「織斑、来週の代表決定戦についてだが、政府から専用機が手配されることになった」
翌日のSHR、伝達事項を言い終えた千冬は、織斑の方を向いて言った。
「織斑君に専用機……?」
「1年のこの時期に専用機って……」
クラスメイト達も、突然のことに動揺が隠せないでいた。
「それを聞いて安心しましたわ。訓練機程度では、わたくしの『ブルー・ティアーズ』の相手なんて無理でしょうから」
横からセシリアも話に入ってくる。
「専用機……」
「そうだ」
「……専用機って、そんなに凄いのか?」 ガターンッ!
教室内全員(織斑本人と千冬を除く)総ズッコケである。
「織斑……貴様しっかりと授業を聞いていなかったのか……」
「おりむ~、ISのコアは世界中で467個しかないんだよ~? その貴重な467個の内の1つを、おりむー用に貸してくれるって言ってるんだよ~?」
「おおっ、そうなのか」
近くの席の生徒(布仏)の説明を聞いて、織斑はポンと手を打った。
「で、だ。北山については……」
千冬は言い淀むが、
「当然無いでしょうね」
翔はやれやれというジェスチャーで、さも当然のように言った。
「当然って、なんでだよ?」
「織斑、布仏さんの話を聞いてたか? ISコアは貴重なんだ。本来1つ捻出するのも大変な代物なんだよ」
「だからなんで……」
「あのなぁ……もしISコアが1つしか無い場合、
「なっ! 千冬姉は関係ないだろ!」
織斑が翔を睨みつけるが、
「やっぱり、千冬様の弟君だから……」
「そりゃそうなるよね……」
女子達の中では、『やはりか』というヒソヒソ声が聞こえてくる。
織斑は千冬の方を見るが、千冬は躊躇いの顔をして目を逸らした。
「すまないが、北山には訓練機で出場してもらうことになる」
「分かりました。予想通りではあるんで、問題ありません」
「ちょっと待ってくれよ千冬姉――!」
――スパーンッ
「ぐぁっ!」
「織斑先生と呼べ。そして今言ったことに変更はない」
出席簿アタックで織斑を黙らせたところで、SHRは終了した。
ーーーーーーーーーーーーー
ーside真耶ー
「訓練機の貸し出しですか?」
お昼休み。職員室の私の席に、北山君と北山さんがやって来ました。
代表決定戦までの間、訓練機を借りられないかという相談のようです。
「基本訓練機は予約制で、来週いっぱい予約済みなんです」
「ああ、やっぱりですか……」
「で・す・が!」
そう言ってタメを作りながら、私は机の上にある書類の内の1枚を取り出しました。
「学園上層部から、男性操縦者に機体を融通するように通達が来てるんです」
「融通、ですか?」
「はい! 代表決定戦までの間、訓練機の内1機を貸し出すことになってます!」
「おおっ、それはありがたいです! 最悪ぶっつけ本番になると思ってましたから」
北山君が喜ぶのも分かります。ただでさえ1人だけ訓練機で試合をしなければならないのに、その訓練機が借りられずに練習もできないでは酷すぎますからね。
「あのー、質問なんですがー」
「? 北山さん、なんですか?」
「織斑君の専用機って、まだ完成してないですよねー?」
「そうですね、確か、政府から委託された企業で開発中のはずですよ?」
聞いた話では、倉持技研が第3世代機として開発中とか。
「それと、さっき"男性操縦者に機体を融通"ってことは、織斑君も対象なんですよねー?」
「ええ、そうですよ」
「……織斑君本人、もしくは織斑先生経由で、貸し出しについて質問されましたかー?」
「え゛……?」
そういえば、織斑君から訓練機貸し出しに関して聞かれていないし、他の先生方からも連絡は受けていないような……
「おい美波、それってつまり……」
北山君が口元を引きつらせています。もしかしたら、私も引きつってるかもしれません……
「織斑君の方がぶっつけ本番になるんじゃないかなー?」
放課後に訓練機貸し出しを行うということで、北山君達が職員室を出て行った後、入れ替わりで入ってきた織斑先生に先ほどの話を確認したところ
「一夏ぁぁぁ! お前というやつはぁぁぁぁ……!!」
と、呪詛の様な声を上げながら腹部を押さえていました。
その後織斑先生と話し合った結果、不公平にならないよう、こちらから織斑君には訓練機貸し出しについては話をしないことになりました。
……北山さんの予想が当たりそうな気がしますぅ……
ーside真耶 outー
ーーーーーーーーーーーーー
ーside翔ー
放課後。訓練機を借りるため、俺と美波は
そこには訓練機である『打鉄』と『ラファール』が並んでおり、そこに山田先生が待っていた。
「これだけズラッと並んでると、ある意味壮観だな」
「だねー」
「はい! この学園はIS保有数だけを見れば、大国にも匹敵しますからね!」
山田先生の言にも納得ができる。
なにせ、目に入る範囲でも打鉄とラファールが5機ずつ、計10機鎮座しているのだ。
今貸し出されてる分や教員用も含めれば、20~30機ぐらいはある計算になる。
「それじゃあ早速ですが、北山君は打鉄とラファール、どっちにしますか?」
「ラファールでお願いします」
昨日から決めていた通り、ラファールを選択する。
「分かりました。それじゃあ
「え?」
ちょっと待った。山田先生今『
「あの先生、訓練機の貸し出しなんですよね?」
「そうですよ? 北山君には訓練機を一時的に"専用機"にして貸し出します」
「ファッ!?」
「しゅげー」
いや美波さん? しゅげーじゃないんだが。
「ほらほら、ささっとやっちゃいますよー!」
急かされるように、俺は並んでいた内の1機に乗せられた。
そして山田先生がISに接続されたPCで各種設定を行い、
「はい!
30分ほどして調整が完了したようで、ISからケーブルを抜いた。
「それじゃあ北山君、ISを待機状態にするためには――」
シュパァァァ――
「……あ」
ごめん山田先生、説明される前にやっちゃった……束さんのところで何度もやってたから、ついうっかり……
「ええっと……『解除ー』って念じたら出来まして……」
「そ、そうなんですかー……」
俺と先生の間に冷たい風が吹いた気がした……。
あ、ちなみにラファールの待機状態は、美波の専用機と同じ腕輪タイプだった。
美波のカラフルなトリコロールと違い、黒ベースに白いラインが1本入ったシンプルなものだが。
ーーーーーーーーーーーーー
こうして、訓練機(期間限定専用機)の貸し出しは終了した。
山田先生曰く、訓練機と違い、アリーナの予約には比較的空きがあるとのこと。
今日もこれから閉場までの間で空きがあるらしいから、動作確認も兼ねて行ってみるか。
「でも翔ちゃん良かったねー。ラファールと翔ちゃんの専用機が変な干渉しないでー」
あ゛……その可能性もあったのか……
~~~♪
「? 誰からだ?」
スマホのディスプレイを見ると、登録されていない番号。
「もしもし?」
『神界のアイドル、ロキちゃんだよー!』
「……KA〇OKAWAに謝れ」
とりあえず美波にも聞こえるように、周りに人がいないことを確認してからスピーカーモードにする。
「ロキちゃんやっほー」
『やっほーい! いやぁ、次の連絡は入学辺りでって言ってたんだけど、なかなかタイミングが合わなくてねー』
ああそうだったな。もう9年も前の話だったから、すっかり忘れてたわ。
「で、連絡事項は?」
『つれないなぁ。まあいいや、大したことじゃないんだけどね。どうも2人が介入した影響が、こっちの予想よりも大きくなりそうでねぇ』
「……いや、大したことだろ」
「でも、束ちゃんと接触した時点で今更だよねー」
それはそうだ。美波曰く、『原作』の束さんは物語のラスボス的立ち位置らしいからな。そりゃ影響もデカいだろうよ。
『織斑一夏とその周辺は、間違いなく『原作』から大きく乖離すると思うから、気ぃ付けてって話』
「それこそ今更だな……」
というか、お前はそのために俺達を介入させたんだろうが。
『そんじゃまた、次は年単位で間空かないように連絡するよ。アデュー!』
プッ ツー、ツー……
ホント今更なことばかり話して、ロキからの通話は切れた。
ーside翔 outー
・専用機について知らない:
クラス全員→織斑の好感度down(微小)
・訓練機を借りに来ない:
千冬→織斑の好感度down(小)
山田先生なら、この程度じゃ生徒に悪感情持ったりしないだろなーと。