英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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光の剣匠

 ギルド爆破事件から数日。

 カシウスのおっさんが立案した作戦で、無事にジェスター猟兵団は捕らえられた。

 俺もおっさんに良いように使われてしまったが、リベールに入れるのが確定したので我慢したが、その代わりに、兄弟子達と手合わせをすることになってしまった。

 

 

「……何で兄弟子と子爵閣下と手合わせしないといけないんだよ」

「気持ちは分かるけど押さえてください若。お仕事です」

「ん。リベール行確定と、帝国での行動もしやすくなる」

「けどなぁ……」

 

 

 だからと言って、手札を見せるのは嫌だが、これもまた修練の一つだろう。

 事実として、現在目の間で繰り広げられている≪光の剣匠≫と≪風の剣匠≫の手合わせは、学ぶべきものは多い。

 例えば…アリオスが時折見せる、裏疾風の強化版ともいえる技と、子爵閣下の洸凰剣は素晴らしい技。

 この二つは、煉獄抜刀時の奥義に加えられそうだな。

 

 

「流石風の剣聖。見事な剣技だ」

「いえ。子爵閣下もお見事です。帝国最強は伊達ではありませんね」

 

 

 手合わせが一旦終わり、互いの剣技を称賛する二人。

 その様子をカシウスは満足そうに見ており、つくづく喰えねぇ兄弟子と思ってしまう。

 どこまでかこの男の仕込みなのか。 

 勘ぐってしまうが、無駄な事なのだろうな。

 

 

「さて…俺達もやるか?」

「やだ。素振りしてくる」

 

 

 近くの広い場所に移動し、周りに誰もいないのを確認してから刀を抜き、大木の前に立った。

それから技のイメージをし、頭の中で描いてから心を無にした後に、解き放つ。

 

 

「シッーーー」

 

 

 斬撃を三つ、ほぼ同時に放って重ねる。

 12時、4時、8時の方向から円を描きつつ中心で重なるように。

 しかし、斬撃はそれぞれ数秒タイムラグが生じた上、かなりずれが発生する。

 現に、大木に刻まれた斬撃は、中心から大きく外れ、歪な円になり、斬撃が重なることはなかった。

 

 

「全然ダメだな。威力も精度も使いもないならん。もう少し考え方を変えるか。そうだな……同時より、一呼吸か」

 

 

 再びイメージしてから構えるが、背後からカシウスのおっさんの気配を感じたので刀を納める。

 

 

「新技か?」

「……まぁね。何かあったか?」

「子爵閣下が手合わせを望んでいる。相手をしてやれ」

「……分かったよ。良い機会だしな」

 

 

 さっきの場所に戻り、待っていた光の剣匠の前に立つ。

 間にはカシウスのおっさんが立ち、仲介してくれるようだ。

 

 

「んじゃやりますか。宜しく剣匠の旦那」

「あぁ。よろしく頼む」

 

 

 軽くお辞儀をした後、光の剣匠は一本の宝剣を取り出す。

 その宝剣から放たれる気はかなりのもので、相当な年季を感じる。

 確か…アルゼイド流は、鋼の姉さんが率いる部隊の副長さんが使っていた流派か。

 となると…表の歴史ではかなり長いのか。

 

 

(さて…どうしようか)

 

 

 アルゼイドの剣が分からない以上は安易に手を出すわけにはいかない。

 ましてや相手は帝国最強だ。

 噂の≪雷神≫や≪黄金の羅刹≫なんかとは比べ物にならないだろう。

 

 

「……よし」

 

 

 軽く息を吐いたのち、居合の構えを取りつつ闘気を放つ。

 それを見た光の剣匠もまた、宝剣を片手で軽々と持って構えた。

 あの重そうな宝剣を軽々と片手で持つとは…いや、俺も煉獄を片手で持つから一緒か。

 

 

「準備良いぞ。いつでも始めてくれおっさん」

「承知した。では…始めッ!」

「ッッ!」

 

 

 カシウスのおっさんが腕を降ろすと同時に、ヴィクター卿は一気に間合いを詰めて懐に入ってきた。

 

 

「―――!?(いきなり間合いを詰めてくるか?いくら何でもおかしいが―――!)」

 

 

 正面から来るなら迎え撃つまで。

 残月の構えを取り、タイミングを伺っていると、ヴィクター卿は剣に光を纏って振り下ろしてくる。

 見るからに強烈な一撃を、紙一重で回避しつつ最速のカウンターを放とうとした時、視界の端で、ヴィクター卿の手首の角度が変わったのが見えた。

 

 

(手首の角度が変わった?ということは―――)

 

 

 重心を後ろに置きつつ彼の行動に警戒しながら刀を振るうと、ヴィクター卿は合わせるように剣の柄で防ぎながら薙ぎ払ってくる。

 俺は瞬時に後ろに飛んで回避し、追撃をさせないように斬撃を一つ入れながら距離を取った。

 

 

「っとと。危ない危ない。おっそろしい事してくるな」

「ふっ…残月を防ぐには一番いい方法だし、あの間合いなら力も殆ど出ないだろう?」

「加えて根本だったしな。だとしてもリスク高い。タイミングを間違えたら真っ二つだが…そこは闘気の壁が防いでくれるか。ふむふむ…どうしようかね……」

 

 

 刀を地面に突き刺して一旦考える。

 あの様子だと残月を主にするのは危険そうだし、かといって抜刀術を軸にするもの直ぐに対応されそうだ。

 壱と弐もきつそうだし、明鏡は対奥義技だし、そもそもあの人が光皇剣を簡単に見せるわけもない。

 小技も通じるわけもないし、黒神はあまり使いたくないし。

 ならば…自然と答えは出るか。

 

 

「よし…型に嵌まった戦い方をするのは止めるか。折角兄弟子たちもいるし、彼らとは違う八葉一刀流をお見せしよう」

「ほぅ…それは楽しみだな」

 

 

 口角を吊り上げて、本当に楽しみな雰囲気を出すヴィクター卿。

 そんな顔を見せられるとやる気が出るという物。

 刀を両手で構え、刀先をヴィクター卿に向ける。

 

 

「さて…加減はしない。次はこちらから行かせてもらう」

 

 

 体を軽く捻ってから疾風の動きで一気に間合いを詰め、左わき腹を狙って刀を振る。

 ヴィクター卿は回避することなく闘気で全身を固めた。

 その技はジジイで見慣れているので対応は可能。

 闘気で防げるのは限度があるから、それを上回る闘気を纏えばいい。

 

 

「螺旋撃・重」

 

 

 螺旋撃を上下から放って重ねる。

 回避を取っている相手ならタイミングをずらすが、防御に回っている相手なら一点突破。

 加えて回避できないように螺旋の範囲を広げる。

 

 

「螺旋撃?だがこれはーーー!」

 

 

 見慣れた技と違ったのだろう。

 ヴィクター卿は咄嗟に宝剣を構えて防ぐも、重い金属音が響くと同時に弾き飛ばされる。

 手ごたえは薄いが、今のはかなりのダメージだろう。

 

 

「っぅ…!なんと重い一撃だ。しかし今のはただの螺旋撃ではない」

「その通り。良かったよヴィクター卿。ジジイやおっさん達から八葉の事しか聞いてなくて」

「八葉の事しか?それはいったい……」

「っと。それを教えるつもりは毛頭ない。東に来ない限りは…な」

 

 

 黒神一刀流の事は教えない方がいいだろう。

 相手が知らないことは時に武器になる。

 ま…たとえ知られても対応してみせるのが剣聖だが。

 

 

「そういうわけだからまだまだ行くぞ」

 

 

 再び刀を両手で構えて間合いを詰める。

 今度は型を出さずに純粋な技量で攻めていく。

 ヴィクター卿も技を出さずに技量で対応し、打ち合いに持ち込んできた。

 

 

(へぇ…あえて打ち合いか。ジジイから少し聞いているが、これは何とも言い難い)

 

 

 彼の剣は俺やシズナとは違う。

 故に、あまり感じたことのない感覚で少し鬱陶しく感じてしまう。

 ジジイは心地いいとか言ってたが、俺は嫌な感覚だな。

 言葉にするのが難しい。

 

 

「妙な感覚だな。老師やカシウス殿達とは違う。まるで、人ではない何かと剣を交えている気分だ」

「人じゃないね…俺もいよいよ人外かな?出来ればまだ人で有りたいのだが」

「ふふ…悪い意味ではない。その若さで我々と同じ領域にいるのが恐ろしいと言ったまで」

「…じゃあもう少しだけ恐ろしい所見せますか」

 

 

 宝剣を弾きつつ斬撃を放って後ろに回避。

 それから刀先をヴィクター卿に向けてから闘気を完璧に消す。

 

 

「次で…仕留める。八葉の奥義を受けてみるがいい」

「いいだろう。こちらも全力で迎え撃つ」

 

 

 宝剣を両手で構えて闘気を解放するヴィクター卿。

 彼が放つのは洸凰剣。

 なら俺はーーー明鏡ではなく、もう一つの奥義であの光の剣を受け止めて見せる。

 大きく深呼吸し、心と精神を完全な無にした後、奥義を放つ。

 

 

「奥義・八葉一閃」

 

 

 八葉一刀流の壱から七の型を連続で、呼吸とタイミングを変えながら放つ。

 ヴィクター卿もまた、高速の三つの斬撃で七つの型を防ぎ、最後の一撃を放とうと宝剣を振り上げた。

 

 

「勝負ありだ」

「いや…まだだーーー弐式ッ!」

 

 

 刀を左手で持ち、八撃目の明鏡を放つ。

 そして八撃目と光皇剣が交差、無音の空間が少し流れた後、ヴィクター卿がゆっくりと片膝をつき、俺の左手から刀が落ちる。

 その後に強烈な激痛が左手を襲って、後ろに倒れる。

 

 

「ヤクモーーー!」

「ヤクモ君!」

「ヤクモ兄!」

 

 

 カシウスのおっさんが動くよりも先にチヨメが抱き締めるように受け止め、アヤメが右手を掴んでくれた。

 そのお掛けで地面と激突せずに済んだけど。

 しかし……いつの間にかチヨメも色々と大きくなったものだな、幼馴染みとしてとても嬉しい。

 

 

「ありがとうチヨメ。抱きしめてくれて。珍しく大胆だね」

「大胆……む。構ってくれない主が悪いかと」

 

 

 頬を少し赤く染めつつムスッとした顔を浮かべるチヨメ。

 近頃は仕事やらで忙しかったし、羽を伸ばす機会があまりなかったか。

 よーし、たまには幼馴染同士健全なデートでもしますか。

 

 

「よし。明日は遊ぶかチヨメ。リベール入りまで時間があるし」

「私を誘うぐらいならシズナちゃんを…いえ、これは言わないで置きましょう」

「言っても無駄。でも遊ぶのは賛成」

「そういうこと。なのでチヨメ。刀は回収して廃棄を」

「廃棄…?」

 

 

 不思議そうに首を傾げるチヨメに対し、アヤメは俺の手を放してから刀の元に向かって持ち上げると、パキっと音が鳴って刀が真っ二つに折れた。

 

 

「うわ、真っ二つ」

「妖刀って折れるんですね…」

「そんなわけないだろ。気になってたけど偽物だったか。くそジジイめ」

 

 

 やはり、一度ぶちのめしておいた方がよさそうだ。

 幸いにも刀はもう一本あるからいい物の、なかったら素手で剣帝と戦う羽目になったぞ。

 

 

「刀の件はいいとして、帰るぞ二人共。少し体を休めたい」

「承知しました若。では皆さま、またお会いしましょう」

「ん。またね皆」

「おっさんも約束忘れるなよ」

 

 

 念のためにおっさんに伝えてから、宿へと帰るのであった。

 

 

 

 

 

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