シャニP、樋口円香の兄に転生する   作:リィンP

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今回は短いです。何ならおまけが本編かも。


聞こえてるよ、babe(透)

 

 透に新しくオファーされた雑誌撮影の仕事で、翼は彼女を伴って撮影場所まで訪れた。

 

 しかし、透の前に撮影をしているアイドルが中々納得する写真が撮れないようで、撮り終わるまで2人は控室で待ってもらうことになった。 

 

「どうやら最低でも30分はかかりそうだって、スタッフの方が謝ってたよ」

 

「んー」

 

「もし暇なら携帯で動画でも見ていて大丈夫だぞ、透」

 

 翼の提案に従い、透はポケットに入れていたスマホを手にとる。

 

「じゃあ、そうするかー…あれ、電源がつかない」

 

「えっ、まさか故障か…?」

 

「んー…しばらく充電してなかったから、それかも」

 

 特に顔色を変えずにそう言う透に、翼は微妙な表情を浮かべながらも声を掛ける。

 

「そ、そうか…充電器買って来ようか?」

 

「えー、いいよ別に」

 

「そうか?すぐ近くにコンビニがあったからきっと5分で買って来れると思うけど」

 

 翼のありがたい提案に、透は柔らかく笑いながら首を振って答える。

 

「ふふっ、大丈夫。その間、翼を見ているから」

 

「いや、30分も俺を見ていても飽きるぞ、きっと」

 

「飽きない飽きない。それに、広告をとばす必要もないし、一石二鳥」

 

 脈絡のない透の発言に、翼は一瞬何のことか分からず不思議そうな顔をする。

 しかしすぐに、彼女が手に持っているスマホを見てピンと来る。

 

「広告…?あぁ、動画の間に流れるあれか!まぁ俺は動画じゃないから、もちろん広告は出ないけど…どうせなら話をしないか?」

 

「え、いいの?」

 

 透の予期せぬ反応に、翼はその言葉の真意を尋ねる。

 

「いいのって、もちろんいいに決まってる。透はどうしてそんなことを聞くんだ?」

 

「だって最近、ずっと忙しそうに電話してたり、メールしてたりしてるじゃん、翼」

 

 透の鋭い指摘に、思わず翼は言葉に詰まる。

 

「うっ、まぁ忙しそうにしているのは否定はできないけど…」

 

「私が話しかけても、うわの空で返事することも多いし」

 

「そ、そんなことないと思うが…」

 

 反論しようとした翼であったが、目の前にいる透の少し寂しげな表情に気付いて言いかけた言葉を変えることにした。

 

「…そうだな、本当にすまなかった」

 

「えっ?」

 

 頭を下げて謝る翼に、透は虚をつかれた反応を示す。

 

「最近の俺は、透のことを見ているようで見ていなかったようだ。透が怒るのも仕方ないと思う」

 

「…じゃあ、今すぐ携帯の電源切ってって私が言ったら、どうする?」

 

 試すような透の発言。

 それに対して翼は迷うことなく答える。

 

「切るよ。それを透が望むなら」

 

 携帯の電源を切っている間に事務所や営業先から連絡が来る可能性はゼロではない。

 社会人として、今の翼の行動は決して褒められたものではないだろう。

 

 それでも彼は、浅倉透のマネージャーとして、一番に彼女のことを優先すると決めたのだ。

 

「でも、流石にずっとは電源を切れないからな。長時間連絡が取れなくなると椿さんたちに迷惑をかけることなってしまうから、そこは許してほしい」

 

 もっとも、だからといって全ての事を後回しにして透を優先するわけではない。

 透の要望に翼が全て応えることは、彼女自身のためにならないことを彼は分かっているからだ。

 

「……」

 

 翼の言葉を聞いて、透は最近のことを思い返す。

 

(──聞こえてる?私の声。聞こえててよ、翼なら)

 

 透がアイドルになる前。

 他愛ない話でも彼との会話は楽しく盛り上がり、透の心はいつも満たされていた。

 

 しかし彼女がアイドルになって売れていくうちに翼との時間は少なくなった。

 日中話しているとき、高確率で仕事の電話やメールが来てしまい、彼は以前よりも自分の話を真剣に聞いてくれなくなった。

  

 仕事が忙しくなるにつれて近かった翼との距離が開いていっているように透は感じ、最近になってモヤモヤとした感情を抱えていたのだ。

 

(──なんだ、ちゃんと聞こえていたんだ、私の声)

 

 そのことを理解したとき、透は自分の中にあった心のモヤが晴れていくように感じた。

 

「…ふふっ、携帯切らなくていいよ。でもその代わり、私の話に付き合って」

 

「もちろん、ちなみに何か話したいことがあるのか?」

 

「んー、どれくらいあるだろう…」

 

 そう呟いて両手を使って数え始める透に、翼は困った笑みを浮かべる。

 

「そ、そんなにあるのか…うん、でも付き合うよ、時間が許す限り」

 

「ふふ、ありがと。じゃあ、まずはね──」

 

 楽し気な表情で透は話し始める。

 それから30分、撮影スタッフに声を掛けられるまで、翼と透は会話を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ 透と翼の会話

 

「そういえばさ、今度樋口と旅行に行くの?」

 

「え、円香と旅行…?」

 

「あれ、違うの?この前樋口が旅行用のバッグ買ってて、翼との旅行で使うって話していたけど」

 

「あぁ、そういうことか。久しぶりにどこか遊びに行こうって円香と話したんだ。旅行…のつもりはなかったけど、円香はそのつもりだったのか」

 

「ふーん…」

 

「円香も仕事が忙しくなって疲労も増えていると思うし、この機会に自然豊かで疲れがとれるスポットに行くのもいいかもな」

 

「…ねぇ、私も一緒に行っていい?」

 

「えっ、透もか…?」

 

「ダメ?」

 

「駄目というか…円香とは家族旅行のつもりで行くつもりだったから」

 

「えー、家族みたいなもんじゃん、樋口家と浅倉家。ほら、みんなで温泉に入りに行ったし」

 

「確かにそうだったな。小学生になったばかりのときだから十年前か…ははっ、懐かしいな」

 

「じゃあまた家族旅行ということでー」

 

「…そうだな、よしわかった!」

 

「おぉー」

 

「早速両親に話してみるよ。透の家の方は任せてもいいか?」

 

「おぉー?」

 

「分からないことがあったら俺に聞いてくれ。あぁそれとも俺も一緒に透の両親に会って話した方がスムーズかな?」

 

「んー……なるほどー」

 

「行き先はみんなの希望を聞いて決めようか。透と円香のスケジュール調整はどうにかするから安心してくれ」

 

「………まぁ今回はこれでいっか」

 

「透?どうかしたか」

 

「何でもなーい。じゃあ、樋口の説得は任せた」

 

「説得…?とりあえず今日帰ったら円香と両親に話してみるよ」

 

「うし、じゃあこの話は終わり。楽しみにしてるから、家族旅行」

 

 

 

 

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