英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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真紅の飛空艇

ーチヨメsideー

 

 

 

 若と剣帝との一騎打ちから数日、私はアヤメと合流してエルモ村にある温泉に訪れていた…のですが、この場所で予想外のメンバーと遭遇してしまう。

 そう、古竜の一件を解決した遊撃士達だ。

 彼女達も、慰安旅行でこの場所に訪れていたらしい。

 会って早々軽く揉めそうになるけど、そこはジン殿が上手い事纏めてくれたので何も起きず、一安心。 

 それからは、彼らの試合を遠くから眺めつつ、そろそろ来るであろう若からの連絡を待っていた。

 

 

「手紙が来なくなって一週間。そろそろ連絡がありそうだけど……」

 

 

 空を見上げる。

 若の言った『何かが飛んでいる』という言葉の意味は分からないが、あの言葉を聞いてから、時間がある時に注視してみると、確かに何かが通り過ぎたような感じはあった。

 

 

「飛空艇ならレーダーに反応するし…待って。そういえば聖女殿は妙な術で移動したような…。それに結社の技術は、既存の技術を遥かに上回ってるらしいですし。船体を見えなくする事は動作もないのかな?」

「何考えてるのお姉ちゃん?」

「…色々と。そっちは終わった?」

「ん。全員から一本取った。あと連絡来たよ」

「…!そうみたい」

 

 

 連絡用の鷲がアヤメの腕に泊まる。

 その足には一通の手紙が巻かれており、内容を確認する。

 内容は完結に『潜入完了』と書かれていた。

 

 

「ヤクモ君は無事に潜入したみたい」

「そっか。ならもう一つの仕事の開始?」

「だね。上手く行くといいけど……」

「ま、大丈夫でしょ。それよりお姉ちゃん。一戦宜しく」

「…良いよ。買ったら欲しい物買ってあげる」

「言ったね。絶対負けないから」

 

 

 若の事は一旦忘れ、妹の修業の成果を確かめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

ーヤクモsideー

 

 

「さてさて…潜入したはいいが、破戒僧はどこにいるやら?」

 

 

 現在、俺は遥か上空を飛んでいる巨大飛空艇の発着場にいる。

 結社の本拠地は何処かとリベールを駆け回っていると、ヴァレリア湖のある場所で怪しい場所を発見。

 潜入してみると、見覚えある男を見つけ後を付けたら、赤い巨大な飛空艇の場所にたどり着き、気付かれないように潜入したが、直後に飛び立ってしまった。

 そんなわけで、逃げ方を探しつつ破戒僧を探している状況だ。

 

 

「それにしても大きすぎるだろこの船。リベールの最新型の二倍から三倍ぐらいか?小型の搭載しているし、一種の戦略兵器の類だろ」

 

 

 飛空艇の大きさを観の眼で図りつつ、内部の構造を把握。

 それと同時進行で人が乗っていない小型の飛空艇に忍び込んで操縦の仕方を確認する。

 この手の乗り物の操り方は分からないが、幸いにもマニュアルが置いてあったので一通り目を通していると、人の気配を感じ取り隠形で姿を隠して状況を確認すると、発着場の後方が開いて、一隻の飛空艇が入ってきた。

 

 

(こんな夜遅くに?)

 

 

 疑問に思いつつ気配を探ると、四つの気配を感じとる。

 その内の二つは知っている気配、しかもその内の一つは先日やり合った剣帝の気配だった。

 

 

(あと一つは…エステルか)

 

 

 何で捕まったのか物凄く気になるが、暫く様子を見ることに。

 目の前を赤い猟兵達が入ってきた飛空艇まで走っていき、綺麗に整列すると同時に飛空艇の扉が開く。

 それから少し経って、すみれ色の髪の少女を先頭に、エステルを抱きかかえたレオンハルトが姿を現す。

 そして…その後に現れた一人の男。

 この男は法国のある人からの依頼のターゲットであり、ケビン・グラハムの粛清の対象でもある人物だ。

 

 

(ゲオルグ・ワイスマン。アルテリア法国生んだ破戒僧であり結社の使徒。そして…10年前に帝国正規軍の貴族派にハーメルの名を言った人か。さて…首を取る前に、どうにかしてエステルを助けないとな)

 

 

 ワイスマンの首を取る前に、エステルを助ける方法を探さないと。

 剣帝達がこの場を去ったのち、人が殆ど出入りしない導力区に移動。

 夜が明けるのを待ちながら瞑想を行う。

 その途中でサフィーラがやたらと喋りかけてきたが全部無視だ。

 

 そして夜が明け、エステル救出作戦とワイスマンへの挨拶をしようとした時、導力区で物騒な物を設置している一人の青年を発見。

 そう…現在家出中のヨシュアだ。

 声を掛けようか考えていると、丁度設置を終えたヨシュアがこちらを向き、自然と目が合った。

 

 

「……え?」

「……ちょっとお話しいい?」

 

 

 驚い表情を浮かべるヨシュアに聞くと、彼は周りを警戒してから近づいてくる。

 それからこちらの状況を伝えると、彼もどうしてここに居たか教えてくれた。

 どうやら俺の事もある程度は調べていたらしく(主に剣聖としての事だが)彼の義父の弟弟子ということもあり、多少は信頼してくれて良かった。

 

 

「という状況だ。君はこの船を落とす。俺は教授の首を取る。だがその前に…」

「エステルの救出ですね。全くどうして…」

「…まぁ色々あるんだろう。とりあえず俺が囮で動くから、旨い事をエステルと助けて欲しい。爆破のタイミングは…そうだな。甲板で合流してからにしよう。君の事だから脱出の用意は出来ているんだろう?」

「えぇ。飛空艇を一隻。それより、囮になるということは、執行者全員と戦う可能性がある。大丈夫ですか?」

「あぁ。ヴァルターの事は熟知しているし、ブルブランの事は相棒から聞いてる。他の二人も問題ないだろう。レオンハルトは…ま、そこは切り札で大丈夫だ。上手く調整したら飛空艇も凍らないし。こっちは心配しなくていい」

「分かりました。無理だけはしないでください(それより凍るって…劫炎じゃあるまいし)」

「じゃあ作戦開始だ」

 

 

 ヨシュアと別れて作戦開始。

 上手く釣れるように細工をしていると、運のいい事が起きる。

 途中で一隻の飛空艇が飛び去り、剣帝と教授をを除いた執行者がどこかに行ってしまった。

 ということは、この船はほぼ丸裸の様な物。

 結社の猟兵部隊は敵ではないし、教授に関しては先手で凍らせたら済む。

 問題はレオンハルトだな。

 

 

「素手でどこまでやれるか…最悪は彼女の力を……っと!!」

 

 

 イメトレをしていると大きな影に覆われ、瞬時にしゃがむと、丁度首のあたりに黄金の剣が通り過ぎた。

 瞬時に反転して後方にあった配管まで移動してから元居た場所に視線を向けると、臨戦態勢のレオンハルトの姿があった。

 前回戦った時より仕上がっているのを見ると、準備運動を済ませてから来やがったなこの男。

 

 

「まさかお前も来ているとはな。ヨシュアは囮か」

「いや。囮は俺だ。エステルと助けるために。教授の首は後回しにする。さて…前回の続きといくか。飲む前にもう一戦やっておきたかった。君の本音を引き出しておきたいからな」

「本音だと?そんなものをお前に語る必要はない」

「そうか。それもそうか。その辺りは君の…アンタの弟の役目だからな。俺が口を出すのは間違っているしな。アンタ自身が気付かない限りは何も言わない。俺の天眼には全部お見通しだし」

「天眼…?(勧の眼ではないのか?)」

「さて行くぞ。素手でちょっと不利だが、剣聖たる者、覆して見せるさ」

 

 

 白銀色の闘気を纏い、弐の型の踏み込みと速さを生かして間合いを一気に詰める。

 そこから放つは破甲拳だが、ただの破甲拳ではなく、アレンジを加えているから破壊力が凄まじい。

 その破甲拳をレオンハルトは正面から受け止めるが、凄まじい音と共に派手に吹っ飛んでしまう。

 しかし、彼は直ぐに体勢を立て直して一瞬で間合いを詰めてから、強烈な剣戟を連続で放ってきた。

 

 

「流石の一撃だな。八葉に無手の型があると聞いたことがあった。泰斗流とに違いを体感したく受けてみたが、予想以上だ」

「それは嬉しいが、流石に平然としすぎじゃないか?結構な威力だけど?というか、少しは顔変えろ」

「ふっ…俺の心はとっくに冷めているからな」

「悲しくて寂しい男だ。まるで昔の俺みたいだな。お節介なパートナーを突き飛ばして他者を拒絶していたあの頃の」

「何がいいたい?」

「……」

 

 

 その問いには答えない。

 答えってのは与えるものではなく、自分で導いて見つけて手繰り寄せる物。

 たとえどのような過程であってもだ。

 レオンハルトが抱えているであろうことも、彼自身が気付いて見つけるしかないのだ。

 

 

「自分で見つけろレオンハルト。似た者同士だからこそ教えない。どのような地獄(・・)を見たかは大体予想出来るが」

「―――!」

 

 

 動きを止めるレオンハルト。

 地獄という言葉に反応した様子で、彼は冷たい瞳を向けてくる。

 その瞳も、昔の俺にそっくりだ。

 シズナの瞳越しに見たのをよく覚えている。

 

 

「地獄…貴様も見たのか?」

「見た、より起こしただな。もう15年も前の事だが。気になるなら行ってみるか?氷漬けになって何もないけど」

「氷漬け…だと?」

「そうだ。どこぞの劫炎とは逆の属性…いい機会だし見せよう。使う機会が来そうだからな」

 

 

 心を落ち着かせ、サフィーラと心を重ねて一つにすると、全身から冷気が溢れ出て周囲の空気を凍らせていく。

 それを見ていたレオンハルトは、危険と感じたのか、誰かと重ねたのか分からないが、魔剣に炎を纏って襲ってきた。

 その一撃を、俺は煉獄を顕現して受け止めると同時に、強烈な冷気と白銀色の闘気を纏って、彼女の力の一部を解放する。

 

 

 

「……マクバーン?」

「……ふっ!」

 

 

 俺の姿を見て、聞きたくない名を呼ぶレオンハルト。

 その時に僅かに動揺して隙をさらす。

 それを逃すことなく、魔剣を弾いて陸の型で追撃を放つ。

 

 

「チッ!」

 

 

 防御に回るレオンハルトだが、空中ということもあり、完全に防ぐことは叶わず、船体に背中を強打する。

 並みの使い手なら今ので終わりだが、レオンハルトはむしろ力強い瞳を向けてくる。

 そんな彼の前に立って煉獄を向けると、全身を覆っていた冷気が四散して、力が強制解除された。

 

 

『ちょっと?約束は守ってもらわないと困るわ。修行以外では人間相手に使わないって。慣らし運転ならいつでも出来るでしょうが』

「悪かったな」

 

 

 説教をしてくるサフィーラに謝りながら煉獄を肩に乗せると、レオンハルトはゆっくりと立ちあがり、魔剣を構えつつ口を開く。

 

 

「何故魔人化を解いた?」

「相棒が人間に使うなと、言われてな。残念だがレオンハルトに使う機会は無さそうだ。それより、さっきの俺はマクバーンに似ていたか?顔は女顔に変わるし、身長も縮むし」

「いや…俺の知っている奴とは違う。奴はもっと禍々しく、全身に紋様の様な物が浮かび上がっていた」

「成程な。融合と共存の差か。一度見てみないと分からないか」

 

 

 どこまで違いと差があるか、実際に見て戦って見ないと分からないだろう。

 その時の備えはきちんと考える必要がある。

 サフィーラの力抜きでも奴を簡単に抑えられるぐらいには鍛えて置かないとな。 

 

 

「さて、あまりおしゃべりとするわけにはいかない。そろそろ合流と行こうか」

「行かせるとでも?」

 

 

 魔剣を構えるレオンハルトに対し、俺は煉獄を地面に差して冷気を放出。

 その冷気でレオンハルトの動きを鈍くした上に、気配を紛れさせて認識を紛らわしてこの場を去り、勧の眼を使用して甲板に向けて移動する。

 

 

「ふぅ―何とか逃走成功かな。あとはこの昇降機で甲板にいどうするだけかな」

 

 

 レオンハルトが負ってくる気配はない。

 あの冷気に触れ続ければ体の動きが鈍くなってくる。

 無理して動けば激痛が走るし、暫くは動けないだろう。

 

 

「さてと、この後はヨシュア君と合流して、エステルと救出してだけど……」

『…その前に下。来るわ』

「いやいや―――!?」

 

 

 ズドンと凄まじい衝撃と共に、強烈な殺気を感じ取る。

 直ぐに飛び上がると、昇降機が真っ二つに斬られ、その間からレオンハルトが飛び出してきた。

 

 

「そう簡単に逃がすか」

「―――はっ!そうこないとな!」

 

 

 煉獄を抜刀して再び魔人化。

 レオンハルトは怯むことなく、魔剣を振るってきた。

 その一撃を受け止めると、凄まじい衝撃が発生して吹き飛ばされる。

 

 

「これは―――」

「外の理の力が衝突した結果か」

「どうやら色々と逃げるわけにはいかなさそうだな。なら尚の事この場所で戦うのは危険だ」

 

 

 後ろに振り返り、出口を一刀両断して外に出ると、一面青い空が視界に映る。

 予想通り甲板に出ることが出来たので、ゆっくりと甲板に降り立つ。

 

 

「このまま船が凍り付くまでやるか?」

「そうなる前に終わらせる」

 

 

 凄まじい闘気を纏うレオンハルト。

 俺も負けえずと白銀色の闘気を纏った時だった。

 彼の背後にあった船の内部に繋がる通路からエステルが飛び出してきたのは。

 

 

「おりゃぁぁぁぁ!」

「っ!」

 

 

 勢いよく棒をレオンハルトに向けて振り下ろすが、彼は簡単に避けてからこちらに向けて蹴り飛ばして来たので、優しく受け止める。

 

 

「大丈夫お嬢?」

「大丈夫―――って誰?」

「……あとで説明する。とにかくこの場を乗り切って…ってこっちもか」

 

 

 背後から赤い猟兵達は出てくる。

 数は24人…俺だけなら問題ないがエステルを守りながらだとちょっと厳しいな。

 

 

(さて…どうしようかね?ちょっと楽しくなってきたぞ)

 

 

 窮地なのにも関わらず、ちょっとだけ楽しくなってくるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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