更新お待たせいたしました。
ただ、本編に入る前に三つほどお伝えしたいことがあります。
一つ目はアンケートのご協力についてです。この度は拙作のアンケートに回答していただき、大変ありがとうございました。
アンケート結果から、この作品にはシンカイ以外の転生者は出さない方向にいたします。
二つ目に、高評価並びに感想についてです。高評価・感想はいつも執筆の励みとなっております。本作ではネタバレを避けるために感想への返事ができないのですが、それでも大変うれしく読ませていただいております。
最後に誤字報告についてです。こちらも大変ありがたく思っております。報告者のプライバシーを考慮し、誤字報告者様のお名前を出すことは控えておりますが、毎回大変助かっております。
読者の皆様に助けていただいてばかりの本作ですが、これからも続けていきたいと思いますので、以後も応援よろしくお願いいたします。
八月〇日(原作二十七年前)
ふと、思い出したので久しぶりに日記を開いた。『日記なのに頻繁に書けないとはこれいかに』って感じだが、俺の抱える事情が事情*1なので、あんがいこれくらいの頻度が良いのかなと思う今日この頃である。情報を残すのが日記の本懐だろうけど、俺の場合は残しすぎると命が危ないからね。しょうがないね。
それに、クザンさんが海軍に入ってからの三年は本当に忙しく、日記を書く時間もあまり無かったんだ。
正しく言うと、俺の身長が二m台に入ってからの一年と一ヶ月は本当に地獄だった。
・・・・・・ゼファー先生の指導が成人向けに変わってしまったんだ。今まで寝ていた時間や座学の時間だった時間が全て基礎訓練や戦闘訓練に置き換わり、とにかく覇気を高めるための訓練をし続けていた。
ちなみに、原作に頻繁に絡む知り合いはガープさん、センゴクさん、コングさん、おつるさん、クザンさん、ボルサリーノさん、サカズキさんくらいだ。
同世代の同僚?いるわけねぇだろ。いや、忘れてると思うが今俺十三歳なんだよ。
つまり、今は原作の二十七年前なワケ。
比較対象として、俺と年齢の近い*2スモーカーとヒナがいるが、まだ彼等でさえ七歳と五歳だ。
あの二人が七歳と五歳なのに中佐とか出世しすぎて笑える。
・・・・・・いや、真面目な話をすると十七歳までに上が認める結果を作らないといけない以上、出世するのは喜ばしいことなんだけどさ。流石に五年で中佐*3はヤバいと思うワケよ。・・・・・・これでも生意気な若者扱いされないように、周りに気を配ってるんだぞ?元陰キャ*4の俺がさぁ・・・・・・スゴくね?
まあ、そんな努力の甲斐もあって、艦長として部隊を率いて海賊を逮捕しにいく機会も増えてきた。俺専用の船ってのはまだ貰えないけど、順調に出世街道は歩めていると思う。
・・・・・・三年前にクザンさんが入隊したときは、俺が昇進するための仕事を全部あの三人に奪われる~なんて考えてたけど。なんだかんだ俺の能力は使い勝手がいいので、それなりに検挙数も稼ぐことができているというわけだ。――やっぱり、船は直接後ろから押すに限る。
さて、俺の命が保証されるまでどれだけの手柄が必要かわからないケド。今日も”凪いだ正義”を実行するとしますか。
***
「シンカイ中佐ッ!!海軍本部から連絡がきております!!」
夕日が沈みかけ、今日の業務ももう無いかなと思っていた頃。艦長室に繋がる伝声管から本部から通信があると呼び出しを受ける。
俺は急いで船内の連絡室に行き、部下から電伝虫を代わってもらう。あ、やべ誰から電伝虫来てるか聞いてねぇや。
「代わりましたシンカイです」
「おお!!やっと出たか!!」
「あ、なんだセンゴクさんか」
声の主は意外にもセンゴクさんだった。・・・・・・いや、知将と呼ばれ、本部勤めのセンゴクさんから俺に連絡が来るのは割とあることだから「意外」でもなんでも無いんだが。・・・・・・それ以上にガープさんから急に呼び出されることの方が多くて、電伝虫が鳴るとガープさんかと思ってつい身構えちゃうんだよ。
「――いつもガープがすまんな」
俺の声音に込められた思いを察したのか、センゴクさんが低い声で謝罪してくる。
「いえいえ、こちらこそ気を使ってもらってすいません。それに、ガープさんに頼られるのは嫌じゃ無いですから。・・・・・・ちょっと、数が多いですけど』
「・・・・・・・・・・・・すまん」
・・・・・・電話口から聞こえるセンゴクさんの声のトーンがだいぶガチだったが、気にしないようにしよう。
「そうじゃない。あの馬鹿野郎のことだ!!」
「ガープさんがどうかしたんですか?」
センゴクさんは思い出したかのように、声を張り上げ語りだす。
「新世界のエッド・ウォー沖で”金獅子のシキ”とロジャーが戦闘を開始した!」
「へぇー、ガープさんなら飛んで行きそうですねぇ」
俺が出会った頃からガープさんはゴール・D・ロジャーの逮捕に力を尽くしているし、そのロジャーがほかの誰かに倒されるかもしれないなんて機会があれば積極的に介入していくだろう。そんなことはガープさんを近くで見ている連中なら誰でも予想ができることだ。
「ああ、ガープはもうすでに新世界に向けて船を出した!だが、ガープはともかく、今の海軍で海上戦でシキとロジャーに圧倒的な有利を取れるのは、お前とクザンしかおらん」
「・・・・・・話が読めてきました。わかりました。バウナラ・シンカイ中佐、今すぐ海賊の捕縛任務に当たります」
俺の予想通り、ガープさんはすでに船を出していて、新世界に向かっているらしい。ただ、電気動力機械類がほとんどないこの世界の帆船は死ぬほど遅い。もうえげつないくらい遅い。かの大天才Dr.ベガパンク*5によって船の改良が進んでるらしいが、改良型の帆船はまだ実装されていないしな。
「助かる。俺もすぐに船を出すが、伝説級の海賊が二人だ。くれぐれも無茶はするな」
「何言ってんですかセンゴクさん。海の上で俺に勝てる奴なんていませんよ」
……なんかフラグ建てた気がするけど、俺はこれでも人生二回目。能力に胡坐をかいて、油断をするなんてことはない。だが、それでも余裕というのは生まれるものだ。
「(海水に触れている間強化される上に、俺には回復能力である『生々流転』や、転移能力『行雲流水』がある。勝てなくても負けることはそうそうないさ)」
***
「総員傾注!!!」
「ハッ!!」
「これから、俺たちは金獅子のシキとロジャー捕縛に向けて、新世界のエッド・ウォー沖に向かう!!」
「ハッ!!」
「作戦はいつも通り、プランA。――ただし、今回は海を操る俺と物体を無制限に浮遊させることのできるシキが戦闘をする。くれぐれも、無茶をせずに戦闘海域からは一定の距離を置いて、海賊共の捕縛活動を行ってくれ!!!」
「ハッ!!」
「――というわけだから、グレゴ大尉。操舵はお任せします」
「かしこまりました。では、中佐。早速」
「ええ、わかっています。――それじゃ、全速力で行こうか」
俺は船首に立ち、足の一部を海水化する。海水化した足を延ばし、海と体を同化させる。
体と海が一体になり、周辺の海中にある全てが知覚できるようになる。
「――風防、良し」
俺は船の前方十メートル先に流線型の薄い水の膜を展開する。風よけのバリアだ。これがないと、俺はよくても船がもたないし、なにより甲板にいる兵士たちがダメージを受けてしまう。
「さあ、――フルスロットルだ!!」
船を動かす準備を終えた俺は、周辺の海ごと船を移動させる。
「さすがシンカイ中佐!!帆を閉じてるのに、すげぇ速さで船が動くぜ!!」
「そりゃ、シンカイ中佐は海を支配する能力者だからな。――例え、伝説級の海賊二人が相手でも楽勝さ!!」
強化された聴覚が、甲板にいる海兵の声を拾う。……油断するのはよくないことだが、こうやって部下に大丈夫と言われるくらいに強くなれたことは素直に嬉しい。
「――さてと、新世界のエッド・ウォー沖までここからならそう遠くはないから、時速600キロ*6くらいで10時間ってところか」
俺は懐にしまってある
といっても、さすがに何もせずに海上で十時間は暇すぎるな。
・・・・・・少し考えごとをしよう。
考えるのは、俺の故郷であるココット島を滅ぼした海賊についてだ。
「(まさか、
そう、実は俺が海兵になってから得た地位や情報網を活用しても、あの海賊について新しい情報を得ることはできなかったのである。
そのため、現状例の海賊についてわかっていることは三つだけしかない。
一つ、何らかの理由で天竜人御用達の茶の名産地ココット島を襲撃したこと。
二つ、六式使い兼覇気使いの元海軍少将バウナラ・センカイを殺害できるだけの戦闘能力があること。
三つ、何らかの悪魔の実の能力者であるということ。
これだけだ。
だが、これは
ここから、考えられるパターンは二つ。一つは異常なほどに証拠を残さない狡猾で慎重な海賊であるということ、もう一つは――証拠すら残さないほどの破壊力を持つ海賊であるということ。
前者ならまだ良い。いくら慎重で狡猾でも海軍の総力を挙げれば一人の海賊、一つの海賊団なら力押しで倒すことはできる。だが、もし海軍の総力を挙げても倒せないレベルなら?ガープさんですら圧倒するほどの武を持つものだったら?
・・・・・・正直、考察と言っていいレベルの考えじゃないけど。それでも、あり得ないことがあり得ないのが、このONE PIECE世界だ。
「――本当、難儀な世界に生まれたもんだよ。誰が仇かもわからないなんてな」
***
俺が船を動かし始め、五時間が経った時だった。
俺の感知圏内に一隻の船が入った。
「――なッ!?」
そして、船を感知したその瞬間。俺の船はレーザーによる攻撃を受けた。
水の膜の屈折率を変化させ、とっさに右に逸らしたが、海面に着弾した光の槍は大きな水飛沫をあげた。
「シンカイ中佐ァ!?何事ですかぁ!!」
船員の一人が、焦った表情で俺のいる艦首まで駆け寄ってくる。
「襲撃だ!!大尉をここに呼んでくれ!!」
俺は端的に今、この船に起きた現状を伝え、操舵手であるグレゴ大尉を呼び寄せるように言う。
「お待たせしました中佐。一体何事ですか」
「襲撃です。相手は不明、俺の見聞色の知覚範囲外ギリギリからこの船を狙撃してきました」
「――本当ですか!?それが事実なら」
「・・・・・・覇気使いとしての能力も俺以上でしょうね」
「・・・・・・」
グレゴ大尉はごくりと息を呑んでいた。恐ろしくなるのもわかる。
俺だって正直恐ろしい。なにせ、海と一体化して強化されている俺の見聞色より強い見聞色の使い手。
それに加えてあのレーザー。さっきはギリギリ逸らしたが、あの威力だ。掠りでもしたら、確実に軍艦は沈む。くっそ、対ビームコーティングぐらい早く開発しろよ。
「って、そうじゃねぇ!!――グレゴ大尉、俺は今から襲撃者の対処に当たります。船は俺の能力で既に回頭を始めています。大尉はすぐにこの海域から離脱し、マリンフォードに撤退し、本部にこの襲撃者のことを報せてください!!」
「――かしこまりましたッ。中佐もご武運を」
俺は能力で軍艦を回頭させつつ、グレゴ大尉に指示を出す。
いい年した大人が、十三歳のガキに命令されるなんて色々と葛藤があると思う。でも、それでも俺の部下達は葛藤や不満を出さずに従ってくれている。
本当は、俺の命令なんて聞かずに自分で海賊を倒したいと思っているだろう。事実、これが戦闘前の海賊だったら我先にと飛び込んでいくのだろう。だが、彼等はジッと自分の内側から湧き上がる思いをこらえてくれている。なぜか、――それは、彼等が海兵だからだ。規律の上に生まれる平和を愛している人たちだからだ。だから、
俺が、海賊を捕縛することを信じて、だ。
・・・・・・思えば、ガープさんを送り出す皆もこんな顔をしていた気がする。
「ついに、俺も託される側になったってことかね。・・・・・・全く――負けらんねぇよなぁ」
俺は勢いよく艦首から海へ飛び込む。
普通の人間ならただの飛び込みだが、俺はそのまま手をつき海面に膝をつくことができる*7。
「さてと、何者かは知らんけど、船だけはやらせないぜ?」
俺は
ついでに、俺の能力が及ぶ範囲の海流を操作し、船をマリンフォードに向けて加速させる。これでとりあえず俺の部下達の命は助かるだろう。海軍本部からの援護はおそらく期待できないだろうが、能力者が相手なら俺の能力を全力で使えば負けはほぼあり得ないだろう。
「――来たッ!!」
霧を生み出して安心した瞬間、先ほどと同じ方向から再びレーザーが飛んでくる。しかも、今度は船じゃ無くてピンポイントで俺を狙っていたらしく、俺は
「ッ~~~。クッソ、コレ本当にボルサリーノさんと同じレーザーかよ!?重みが全然違うぞ!?」
腕にダメージこそ無かったがその威力は衝撃的だった。
まさか、ボルサリーノさんが使うレーザーよりも威力が高いとは、想定外だった。
「でもな、伊達にあの人と同門やってないんだよ!!――対レーザー戦の心得見せてやらぁ!!氷天・武装
俺は、簡易的に作り出した氷の槍と円形盾を構えて武装色を纏わせてから、レーザーが放たれた方向めがけて走り出した。
「対レーザー戦の心得その一、能力での防御は基本間に合わないから避けるべし!!」
三発、四発と続くレーザーを見聞色の先読みで回避しながら、少しずつ襲撃者に接近する。八尺瓊勾玉相手でも通じる俺の見聞色を近距離に絞って使えば、レーザーの回避もなんとか可能だ。
「対レーザー戦の心得その二、前以て準備をしていれば能力の防御も多少はできる!!」
五発目のレーザーに合わせて用意しておいた水蒸気の壁でレーザーを減衰させる。この水蒸気の壁は、極小の氷の粒を混ぜてある特製だ。無論、それでもただの水には変わらないので、せいぜいあと数発しかレーザーを防ぐことはできないだろう。
「だが、この調子なら襲撃者と会敵するまでは壁が持――ハァ!?」
しかし、俺の予想に反し、水蒸気の壁は螺旋状に回転するレーザーに吹き飛ばされた。ついでに右手の盾も右腕ごと吹き飛ばされた。クソ痛い。
「(いや、違う。
螺旋状に回転する光という不自然極まりない攻撃から、俺は襲撃者の攻撃の本質に当たりをつけた。
まず、自然現象そのものになる
だから、螺旋状に回転する光の槍を見たとき、一瞬だけ俺はこの光の槍がそのどれにも該当しない攻撃だと思った。だが、違う。かなり珍しい可能性だから中々思いつけなかったが、もう一つだけあるんだ。
物語や伝説、人のイメージ通りの力を得ることができる最も希少で強力な悪魔の実。
「
ヤケクソになりながら周囲の水蒸気を凍結させつつ、海から氷の壁を隆起させる。一瞬の時間稼ぎにしかならないだろうが、海に入ってしまえば死ぬことはない俺にとって、一瞬さえ稼げれば十分だった。
俺は一度海中に潜り腕を瞬時に再構築させる。
・・・・・・さて、こうなると海上から接近するのは大分キツい。キツいだけで不可能とは言わないが、それでも相手が水を消滅させることができる以上。海上での接近はかなりリスキーだ。
まあ、俺なら海中深くを進むこともできなくないし、行雲流水で転移しながら近づくのもアリだと思う。
しかし、それでもいつかは海上に上がらないといけない。
海中から攻撃を仕掛けるってのも手ではあるんだが、やはり致命傷を与えるには覇気を纏った一撃を与えるのが一番確実だからな。接近戦は避けられない。・・・・・・まー、ぶっちゃけるなら、できるだけ海上で粘って相手の攻撃パターンを学習したかったんだが、接敵する前に消耗させられるのは癪だ。・・・・・・海に潜れば全回復するけども。
「――ああ、クソ撃ってきやがった!!」
数秒ほど思考に専念していると、今度は海上から何本も続けて光の槍が海中に向かって撃ち放たれる。レーザーと性質は似てるが、コイツはレーザーじゃないので、不純物が多い海に着弾しても減衰することが無い。・・・・・・さっきまではただのレーザーだったのは、単に手を抜いていただけなんだろう。
「だけど、もう見えてるんだよ!!」
強化された見聞色は、俺に敵対者の像を朧気ながら作り上げる。そして、それだけの情報があれば俺は行雲流水を使うことができる。
***
「――良くもやってくれたな」
身体中から怒気を発しながら、いくつかの水球と共に俺は水面から身体を浮かばせる。
「あらあら、
「お姉様。そうは言っても小さくても海兵は海兵です。さっさと殺してしまいましょう」
「あらあら、そんなことを言わないの。全く、すぐに殺したら面白く無いでしょう?――それに、これから楽しませてくれるのでしょう?」
「ああ、存分に楽しませてやるさ」
俺は全身の覇気を昂ぶらせ、本格的な戦闘状態に移行した。
「ほら、海兵さんもそう言ってくれたことですし。マリアもこの出会いと闘争を楽しみましょう」
「・・・・・・私が出るほどの相手ではないと思うので、お姉様一人で戦ってくださいまし」
「あらそう、残念ね。じゃあ私一人で楽しませていただきますわ」
すると、お姉様と呼ばれた女海賊は背中から神々しい光の翼を出し、フワリと空に浮かんだ。その女海賊の離陸に合わせ、軍艦は徐々に後ろに後退する。・・・・・・帆船は普通、前にしか進まないので、おそらくこれも何らかの悪魔の実の力なんだろうが。残念ながら、今それを追求できるような余裕は俺には無かった。
「私は
そう言って、お姉様と呼ばれた女海賊は爛々と光る赤い目をこちらに向け、紅いドレスのスカートの裾をつまみお辞儀をした。
「バウナラ・シンカイ中佐――せいぜい楽しく踊らせて貰うさ!!!」
瞬間、俺は海面から数百本の高圧水流をメサイア向けて放出した。この技は水天・
「あら、この程度かしら?」
「そうだと思うか?――水天・
俺は微笑みかけるメサイアめがけて、海面から竜を模った九つの水流を撃ち込む。九頭竜は百目鬼で放つウォーターカッターのような早さや制圧力はない。しかし、リアルタイムで九つの竜を制御しているため、威力・誘導性は百目鬼よりも強い。
「何を模っていても、所詮は水。私の羽ばたきで消える定め――あら?」
荒れ狂う九匹の竜は翼から放たれる衝撃はを喰らい弾かれるも、消えること無くメサイアへと向かう。
「こちらの皆さんは羽ばたきだけでは消せないのね。なら、これはどうかしら?
メサイアは竜の顎をひらりと躱し続けながら、九本の光の剣を生み出し、九頭竜めがけて打ち出した。
「(早いッ)――グッ!?」
文字通り光の速さで移動する剣は、全て竜に突き刺さる。
「だが、そんな程度の攻撃に、止められるかよッ!!」
俺の意思に答えるかのように九頭竜は光の剣を噛み砕き、再びメサイアに襲いかかる。
「畳み掛ける!氷天・
次いで、俺は自分を中心とした半径百メートルほどの海面から、数千もの鋭い氷柱を打ち出し続ける。九つの竜に幾千の氷柱、これを回避できる術はいくらメサイアとは言えは無いはずだ。それに、俺の見聞色も竜の顎がメサイアに食らいつく瞬間を見せている。
「(これで倒せるとは思えないが、初撃は貰った――)」
「あらあら、素晴らしいですわね。でも、私潮水は嫌いですの」
「なんだと・・・・・・ッ!?」
だが、俺の目に映ったのは予想を超える光景だった。
「(――竜が、氷柱が
「よそ見をしていて良いのかしら?」
「しまっ!?」
あまりの光景に目を奪われた隙にメサイアの接近を許した俺は、メサイアの武装硬化した拳の一撃を貰ってしまった。
「くっ・・・・・・」
俺は吹き飛ばされた右腕を足から海水をくみ上げ再生させる。
「――やっぱり、素晴らしいですわね」
その光景を見て、メサイアは恍惚とした表情でそう言った。
「何がだ」
「その
「――そうだ。俺の食した悪魔の実は
これだけ能力を曝け出しているのだからと、俺は特に隠すこともせずに自分が食した悪魔の実の名前を言った。
「液体に転じ、周囲の液体を操る力。能力者に圧倒的な優位を持てる上に、その再生能力。海上なら負けることはまずあり得ない。――賞賛するに値する悪魔の実ですわ」
息を荒くしながら俺の食した悪魔の実について語るメサイア。――戦闘を楽しむ、と言うだけあって戦闘狂らしい彼女は、ずいぶんと饒舌だった。
「・・・・・・お前の悪魔の実には負けるけどな。光の翼に、光の剣。さらには空中の物体の静止。一体、何の悪魔の実を食べたんだ」
だから、俺は負ける気も無いが勝ち目が見えない戦いに打開策を見出すために、なんとなくその問いかけを口にした。
「あら、あらあらあら!!!貴方、私の食した悪魔の実に興味があるのかしら!!」
「そりゃ気になるさ」
「なら、教えてあげて差し上げる」
「私の食した悪魔の実。それは――」
登場人物紹介
メサイア
様々な能力を操る上に、覇気も強力な女海賊。マリアという少女と共に二人で海賊をしている。
神々しい金色の髪に赤い瞳、天使のように整った完璧な砂時計型のスタイルを持つ。服装はゴスロリを好み、いわゆるお嬢様言葉で話す。
身長は180センチほど。
高評価と感想があれば天恵を得ることができると思うので、ご期待くださる方は、是非評価と感想をお願いします。
オリ主以外に転生者が登場しても…?
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よくない
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よい