英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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剣帝の魔剣と剣聖の力

 本気の剣帝との戦いは、とても楽しい物だ。

 久しぶりに本気を出したこともあるが何より―――全く油断できないこの状況が楽しい。

 八葉一刀流を基軸にしつつ、合間で黒神一刀流を加える。

 それにレオンハルトは付いて来て対応してくる。

 無論俺も、彼の放つ剣を対応していくが、彼の剣を受けるたび、彼の抱えているモノがとても強く伝わってきた。

 

 これは相当根深そうな問題だ。

 ハーメルの件が、彼を大きく変えたのは事実。

 だけど…そこから何故結社に入ることになり、この地で事を起こしたのかが分からない。

 こればかりは直接聞きたいが…そんな余裕は全くない。

 現に、強烈な斬擊が迫ってきている。

 

「飛燕斬」

「緋空斬」

 

 

 彼の剣から放たれた斬撃を相殺。

 その後に間合いを詰めて来たレオンハルト。

 俺も間合いを詰めて壮絶な斬り合いに移ると、レオンハルトは笑みを浮かべた。

 

 

「まさかここまでやるとはな。他の剣聖も貴様と同等の強さを誇るのか?」

「さぁね?他の兄弟子とは過程が違うから比べられん。ジジイに教わった期間も違うだろうからな」

 

 

 俺やシズナがちょっと特殊なのは事実。

 シズナに関しては物心が着いた時からジジイに教わっていたし、俺はジジイが里のいるときは時間が許す限り鍛えられていたし。

 

 

 

(それはいいとして、あまり時間をかけていられない。王国軍が来るまでに決着を付けないと。よし)

「っつ!」

 

 

 螺旋撃で強引に距離を取り、長刀を鞘に納めて居合の構えを取ってすぐ、一歩でレオンハルトの間合いに入る。

 

 

(速度が上がった。だがその構えは螺旋撃。対応は出来る)

「…!(抜ける―――)」

 

 

 レオンハルトの対応を見て、俺の打つべき手が見えた。

 読み通りに行けば確実に仕留めることが出来る。 

 

 

「流石に螺旋撃は二度は効かん!」

(掛かった!)

 

 

 螺旋撃と読んでの攻撃が来る。

 俺はその攻撃を、当たる瞬間に残月で右に回避し、さらに一歩踏み込む。

 

 

(残月による回避か、だが―――)

 

 

 その回避にもレオンハルトは付いて来て、魔剣を横に薙ぎ払い、それを地面を滑るように回避。

 がら空きに脇に向けて技を放つ。

 

 

「肆の太刀・明鏡ッ!」

 

 

 神速の抜刀は、確実にレオンハルトの脇に直撃した……が、手応えが薄かった。

 だがこの手応えに覚えがある。

 そう…先代≪銀≫の分け身を斬った時と同じだった。

 

 

「チッ!どの時に―――!!」

 

 

 どのタイミングで分け身と切り替わったか考えたかったが直ぐに思考を切り替える。 

 何故なら、俺の周りにはレオンハルト七人いて、それぞれが魔剣に炎を灯していたからだ。

 

 

「東方の使い手でも、この手には引っ掛かるとはな。悪いが…勝たせてもらおう」

「まだだ。八葉が奥義―――!」

 

 

 七人のレオンハルトに狙いを定め、それぞれに壱から七の型を一呼吸で放って撃退。

 その後に出来る僅かな隙をレオンハルトが逃すわけがなく、大技で仕留めに来た。

 

 

「鬼炎斬ッ!」

「伍の太刀・鏡月ッ!」

 

 

 不完全な体勢から伍の太刀を放ち、鬼炎斬を受け止めた後、切り返しながら受け流す。

 それからすぐに距離を取って備えるが、レオンハルトは向かってこず、無言で魔剣を見ていた。

 

 

「どうした?何かあったか?」

「…いや、妙な感覚だと思ってな。技が衝突した際、ケルンバイターが何かに反応した(・・・・・・・)。マクバーンと戦った時の様に。今のは一体……」

「それは…きっと俺の中にいる彼女の―――いや、あまり言わない方がいいか(というか、あの魔剣が彼女に反応してるってことはそういうことか)」

「訳有か。まぁいい、続けるか?互いにかなり消耗しているが…俺はまだいける」

「……いや。ここまでだ。そろそろ軍の連中も来るし、お客も来ているし、古竜の視線も痛い。加えて時間も足らない」

 

 

 長刀を鞘に納める。

 決着付けるまで続けたいが、それより先に王国軍と、エステル嬢達が来てしまう。

 余計な茶々を入れられる事を考えたら、この辺りでいいだろう。

 彼の事は大体分かったし。

 

 

「決着は次の機会にしよう。それと、今の実験が一段落したら共和国の大使館に来て欲しい。君とは色々とお話したいし」

「そういえば言っていたな。いいだろう。古竜の件が終わってからだ。俺としても、鋼が興味を示した貴方とは話をしてみたい」

「よし決まりだ。大使館には話を通しておく。こう見えて共和国のお偉いさんと繋がりあるからね。俺の名前を出した大丈夫。というわけなので俺は退散。レオンハルトも適当な所で退散しなよ。あ、俺の事はこの後に来る赤毛のおっさんとかには言わないで。ややこしい事になりそうだから」

「あぁ。上手く誤魔化しておく」

「ありがと。それじゃまた」

 

 

 また会うことを約束してから、俺は音を立てる事無くこの場から立ち去るのであった。

 因みにこの後直ぐ、アガットがレオンハルトにボコボコにやられるのは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 剣帝レオンハルトと剣を交えてから数刻。

 日が沈み人気が無くなった頃、俺はグランセルのホテルへと戻ったが、戻って直ぐにチヨメからのお説教が開始。

 誰にも告げずに行ったことが彼女の怒りに触れてしまったようだ。

 除け者にしたシズナが頬を膨らますぐらい…いや、それ以上に御怒りだった。

 

 

「何で勝手に行ったのですか?鋼の聖女殿の依頼は我々へ出された物。せめて一言言ってください」

「でも、チヨメ達に危険な目は…」

「はい?」

「……ごめんなさい」

 

 

 ニコニコと笑っている(心は笑っていない)チヨメの圧に負けてしまう。

 ここは素直に謝るのが一番だ。

 許してもらえるかは置いておき。

 

 

「まぁ…シズナちゃんみに隙あらば里から逃げたり仕事をサボったりしないからいいけど」

「むしろそっちの方が大問題。カエデも大変だね」

「同じぐらいヤクモ君も大変だから!他人事じゃない。大仕事の時は絶対怪我するんだから」

「相手が手練れだし…いたたたたた!」

 

 

 チヨメが容赦なく俺の左手首を掴む。 

 強烈な痛みが全身を駆け巡った。

 実はこの左手首、彼の鬼炎斬を不完全な鏡月で防いだので痛めてしまっている。

 折れたりひびは入っていないが物凄く痛い。

 

 

「よく見れば浅い切り傷も多いし。では手短に済ませましょうか。ささっ!」

 

 

 救急箱を取り出したチヨメは、俺が負った傷を手慣れた様子で治療する。

 特に左手首は念入にだ。

 

 

「これでいいでしょう。所で、これからどうしますか?依頼の一つは完了しましたが」

「古竜の件が終わればレオンハルトと飲む予定だし、暫くは動かない。派手に動くと使徒に目を付けられそうだし」

「そういえば姿が見えませんね。これほどの事を成すのであれば出てきても…あ。そういえばヤクモ君。あの人から手紙来てまたよ」

 

 

 

 懐から一通の手紙を取り出して渡してくる。

 受け取ったのちに宛名を確認。

 その名前を見て、少し驚くも、緑ネギが居た事を思い出して納得する。

 封を切って内容を確認してからチヨメに返却。

 彼女の中身を読むと、顔が引き締まり、仕事の顔になった。

 

 

「いかがしましょうか若。場所を特定し直ぐにでも」

「それはいいだろう。表舞台に出てきてから。それにしても面倒な事を頼んでくる。ま…外法狩りが来ている時点で察するが。まさか昔バルクホルンの爺さんから聞いた奴が第三使徒でリベールに来てるとはね。となると、今後の動きは決まるな」

 

 

 暫くは活動停止。 

 傷も癒したいし、当分は休養に専念しよう。

 そうと決まれば、エルモ村の宿を取らないとね。

 せっかくリベールに来たんだし。

 

 

「いったん休憩だチヨメ。エルモ村の温泉に行こう。アヤメにも連絡を」

「分かりました。ではまた後程」

 

 

 チヨメは一礼して退出する。

 それを見送ってから、俺は軽く息を吐いて椅子に座ると、いつの間にか現れていた煉獄が淡く光り、小さな影が現れる。

 影は部屋の中を回った後、机に座ってこちらを見て来た。

 

 

『お疲れ様ねヤクモ。いい勝負だったじゃない。時間があれば、煉獄も抜いたのかしら?』

「……狙ったかのように出てこないでくれ。そして質問に関してだが、おそらく妖刀が起きて煉獄の出番はないぞ」

『それは残念。所で…何で私と目を合わせないわけ?私の可愛い顔見えてるでしょ?』

「見えねぇよ。靄みたいのがかかっててな」

『え?あー…名前言ってないから認識できないのかぁ…よし。いつまでも隠すわけにはいかないし、話せる範囲で話す約束だし』

 

 

 彼女は立ち上がって、俺の周りを一周回ったのち、机にゆっくりと降りる。

 そして、影から淡い光と冷気が溢れ出て、形を作っていく。

 

 

「煉獄改め、私の名前は”サフィーラ”。氷雪を司る女王。この世界では異界の王って呼ばれるのかな?」

 

 

 名前を告げると同時に、光と冷気が小さな可愛い妖精の形になる。

 翅は無いけど。

 

 

「……」

「何?」

「あ、いや、もっとすごいかと思っていたから」

 

 

 初めて会った時は、周囲を圧倒する力と気に満ち溢れていたけど、この姿からは想像出来ない。

 その辺りも含めて色々と聞いてみようか。

 

 

「あのねぇ…今の私は力が無いの。全部君に上げたんだから。ま、魂は残してるけど。自分の眼で見届けたいし、知りたいし」

「ふーん、どうせ話さないんだろ?で、どこまで教えてくれる?」

「勿論話せる範囲。ささ、どうぞどうぞ。勿論、扉の向こうで盗み聞きしているチヨメもね」

「え?」

 

 

 驚きながら扉に視線を向けると、ゆっくりと扉が開いてチヨメが入ってくる。 

 とても申し訳なさそうな顔を浮かべるが、俺は『丁度いいから付き合って』と伝え、彼女は何度もうなずいてから隣に座り、煉獄…ではなく、サフィーラとお話を始めるのであった。

 

 

 

 

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