英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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クーデター

 さて、ハーメル村での出会いの次の日。

 俺達はリベールと帝国を繋ぐ門にて待機中である。

 カシウスのおっさんが何やら手続きを行っているが、少し嫌な空気が漂っている。

 こういう時は決まって何かが起こる。

 俺の経験だが。

 

 

 

「…ヤナ空気」

「分かってても言わないのアヤメ」

「でも実際に嫌な空気……おや?」

 

 

 リベール側の小さな扉から軍服をまとった男が姿を現し、全速力でカシウスのおっさんの元に向かう。

 とても慌てている様子でカシウスのおっさんに何かを伝えると、おっさんはとても険しい顔を浮かべた。

 その顔を見ただけで、ヤバイ気配を感じ取った俺はおっさんに声をかける。

 

 

「どこに行ったらいい?」

「……助けてくれるのか?」

 

 

 予想外の言葉を聞いたように面を喰らいつつも、聞き返してくるおっさん。

 その問いに無言でうなずくと、おっさんは頭を下げた後に行った。

 

 

「すまないがグランセル城に向かってリシャールを捕縛して欲しい。恐らくエステルたちが向かっていると思うが心配だ」

「了解。リシャール…か。タイミング的にクーデターか」

「そうだ。すまないが急いでほしい。それと……」

「ん。チヨメ達はおっさんを手伝って欲しい。頼んだ」

 

 

 二人に視線を送ったのち、首都グランセルまでの道のりを確認してから全力疾走で向かう。

 大体二時間ほど走るとグランセルに到着し状況把握を開始。

 すぐに色んな所から戦闘音が聞こえ、煙が上がっているのが見えた。

 恐らく、クーデター軍と正規軍が争っているのだろう。

 

 

「なら、リシャールが居るのは城だな」

 

 

 見つからないようにグランセル城まで向かっていると、刀を持った女性が10人のクーデター軍と戦闘を行っているのが見えた。

 数が多いのか、女性の方がやや劣勢。

 これは助けた方が良さそうだ。

 

 

「そこの君。手は必要かな?」

「っ!はい!助けていただけると―――あれ?ヤクモ君?」

「んんっ!?何で知ってる―――あ」

 

 

 何故女性が俺の事を知っているのか聞こうとしたが、顔を見て直ぐに分かった。

 助けようとした女性はジジイの孫ーーーアネラスだったからだ。

 リベールに行ったら会う機会があるだろうとは思っていたが、こんなに早く会うものなのだろうか。

 八葉の縁って怖い。

 

 

「何で君がこんなに早く来てるの?お爺ちゃんの話だともう少し遅いって手紙にあったけど」

「ジジイからの手紙?その内容が物凄く気になるが、右は任せていいかなアネラス姉さん?」

「任せて。左は宜しく!」

「了解」

 

 

 右側をアネラスに任せ、俺は左側へと向かう。

 煉獄を抜刀しつつ正面から向かうと、クーデター軍は一斉に銃弾を放ってきた。

 それに対して、俺は銃弾を斬り落としながら間合いを詰め、銃弾が尽きた所で軍の連中を飛び越えつつ技の構えを取る。

 

 

「がら空きの背中に失礼。陸の型改・緋影!」

 

 

 陸の型を改良した斬撃で一網打尽。

 その間にアネラスも撃破したようで、仲良く倒れていた。

 ジジイ直伝ではないが、いい腕前で、鍛えたらもっと伸びそうだ。

 

 

「ふぅ…ありがとうございますヤクモ君」

「いえいえ。所で姉さん。カシウス師兄にリシャールを捕まえて来いって言われたけど、城にいるのかな?」

「うん。大佐ならグランセル城にいるよ。エステルちゃんたちがさっき突入したけど、ちょっと心配で。アガットさんやシェラさんがいるけど、大佐の部下にものすごく強い人がいて」

「成程。凄く強いか…。そのアネラス姉さん?おひとつ頼みたいことが」

「いいよ。案内してあげる」

「っと。流石ジジイの孫。では宜しく」

 

 

 彼女の案内されてグランセル城に向かう。

 城の門は開けられているが出入りは確認出来ないので、警戒しながら突入すると、早速煉獄が淡く光って反応する。

 それを感じ取った俺は気を引き締め、隣で見ていたアネラスは不思議そうに見てくる。

 

 

「不思議な大太刀だね。何かに反応したのかな?」

「……色々と思い当たるが、それが何か確認に行こう。反応は地下からだ」

「地下って…あ。あの昇降機。こっちだよ」

 

 

 城の奥の方に進んでいくアネラスの後を付いて行くと、大きな昇降機の前にたどり着く。

 昇降機から僅か妙な力を感じ、煉獄もそれに反応している。

 どうやら当たりのようで、俺達は昇降機に乗り、操作をして地下へと向かう。

 その途中でアネラスは、何かを思い出したように言った。

 

 

「そういえばヤクモ君。どうして私の事を『姉さん』って呼ぶのかな?ちょっと恥ずかしくて」

「その事か。俺はジジイに孫の同然に育てられたけど、血は繋がってないからね。けど姉さんはあの人の血を継いでいる。だから姉さんって呼んでいるのさ」

「成程。でも君の方が年上だから、私の方が『お兄さん』って呼ぶべきだと思うよ」

「それは色々と困るのでやめていただきたい。パートナーに殺される」

 

 

 もしもシズナの耳に入ったらと考えると、何をされるかマジで分からん。

 チヨメやアヤメは仲がいいし、シズナよりも付き合いが長いから何も言わないが仕事で仲良くなったとか、ぽっと出の誰かとそういう話になったら、笑顔で殺しに行くのが目に見えてる。

 まぁ…流石にジジイの孫にはしないと思うが。

 

 

「なんか大変そうだね。あまり詳しい事は知らないけど」

「逆に何を知っているか気になるかな」

「うーん。ヤクモ君が警戒するようなことは知らないかな。東方で年の近い面白い子供拾って孫にしたぐらいしか。嬉しそうな手紙が月に一回届いてた」

「何それ知らないんだけど……」

 

 

 手紙の内容が物凄く気になって聞くと、日に日に成長しているかわいい孫の二人の事しか書いていなかったらしい。 

 ので、アネラスは俺の事もシズナの事も知っている。

 しかし斑鳩の事は知らないらしく、あの人が元頭領とも知らないとか。

 

 

「なので、少し前の手紙でヤクモ君が来るって知ってとても楽しみだったんだよ」

「そっか。だったらもっといい形で会いたかったけど…」

「そうだね。でもしばらく滞在するんでしょ?時間あったら色々とお話ししたいな」

「それは俺も同じ。そのために、このクーデターをさっさと終わらせよう」

 

 

 昇降機が止まる。

 俺達は周りを見ながら昇降機から降りると、1人の老人と、赤髪の青年がアネラスに声をかけて来た。

 

 

「アネラス。お前も来たのか?んでそっちの野郎は…見ねえ顔だし珍しい服装だな」

「ふむ…東方の服装か。もしやカシウスの知り合いか」

「その通りですラッセル博士。この人は私の兄弟子で―――自己紹介いいかな?」

「……いや。それは後回しだ。すまない姉さん。ちょっと急がないと」

 

 

 一言誤ってから全力で奥に向かう。 

 その理由は簡単だ。

 煉獄の反応が強いのと、奥から感じたことのない気配がするからだ。 

 

 

「この神気は…あの時(・・・)一瞬見て、俺の中に入ってきたアイツに近い気配。何があるんだよ」

 

 

 あの氷の大地が頭から離れない。

 あんな地獄を二度も観たくないし、繰り返すわけにはいかないだろう。

 個人として出来ることは少ないが、俺の剣でやれることはやりぬきたい。

 

 

「…そろそろだな。何が―――はい?」

 

 

 広い場所へと到着し、最初に視界に映ったのは大きな機械仕掛けの人形…だろうか。

 その右腕に囚われたアラン・リシャールと、その前で膝を付く、おっさんの娘であるエステルを筆頭に五人の人間。

 状況を見て、あの機械仕掛けの人形と戦闘していたのは分かるが、何故リシャールが捕まっているのか分からない。

 どう見ても仕掛けた側だろうに。

 もしかして、途中で過ちに気付いたからお嬢達をかばったのか?

 

 

「うぐっ…私の事は気にせず、エステル君たちは逃げるんだ」

「だけど大佐!」

「貴方をこのまま死なせるわけには……」

「………(さて…ちょっとキレそうなんだが、まぁいいか)」

 

 

 リシャールの発した言葉を聞いてプチっと切れそうになるが、それは後回しにしよう。

 まずはリシャールを助ける。

 それからあの機械仕掛けの人形を斬る。

 その後にリシャールを殴る。

 よし、これで行こう。

 

 

「誉れ高き剣聖の弟子が諦めるとはな。アンタはカシウス師兄に何を教わったんだ?」

「「「「「!?」」」」」

 

 

 リシャールに言葉を投げると、全員がこちらを向く。

 皆が揃って驚いた顔を浮かべる中、俺は機械仕掛けの人形との間合いを詰め、リシャールを掴んでいる右腕を一撃で叩き切る。

 それからリシャールの腕を掴んで、お嬢達の所に投げ飛ばす。

 

 

「ぐはっ!?」

「た、大佐!?」

「大丈夫ですか!?」

 

 

 大佐に駆け寄るエステル達だが、俺は再び機械仕掛けの人形に向き合う。

 見たことのないタイプだが、人型である以上は有効な攻撃はある。

 先ほどのリシャールを助ける為に斬り落とした右腕も、人間でいう関節への攻撃だった。

 効果は絶大で、現に機械仕掛けの人形の右腕はもう使えない。

 

 

「戦車に比べたらやりやすい。故に―――速攻で決めよう。奥義・八葉一閃!」

 

 

 奥義を放ち、機械仕掛けの人形の四肢を斬り落とし、導力部らしき場所だけを上手く残す。

 木端微塵も考えたが、何も残さないのは良くないと判断した。

 得体のしれないものだし、この地にはラッセル博士もいる。

 何かしら分かるだろう。

 

 

「しかし…やっぱり妙だな。煉獄が何かを訴えて―――」

 

 

 

―七つの至宝。空を司る物なり。しかとその目で見極める物だ。わが片割れよ。

 

 

 

「ッぅ……」

 

 

 頭痛と共に声が響く。

 声が聞こえてくるのは随分久しいか。

 子供の頃にシズナを助けるときに煉獄の力を使った以来。

 やっぱりまだ俺の中にアイツはいるのか。

 

 

(適した体に変貌しているとはいえ、アイツの意識はきちんと残っている。剣の後ろに居たあの魔神の意識が。もしかすると、適した体になったのは勝手にそう感じているだけで、本当はマクバーンのように混ざっているのだろうか)

 

 

 火焔魔人の姿を思い出す。

 アレは、正真正銘の化け物だ。

 俺の絶対零度と対を成すもの。

 いつかは全開で向かい合う日が来るのだろうか。

 

 

「っと。そんなことを考えている暇は無いな。さて……」

 

 

 煉獄を納刀してからリシャールの元へと向かい、奴の襟を掴もうをすると、それを制止するようにカシウスのおっさんが現れる。

 なんというかこのおっさん、毎度いいタイミングで現れているような気がするのは気のせいだろうか。

 ともあれ、リシャールの件はおっさんに任せ、俺は気付かれないようにこの場から立ち去って、昇降機の元まで戻ると、ムスッとした顔を浮かべたアヤメが待っていた。

 

 

「扱いがひどかったか?」

「守りがなかなか硬かった。ちょっと舐めてたかも」

「ま、そうそう軍の砦に潜入はしないからな。その辺りはまた訓練しよう。チヨメは?」

「ん。お姉ちゃんは外で待ってる。早く行こうよ」

「だな」

 

 

 色々と気になることは多いが、あとの事はカシウスのおっさんに任せてこの場を去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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