある。だが……
「雲……?」
赤茶けた大地が見えるだけだった火星に、薄っすらとだが、雲のようなものがかかっていた。
「束ちゃん、これって空気ー?」
「空気って……まさか!?」
『そうだよ! 二人に設置してもらったリアクターで、火星の北極地下にある氷から、酸素を作ったんだ!』
まさか、火星で呼吸ができる、のか?
『あとは残った氷の層を順次溶かしていけば、地球ほどじゃないけど人の住める惑星になるはずだよ!』
「おおー! 夢が広がりんぐ」
「……」
「翔ちゃん?」
美波からの声に答えず、俺は再度火星に降りていった。
火星の地表に着いた時、最初あれだけ薄暗かった空が、気持ち青くなっている気がした。
「翔ちゃん、一体どうし――」
少しして追いついた美波を置いて、俺は
ISを、展開解除した。
「翔ちゃん!?」
「……はっ」
「美波! 普通に息が出来る! ちゃんと空気がある惑星だ!」
そう言った後、俺はただただ笑うしかなかった。
……そして当然、美波と束さんから怒られた。
「突然ISを解除するとか、何考えてるのかなー?」
『もー! 束さんもビックリだよぉ!』
「はい、すみません……」
あまりの感激に思考停止して動いてました、申し訳ありません。
『ま、まぁ、とにかく二人とも、一度ロケットに戻ってよ。今回の成功を祝して、盛大にパーリィしようぜい!』
「そうだね、一度地球に戻ろうー」
「パーティって、俺達3人だけでですか?」
『うーん、日本に残ってる箒ちゃんとか、りっちゃんを呼ぶ?』
「鈴か……呼べば来そうだな」
「箒ちゃんも、篠ノ之神社のお祭りはまだのはずだから、寮にいると思うなー」
「そういや、セシリアも帰国は来週って聞いてたから、まだ寮にいるかもな」
「シャルロットちゃんやラウラちゃんも、誘ったら文字通り欧州から飛んできたりしてー」
束さんの発言に、俺と美波はそれぞれのスケジュールを思い出す。
『まぁいいや。それは地球に戻ってから考えよう!』
「「異議なーし!」」
というやり取りをしている間に、俺達はロケット内部に戻ってドアロックを解除、出発時に座っていた席に戻ってきた。
『お客さーん、どちらまでー?』
「地球の日本のIS学園入口までー」
「タクシーかよ」
そんなしょうもないやり取りもしつつ、ロケットはバーニア噴射で向きを変え、地球に向かって加速を開始した――
ーside翔 outー
ーーーーーーーーーーーーー
ーside織斑ー
臨海学校のあの日、俺は国立IS研究所に送られ、それからは、ベッドに縛り付けられながら検査用の器具を取り付けられる日々を送っていた。
「どうして俺が、こんな目に遭うんだ!」
最初はそう叫んでいた。だけど、もう今はそんな気も起きない。
研究所の奴らから毎日のように浴びせかけられる、罵声と嘲笑。
「なぁこのモルモット、入学初っ端にやらかしたって奴だろ?」
「ええ。この女尊男卑の世の中で、堂々と男尊女卑な発言をして学園中から顰蹙買ったんですって」
「しかもこいつ、その後のクラス対抗戦で自分から観客席のシールドバリアを破ったんだってよ」
「マジかよ、観客を殺す気満々だったんじゃねぇか。とんだ疫病神だな」
「しかも終いにゃ、"2人目"を背後から闇討ちしたんだってよ」
「うわーさいてー」
(違う! 俺はそんなことを思ってやったわけじゃ……!)
何かを言われる度に、俺は否定した。だが、否定しても否定しても、あいつらは俺を責め続ける。そして……
突然、俺は解放された。
最初は喜んだ。やっと解放された、自由になった、間違いが正されたんだと。
だけど、違った。
「篠ノ之博士がISのバグを解消してな、世界中で少しずつだが、新しい男性操縦者が出てきたんだ。つまり、お前の希少性は無くなった。調べる
ただ、要らないから捨てられたのだ。
(もう、どうでもいい……)
もう、何も考えられない。ただただ、俺の足は研究所の出入口を目指していた。
そして、出入り口の自動ドアが開いた瞬間――
「一夏……」
懐かしい声が、聞こえた気がした。
いや、最後に聞いてから、10日やそこらしか経ってないはずなのに、妙に懐かしく感じた。
「一夏……!」
その懐かしい声が……千冬姉が、俺を抱きしめていた。
「千冬、姉……」
「すまない、一夏……私は、お前を、守る、ことが出来、なかった……」
言葉が切れ切れの千冬姉……もしかして、泣いてるのか?
「いや、違う……お前ともっと早く、ちゃんと話をしていれば……家族として、お前と向き合っていれば……」
「千冬姉……」
何だろう……前にも、こんなことがあった気が……。
(そうだ……モンド・グロッソ……)
俺が誘拐されて、千冬姉が2連覇を逃した時と、同じだ……同じなんだ……。つまり俺は……
(あの時から俺は、何も変わってない、変われていない。千冬姉どころか……何も、守れてないじゃないか……!)
「お願いだ、千冬姉。泣かないでくれ……千冬姉が悪いんじゃない、悪いのは……」
悪いのは……俺だ。
「ごめん、千冬姉……俺、何も見えてなかった……理解できてなかった……」
やっと、俺は理解した。
今までの俺は全て、間違いだらけだったと。自分の中の正しさを否定されることを認められず、自分が変わることも出来ず、ただ喚き散らすだけのクソガキだったと。
それを、こんなになって……千冬姉を泣かせて、ようやく気付いた俺は……大馬鹿野郎だ。
「一夏……家に戻ろう。戻って、話をしよう」
「ああ。俺も千冬姉と話がしたいよ」
今まで自分のことばかりで、本当の千冬姉を……
ーside織斑 outー
『んんwww一夏氏にはBAD END以外ありえませんぞwww』
ここまで来て、綺麗に終わると思うてか!
一夏アンチが大好物の人達には、もうちょっとだけ続くんじゃ。