二つ名持ちの怪物達   作:妖狐うどん

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トップバッターはやはりこのモンスターです。






黒炎王の章
火竜とフーシャ村の少年


 

 

 

 

東の海の辺境、ゴア王国、フーシャ村ーーーー

 

 

海賊に憧れる村の少年ルフィは、見晴らしのいい丘の上から何かを待ち侘びるように港の方向を眺めていた。

 

「シャンクス達、はやくかえってこねえかなぁ」

 

友達であるシャンクス達、赤髪海賊団がフーシャ村を離れて1ヶ月ほどが経過し、退屈な日々を過ごすうちに寂しさが募るルフィは、幼馴染の少女とのお気に入りの場所であるこの丘の上から海を眺める時間が日に日に長くなっていた。

 

そんなとき、空を飛ぶ何かが遠くからこちらへ向かってきているのが見え、ルフィは目を凝らした。

 

「なんだありゃ」

 

見つけたときは米粒ほどにしか見えなかった向かってくる物はぐんぐんと近づきやがてその全貌が露わになると、ルフィは目を飛び出させるようにしながら叫び声をあげた。

 

「ええええぇぇぇーーーーー!!!」

 

ルフィが見たものは、こちらに向かって飛んでくる全長20mを悠に超える体長をもつ巨大な赤い飛竜であった。

 

飛竜はあっという間に島まで飛来すると、森を挟んだルフィのいる丘の反対側にある崖の上に降り立った。

 

「……すっげェェェーーーー!!あれは…、ドラゴンじゃんーー!!」

 

流石のルフィでも一瞬呆気に取られた様子だったが、すぐに目をキラキラさせながら興奮した様子で飛竜が降り立った方を見つめる。

 

ルフィに限らずドラゴンは男の憧れだから仕方ないのである。

 

「あっちに行ったよな!!」

 

ルフィは飛竜を見ようと急いで森の中に走っていく、そして森を抜けるとその先にはーーー

 

赤い髪をした青年が立っていた。

 

髪の色が似ていたことからある人物がルフィの頭に浮かぶ。

 

「シャンクス?」

 

「うん?」

 

青年が振り返ると、ルフィは、シャンクスではないことに気がついた。

 

「シャンクスじゃねぇ…、だれだお前?」

 

「おれはーー」

 

青年が応えようとする直前に、ルフィは飛竜の事を思い出した。

 

「そうだ!!さっきこっちの方にスッゲェドラゴン飛んでこなかったか!!?」

 

「聞けよ!!スッゲェドラゴンか…」

 

話を聞かない子どもにノリよく突っ込む男だったが、その後のスッゲェドラゴンという言葉を聞くと、満更でもない表情を見せる。

 

「なんか知ってんのか!!おしえてくれ!!」

 

興奮した様子で尋ねるルフィに、男は少し考えるように顎に手を置いたあと、目の前の少年を見つめる。

悪意とはかけ離れた純粋な好奇心溢れる視線、握りしめた手はワクワクを抑えられないといった様子だ。

警戒する必要性はないと判断した後、子どもの目を見てニヤリと笑う。

 

「あぁ、いいぜ」

 

「本当かあ!!ありがとう!!そんで、さっきのドラゴンはどこいったんだ!?」

 

ルフィはもう待ち切れない様子でうずうずしていると男が言った。

 

「じゃあちょいと後ろに下がってもらえるか?」

 

「?」

 

なぜ後ろに行く必要があるかわからなかったが言う通りにルフィが後ろに下がると、

 

「さっきのスッゲェドラゴンはなーーーーーーおれだ」

 

男がそう言った途端に男の身体がすごい勢いで変化していく。

 

腕が鋭い爪が生えた大きな翼に、足が強靭な巨体を支える脚に、腰の辺りからは棘の生えた尻尾が生え、頭は鋭い牙が生えた大きな口と猛禽類の様な瞳に、身体は身を守る鎧のような甲殻に包まれ、ついに変身が終わりその全身を見せた巨大な飛竜は、少し頭を上げた後、身を震わせ、

 

ギャオオオオオオオォォ!!!

 

咆哮をした。

 

絶大な音圧が辺りに飛び、木々に停まっていた鳥が一斉に飛び立ち、小動物は我先にと脱兎の如く走り出す。

 

「あ、やべ」

 

いつもの癖で変身後に咆哮をかましてしまった男だったが、直後に自身の咆哮で小型から中型の海王類さえ逃げ出していた事を思い出す。

そんな咆哮を間近で受けた少年を驚かせたに違いないと思い、目の前で耳を塞ぐ少年に声をかける。

 

「おいお前、大丈夫…」

 

「カ」

 

「か?」

 

「カッケエエエェェェェーー!!!」

 

「!?」

 

予想していた反応とは違い、キラキラと目を輝かせる少年に竜は少し呆気に取られた様子だったが、はしゃぎ回る少年に笑顔を浮かべた。

 

「自己紹介がまだだったな、おれの名はリオ・クロード、旅人だ」

 

赤い飛竜がそのままの姿で名乗ると、

 

「おれはルフィ!よろしく!ししし!」

 

少年はニカッと白い歯を見せ、太陽のような笑顔を見せるのだったーーーー

 

 

ーーーーーー

 

フーシャ村、マキノの酒場ーーーー

 

 

二人はその後、崖から村へと移動し、酒場で話しあっていた。

 

「クロード!!おれはよ、海賊になりてぇんだ!!いつか海に出て、いろんな場所に行って、いろんなものを見て、いろんな事をしたい!」

 

「そりゃいい夢じゃねぇか旅はいいぜ、ルフィ。しかしなんで海賊なんだ?おれの知る限り碌なもんじゃねぇぞ海賊なんて」

 

ワインを飲みながら諭すようにルフィをなだめるクロードだったが、ルフィはムッとした表情になった。

 

「シャンクス達はすげぇんだぞ!!馬鹿にすんなよな!!」

 

「いや、誰だよシャンクスって…話が見えねえぞ…」

 

苦笑するクロードに緑色の髪をした女性が話し掛ける。

 

「この村を拠点に活動している海賊団の船長さんですよ、ルフィがよく懐いているんです」

 

「マキノさん…、へぇ、なるほど、ルフィはそいつに憧れてるってわけか」

 

「いい人達ですよ、よくルフィの面倒をみたりしてくれてますし」

 

お皿を拭きながらマキノが話す。

 

「違う!!おれが面倒見てやってるんだ!!」

 

ルフィがギャアギャアと騒ぐ。

 

「まぁ落ち着けよルフィ、これでも食え」

 

クロードは、骨つきのチキンを差し出す。

 

「わあ、ありがとう!」

 

ルフィが素直に受け取り食べ始めると、

 

「しかし、おれが知ってるような海賊とはイメージが随分違うんだな、そのシャンクスって男は。ルフィが懐いてるってんなら悪いやつじゃあないらしいし、おれも一度会ってみてぇもんだ」

 

クロードは興味を持ったように呟くと隣で頬を大きく膨らませながらチキンを食べているルフィに声を掛けた。

 

「悪かったなルフィ、別にお前の友達のことを悪く言うつもりはなかった」

 

「いいよ、ゆるす!!」

 

「ハハハ!許された!!」

 

隣にいる7歳の少年の態度の大きさについ笑ってしまうクロードにルフィが尋ねる。

 

「クロードは旅人なんだろ!今までどんな所に行ってきたのか聞かせてくれよ!冒険の話!!」

 

「いいぜ、これは4年程前に南の海のある島での話なんだがーーーー

 

 

 

ーーーーだったって事だな」

 

冒険の話を目を輝かせ、身を乗り出すように聞いているルフィと時折笑いながら話すクロード、ニコニコしながら様子を見るマキノの3人だったが話が終わる頃には日が暮れそうになっていた。

 

夕日が窓から差し込み、部屋を紅く照らしているなか、クロードははっと思い出したようにルフィに尋ねる。

 

「そういやルフィ、そろそろ家に帰った方がいいんじゃねぇか?親が心配してるかもしれねぇ」

 

何気なく尋ねたクロードだが、予想外の返答が返ってくることになる。

 

「ああ、おれは親いねえぞ!ここに住んでる!」

 

「なに?」

 

なんともないように答えるルフィだが、クロードはやってしまったという表情になる。

 

「すまんルフィ」

 

「?なんで謝んだ?なんもやられてねぇぞ、おれ」

 

なんで謝られているかもわかっていないルフィだったがクロードの表情が曇ったことはわかったらしい。

ルフィは、子どもながらにそう言った雰囲気を感じ取った。

 

「それよりよ!もっと聞かせてくれよ!!冒険の話っ!!」

 

「ルフィ…、お前…」

 

「おれはさっきみてえに楽しそうに話してるクロードの方がいい!!ししし!!うわっ!」

 

いきなり頭を撫でられ驚くルフィだが、すぐに笑顔になり、されるがままになった。

 

「クロードの手、あったかいな!」

 

「そりゃどうも、ルフィ!冒険の話、いくらでも聞かせてやるよ!」

 

二人の語らいは夜遅く、ルフィが眠くなるまで続いたーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

夜中、ようやく眠りについたルフィを背負って酒場の一室のベッドに降ろすクロードは、優しい手つきで眠っているルフィの頭を撫でる。

 

「明日絶対続きを聞かせてくれよ!!それと、会ったときのドラゴンの姿も気になるし…とりあえず明日!また明日!!約束だからな!!」

 

約束を念入りに取り付けたあと、すぐに眠ってしまったルフィをこうしてマキノに案内された酒場の一室に連れてきたクロードは、起こさないようにゆっくりと部屋から出ると、カウンターにいるマキノに話しかけた。

 

「はあ、ようやく寝たみたいだ」

 

「お疲れ様です、クロードさん」

 

「お、ありがとう」

 

戻ってきたクロードにあらかじめ用意していたお酒を差し出すマキノにクロードは礼を言うと、席に座った。

 

「マキノさん、一ヶ月程この村に滞在しようと思うんだが、この酒場に空いている部屋はあるだろうか」

 

「勿論ありますよ!ふふっ、ルフィも喜ぶと思います」

 

「ルフィ…、あいつは面白いやつだな…、こんなにいい島に辿り着けたのは久々だったよ」

 

「久々…ですか?」

 

穏やかな表情の中に陰が見えたような気がして、マキノが聞き返す。

 

「ああ悪い、なんでもないんだ…。ところでマキノさん、昼からおればっかり話してたから、この村についていろいろ教えてもらっていいか?」

 

マキノは、クロードが胸中に何かを抱えていることを察したが、詮索はせずにこの村について教え始めた。

 

「東の海、ゴア王国のフーシャ村か…、随分遠くまできたな…」

 

「そういえばクロードさん、どうやってここまで来たんですか?港に舟が来た様子はなかったですけど…」

 

「ああ、おれは空を飛んで来た」

 

突拍子もない事を言うクロードにマキノは頬を膨らませながら言う。

 

「もう!揶揄ってるんですか!」

 

「本当だって!おれは能力者なんだ」

 

「能力者ってなんです?」

 

「能力者を知らない!?えーっと、じゃあ悪魔の実って知ってる?」

 

「?」

 

「おいおいマジかよ…」

 

悪魔の実の噂すらない島があるとは思いもしなかったクロードは、頭を抱えるようにしたあと、カウンター越しに疑問符を浮かべるマキノを見る。

 

「それで、悪魔の実とか!能力者とかって何なんですか!」

 

「あーそうだな…、わかりやすく言うとーーーー

 

 

ーーーーって感じだ」

 

「それで、クロードさんがその能力者だと?ふーん」

 

マキノは半信半疑の表情でクロードを見つめる。

 

「なんだその顔…、さては信じてないな」

 

「だってあまりにも現実味が無さすぎて…」

 

「くそ!ルフィのヤツがいれば証明できるのに!叩き起こしてくるか!」

 

席から立とうとしたクロードをマキノが慌てて引き止める。

 

「ようやく大人しく寝たのに何しようとしてるんですか!?」

 

「だが、」

 

「とりあえず座ってください、ね?」

 

目の前から突然大きな圧力を感じ、クロードはこくこくと首を縦に振り、大人しく席に着いた。

 

「はっ!おれが一瞬とはいえ恐怖を感じるとは…」

 

「なにか言いましたか?」

 

「いえ、何でもないです…」

 

この男、この手の圧力には滅法弱かった。

なんとか調子を取り戻したクロードはじゃあよと話を切り出す。

 

「明日の早朝、おれの能力を見せるよ、ルフィにも言われてたしな…」

 

「じゃあ明日、楽しみにしていますね」

 

マキノは空になったグラスを片付けながら、にこりと笑った。

 

「ああ、楽しみにしといてくれ」

 

 

ーーーーーー

 

 

翌朝の早朝、昨日ルフィとクロードが出会った崖の上にルフィとマキノとクロードが立っていた。

 

「なあクロード、まだねみいぞおれ…」

 

「まあそう言うなよ、早朝じゃねえと大騒ぎになるかも知れねえからな…、その代わりルフィ!昨日の変身、もう一回見せてやるよ!」

 

「えーっ!!本当か!!」

 

その言葉を聞き眠気が飛んだのかはしゃぎ出すルフィをなだめるマキノだったが、ルフィの様子から昨日の話が現実味を帯びてきたのを感じ、少しワクワクしながらクロードを見ている。

 

「じゃあ、いくぜ」

 

その言葉と同時にクロードの身体が膨張し、巨大な赤い飛竜へと姿を変えていく。

その様子を2回目のルフィはロボットやヒーローの変身シーンを観ているように目を輝かせて見ていたが、隣にいるマキノは驚きで言葉を失っている様子だった。

 

「動物系怪物種、リュウリュウの実モデル"リオレウス"それがおれが食べた悪魔の実の能力だ」

 

変身が完了し、クロードがリオレウスの姿で喋り出す。

 

「やっぱカッケェェ!!クロード!!その姿だとどんな事が出来んだ!?」

 

「知りたいか?ルフィ、リオレウスは別名"火竜"と言ってな…、ちょっと待てマキノさんは…」

 

マキノからの反応がない事が気になったクロードはマキノのいた方を見た。

 

「うーん……」

 

「あ、気絶してる……、クロードォォ!!なにやってんだお前ェ!!」

 

「ええェーーーー!!おれが悪いのかよ!?」

 

脳のキャパシティがオーバーしたマキノは気を失ってしまい、ルフィに怒られるクロードだったが、理不尽な流れに文句を言いながらも変身を解除しマキノを介抱しに行くのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

マキノが目を覚ました後、クロードはリオレウスの姿になり2人を背に乗せてゴア王国周辺の海の上を飛行していた。

 

「本当にびっくりしました…」

 

ルフィの言う変身が精々背中に羽根が生えるくらいかなーくらいに思っていたマキノは、変身したクロードが想像以上にとんでもない怪物になってしまったこととあまりの迫力に気絶してしまったが、目を覚ました後、クロードの背に乗りルフィと一緒に空中の散歩を楽しんでいた。

たくましい女性である。

 

「うおー!すっげぇぇーーーー!!フーシャ村があんなに小さく見えるぞ!」

 

全身に風を浴びながらルフィはクロードの背の上ではしゃぐ。

 

「あまり動き回ると危ないぞルフィ!ったく…」

 

やれやれといった風な声を上げるクロードだったが、その声は優しかった。

朝焼けの中を羽ばたく飛竜はゆっくりと旋回をし島の周辺を飛び回る。

 

そして1時間ほど空の散歩をした後、クロードは出発地点の崖の上に2人を降ろしたあと、変身を解除した。

 

「さて、どうだった2人とも」

 

空の散歩の感想を聞くクロードに2人は顔を見合わせた後で、

 

「「最高だった!!」」

 

と感想を返すのだった。

その様子を見てクロードは口角をあげると、

 

「そりゃあ良かった、どういたしましてだな」

 

と言うと、フッと笑ったーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

次の日の朝、いつもより早く目を覚ましたルフィはクロードの部屋をノックした。

 

「おーいクロードー!!また空の散歩に連れてってくれよー!!」

 

しかししばらく待ったが返事がなかったため、ルフィは怪訝そうな表情になりながらドアを開いた。

 

「まだ寝てんのか?クロードー!」

 

この少年会って2日とは思えないぐらいの懐き具合である。

 

「クロード?」

 

ルフィは、寝ているクロードの顔を覗き込むと、なにやら眉間に皺が寄っている表情で寝言を言っていたが聞きとることは出来なかった。

 

「んー」

 

ルフィは呼びかけても起きないクロードに痺れを切らし、ベッドに飛び乗ると、寝ているクロードの鳩尾に体重の乗った膝がヒットした。

 

「ぐっ!!?」

 

大きく顔を顰めるクロード、しかしまだ起きる様子はない。

ルフィは顔の方に張り付くとクロードを呼んだ。

 

「クロードォ〜!」

 

甘えたような声で耳元で駄々をこねるルフィに寝ていたクロードも、

 

「うるさい……」

 

寝ぼけたまま反応を返した。

手応えを感じたルフィは顔に張り付いたままクロードを起こそうとする。

 

「起きろぉー!!」

 

「…」

 

クロードからの反応が無くなったことに対し疑問に思うルフィだったが、それはルフィが顔に張り付いているせいで呼吸ができなくなっていたからであった。

 

そんな時、ようやく目が覚めたクロードは視界が真っ暗なのに驚き次いで息が止まっている事と、何かが顔に張り付いている事に気がつくと、それを掴んで引き剥がした。

 

「ぶはッッ!!ハァーーッ!ハァ…!!…!?ルフィ…!?」

 

「あ、起きた」

 

「あ、起きたじゃねェ!!殺す気かてめェ!!」

 

「なんの話してんだ?」

 

あっけからんと言うルフィに怒るのが馬鹿馬鹿しくなったクロードは、掴んでいたルフィを床に下ろす。

 

「ハァ…まあいいか、おはようルフィ」

 

「おう!おはよう!!」

 

「それで…なんか用事でもあったのか?随分必死に起こしに来てたみたいだったが」

 

少し落ち着いたクロードはルフィに尋ねる。

 

「クロード!また空の散歩に連れてってくれよ!」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

クロードとルフィが2人で空の散歩をしたあと、港でクロードとルフィは釣りをしていた。

 

「おれが思うになルフィ、お前は落ち着きが無さすぎだぜ?そんなんじゃあ釣れるものも釣れねえよ」

 

隣で釣りをするルフィに指南をするクロード、2つ並んでいるバケツには片方だけにしか魚が入っていなかった。

 

「ちがう!そっちの釣竿がいいやつなんだろ!インチキだ!!おれの腕のせいじゃねぇ!」

 

「おいおい、勝負を仕掛けて来たときに自分でその釣竿を選んだろ?負け惜しみはみっともねぇぜ?ハハハ!」

 

朝のモーニングコールのお返しとばかりにルフィを煽るクロード、ぐぐぐ、と唸りながらルフィは釣竿を握りしめる。

 

「あ」

 

「ん?どうした?」

 

急に何かを思い出したように声を上げたルフィにクロードが尋ねる。

そのときルフィには"負け惜しみ"という単語からある幼馴染の少女が思い浮かんでいた。

 

「ウタ、今何してんだろうなぁ…」

 

「ウタ?」

 

隣にいるルフィから何か面白そうな話の気配をキャッチしたクロードは詳しい話を聞いてみる事にした。

 

「まあ、待つ時間は暇だしな。今日はルフィ、お前の話を聞かせてくれよ。そのウタって子のことや、シャンクスって男のこと、話したそうな顔してるぜ?」

 

「ほんとか?じゃあ聞いてくれよクロード!おれの友達の話!シャンクスとウタと会ったのはーーーー

 

 

嬉しそうに友達を自慢するルフィの話を微笑ましそうな表情でクロードは聞くのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

夕方、釣りをしながら話しをしている2人のバケツには魚が溢れそうな程入っていた。

 

「それでよ!シャンクス達はいつもウタを贔屓するんだ!」

 

「ハハハ!まあ年頃の娘を持つ父親ならしょうがないんじゃねぇか?」

 

「なんだよそれ!いみわかんねー!!」

 

「それはお前がガキだからだな!」

 

話に出て来たシャンクスのセリフを引用してルフィを揶揄うクロードに、ルフィは期待通りの反応を返す。

 

「おれはガキじゃない!!言ったろ!ちゃんと鍛えてあるから、おれのパンチはピストルみたいに強いんだって!!」

 

「ピストルはピストルでも豆鉄砲じゃねぇか?それ」

 

「なんだとぉ!!」

 

すっかり打ち解けた様子の2人は、笑いながら談笑を続ける。

 

「だから次の航海には絶対に連れて行ってもらうんだ!クロードも一緒に行けるようおれが頼んでやるよ!」

 

「なんでおれも着いていくことになってんだよ!?」

 

「うるせぇ!!おれが一緒に行きたいからだ!!」

 

「…!恥ずかしい台詞を言いやがる!」

 

クロードはルフィの頭をわしゃわしゃと撫でた、少しの照れ隠しが混ざっていたが、夕焼けでルフィには分からなかっただろう。

 

「なにすんだよ!」

 

「まあ、大人しく撫でられとけ!ガキなんだからよ!」

 

「おれはガキじゃないって言ってるだろ!!」

 

「まあ、シャンクスがお前を航海に連れてかない理由はおれにもわかるぜ。釣りを始めたときに言ったがよ、お前は落ち着きが無さすぎるんだよ」

 

「それがなんで連れてかない理由になるんだよ」

 

「危険だからだな、お前今日の朝おれの背中から何度も落ちそうになってただろ?一昨日はマキノさんがいたから多少大人しかったが、あれじゃあお前を連れて冒険なんて危険すぎるぜ」

 

クロードはルフィを指差して諭すが、納得のいかないルフィは文句を言った。

 

「おれは強いぞ!!自分の身は自分で守れるんだ!」

 

「ほーそりゃ心強いな」

 

「なんだよ!」

 

「いや?なんでもねぇ」

 

鈍感なルフィでも流石に空返事だということに気づいているのか、自分の強さをクロードに理解させる方法を考え始めた。

そのとき、ルフィの竿に強い引きがあり、ルフィの体が海に投げ出されそうになった。

 

「うわわっ!!?」

 

「ルフィ!!」

 

隣で釣りをしていたクロードは血相を変えてルフィの体を間一髪で支える事に成功する。

 

「た、助かったぁ」

 

「おい、大物だぞルフィ!」

 

「…クロード!こいつはおれの獲物だからな!」

 

「わかってるよ!支えといてやるから自分でやってみろ!」

 

クロードはルフィが海に投げ出されないように後ろから支えてやった結果、ルフィは長い時間を掛けて大きなマグロを釣り上げた。

 

「やったな!ルフィ!」

 

「ししし!ありがとう!」

 

ハイタッチをする2人に迎えに来たマキノから声がかかった。

 

「2人ともー!そろそろ、うわ!すごい大漁じゃないですか!」

 

「ルフィ、今日はお開きだな!村の人にもお裾分けしながら帰るぞ」

 

「おう!わかった!!」

 

最後に大物を釣り上げたルフィは大満足といった表情で夕陽を背に受けながら帰路についたのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

次の日の朝、昨日釣り上げた魚を焼き魚にしたものがメインの朝食をマキノの酒場にて食べ終えた後、歯磨きをしていたクロードの前に、ルフィがやってきた。

 

「クロード!!おれが強いってことを証明してやる!勝負だぁ!!」

 

「……」

 

「無視すんな!!」

 

クロードから反応が帰ってこないため、憤るルフィだったが、

 

「今、歯を磨いてんだよ!!少し待て!!」

 

とクロードが言うと、歯磨きが終わるのを大人しく待つことにした。

 

うがいをして、口を濯いだクロードが尋ねる。

 

「それで?今日は朝からなんなんだよ?お前が強いのを証明するとか言ってたような気がするが…」

 

「昨日おれが強いって言ったとき信じてなかっただろ!」

 

「いや、おれはお前が相当やるやつだと思ってるぜ?」

 

「えっ?本当か?」

 

「本当本当、よし!話は終わりだな!今日はゆっくり過ごすとするかぁ!!」

 

何かめんどくさそうな流れになりそうだったのでクロードはルフィをとりあえず認めておく事にした。明らかにルフィの言う強さとクロードの言う強さは別物なのは明白だったが、ルフィは騙されて酒場から外に遊びに出て行きそうになったギリギリのところで、クロードの対応に違和感を感じてUターンをして戻ってきた。

 

「クロード!なんか嘘ついてねぇか?」

 

「嘘はついてねぇぞ?(ルフィが勘違いしてるだけだしな)」

 

目を逸らすクロードにルフィは声を荒げた。

 

「やっぱり!なんかおかしいぞ!!なんか隠してるだろお前ェ!!」

 

「お前にしちゃ勘がいいじゃねぇかルフィ」

 

憤慨するルフィを前にお手上げの様子で観念した態度になったクロードはルフィに尋ねる。

 

「で?ルフィ、今日はなにがやりたいんだ?」

 

「おれと勝負しろ!クロード!決闘だ!!」

 

「おいおいルフィ、決闘なんて滅多なこと言うもんじゃないぜ?」

 

「おれは本気だ!おれの強さを見せてやる!」

 

「大体お前がおれに勝てるわけがねぇだろ?そもそも決闘をする理由なんてないだろう」

 

「ある!」

 

「へぇ、どんな?」

 

「一人前の男になる為だ!!」

 

笑い飛ばしてやってもよかったが、子どもとはいえ真剣に考えた上での決意を無碍にするのは気が引けた。

クロードは少し考えた後、はぁ、と溜息を吐いて椅子から立ち上がる

そこにはさっきまでの人の良さそうな青年はいなかった。

 

「おれとお前が初めて会った崖の上、覚えてるか?」

 

「う、うん」

 

「昼過ぎになったらそこに来い、決闘してやるよ、望み通りな」

 

クロードは今までルフィに見せたことがない様な獰猛な表情を見せながらルフィに告げ、酒場を後にした。

 

ルフィは初めて受けたクロードからの殺気に呆然と立ち尽くしていた。

単純な勝負として申し込んだ決闘が命懸けの殺し合いを意味することだとルフィはようやく理解した。

 

「うわああぁぁぁぁ!!コエェよぉぉぉーー!!!」

 

普段のクロードとは明らかに違う雰囲気だった、決闘をすれば本当に殺されるかもしれないという恐怖が胸を満たしていく。

ルフィは、涙を流しながらさっきまでの自分の行いを後悔する。

 

そこに、外に出ていたマキノが騒ぎを聞きつけて事情を聞きにきた。

 

「ルフィ!さっきクロードさんが怖い顔で出てったけど…、ルフィ!?どうしたの?」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ルフィとクロードが初めて会った崖の上で、クロードはルフィを待っていた。

何かを考え込むようにして地面に腰掛けているクロードは、頭をガシガシと掻くとため息をついた。

 

「やっぱ少し脅かしすぎたか…?いや、しかし…」

 

先程のルフィとのやりとりを気にしている様子を見せるクロード、やはり子ども相手に大人げなかったかもしれないと若干の後悔が滲む。

 

「まあ、あいつもこれに懲りたら簡単に決闘なんて言うことは無くなるだろうな!」

 

ルフィは子どもだ、決闘が己の命をかけて大切な何かを守ることと知らなかっただろう。だからこそ、無理矢理にでも教えてやる必要があった

安易に決闘を申し込むのは危険な事だと。

 

「しかし、どうしたもんかね…」

 

クロードは、この後の事を考えると少し頭が痛くなった。

 

「あいつ、大泣きしてやがったしな…」

 

酒場から出た後、後ろから大声で泣き叫ぶルフィの声を聞いていたクロードだった。

あれだけ怖がらせてしまったのだ、おそらくルフィが昼過ぎにここに来る事はないだろうと思ったクロードは、仲直りにはてこずりそうだと今からの事後処理の手間を考え、ため息が漏れる。

村人たちからの評価も、ガキを虐めて泣かせた悪いやつになってるんだろうなと思うと、気が重たくなった。

 

「まあ、あれこれ考えてても仕方ないよな」

 

クロードは一旦考えることを打ち切り、立ち上がると村の方へと歩き出そうとすると、後ろから声がかかる。

 

「クロード!」

 

「ルフィ…」

 

そこには泣き腫らした目をしたルフィが、息を切らして立っていた。

クロードは、一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに普段の表情に戻ってルフィに尋ねる。

 

「何しに来たんだルフィ、ごめんなさいでもしに来たか?」

 

「ちがう!おれは、決闘しにきたんだ!」

 

震えながら前に立つルフィにクロードは言った。

 

「決闘って…、お前震えてるじゃないか。そんなんで勝負にはならねぇだろ?今なら冗談だったで済ませられるぞ?」

 

「いらねぇ!!おれはどうしても決闘しなきゃなんねぇんだ」

 

ルフィの目は本気だった、どうしても決闘をしなければならない理由とは一体なんなのか、クロードには理解ができなかったが、ルフィが絶対に退かないことはなんとなく理解できた。

 

「ッ!このわからず屋が…!痛い目見ないとわからねぇのかよ!」

 

「…」

 

「そうまでしておれと決闘しなきゃいけないのか?理由を言え!」

 

「それは、言えねえ」

 

言葉での説得は出来そうにないことをクロードは察してルフィを正面から見ると、ルフィは負けじとクロードを睨み返してきた。

 

「そこまで言うならしょうがねえ、穏便に済ませるのはやめだな。どんなことになっても後悔しねぇんだな?」

 

「ああ!!」

 

「一発でもおれに当てられればお前の勝ちでいい、覚悟ができたらーーーーかかってこい!」

 

落ちていた木の枝を拾い、構えるクロードに対し、ルフィは拳を構えて走り出すーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ーーーー夕方

 

決闘は一方的な流れだった、とはいえクロードから攻撃する事はなくルフィの攻撃を軽くいなし続けるだけだったが、ルフィは何度も地面に転ばされるが、何度も立ち上がってはまた攻撃を仕掛ける、その繰り返しだった。

 

今も攻撃をいなしルフィがまたルフィが地面に転ばされると、クロードはルフィに話しかけた。

 

「なあルフィ…、諦めの悪さは認めるがな…、流石にもうわかったろう?おれには勝てねえって…、そろそろ諦めろって」

 

「ハァ…ハァ…!いやだ!!あきらめねえ!!」

 

フラフラになりながらも立ち上がりクロードに殴りかかるルフィだったが、足をかけられて前に倒れ込む。

 

「うわっ!!」

 

「もう夕方だぜ、しかもお前もうボロボロじゃないか」

 

「まいったなんて言ってねェ…!!」

 

「なあ、どうしてそこまでするんだ?おれに勝てないこともわかってたはずだろ、そうまでしておれとの決闘で得られるものなんてお前にはなにもないはずだろ?」

 

なぜルフィがここまで必死に食らいつくのか、クロードにはわからなかった。クロードは軽くあしらって決闘を終わらせるつもりでこの勝負に臨んでいたので、夕方になっても諦めないルフィになんでここまでするのかを聞いてみたくなった。

 

「ある…!!おれはそのためにこの決闘に勝たなきゃなんねぇんだ!!」

 

ボロボロになりながら立ち上がるルフィはまだ勝つことをあきらめていない様子でクロードに立ち向かう。

 

「あり得ない仮定だが、おれに勝って何を要求するつもりなんだ?」

 

クロードが尋ねるととうとうルフィは目に涙を溜めながら、本音を話す。

 

「クロード…!おれは、この決闘に勝って!お前に謝りたい!!」

 

「ルフィ…そりゃどういう…?」

 

想定していなかった返しが飛んできて、クロードは聞き返した。

 

「クロード、朝、すげえ怒ってただろ…おれずっと謝りたくて!!だけど!自分から申し込んだ決闘を無かったことにしたら、もう、クロードと友達じゃいられなくなる気がしたんだ!!だがら!!おれ!!すげえ怖かったけど!ここに来たんだ!!」

 

「ルフィ…、お前つまり仲直りをするため決闘しにきたのか?」

 

ルフィはこくこくと頷く。

 

「おれに謝りたくて、自分の命までかけたのか…?」

 

ルフィは首を縦にふる。

 

「そんな事しなくても、おれは許す許さないの前に怒ってなかったぞ?」

 

「ウソだ!今まで見たことない様な顔してたじゃねぇか!それに、自分から挑んだ勝負から逃げて、許してもらう様な事はしたくなかった!!だから…だからよ…」

 

クロードはルフィがどういう思いでこの決闘に挑んだのかをようやく理解できた。自分が言い出したことに対するけじめをつけるため、そして友達と仲直りをするために勝ち目のない戦いに臨んだ事、クロードと仲直りをするために命をかける程の覚悟をしてきた事。

クロードは、むしろ自分の方が目の前の少年を侮っていた事を思い知らされた。自分が同じ立場で同じことができただろうか?

子ども扱いして本気で決闘に臨んでいないのは、こちらの方だった。

命懸けで戦っていたのも、本気で勝とうとしていたのもルフィだけだった。

 

「……負けたよ、ルフィ」

 

クロードはルフィの意志を汲み取り、パンチを棒立ちで受け入れる。

 

「クロード、ごめん!だけどおれ!まだクロードと友達でいてぇ!!1人でいるのはもう嫌だ!!だからおれの事、許してくれるか?」

 

「当たり前だろ」

 

二つ返事でルフィの謝罪を受け入れるクロード、最初から怒っていたわけでは無かったが、謝罪をしたくてここまでしたルフィの意志を尊重しての事だった。

 

「グロードオォォォォォォ!!!」

 

泣き叫びながら抱きつくルフィをクロードは優しく受け止めた。

クロードは転びまくってあちこち擦り剥いたルフィを見ると、謝罪の言葉を漏らした。

 

「ルフィ、ごめんな」

 

「なにがだ?」

 

ルフィは意味がよくわからない様子だったが、クロードはそんなルフィを背負って村に歩き出す。

 

「ルフィ、喧嘩した後はな、お互いに謝りあうもんなんだよ。そうやって友達とは仲直りするんだぜ?」

 

「そっか!わかった!」

 

背負われたルフィが仲直りできた安心からか、寝息をあげ始める。

幸せそうな顔で眠るルフィを横目に見ながら、クロードはゆっくり村へと向かっていくのだった。

 

 

 

 






動物系怪物種
本作オリジナル悪魔の実、モンスターハンターのモンスターに変身する能力を得る事が出来る。

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