英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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ゼムリアに来た理由

 さて、煉獄の本当の名前を聞き、その上で話せる範囲で色々と教えてくれることになり、早速質問することに。

 

 

「何の為にゼムリアに来たんだ?君の世界とゼムリアは相性とか良くないんだろ?塩の杭の事もあるし。マクバーンとかも」

「うーん、塩の杭は偶然か、何かの拍子に来たのかな?マクバーンは知らない。あんな怪物私の世界にはいなかったから。多分私とは違う世界。あと、あんな怪物と戦わないでよね!剣技では圧倒出来るけど、魔神化したら絶対に勝てないから!」

「お、おぅ……」

 

 

 かなり強めの口調で忠告される。

 うん、俺としてもあんな怪物と戦うのは嫌だ。

 余程の事が無い限りは、適当に済ませたいと思う。

 

 

「で。私がこの世界に来たのは至って簡単。世界が滅びたから(・・・・・・・・)。とういか、滅びる未来が見えてしまったから。その前に飛んで来たってわけ」

「世界が…」

「滅ぶか(となるとマクバーンも……)」

 

 

 彼のいた世界も滅びゼムリアに来たということになる。 

 しかし、あの完璧な混ざり様はおかしい。

 俺とサフィーラとは違って完全に融合している。

 その辺りの経緯は話をしてみないと分からないな。

 

 

「だから念入に準備をしてきた。まぁ…運もよかったけどね。今度こそ(・・・・)は上手くやらないと。やっと君と会えたわけだし」

「会えたって…そういえば俺の事もやけに詳しいよな。事前にわかってて俺の所に来たわけだし」

「それは…ごめん。あと数年待って。うん、色々と面倒だし。その代わりに良い事教えてあげる。君が名付けたあの刀、煉獄は君が私の力を最大限発揮できるように、私の世界で私が長い時をかけて用意した刀。だから馴染むでしょ?」

「それはそうだが…(知りたいことの一つは今は教えられないと。女神の枷か?)」

 

 

 そこまで女神関係に詳しいわけでは無いが、色々と悪さをしているのは知っている。

 たとえば、ゼムリア大陸が唯一の世界で、他に世界なんてあるわけないと思わせたり(この件に関してはバルクホルン先生に聞いた)。

 説明できない事象を女神がどうこうと思わせるのもその一つだろう。

 となれば、サフィーラが教えられないことは女神ぐるみなのだろうか?

 

 

「あの…サフィーラ様。話の流れからして、貴女はご自身の世界が滅びることを知り、それを受け入れられないからこの世界に来て、依り代に若…ヤクモ君を選んだと」

「半分正解、半分間違い。私は自分の世界の滅びを受け入れた。その上で、何故滅んだのか(・・・・・・・)を知りたい。それを実行した存在を。まぁ…何となく(・・・・)察してるけど。それとヤクモは依り代ではなく片割れ。仮にヤクモが死んでも私の魂があれば生き返る。逆に私の魂が壊れてもヤクモが居れば大丈夫。基本的に寿命以外では絶対に死なない」

「さらっとえげつねぇ事聞いたぞ。チヨメ、今の話は流して」

「はい。聞かなかったことにします」

 

 

 ちょっと俺の頭が付いて行かないので今の話は聞かなかったことに。

 しかし、チヨメの再確認はいい内容だった。

 彼女自身も自分の世界が滅んだ理由を知らなくて、その理由を知りたくてゼムリア大陸に来た。

 加えて、色々と思い当たることもあるけど、いまいち確信に至っていない様子。 

 なら…それを知るのも旅の一つに加えよう。

 今は頼りになる友…家族だし。

 

 

「手始めに空の至宝ね。結社の計画の結末でこの先どうなるか変わる。剣帝には生きていてもらわないと。後々の戦力的にも」

「……そこは俺も賛成だが、利用するのはどうかと思うぞ」

「しないってば。あの子はもっと自由に生きてもらわないと。それに、君の意に反することはしない。それで失敗してるから」

(失敗って…一度同じことをしているような言い方ですが…)

(そこは気にしないでおこう)

 

 

 そこを考えると、また女神の仕業という思考になりかねない。

 だからこそもっと詳しく、深い部分をサフィーラに聞きたいが、最初に話せる範囲を言われてしまった以上、あまり期待できない。

 

 

「話せないところはこれから少しずつ話してくれるのか?」

「えぇ。会わないといけない人とかいるし。時が来たら少しずつ話すわ」

「分かった。じゃあ話はここまでだ。今後の事を考えたい」

「分かったわ。魔力に余裕がったら出てくるわ。あとやばい時と」

「助かる。さて…チヨメ。ちょっと付き合って」

「承知しました若。では夕食も兼ねて」

 

 

 サフィーラが俺の中に戻りチヨメは退出、それから俺は私服に着替えて外出の準備。

 特に財布の中身を確認しておかないと、チヨメは結構食べるからな。

 

 

「よし、予算的にも問題ない。アヤメの修行代で持っていかれて辛いが大丈夫…だろう」

 

 

 そこはチヨメの食べる量次第だが、もう少しミラを持ってきたら良かった。

 旅行なんて初めてだし、基本自給自足で支出は任務で美味しもの食べる程度だし。

 あぁ…いまだにお小遣い制度で、稼いだお金を自由に使えないのは辛い。

 

 

「帰ったら親父に相談だな。成人にもなってお小遣い制度はまずい」

 

 

 一戦交える覚悟で相談しないとな。

 話を聞いて欲しければ一本取って見せろとか言われかねん。

 あぁいうところはジジイ似なんだから。

 

 

「ヤクモ君?そろそろいい?」

「っと。すまん。直ぐに出る」

 

 

 長刀を担いで部屋を出ると、忍び装束から私服に着替えたチヨメの姿が。

 黒を基調とした西方風和装を身に纏っている。

 

 

「いつの間に新調したのやら?」

「アヤメも新調してましたよ?あちらは動きやすい西方の服装だけど、私はやっぱり和装の方があってます。で、どう?少しだけ西方の趣向を入れてみました」

「ん。いい感じ。露出もそこまで多くないし。うん、意外とスカートとも合うんだな」

「色々と調べたのと、先日見かけたすみれ色の髪の少女の服装とかも参考に」

「……」

 

 

 すみれ色の髪の少女ね……ふむふむ。

 あの外道さんは随分と慎重なようだ。

 執行者が五人…いや、まだ見てない奴もいる。

 バルクホルンの爺さんから聞いた話だと、リベールに来てそうだし、一度奴らの本拠地に潜入するか。

 

 

「……じー」

「何も企んでいませんよ?」

「目を逸らさないで。その辺りもきちんと話しましょう。ささこっち。いいお店見つけていますので」

 

 

 チヨメに手を引っ張られて向かったのは、レストラン…ではなく、西方ではあまり見ないバーだった。

 そういえばグランセルには共和国の大使館があるし、その辺りが一枚かんでいるのだろうか?

 ともあれ、席に座って、それぞれ好みのお酒を頼んでから軽く談笑をし、それから今後の事を話すことに。

 

 

「さて、お仕事もお一つ終わったので、これからの事を考えないと」

「そうだな。おっさんの監視も止まるし、下手な事をすれば手配されそうだが…そんな余裕はないだろうな」

 

 

 結社連中の本拠地の捜索や、空賊の追跡。

 そして今は古竜の対処と、やることが多いので、俺達の監視等に割く時間は無い。

 その分動きやすくなるのだが、おっさんの観の眼を侮るわけにはいかない。

 

 

「…よし。チヨメはアヤメと一緒にエステル達と行動を。俺は連中の本拠地を探して潜入して、奴の首を取ってくる」

「本拠地って…見当は付いているのですか?」

「あぁ、地図を確認しつつ、連中が現れた場所と、人の出入りの多い場所などを調べたりして大体は絞ってあるのと、時折妙な奴が空を飛んでいてね。どっちかを狙おうと思う」

「成程…こちらでも調べておきます。ヤクモ君ばかりに任せると、何をしでかすか分かりませんから」

「信用ねぇな俺……」

 

 

 今更文句を言ったところで勝ち目は全くないので、言わないでおく。

 過去の事とか引っ張り出されて絞られたくないし。

 

 

「無茶をしたらこってり搾り取りますので。その時は御覚悟を。シズナちゃんにも許可はもらっていますから」

「あの野郎何を頼んで…とういうか、シズナはいいのかよ。そんなことを言って」

「私と貴方の付き合いの長さと、昔の話を知っているから」

「アレは…ったく。懐かしい話だな」

 

 

 お酒を飲みながら子供の頃を思い出す。

 あの人たちだどこまで本気だったのか知らないが、少なくとも俺達は本気だったと思う。

 それだけ仲が良かったし。

 

 

「でも律儀ですよねヤクモ君も。”あの時”の約束を守っているから」

「―――まぁな。ガキの時とは言え、男は一度言った約束は守る物だ」

「……へぇ」

「あの…チヨメさん?どうして物申したいような眼をしていらっしゃるのでしょうか…?」

 

 

 少し怯えながら質問をすると『別に。分かっていると思っているので答えません』と、そっぽを向きながら答えてお酒を飲む。

 えぇ勿論、分かっているのでこれ以上は聞きませんとも。

 しかし…さりげなく念を押されてしまったな。

 あまり無茶をしないでおこう。

 

 

「…あの。ちょっとペースが早くないかな?空っぽだけど」

「―――あ」

(あ。じゃないと思うけど……)

 

 

 ボトルと10本ほど頼んでいたのだが、すでに空っぽになっている。

 ある程度ペースを考えて飲んでいたはずなんだが…いかん、飲み過ぎると明日に影響が出かねん。

 

 

「じゃあお開きだな。暫く別行動だが、いつも通りな」

「はい。港に紛れているときと同様に。あと、部屋に戻ったらもう少しだけお付き合いを。少し構って欲しいので」

「了解。お菓子もあるし、もう少しだけな」

 

 

 会計を済ませて部屋に戻り、明日に影響が出ない程度に昔話に花を咲かせるのであった。

 

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