ギルド爆破事件
列車に揺られること数時間。
俺達3人はエレボニア帝国にある帝都ヘイムダルに到着。
ここから空の便でリベールに向かう予定だったのだが、何故か空港が閉まっていて空の便が出ていなかった。
というわけなので、その理由を知るためにチヨメ達に調べてもらうと、僅か数分で戻ってきて訳を話し始める。
「派手にギルドが爆発。きっと日頃の行いが悪いから」
「こらアヤメ。正確には何者かがギルドを地下から爆発し、遊撃士と情報局の方が協力して調査しているようです」
「成程。関係ないが一応見に行こう。帝国の遊撃士と言えば、≪紫電≫の姉さんがいるしな」
元北の猟兵である彼女の事はよく知っている。
バレスタイン大佐が亡くなった後に猟兵を止めて遊撃士になったは有名な話だ。
いるなら少し話をしたいし、貸しを作るのもいいだろう。
「そうと決まったら行くか」
「え?行くのヤクモ兄?」
「嫌な予感がするけど行くのヤクモ君?」
「大丈夫。行こう」
大丈夫と信じてギルドに向かうと、近づくにつれて焦げ臭い匂いと、軍服を纏った人が増えてくる。
中にはなかなかの使い手も混じっていて、帝国のレベルの高さが伺える。
そういえば、帝国には≪光の剣匠≫と呼ばれる剣士がいるんだったか?
機会があれば一戦交えてみたい所だ。
「さてさて…一体誰がいるのかな」
と、思っている間にギルドの前に到着するが、扉の前にいる2人を見て足を止める。
その2人というのは、兄弟子であるカシウスとアリオスだったからだ。
「ちょっ!?何で―――」
「……!あれは!」
アリオスと目が合った。
これはまずいと直感し、瞬時にチヨメ達に指示を出す。
「やっば!退散するぞ2人共!すぐに散るんだ!」
「え?」
「はいっ!?」
チヨメとアヤメに逃げるように言ってから全力で逃走開始。
人目の付かない道を走り、帝都から街道へと出てある程度進んだところで背後から殺気を感じ取る。
瞬時に右に飛ぶと、目の前に風の斬撃が通り抜けた。
「あぶねぇ!」
思わずヒヤッとしてしまうが、間髪入れずに刀が迫ってくる。
その一撃を後ろに飛びながら回避するが、その先には1人の男―――アリオスが先回りしていた。
「弐の型。裏疾風」
「―――!」
アリオスの十八番である疾風の強化技が遠慮なく放たれる。
その技を、体勢が少し悪いが、右逆手で刀を少しだけ抜いて受け止めつつ、抜刀して弾き飛ばした。
「あっぶないなおっさん!いきなり襲ってくるな!」
「安心しろ。拘束するだけだ」
「その割には殺す気じゃねぇか!」
アリオスが纏っている殺気は本物だ。
以前カルバートでやったとき以上。
見ない間に随分と腕を上げているようだな。
「俺が何をしたっていうんだよアリオスのおっさん?」
「何をしただと?今回のギルドの爆破はお前たちも関わっているのではないのか?」
「何で敵増やすようなことをしないといけないんだよ。つか、俺達は基本的に代理で戦うか警護がメインだっての」
「だがお前は以前。共和国で爆破に近いことをしていただろう?」
「えぇ…あれはアイツらが悪いじゃん……」
アリオスと鉢会った依頼では、あるマフィアを一つ潰してほしいと言われ、やるからには徹底的にやって、なおかつ一般市民には被害が無いようにとの依頼だった。
なぜそこまでしないといけないのか気になったが、そのマフィアは極悪だったのもあったし、後々やばい物があったのを知ったので納得したのだが、爆発する瞬間にアリオスと鉢会ったので、超タイミングが悪かった。
見方によれば、俺が無差別の爆発してると見られてると言っても仕方ないだろう。
「残念だが…あのようなことをしたお前を信じるわけにはいかん。弟弟子を拘束するのは辛いが、私情は挟まん」
「……そうかよ。じゃあ捕まえてみな」
刀を鞘に納めた後に居合の構えを取る。
闘気と殺気を完全に消し、全ての隙を無くす。
「さぁ来いよ。行っておくが、兄弟子だからって加減はしない。死ぬ気で来るんだな」
「……」
じっとアリオスの眼を見る。
彼も俺から視線を外すことなく、合わせ続ける。
それが暫く続くと、アリオスは軽く息を吐いてから刀を収めた。
「何だ?やらないのか?」
「白けた…というより、弟子同士で殺し合いなど、老師の耳に入れるわけにはいかん。何より、お前が一般市民を巻き沿いにすることなど絶対にないからな」
「じゃあ何で斬りかかった?」
「…必要だったからな。あの場に情報局の連中がいる手前、立場上な」
あー…成程ね。
兄弟弟子だからって、加減や容赦しないってところを見せないといけないのか。
やれやれ…A級ともなると大変なんだね。
という事は、近くで見てるって事か。
「なぁおっさん。せっかくだし手伝ってやるよ。立場上難しいが、俺は剣聖として来てるし」
「それは…いや助かる。猟兵視点と、お前の眼は頼りになるからな」
「なら決まりだ。チヨメ達を呼んで戻ろう」
帝都に戻ると、入り口でチヨメ達がカシウスのおっさんと一緒に待っていた。
アヤメは殺気をアリオスに向けるが、チヨメがすぐに宥めたので事なきを得る。
カシウスのおっさんは、分かっていたような顔を浮かべたので、一発殴ってやろうと思ったが、どうせ上手く逃げられるのでやめておこう。
「しかし、ギルドが爆破した程度で、何でカシウスのおっさんが呼ばれる?アリオスや情報局の連中で十分だろ」
「爆破連中の背後にいるのが厄介でな。耳を貸せ」
おっさんに耳を貸すと、周りに聞こえないようにある組織の名前を言った。
その名を聞き、少し前の出来事を思い出すと同時に、一連の流れは見えてしまう。
となると、連中以外に、遊撃士どもに情報をリークした奴が帝国内にいるな。
恐らくは…やめとこう。
あんまし敵を作りたくないし。
(鋼の姉さんと会ったタイミングも、これの伏線だったのか)
「ついたぞ。お前を彼に紹介する?」
「彼?誰だよ」
「会って見ればわかる」
「…?」
誰の事かと思っていると、ギルドの前で、女将校と青髪の中年男性は話しているのが見えた。
女将校の方は兎も角、青髪の中年男性が卓越した使い手だ。
もしや、≪光の剣匠≫か≪雷神≫か?
「ヴィクター卿。外して申し訳ない」
(……ヴィクター。剣匠の方か)
帝国最強の剣士と言われているヴィクター・S・アルゼイド。
ジジイから聞いたことがあるが、こんなに早くお見えになれるとはね。
(しかし…あの闘気はやばいな。戦闘になったら、もっと膨れ上がるのかな?)
「カシウス殿。用は済んだようですな」
「えぇ。アリオスは捕まえてくれましたよ」
「……(捕まえた…ね)」
自分からついてきたのだが、この場はそういうことにしておこう。
その方が兄弟子2人もやりやすいだろう。
ともあれ、一緒に居る女将校も気になるが、まずは剣匠の方だろう。
会話の流れを見て自己紹介ぐらいはするか。
「…で。彼が噂の?」
「はい。俺とカシウス師兄の弟弟子…東方の剣聖です」
「実力、経験共に私達と肩を並べる程かと」
「成程…老師が仰っていた通りか」
「……あのジジイ」
俺の知らないところで何を言っているのだろうか?
カシウスのおっさんやアリオスのおっさんは最近会ってなさそうだし、直近で会ったのは俺か帝国の弟弟子…と光の剣匠。
これは、帝国にも本格的に見て回る必要がありそうだな。
「次会ったらぶちのめしてやるくそジジイ……」
「「「……」」」
「あ……」
つい本音が漏れてしまい、カシウスのおっさん達の視線が俺の方に向く。
後ろにいたチヨメが頭に手を置いて大きなため息を吐き、アヤメはやれやれといった表情を浮かべていた。
いかん、流石に兄弟子達の前で言う言葉ではなかったな。
あとで適当に魔獣を倒して晴らしておこう。
「で…俺はどうするんだカシウスおっさん」
「それなんだが、その前に自己紹介だ」
「そうだな。ヤクモ・ムラサメ。よろしく頼むよ子爵閣下。噂は色々と聞いているから」
「こちらこそよろしくヤクモ。そなたの事は老師から聞いている。遠慮なく接して欲しい。兄弟子たちのようにな」
「それは助かるよ。出来れば対等な関係でいたいのでね」
うん、遠慮しなくていいのは助かる。
きっとジジイから俺の事を詳しく聞いているからだろう。
余計なことまで喋ってないか心配だが。
「で。犯人は特定しているのか?」
「あぁ。ジェスター猟兵団だ。だが、どこに潜伏しているか分からん」
「だったら情報をリークし、3か所ぐらいに分散させて捕らえよう。それぞれおっさんと遊撃士と帝国軍。一網打尽だ。あと、その3か所におっさんが現れるってことも流そう」
「囮作戦か。よし、細かいことはこちらで纏めよう。会議を始めるぞアリオス」
「承知した師兄」
俺が提案した意見がすんなり採用されたようで、兄弟子達は女将校を交えて会議を始めたので、カシウスのおっさんに合図を送ってからその場を離れる。
それから近くの喫茶店に移動して、軽い軽食を頼んでからチヨメ達と談笑していると、会議を終えたカシウスのおっさんとアリオスが姿を現す。
「作戦開始は明後日だ」
「お前はどうするんだヤクモ。カシウス師兄から聞いたが、暫くリベールには行けない」
「分かってるよ。だから帝都で適当に過ごすさ。作戦頑張って」
手を振って応援するが、この2人に通じるわけもなく、カシウスのおっさんはニコニコと良い笑顔で地図を見せ、一つの丸印を指さす。
「ここ。よろしく頼んだからな」
「……はい」
拒否権がない俺は、おっさんの指示に従うしかないのであった。