二つ名持ちの怪物達   作:妖狐うどん

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とうとうエレジアに行ってもらいます。







火竜と勧誘と約束

 

 

 

フーシャ村、マキノの酒場ーーーー

 

 

クロードがフーシャ村に来てから14日目の夕方、酒場でシャンクス達と酒を飲んでいたクロードは、シャンクスから連日の勧誘を受けていた。

 

「だから!おれ達の仲間になれよ!!クロード!!」

 

「だから!おれにはやらなきゃいけないことがあるんだって言ってるだろ!」

 

 

事は9日前まで遡るーーーー

 

「クロード、お前、おれ達のーーーーーー"仲間"になれよ!!」

 

9日前の夜、シャンクスに仲間に誘われたクロード。

 

「お前たちの仲間かぁ!そりゃあ楽しそうだな!」

 

「だろ?おれ達と一緒に冒険しようぜ!」

 

「魅力的な提案だなァ!…だけど、おれにはやらなきゃいけないことがあるんだ…それをほっぽり出して、お前らと一緒には行けねぇよ」

 

「つまり、仲間にはなれねぇってのか?」

 

「ああ、悪いな、せっかく誘ってくれたのに」

 

シャンクスからの誘いに一瞬嬉しそうな顔になったクロードだったが、すぐに何かを思い出したように表情を曇らせると、申し訳なさそうに断りを入れる。そんなクロードにシャンクスは大きな声で言った。

 

「なんでだよ!!さっき乗り気だったじゃねぇか!お前が断んのをおれは断る!!仲間になれクロード!」

 

「お前酔いすぎだろ!?滅茶苦茶なこと言ってるってわかってんのか!?」

 

「酔ってねぇよ!!」

 

クロードを強引に誘う赤い顔をしたシャンクスに、赤髪海賊団の面々は笑い声をあげる。

 

「おい!お頭がフラれてやがるぜ!」

 

「はっはっは!おもしれぇ!!」

 

「クロード、諦めて仲間になれよ!」

 

「こうなったらお頭はしつこいぜ?」

 

「お前らの船長だろ!?なんとかしてくれ!!」

 

助けを求めるクロードだったが、赤髪海賊団の船員達は一斉に口笛を吹き始めた。

彼らも船長のやり方はともかく、クロードを仲間にすることには異論は無い様子だった。

孤立無縁のクロードだったが、そこにベックマンからの救いの手が、

 

「お頭、まあ落ち着けよ…。クロードがこの村を経つまでは勧誘出来るんだから、まだまだ時間はある…。それまでにその気にさせればいいだろ?」

 

「ベック…、それもそうだな!おい!クロード!今日のところは引き下がってやるが、絶対にその気にさせてやるからな!」

 

「ベックマン、余計なことすんなぁ!!」

 

来なかった。来たのはシャンクスへの援護射撃だった。

ベックマンの入知恵のせいで、その気になってしまったシャンクスに頭を抱えるクロードに、シャンクスが話しかけてきた。

 

「まあ落ち着けよ!飲み比べと行こうじゃねぇか!負けたら仲間になれ!」

 

「お前さっき今日は引き下がるって言ったよな!?」

 

「日付けならその少し後に変わった!」

 

「屁理屈言うんじゃねえ!!」

 

シャンクスと言い合うクロードの肩に、ベックマンが手を乗せると呟く。

 

「屁理屈…?甘ぇこと言ってんじゃねぇ…聖者でも相手にしてるつもりか?」

 

「お前の目の前にいるのはーーーー"海賊"だぜ?」

 

ベックマンの援護を受けたシャンクスが続けて話す。

 

「いや、なんかカッコいい雰囲気出してるけど最低だからなお前ら!?つーかベックマン!お前そんなこと言うやつだったのか!?」

 

この後、2人はお互いに酔い潰れるまで飲み比べをしたというーーーー

 

 

そして今、冒頭の流れに戻ると言うわけだが、この2人、あった日から毎日同じようなやり取りを続けていた。

 

そんなとき、遊びに行っていたルフィとウタが酒場に戻ってきた。

ルフィは、シャンクスから勧誘を受けるクロードを見つけると不服そうな顔をしながら文句を言った。

 

「あーっ!!クロード!!ずりぃぞ!!1人だけ次の航海に連れてってもらおうとして!!」

 

「またそれかルフィ…、言う相手はおれじゃないだろ」

 

親指で隣にいるシャンクスを指差すクロードだったが、それを見たシャンクスは悪戯っぽく笑うと、ウタに話しかけた。

 

「ウタ、お前もクロードが仲間になってくれたら嬉しいよな?このわからずやに言ってやってくれ!」

 

「えっ、う、うん!」

 

「シャンクスお前…、子どもを使うなんて恥ずかしいと思わないのか?ウタ、やらなくていいぞ」

 

ウタともすっかり打ち解けていたクロードは、この9日間に名前を呼び捨てにするようになっていた。シャンクスを白い目で見つめるクロードだったが、直後ウタが予想外の行動をとった。

ウタは、クロードに歩み寄るとクロードの服の裾を摘みながら、上目遣いでクロードを見つめーー

 

 

「私…、クロードと一緒に冒険したいな……、ダメ……?」

 

 

ーーと、破壊力抜群の台詞を放った。

酒場の中にいた全員(ルフィ除く)は、一瞬酒場の中の時が止まったような感覚を覚えた。

周囲がざわつきはじめると同時に、数瞬虚空へと旅立っていた思考が戻ってくると、クロードはようやく反応を返した。

 

「いいz…、はっ!!いや!ダメだダメだ!おい!!誰だウタにこんなこと教えやがったクソ野郎は!!」

 

「えっ!なになに?私なんかやっちゃった!?」

 

なぜ皆がこんなにもざわついているのか理解できずに困惑するウタだったが、酒場にいる全員を睨むクロードに、自分が何かしてしまったのではないかと思い、不安そうな顔を見せた。

そんななかーーーー

 

「いや、おれはあんなの教えてないぞ…」

 

どうせなら、自分にして欲しかったなぁと思いながらシャンクスが答えると、

 

「おれも知らねぇぞ…こいつじゃねぇか?」

 

ヤソップは自分に覚えがなかったため、横にいたルウを見ながら答える。

 

「濡れ衣だ!お頭!おれも違うぞ」

 

ルウも違うらしい、船員達の視線は残る容疑者の中で一番怪しいベックマンに集まった。

 

「いや…おれでもない…、もしかすると、計算されたものではなかったのかもしれん」

 

「「「「「「「「なにいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」」」」」」」」

 

「?」

 

「なんだこれ?」

 

騒ぎ出した男たちに、ウタとルフィはひたすら困惑するのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

フーシャ村の港ーーーー

 

翌日の朝、航海に出かけるシャンクス達を見送りに来たクロードに、シャンクスが船の上から話しかける。

 

「クロード、おれはまだ諦めてないからな!次の航海には、絶対にお前を連れて行くぞ!」

 

指をさして宣言するシャンクスに、クロードは苦笑いを浮かべていたが、そこにシャンクスの隣にいたウタから声がかかった。

 

「ねぇクロード…、ルフィは?」

 

港を見渡しながら、ウタが尋ねる。

 

「ああ、まだいじけてるみたいだったぜ。見送りに行こうって言ったんだがな…」

 

昨日、あの後も赤髪海賊団から冒険の誘いを受けていたクロードだった。その様子を見ていたルフィは、自分は航海に連れて行ってくれるように何度頼んでも一向に聞き入れてくれないシャンクス達に、仲間外れにされていると思ったのか、拗ねて自分の部屋で不貞寝をした。そして、今日になっても機嫌は治らなかったらしく、港にはルフィの姿は見えなかった。

 

「ほんと、お子ちゃまねー…」

 

そう言うウタだったが、心なしか少し寂しそうだった。

 

「ま、ルフィについてはおれがなんとか宥めておくよ」

 

クロードの言葉を聞いたウタは、少し安心した顔になった。

 

「ほんと?じゃあお願い!」

 

「お!なんか今お姉さんっぽかったな!」

 

「当然でしょ!私の方が、あいつより2歳もお姉さんなんだから!大人なの!」

 

背伸びをした態度で話すウタの姿を、笑顔で見つめるクロードであった。

そこに、シャンクスから出港の号令がかかる。

 

「野郎どもォーー!!出港だあーーーー!!」

 

「「「「「「「うおおおおおーーーー!!!!」」」」」」」

 

船員達が歓声を上げると同時に、錨を上げた船が少しずつ港を離れていく。

その様子を見ていたクロードは、船の上から手を振るウタに気がつくと、笑いながら手を振りかえしたのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

シャンクス達の船を見送ったあと、クロードはルフィとウタがよく2人で遊んでいる丘に向かい、膝を抱えていじけていたルフィの後ろから声をかけた。

 

「ルフィ、シャンクス達は行っちまったぞ?見送りしなくてよかったのか?」

 

「シャンクス達なんて知らねえ!」

 

拗ねた様子のルフィがそう返す。わざわざ港のよく見える丘にいたルフィに、ここからシャンクス達の船を見ていたことを悟ったクロードだったが、そこには触れないでおいてやることにした。

 

「まあそう怒るなよルフィ、シャンクス達だって別にお前を除け者にしたいわけじゃないんだぜ?」

 

「でも、おれだけ船に乗せてもらえねぇ…」

 

クロードがルフィに語りかけると、下を向いたルフィがいじけた様子で言葉を返した。

クロードがどうやって励ますかと考えていると、ルフィが思い出したように立ち上がってクロードに詰め寄った。

 

「クロード!鍛えてもシャンクス達は船に乗せてくれなかったじゃねぇかよ!」

 

毎日の修行を続けていたルフィは、クロードに修行した意味がなかった事を報告する。それに対してクロードは呆れ顔でルフィに返す。

 

「修行はまだ始めたばっかだろ?そんなに早く強くなれたら誰も苦労しねぇよ…」

 

「そうか…でもおれ!この前より強くなっただろ!」

 

「んー、まあ確かに、体力は増えたかもな!」

 

「だろ!だからそろそろ別のことも教えてくれよ!」

 

10日間の修行で毎日同じトレーニングを続けていたルフィは、最初の頃はヘロヘロになっていたが、確かに今はトレーニングを終えた後も余裕が残っている様子だった。

 

「そうだな…、まぁ、いいだろう!」

 

ルフィの中にあるモヤモヤを消すには、体を動かすのが手っ取り早いか、そう思い至ったクロードはルフィの頼みを聞き入れるのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

夕方、修行場所である崖の方に移動してきたクロードは、ルフィに体術を仕込んでいた。当初はクロードはルフィにウキウキで剣術を教えようとしたが、始まって3分でルフィに適性がない事を察して、体術への指導へと切り替えたのだった。

 

「ルフィ、お前に剣術の適性は無かったが、体術はなかなか光るもんがあると思うぜ!」

 

「ほんとかぁ!ししし!照れるなー!」

 

クロードは、褒められてご機嫌になるルフィの姿を見て、思いついた様子でルフィに話かけた。

 

「そうだルフィ!おれの技で、お前にも応用が効きそうな技があるから、それを見せてやる」

 

ちょっと待ってろ…と言ったあと、クロードは右手に木の枝を、左手に樽の蓋を装備した。

そして、崖上にあった大きな岩を指差した。

 

「あの岩を見とけ、ルフィ」

 

「わかった!」

 

クロードは岩に駆け寄ると、右手に持った木の枝で素早く2回斬撃を放ったあと、両断され前に崩れ落ちてきた岩に、左手にもった樽の蓋で強烈なアッパーカットを放つーーーー

 

「"昇竜撃"!!!」

 

崩れ落ちてきた岩がアッパーカットによって粉々に粉砕され、クロードは勢いに乗って宙に飛ぶと、地面に残っている両断された岩に今度は上から重力を重ねた一撃を放つと、残っていた岩が粉砕され、さっきまであった大岩はあっという間に粉々に破壊されてしまった。

 

「すげぇ…」

 

その様子を見ていたルフィは、感嘆した声を漏らす。

 

「どうだルフィ、今の技は剣の牽制からの盾での強烈な打撃の連携技、"昇竜撃"だ。頭部へ放たれた打撃で、上手く当てれば相手の意識を刈り取る事だってできる」

 

「スッゲェぇぇーーーー!!でも剣と盾の技なんだろ?おれ剣術使えねぇから出来なくねぇか?」

 

「そうでもないぜ?ワノ国の昔の達人は、この技を素手で放ったと聞いてる」

 

「そうなのか?すげぇな!よし!教えてくれ!!」

 

「いいのかルフィ、習得するには過酷な修行が必要だぜ?」

 

「それでもやる!おれも強くなりてぇんだ!」

 

始めての必殺技の伝授に心を躍らせるルフィの力強い眼差しに、クロードは口角を少し上げると、構えから教え始めるのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

4日後、マキノの酒場ーーーー

 

朝ご飯を食べながらマキノと談笑していたクロードの前に、血相を変えたルフィがやってきた。

 

「クロードー!!」

 

「ルフィ?」

 

「おいルフィ、どうしたそんなに慌てて…?」

 

慌てた様子に只事ではない気配を感じたクロードが、ルフィに尋ねると、ルフィは想像もつかないようなことを言い出した。

 

「ウタが…!ウタが危ねぇ!!」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

音楽の島、エレジアーーーー

 

日が暮れた後、エレジアの城のテラスで話をしてしたシャンクスとウタが一区切り付き、ウタが赤髪海賊団と共に明日エレジアを経つことを決めた後のことだった。

エレジアの国王ゴードンからの誘いを受けて、最後に城の広間にて自らの歌を披露するウタの姿があった。

 

「ーーーーーー♪」

 

(今日はすっごく楽しかったな…、沢山の人に私の歌を聴いてもらえたし、喜んでもらえた…)

 

歌いながら、今日あった事を思い返すウタは、シャンクスが穏やかな顔でこっちを見ているのを見つけた。

 

(でも、やっぱり私はまだシャンクス達と一緒にいたい…、それにルフィとクロードに会えなくなるのも嫌だ)

 

フーシャ村にいる2人の友達を思い浮かべ、今日の話を聞いてもらうのが楽しみだなと思いながら、ウタは曲を歌い終えた。

そして、いつの間にか傍らにあった楽譜が目に入った。

なぜかその楽譜から目を離せなくなるウタは、なにかに魅入られたように楽譜に近づくと、楽譜を手に取り歌おうと口を開いたそのときーーーー

 

「ーー♪!!?」

 

ーーーー何者かがもの凄い速度でウタの前に現れ、楽譜をウタの手から奪い取ると、己の体をウタと楽譜の間に滑り込ませた。

 

「ちょっと、あなた誰!?いきなりなにしてーーーー」

 

いきなり現れた、黒いフード付きのコートを着た謎の人物に困惑するウタだったが、先程歌おうとしていた楽譜から、身震いがするほどのおぞましい気配を感じ、身を震わせた。

 

「!?ウタ!!少ししゃがめ!!」

 

どこかで聞いたことのある声をした、目の前の謎の人物からの焦ったような声を聞いてその場に屈んだウタは、直後に目の前で吹き飛ばされそうになる程の風圧と共になにかが爆発するような音を聞いた。

 

「こりゃあ少し…、やばそうだぞ…!」

 

「クロード……?」

 

恐る恐る目を開いたウタの視界に映ったのは、ピエロの様な顔をした巨大な案山子のような姿の怪物と、怪物に対してウタを背に庇うように対峙する、爆風に煽られフードが脱げた、クロードの姿があったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

今日の朝、血相を変えたルフィから詳細を聴いたクロードは、ルフィがウタが怪物に取り込まれる様子を夢で見たことを聞いた。

ルフィの話を聞いたクロードは、まあ、怖い夢を見て動揺したのだろうとルフィを宥めようとしたが、ルフィはそんなクロードに食い下がると、こう言ったのだ。

 

「ーーーウタを助けてやってくれよーーー」

 

必死に頼むルフィの様子を見たクロードは、真剣な表情になる。そして、自分の部屋に帰ったクロードは黒い服に着替え、一つの永久指針を持ってルフィの元へと戻ってきた。

その永久指針には"エレジア"と刻まれていた。

 

「おい、ルフィ」

 

クロードは泣きじゃくるルフィの前にしゃがみ込むと、優しく頭に手を置き、力強く言った。

 

「ーーーまかせとけーーー」

 

クロードは、愛用の剣と盾を装備し、酒場から出て行った。

ルフィの見た夢が、ただの夢ならば、それでいい。

だけどもし、正夢であったならばーーーー

 

「急ぐかーーーー」

 

クロードは、赤い飛竜へ姿を変えるとフーシャ村を飛び去って行ったーーーー

 

 

 

ーーーーそして1時間ほど前、エレジアへと降り立ったクロードは、自分の気配を消しつつ見聞色を使って強い気配を感じ取ると、急いでその場所へと向かった。シャンクスの気配がある場所には間違いなくウタもいるはず、そう推察したクロードの予想どおり、城の大広間、そこにはウタがいた。

2階のテラスからウタの様子をうかがうクロードは、沢山の人に囲まれて歌を歌っているウタは楽しそうな表情をしているし、朝にルフィが言っていたような危険は無いように感じた。

 

「なんだ、やっぱりルフィの思い過ごしだったか…?」

 

と言葉をこぼしたあと、折角なのでウタの歌を聴いてから、お土産でも買って帰るか…、と思っていた矢先のことであった。

 

ゾクりと胸騒ぎがした。

 

突如現れたおぞましい気配に振り返ったクロードは、気配のする方を見ると謎の古びた楽譜と、それに近づいて行くウタの姿があった。

 

「全く…、大手柄だぞ、ルフィのやつ!!」

 

クロードは2階から飛び降りると一直線にウタの元に向かい、胸騒ぎの元凶の楽譜を奪い取った。

 

「ちょっと、あなた誰!?いきなりなにしてーーーー」

 

だが、一瞬とはいえウタはこの楽譜を既に歌ってしまっていたため、楽譜のおぞましい気配はどんどん大きく膨れ上がっていった。

クロードは"それ"が現れる直前、楽譜を投げ捨てて、距離を取った。

 

「!?ウタ!!少ししゃがめ!!」

 

直後、目の前を吹き飛ばすような爆発がおき、禍々しい雰囲気を身に纏った怪物が姿を現すと、クロードは冷や汗を流すと、悪態をついた。

 

「こりゃあ少し…、やばそうだぞ…!」

 

「クロード……?」

 

ここにいないはずのクロードが急に現れ、ウタが混乱した様子で声を漏らした。

そんなとき、目の前の怪物を見ながら、クロードはルフィの夢の話を思い出していた。

ルフィは確か、ウタが怪物に取り込まれる様子を夢で見たと言っていた。

 

「ウタ!!おれから離れるな!あいつの狙いは恐らく…、お前だ!!」

 

「えっ!?」

 

怯えた様子でウタが後ろに下がると、駆け寄ってきたシャンクスが、クロードに声を掛けた。

 

「クロード!?お前どうして…いや、今はそんなこと聞いてる場合じゃ無さそうだな!!」

 

「ああ、話は後だ!!シャンクス!まずはこいつを…なんとかしねぇとな!」

 

武器を構えるクロードに、シャンクスが話しかける。

 

「クロード、まずは城にいる人を逃すぞ!!」

 

「わかった!じゃあおれは…、こいつを出来る限り引き付ける!!」

 

シャンクスが広間に集まる人を逃すため、赤髪海賊団に指示を出しに行った。

クロードは、目の前の怪物が放ってきたレーザーを左手の盾で受け止めると、後ろにいたウタを背負って人がいない方向に走り出す。

 

「こっちだ!!」

 

盾を剣の腹で叩き、挑発しながら移動するクロードに、攻撃を避けられ続け痺れを切らした怪物は、拡散するレーザーを放って攻撃をしてきた。

 

「!?まずい!!」

 

「きゃああ!!」

 

背負っていたウタを床に下ろすと、飛竜に変身してレーザーを身体で受けるクロードに、ウタが悲鳴を上げた。

 

「クロード…、なんで…?あっ!」

 

わざとクロードが攻撃に当たりに行ったように感じたウタは、クロードの後ろを見ると、そこには逃げ遅れた人達がいた。

 

「ここから外に逃げろ!!」

 

クロードは逃げ遅れた人達に言うと、近くの壁を蹴り壊した。

城に人が通れる程の大きさの穴が開くと、避難を促された人が続々と通って逃げ始める。

 

「ありがとう!もうダメかと…」

 

「ありがとう…ありがとう…」

 

口々にお礼を言って外へ逃げていく人々だったが、その間も怪物は攻撃を続けていた。

 

「ぐっ!!うおぉ…!!」

 

 

後ろで避難する人を逃すため、ひたすら大きな身体を盾にし続けながら、レーザーをボロボロになりながら受け続けるクロードに、ウタが涙を流しながら叫んだ。

 

「もうやめてよ!クロード!!あの怪物は私を狙ってるんでしょ!?私を庇ってこれ以上無理をしたら…、死んじゃうよぉ!!」

 

「ウタ…、そのお願いは聞けねぇ!!お前はおれが守ってやるし、後ろの奴らも誰も死なせねぇ!!」

 

「どうして…、そこまでするの…?」

 

「お前はおれの、"友達"だからだ!!"友達"を助けるのに、理由なんて要らねェだろうが!!ッぐお!?」

 

力強いクロードの宣言に、涙が止まらないウタだったが、クロードはそれによ…と言葉を続ける。

 

「ハァ…ハァ…、頼まれちまったんだよ…ルフィに…、ウタを助けてやってくれって…、約束したんだよ!!」

 

「ルフィが!?なんで!!」

 

「男の約束だ…、おれはお前を守って見せる…、傷ひとつ付けさせねぇ!!」

 

「……」

 

「それに!こんな奴に殺されねぇよ!!おれは!だから大人しく守られとけ!!」

 

「クロード…」

 

クロードの決意を聞き、ウタはその場にぺたんと座り込んだ。

そのとき丁度後ろに庇っていた人の避難が完了したのを確認したクロードは安心したように息を吐くと、そこに城内の人の避難を完了させたシャンクスが声を掛けた。

 

「クロード!無事か!すまん!遅くなった!!」

 

「遅えぞシャンクス…!だが、助かった…!そろそろ限界だった」

 

赤髪海賊団が続々と集まってくると、クロードはウタをベックマンに任せ、攻撃を避け易くする為に変身を解除してシャンクスと作戦を建てる

シャンクスは、人々を避難させているときに、国王ゴードンから怪物の情報を集めていた。その情報をクロードに共有すると、クロードは驚いた声を上げる。

 

「トットムジカか…、つまり、こいつは無敵ってことか!?」

 

「本来ならそうだ…、だが、奴はウタを取り込めていない…、恐らく不完全な状態での顕現になっているはずだ!」

 

「そうか…!確かにウタとあいつの繋がりは切れてる」

 

本来ならウタウタの実の能力者を取り込んで破壊を振り撒くと言う魔王の伝説だが、クロードがウタが取り込まれる前に引き離した為、不完全な状態での顕現になって、本来程の脅威では無くなっているかもしれないーーーー

充分にあり得る話であった。

 

「ッッ!!」

 

「おい!どうした!クロード!!」

 

突然、ふらついたクロードを支えるシャンクスは、クロードの全身がボロボロなことに気づく。

 

「クロード…お前こんなボロボロになってウタを…、ありがとう!!ホンゴウ!!クロードを治療してやれ!クロード…、後はおれ達がやるからゆっくり休んでろ」

 

自分の身を挺してウタを守ってくれたクロードに、感謝の言葉をかけると、シャンクスはトットムジカへ向かっていこうとした。

そこに、クロードから声がかかる。

 

「待て…、随分好き勝手やってくれやがったあの案山子ピエロには、おれも一発入れてやらねぇと気が済まねェ…!」

 

「クロード…、わかった!行くぞ!!」

 

シャンクスはクロードの思いを汲むと、隣に並んでトットムジカへと向かって行く。

そんなシャンクスに、隣からクロードが話しかける。

 

「シャンクス…、おれにはもう覇気がほとんど残ってねぇ…、攻撃出来んのは一回が限界だ…!だから、一撃で決めるぞ…!!」

 

「クロード…、わかった…、おれが合わせる!」

 

「シャンクス…、ゼェ…、覇王色は、纏えるか?」

 

「!いや、まだ纏えねぇ…!」

 

「じゃあ、今から纏って見せろ…!」

 

「今から?無茶だろそりゃ…」

 

「無茶じゃねぇ!何故かわからんが、お前なら出来そうな気がする」

 

「……わかったよ!やりゃいいんだろ!!」

 

「ああ、やれるさ!お前なら…!」

 

突然の無茶振りに困惑するシャンクスだったが、クロードが自分のことを信じていることがわかると、笑みを浮かべて覚悟を決めた。

 

「防御は…、要らねェか…」

 

クロードは盾を捨て、剣を両手に持ち替えた。

 

「"黒炎(シンヴァルツ・フレイム)"」

 

クロードの手に持った片手剣、"シンヴァルツマロウ"が業火を纏うと、クロードはその燃え盛る刀身に更に武装色、覇王色の覇気を纏わせた。

バリバリと黒い稲妻が周辺に漏れ出す、その姿はまるで小さな太陽を従えているかのようだった。

クロードは、シャンクスに目配せをすると、お互いの剣を合わせる

シャンクスの愛刀、"グリフォン"に炎が燃え移ると、2人は前を向いてトットムジカを睨みつけた。

 

「「行くぞ」」

 

2人は駆け出し、跳躍したクロードと直進したシャンクスは、剣を構えて上下から同時に燃え盛る斬撃を放ったーーーー

 

 

「"王火(おうか)"!!!」

 

「"神避(かむさり)"!!!」

 

憧れであった船長、"海賊王"ロジャーが使っていた技を覇王色を纏うことで、シャンクスは初めて成功させた。その横凪の斬撃と、跳躍したクロードが上から放った業火を纏う一閃が、トットムジカを十字に切り裂いた。直後、切り口が発火し、巨大な炎の十字架となってトットムジカを焼き尽くしていった。

 

断末魔を上げて消滅していくトットムジカを見ていたクロードに、シャンクスが近づいて行き、拳を突き出した。それを見たクロードは、無言で拳を合わせるのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

翌日の朝、エレジア城の一室で目を覚ましたクロードは、見慣れ無い天井を見回した。

どうやらあのあと気を失ってしまったクロードは、エレジア城の一室に運び込まれたらしい。

そんなとき、クロードはベッドの側で眠る特徴的な紅白髪の女の子に気がついた。

頭を撫でようと身体を起こそうとしたクロードだったが、直後に激痛が走り、悶絶するような表情を見せると、自分の身体の状態を分析しはじめた。

 

「ダメだ…、身体中の骨がバキバキになってやがる、これじゃ動けねぇな…」

 

「クロード君…、目が覚めたかい?」

 

「ん?」

 

部屋に誰かが訪れたことに気がついたクロードは、そちらに目をやると、そこには国王であるゴードンが立っていた。

 

「おお!ゴードンさん、久しぶりだな!」

 

クロードは、見知った様子でゴードンに声を掛けた。

 

「クロード君!!すまない!!此度の件は全て私の責任だ!」

 

「?」

 

頭を下げるゴードンに、クロードは事情を聞いてみることにした。

トットムジカのことを、ゴードンの口から説明を受けたクロードだったが、その表情に浮かぶのは怒りではなく、安堵であった。

 

「そうか…!怪我人は出たが死者は誰も出なかったか…、よかった」

 

「私を、責めないのかい?」

 

「おれは勝手に来て、勝手に助けただけだ。それに、この国は数少ないまた来たいって思える場所だったから…」

 

「すまない…!!本当にありがとう!!」

 

「それより城の壁、ぶっ壊しちまったけど…」

 

「いいんだ!!そんなこと、国民の命には代えられない!!」

 

「やっぱりあんたはいい王様だよ、そうだ!おれの宝を復興に使うといい」

 

前にこの国を訪れたときも、暖かく受け入れてくれたことをクロードはよく覚えている。国民の為に頭を下げられる、国民の命を守るためなら城の壁を壊したことも不問にしてくれる。そんな王様は、クロードの中では極めて珍しかった。しかし、復興の手伝いを申し出たクロードにゴードンは、

 

「命の恩人にそこまでしてもらう訳にはいかない」

 

と、クロードの支援を辞退するのだった。

そんなとき、部屋の扉が開くと、シャンクス達がぞろぞろと入ってきた。

 

「クロード!!起きたのか!!」

 

「身体の調子はどうだ?」

 

「いきなりぶっ倒れるから心配したぜ、おれァ」

 

「まだ安静にしていろよ」

 

口々にクロードに話しかける赤髪海賊団、ちなみに上からシャンクス、ベックマン、ヤソップ、ホンゴウの台詞である。

 

「おお!来てくれたのか!お前ら!!」

 

ベッドの上から歓迎するクロードに、シャンクスが問いかけようとしたとき、ベッドの側で眠っていたウタが目を覚ました。

 

「クロード、話を聞かせーー」

「クロード!!!目が覚めたの!!?」

 

「ぐあっ!?」

 

ベッドに飛び乗ってきたウタの膝がクロードの鳩尾にヒットすると、クロードはうめき声を上げた。

 

「クロード、ごめんなさい!!私のせいで!」

 

クロードの上に乗ったまま謝罪をするウタの頭を、クロードは優しく撫でた。

 

「どうして謝るんだ、ウタ」

 

「だって私のせいで、私が歌ったから、あんなことに…」

 

「それは違うぞ、ウタ…、悪いのはお前をちゃんと見てなかったシャンクス達だ」

 

「え」

 

突然自分ではなく悪いのはシャンクス達だと言われ、困惑するウタに、クロードは続ける。

 

「子どもの責任は、親の責任だ…。そうだろ?シャンクス」

 

「……ああ!おれ達が目を離したのが原因だ…、ウタ、怖い思いをさせて悪かった」

 

「なんで!そんなわけない!悪いのは私でしょ!?2人とも、もっと私を叱ってよ!」

 

「お前は悪くねぇさ」

 

あんなことをやってしまった自分に対して、叱るどころか優しい声を掛けてくるシャンクスとクロードに、ウタは罪悪感で胸が張り裂けそうになりながら涙をこぼした。

そんなウタを見かねたクロードはこう言った。

 

「ウタ…、おれが聞きたいのは謝罪の言葉じゃねぇし、おれが見たいのはそんな思い詰めた泣き顔じゃねぇ…!そんなことの為におれは戦ったんじゃねぇぞ!」

 

「クロード…でも…」

 

「笑っててくれよ、いつもみたいに…、泣き顔なんて似合わないぜ?」

 

「ぐすっ……ゔん!!ありがとう!!クロード!!」

 

「…やっと少し、笑顔になったな」

 

クロードの言葉を聞き、ウタは泣きながら無理やり笑顔を作った。下手くそでぐしゃぐしゃな顔だったが、それを見てクロードは微笑んだ。

そこに、そういえば…と、シャンクスがクロードに話しかける。

 

「クロード…、そういやお前なんでここに来てたんだ?フーシャ村にいるはずじゃなかったのか?」

 

「ああ、その話か…おれをここに向かわせたのは、ルフィだ」

 

「ルフィが…?」

 

「あいつに頼まれたんだよ…、ウタを助けてやってくれって」

 

突拍子のない夢の話をルフィが言い出し、急いでフーシャ村からエレジアまで来た事を話したクロードに、シャンクス達は驚きの表情を浮かべ、間接的にルフィに助けられたと知ったウタは、少し顔を赤くした。

 

「しかし、ルフィが夢の話を言い出さなかったらと思うと、ぞっとするな…」

 

「ああ、大変なことになってただろう…帰ったら礼を言わねえとな!」

 

クロードとシャンクスは口々に言うと、笑いあったのだったーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

昼過ぎ、エレジアの港を出港して行った赤髪海賊団を見送ったゴードンは、城に戻ったあと、クロードが寝ていたベッドに膨らみを見つけた。ゴードンは、布団を剥がしてそこにある物を見つけると、目を見開いた。

 

「クロード君…君という人は…」

 

そこには、クロードの置き土産、ピカピカ光る白金のたまごが置かれていた。

 

トットムジカの一件で、現れた魔王を赤髪海賊団とクロードが倒したことは、昨日の夜の内に国中に広まっていた。

この一件で赤髪海賊団やウタを責める者はいなかったのは、誰も死人が出なかった事が大きいだろう。

身を挺して国民を守ったクロード達は、既にこの島で英雄視され始めていたが、本人達は何も知らずに昼にこの島を経っていってしまったのだった。

 

余談だが、この白金のたまごが資金に換金される事は無かったという。

しばらくあと、エレジアは国を救った英雄達へ向けて楽曲を作った。その曲名はーーーー"英雄の証"ーーーー、その雄大なメロディは、瞬く間にエレジア復興の象徴として世界に響き渡ったという。

そして、そんなエレジアの街の中心には、復興のシンボルとして、白金のたまごが台座の上に鎮座していたというーーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

レッドフォース号の上ーーーー

 

 

重症を負った為、飛んで帰ることが出来なくなったクロードは、シャンクス達と一緒に船で帰ることになり、船の一室を借りてホンゴウの治療を受けることになった。

ホンゴウ曰く、相当な重症だったようだが、異常な回復速度で怪我が治っているようだ。

だが、あと数日は絶対安静と言うことで、クロードは個室に閉じ込められることとなった。

 

 

深夜、トイレをする為に目を覚ましたシャンクスは、用を足したあと、寝室に戻ろうとした際に、うめき声のような声を聞いてその場に立ち止まった。

 

「クロード?」

 

うなされるような声が聞こえた部屋は、クロードが寝ている部屋だった。

 

「クロード…、入るぞ」

 

シャンクスはクロードに与えられた個室に入ると、ベッドの上でうなされるクロードが目に入った。

クロードの様子は弱々しく、昨日トットムジカと戦っていたときとは別人のようだった。

シャンクスは、なにか寝言を言っているクロードの隣に来ると、クロードが涙を流していることに気がつく。そして、シャンクスはうなされるクロードがうわ言のように話す言葉を聞いた。

 

 

 

「父さん…、母さん…、待ってよ…、()()を置いていかないで…」

 

 

 

 





Q、なんでルフィはウタのピンチが分かったのか?

A、愛の力(ご都合主義とも言う)

原作からの変更点
・エレジア滅亡回避
・ウタがエレジアに置いていかれない

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