3限目は、授業ではなく千冬の
「クラス対抗戦に出る代表者を決める!」
という一言から始まった。
「クラス代表者とは、対抗戦だけでなく、生徒会の会議へ出席したり……つまりクラス委員長みたいなものだ。自薦他薦は問わない、誰かいないか?」
「はい! 織斑君を推薦します!」
「私も織斑君が良いと思います」
1人上げると、ぞくぞくと織斑を推薦する声が上がっていく。
「お、俺ぇ!? 俺はクラス代表なんて……」
「推薦された者に拒否権などない!」
「ぐっ……」
バッサリ切られた織斑だったが、なぜか後ろ――翔の方――を向いて
「な、なら! 俺は翔を推薦するぞ!」
「は?」
「なら私は北山君を推薦します!」
「私も!」
今度は翔への推薦がぱらぱらと上がっていく。
――バンッ!
「待って下さい、納得いきませんわ!」
机を叩いて立ち上がると、セシリアは織斑と翔の方へ視線を向ける。
「クラス代表はISの実力がトップの人間がなるべきですわ!イギリスの代表候補生であるわたくし、セシリア・オルコットを差し置いて、ただ珍しいというだけで男なんかが代表になるなんて認められませんわ!」
さらにボルテージが上がったのか、セシリアの演説は続き、
「大体、文化としても──」
「そこまでにしておけ、オルコット」
「「「「っ!?」」」」
突然翔から出た言葉と圧に、セシリアだけでなく、教室にいた全員が固まった。
「オルコット、それ以上口にすれば大きな問題になることは、
「……っ!」
そう言われてセシリアは、先ほど口にしようとしていた言葉を思い出し、背筋が冷たくなるのを感じた。
『文化としても後進的な国』、もしそれを口に出していたらどうなっていたか。
候補生とは言え、
どんどん顔が青ざめていくセシリアを見て、翔は織斑の方を向いた。
「それと織斑、なんでお前は人のこと勝手に呼び捨てにしてんだよ」
「な、なんでだよ!? 男同士なんだし呼び捨てでいいだろ!」
「男同士なら初対面の相手にも呼び捨てでいいと? んなわけないだろ」
「良いじゃねぇか! 細かい奴だな!」
「……はぁ、もういい」
織斑のアンポンタンな回答に、今度は千冬の方を見て
「それで織斑先生、一応他薦2、自薦1なわけですが、どうします?」
すると千冬は予め決めていたかのように
「1週間後、第3アリーナで織斑、北山、オルコットの3人で三つ巴の模擬戦を行い、一番勝率の高い者をクラス代表とする!」
と、代表決定戦の開催を宣言した。
その際、IS初心者の織斑がセシリアに対して『ハンデはいるか?』『男が女に対してハンデを付けるのは当然だろう』的なニュアンスのことを言って、クラスメイト達から失笑を買ったのはほぼ原作通りである。
ーside翔ー
なぜか代表決定戦に巻き込まれた。
まぁそれはいい。織斑がクラス代表をやりたくないばかりに誰かを巻き込むのは目に見えていた。それが俺だっただけだ。
むしろ問題なのは、オルコットを黙らせるために軽くとはいえ、殺気を叩きこんでしまったことだ。
"男なんか"のくだりはちょっと腹が立ったがまだいい。男が珍しいからって理由で代表に選ばれるのが気に食わないという気持ちも分かる。ただ、自分の立ち位置を弁えないセリフは許容できなかったというか……
――はい、やりすぎました。
ちなみに織斑に関してはむしろもっと叩けばよかったと思ってる。あまりにお話にならなくて、自分から切り上げたわけだが。
そして放課後、山田先生から寮の鍵を渡され、美波と一緒に下校。割り当てられた1210号室で2人して茶を飲んでいる。
……お察しの通り、美波と同室だ。
寮の部屋は意外と広くて、小さな台所もあって割と満足している。
……当初1週間は実家から登校のはずが、セキュリティの関係だなんだで急遽入寮させられたのはやや不満だが。
ある程度荷物をまとめてボストンバッグに詰めていて助かった。
『手際が良すぎないか』だって? そりゃ原作知識持ち(美波から又聞き)だし、多少はね?
「翔ちゃん、代表決定戦は専用機を使うのー?」
「いや、出来ればそれは避けたいな」
美波が左腕に付けた腕輪――待機状態の専用機――を振るのを見て、俺も胸元からドッグタグ状の専用機を取り出した。
確かに俺と美波は専用機を持っている。束さんお手製、完全フルオーダーの、この世に2つとない代物だ。
だが、まだ使うわけにはいかない。
ただでさえ出処不明かつ学園にも知られていない専用機、しかも他に類を見ないこれを不用意に表に出してしまえば、確実に怪しまれる。
『その専用機はどこから来たのか』と。
そうなれば、芋づる式に束さんとの関係が露呈するかもしれないし、IS開発者・篠ノ之束を狙う各国の陰謀に巻き込まれかねない。
「でも、当日までに訓練機を借りられるかなー?」
「最悪ぶっつけ本番かもな」
「こういう時、束ちゃんのラボで練習してて良かったよねー」
「だな」
あの日、やらかしで紅椿を起動させてからIS学園入学までの間、束さんのラボでISの操縦訓練を積んできたのだ。しかも休日はほぼ1日中。
ぶっちゃけ、
――コンコン
「どちらさまー?」
「せ、セシリア・オルコットですわ」
「セシリアちゃんー?」
美波がドアを開けると、そこには確かにオルコットがいた。
とりあえず廊下に立たせておくのもあれだと、美波が部屋に招き入れた。
「それでどうしたのー?」
「あ、あの……北山さん……」
「俺?」
なんだ? クラス代表決めるときに殺気ぶつけた件で抗議しに来たか?
「その……」
「あ、ありがとうございました!!」
「へ?」「ほ?」
え?お礼?お礼ナンデ?
「北山さんがあの時わたくしの話を遮って下さらなかったら、とんでもないことになっていました」
まぁ確かに、少なくとも
「で、ですから、わたくしの立場と言いますか、誇りを守ってくださった北山さんに感謝をと……」
「お、おぅ……」
「ですが!」
「お、おぅ!」
「代表決定戦とは話が別ですわ! 当日は学園の訓練機で出られるのでしょうが、わたくしは専用機『ブルー・ティアーズ』で出場させていただきますわ!」
ビシッと指さして、オルコットは高らかに宣言した。
「模擬戦とはいえ真剣勝負だ。その時使えるものを最大限利用するのは当然だろう」
「それと何処かの誰かさんのように、『男ならハンデを』なんて口になさいませんよう」
「何を言ってんだ、そんなの当たり前だろう。それに――」
ああ、まずい。こんな場所で言うセリフじゃないのは分かってるんだがなぁ……
「
ーside翔 outー
ーside美波ー
「で? 翔ちゃんは賢者タイム終わったー?」
「賢者タイム言うな……」
セシリアちゃんが部屋に戻ってから、翔ちゃんはずっとフローリングの上でorzしている。
学園ラブコメの世界で、ポロッと『フロム脳』っぽいのが出てきちゃったようなものだからねー。仕方ないねー。
「ぐぅぅぅ! いっそ殺せぇぇぇ!」
「それはできない相談だねー」
それからしばらくorzってたけど、やっと心の整理がついたのか、ベットの上に座り直した。
「とりあえず、明日山田先生に訓練機を借りられないか聞いてみるか」
「そうだねー。ちなみに借りられるとしたら『打鉄』と『ラファール』、どっちがいいー?」
「そうだなぁ……機動力が欲しいから、出来ればラファールを使いたいな」
確かに2つを比較したら、打鉄は防御力重視でラファールは機動性重視だもんねー。
「あれ? でも入学試験の実技じゃ打鉄使ってなかったー?」
「だからってのもある。試験の時には目立たないように全力は出してなかったからな。それで代表決定戦で全力機動したら、色々疑われるだろ? だからラファールを使って『こっちの方が相性いいっぽいです』って言って誤魔化す」
「えぇ~……」
「まぁ、なるようにしかならないだろうさ。とにかく明日次第だ」
「それもそうだねー。それじゃあ今日はもう寝よっかー」
「ああ。明かり切るぞー」
「ほーい。おやすみー」
ーside美波 outー
・セシリアの失言を止める:
セシリア→翔の好感度up(中)
・織斑からの呼び捨てされる:
翔→織斑の好感度down(中)
・織斑からの呼び捨てを拒否:
織斑→翔の好感度down(小)
・ハンデを付けると言い出す:
セシリア→織斑の好感度down(小)