On The Road ~仮面ライダーディケイド・AFTER CHRONICLE~ 作:地水
再び活躍する門矢士の姿と、意外過ぎる結末に活力を入れられ、このSSを作りました。
ココからお送りするのは、ディケイドの物語。
我らが世界の破壊者が再び歩き出すための物語。
――――時代が望むとき、仮面ライダーは必ず蘇る
「んん……」
その日、『門矢士』は目が覚めた。
整った容姿とそれに反して何かを見透かすような視線を有する彼は、その身体をゆっくり起こす。
自分の周囲に広がる光景を目にしながら口を開いた。
「どこだ、ここは」
士の目の前に広がるのは、荒廃した街並み。
立ち並ぶ高層ビルは所々破壊され、かつては綺麗に舗装されていた道路も抉れ砕け散っていた。
いかにも世紀末な世界にやってきたな、そう思いながら士は自身の衣服についた土塵を払いながら立ち上がる。
「変な世界にたどり着いたようだな。毎度のことながら」
まるで呆れたように士は目の前に広がる光景に感想を呟いた。
ともかく今自分の立つ場所には周囲に人気がないと判断した士は行く当てもないまま歩き出した。
少しして歩き続ける士だったが、一行に人にいる気配はなかった。
未だに広がる荒廃した街並みに辟易すると、近くにあった廃れたベンチに座って一休みする。
そこで士は自分の手を見て、ポツリと言葉を漏らした。
「たっく、ようやく終わったんだと思ったけどなぁ……」
残念そうに呟いた士の脳裏に浮かぶのは、『自分の最期』。
自分の復活のためにあらゆる世界の過去の自分を集めて争わせていた真実のソウゴが変身する"オーマジオウ"から、全ての世界を守るために次元を超えて戦った。
だが、前の殺人ゲームを繰り広げる館にて負った傷と相手がすべてのライダーの力を有する強大な相手という事もあって、激闘の果てに致命傷を負った。
最後は次世代の仮面ライダーを宿したライドウォッチを"仮面ライダージオウ/常盤ソウゴ"に託し、自身はその結末を見届けた後にこの世から去った。
去った、はずだった。
「一体、何のためにココにいるんだ……」
いつもな不遜な態度はどこへやら、幾多の世界も旅してきた士も何処となく戸惑った表情を浮かべていた。
自分の旅は確かに当てはなかったが、それでも役割を与え、倒すべき敵と守りたい人達、そしてやるべき事は明確にあった。
それがない今、士はどうするか考えていた。
「本当に人一人いないな。仮にここが死後の世界だったとしても、人影1人ぐらいいてもいいんじゃないのか」
余りにも人がいなさに愚痴を零す士。
――そんな時だった、今まで静寂の中に紛れて小さな喧噪が聞こえてきたのは。
「ハァァァァァァァ!!」
喧噪と共に聞こえてきたのは、誰かが上げた雄たけびの声。
耳に入った争う音に気になった士はベンチから立ち上がって走り出す。
少し走った後、辿り着いた場所にいたのは……何体にも及ぶ異形の怪人達と、それと戦う一人の仮面の戦士だった。
「まったく、しつこい……オラァ!」
怪人達と戦っているのは、イエローと黒を基調とした一人の仮面の戦士。
ダークグレーの複眼や頭部に刺さっているプレート・ライドプレートや、首に巻いた漆黒のマフラーという外見を見て、その戦士がディケイドと同じ仮面ライダーと判明するのは容易であった。
謎の仮面ライダーはその手に持ったディケイドライバーとよく似た意匠が施されている盾型の武器で怪人達からの攻撃を防ぎ、お返しと言わんばかりに鉄拳を叩き込む。
群がるように襲い掛かる怪人達に対してついに愚痴を零す。
「鬱陶しいなぁ、アイツがいればなんとかなるんだが」
そう言いながら、謎の仮面ライダーは盾型の武器を構えながら、今にも飛び掛かりそうな怪人達を見据える。
怪人達は目の前にいる獲物をどう片づけるか考えており、その中で待ち切れなくなった一体の怪人が地面を蹴り上げ、飛び掛かってくる。
いきなりの奇襲に身構えて対処しようと身構える……だがその前に銃撃によって怪人は撃ち下ろされてしまう。
「グギャ!?」
「ん? なんだ?」
「――多勢に無勢とはな。いい趣味だな、気に入らんがな」
怪人達へ向かってそう言葉を投げかけながら、士は一同の前に姿を現した。
その手には銃の方に変形させた本型の武器・ライドブッカーが握られており、先程の怪人を撃ち落としたのもこの武器の発砲のものだとうかがえる。
士は謎のライダーの前に立つと、横顔を向けて訊ねた。
「おい、大丈夫か?」
「なんとかな。だが、お前は誰なんだ?」
「それを聞くか……ちょうどいい、前の世界じゃ名乗る機会がなかったからな。名乗っておくか」
士は何処からか取り出したバックル・ディケイドドライバーを腰に装着し、ライドブッカーを開いてそこから一枚のカード・ライダーカードを取り出して構える。
「変身」
【KAMEN-RIDE…DECADE】
ディケイドドライバーの展開したバックルへと装填し、バックルを閉める。
いくつもの鏡像が出現し、士の姿に重なって別の姿へと変えていく。
マゼンタを基調としたボディに緑色の瞳の宿す仮面を宿した仮面の戦士へ変化を遂げると、怪人達へ指を差して名乗り始めた。
「ディケイド、門矢士……」
「――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
士が変身した仮面ライダー……『ディケイド』。
今、未知の世界にて降り立った彼は新たなる戦いへ足を踏み出そうとしていた。