英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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剣聖へと至る道
プロローグ


ー見事だヤクモ。これにて黒神一刀流の奥伝の儀を終える。

 

 

 我が師。剣仙ユン・カーファイより告げられる。今日は黒神一刀流の最後の試練。即ち奥伝に至れるかの試しの日だ。

 

 

「……実感無いんだけど先生?」

 

 

 と素直に聞き返す。それを聞いた先生は溜め息を吐き、後ろに控えている幼馴染みは笑った。先生は兎も角幼馴染みには軽く睨みを聞かせると、ニコニコ笑いながら言った。

 

 

「実感無くても事実だよヤクモ。おめでとう。これで晴れて剣聖だね」

「あー。そうなるのか。二つ名どうするか」

 

 

 何か良い名がないだろうか?そう思っていると先生は口角を上げる。何かとても嫌な予感がしていると、先生はとんでもないことを言った。

 

 

「お主が剣聖を名乗るのはまだ認めん。もう一つの流派の奥伝に至ってからだ」

「………は?もう一つってまさか…」

「さて。今日は休んで明日から改めて修行開始だ。いつも通りの時間は守るのじゃよ」

「ちょっと先生!?」

 

 

 音を立てずに姿を消す先生。今恐ろしい事を言ったような気がするのは気のせいだろうか?彼の言ったもう一つの流派。それはすなわち≪八葉一刀流≫の事だろう。≪黒神一刀流≫を元に東方の剣術の総大成とも言われている。

 

 

「あのジジイ本気で言ってやがるのか?黒神ですら10年かかったってのに」

「まぁ老師が冗談言う訳も無いしね。でも黒神と八葉は似ている事が多いし、基礎は教わっているから、無茶ぶり(皆伝条件)を言うだけで放置かもね」

「だから癖のある兄弟子が居るんじゃねぇか。先日も≪風の剣聖≫と衝突するし」

 

 

 クロスベルの遊撃士であり八葉の弐の型の奥伝に至った男。仕事で共和国方面に立ち寄った際に出会い、軽く手合わせをしたのだが、これがまぁ厄介で。弐の型を極めるとあそこまで素早く正確な斬撃になるのかと勉強させられた。

 

 

「まぁいいや。ジジイの無茶ぶりは拾われた時からだし、孫同然に育てて貰ったから多少の無茶は聞くとしよう」

「ふふっ。その調子だよ兄弟子」

 

 

 幼馴染にして妹弟子。加えて所属している≪斑鳩≫という猟兵団の姫であるシズナが背中を叩いてくる。仕事と言い私生活と言い。退屈しなくて済むのがとても窮屈だ。先生みたいに大陸各地を旅してみたい。

 

 

「それは無理じゃないかなヤクモ。クロガネとは別で私のサポートをして貰わないと」

「心を読むな!というかお前のサポートは嫌だからな!」

「えー。子供の頃ずっと一緒に居てくれるって言ったじゃないか」

「それはジジイが言った事だろ!『箱入り娘で友達いないから』って理由で!」

 

 

 そのお陰で子供の頃からえらい目に合って訳だ。天真爛漫で天衣無縫。それは今になっても変わらない。14歳になった今でもだ。

 

 

「全く…子供の頃から変わらねぇな。俺もお前も」

「そうだね。ずっと変わらないよ。私と君の関係もね」

「……。帰ろうか。明日も早いし」

 

 

 刀を鞘に納めて屋敷へと歩き出すが、シズナが『折角だから夜空と月を見ながら帰ろうよ』と言ったので遠回りして帰るのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ー次の日朝早くー

 

 

 

「では修業再開といこうかの」

 

 

 朝早いのに絶好調な先生。何時にも増してとてもいい笑顔だ。こういう時は決まってとんでもない事を言い出す。その無茶ぶりに答える俺もどうかと思うのだが。

 

 

「さて。昨日言った通りお主にはもう一つの流派。≪八葉一刀流≫も納めて貰う。基礎は覚えておるな?」

「当然。ボコボコにされたからな」

「宜しい。では奥伝を伝授する条件だが、その前にお主に頼みがあっての」

「た、頼み……」

 

 

 この人の頼みなんて聞きたくもない…が、俺の為になるのは事実。どんな無茶ぶりでも聞こう。だってこの人がいるから今の俺がいるのだから。

 

 

「お主には黒神と八葉を極めた先にある境地に至って欲しい。儂はもう年じゃからの。若いお主に託そうと思う」

「……成程ね。だから10年の修業の間に八葉も叩き込まれたって事か。でも意地悪だな。黒神と八葉を完成させろって言わずにただ極めろって」

「完成させる役はまた別だ。故にお主には、≪八葉一刀流≫に≪黒神一刀流≫を加えた型と奥義を生み出してもらう。それがお主が剣聖を名乗る条件だ」

 

 

 おぅ…中々ぶっ飛んだ事を言ってくれるな。八葉に黒神を加えた型と奥義か。両方の型は似たよった物が多いから加えるのは簡単だろう。問題は呼吸か。特に七の型・無想覇斬及び無の呼吸は難しい。各型で作るか総大成か。どうしたものか。

 

 

「期間は二年。それまでに完成させることだ」

「承知した先生……って二年!?ざけんなジジイ!」

「誰がジジイじゃ!」

 

 

 鞘で頭を殴ってくるジジイ。やり返してやろうと思ったが予想以上に痛い。えぇい、シズナには甘いくせに俺には厳しすぎるだろう。

 

 

「そういう訳だから頑張るのじゃよ。儂は行く所がある。二年後にまた来る故。仕事も大変だろうが励め」

「了解。仕事は程々で頑張るさ。主に情報収集だからな。チヨメと励む」

「うむ。ではまた会おう。シズナの事は頼んだからな」

「……ま。兄貴分として可愛がるさ」

 

 

 そう言うと先生は溜息を吐いてから去って行く。溜息を吐いた理由は分かるが、生憎と俺にその気が無いので、ずっと今のままの生活が続くだろう。

 

 

「さてと…今日も仕事と修業に励みますか」

 

 

 体を大きく伸ばして屋敷へと戻るのだった。

 

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