英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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空から地上へ

「さてさて、この場をどう乗り切る?お嬢さん」

「全員ぶっ飛ばすわ」

「…おぅ」

 

 

 強気な返事が飛んでくるが、窮地であることは変わらない。

 前にはレオンハルト、周囲には結社の猟兵部隊。

 かなり厳しい状況である。

 

 

「ふっ…いくら剣聖がいるとはいえ、随分と強気だな」

「剣聖…?何よそれ。そんな人いないじゃない。この女性も今初めて会ったし」

「……(気づかないものだな…っと。その前にどうにか斬り抜けないとな)」

 

 

 周囲を見て突破できそうな場所を探すが、練度が高く抜けれそうにない。

 やはりレオンハルトが正面に陣取っているのが大きいだろう。 

 逆を言えば、奴さえどうにか出来たら突破出来るということでもある。

 

 

「お嬢さん。ここは俺…ではなく私に任せて行きなさい」

「置いて行くなんて出来ないわ。大丈夫よ。お嬢さんは私が守るから」

「あぁ…そう…(魔人化を解いてもいいのだが……)」

 

 

 色んな意味で非常に困っていると、1人の赤い猟兵が一歩前に出る。

 その人物を警戒すると、その人物はヘルメットを外し、二本の剣で赤い猟兵を全て無力化してしまった。

 

 

「なっ―――ってヨシュア!?」

「助かったヨシュア君」

 

 

 ヘルメットを外した人物の正体は、別口で潜入していたヨシュアだった。

 彼は俺達の前に立つと、一つの端末を取り出してスイッチを押す。

 すると、飛空艇の動力部分から爆発し、船体が大きく揺れる。

 

 

「爆弾か。どうやら執行者としての勘は戻ったようだな」

「まぁね。それより放って置いていいのレーヴェ?レンがいない以上レーヴェが爆弾を解除しないといけない」

「な、なんですってぇ~」

「……(あぁ…だから全部違う爆弾か)」

 

 

 仕掛けていた爆弾が気になっていたが、彼の話を聞いて納得する。

 話を聞いたレオンハルトは無言で赤い猟兵を引き連れてこの場を去っていき、俺達もこの飛空艇から離脱するために移動を開始する。

 

 

「所でお嬢さんはどうしてこの船に?」

「……そのお嬢さんはやめて欲しい。側は少女だが中身は男―――ヤクモ・ムラサメだ。異能でこの姿になってる」

「ヤクモって…えぇぇぇ!?」

「(成程。この人はこういう顕れ方をするのか)ちょっと驚き過ぎだよエステル」

 

 

 目に見えた反応をするエステルに対して、ヨシュアは大して驚いている様子はない。

 様子から考えるに、恐らく奴の魔人化を見たことがあるのだろう。

 聞いてみたいが、今は脱出が優先だ。

 

 

「もう少しで発着場に付く。そこで―――」

「待ったヨシュア君。追撃だ」

「後ろから何か来る?」

 

 

 足を止めて振り返ると、中型の機械人形が浮遊してくる。

 更に進行方向からもやって来て挟まれた。

 ヨシュアと目を合わせて各個撃破で行こうとすると、子供の声と同時に一人の少年が姿を現す。

 

 

「やぁヨシュア。久しぶりだね」

「カンパネルラ…君か」

「誰なのあの子?空中に浮いてるけど!?」

「ヨシュアと同じ執行者さ剣聖の娘。そして……」

「……」

 

 

 カンパネルラは俺を見る、こちらも奴の姿を視界に入れるがどうも気に喰わない。

 少年の様な見た目だが、中身は何かが違うような感覚だ。 

 何よりサフィーラが物凄くイライラしていて、今直ぐに斬り伏せろと言ってくる。

 落ち着けと促すものの、中々収まりそうにない。

 

 

「そうイライラしないでくれるかな?あまり彼に負担を掛けない方がいい」

「……やれやれ、その様子だと俺の中身知っているってことだな。よし斬るか」

 

 

 煉獄に冷気を纏って殺気をカンパネルラに向けるが、奴はただ笑って転移術で去っていく。

 転移術を見たことが無いエステルは驚きを隠せないが、ヨシュアがフォローを入れ、その後に機械人形を撃破してから逃走を開始。

 格納庫まで移動し、用意していた飛空艇で脱出する。

 

 

「ふぅ…何とか脱出出来た。追っては…」

「追ってはこない。脱出の際に飛空艇の動力部分を凍結させておいた」

「成程。それなら安心ですね」

「そうだな。それと俺はここまでだ。どうやら迎えが来ているみたいでね。またいつか。エステルによろしく伝えておいてくれ」

 

 

 ヨシュアに別れを告げて甲板に移動。

 風の流れと気配を感じながら、完璧なタイミングで飛び降りる。

 暫く降下を続けると、滅多に見かけない特殊な飛空艇が高速で接近してきた。

 

 

「メルカバ―――いいタイミングだ青ネギ神父」

 

 

 守護騎士専用の飛空艇メルカバ。

 迎えというのはこの事で、近くで珍しい気配がしていたのと、チヨメ達の事だから接触しているだろうと読んでいた。

 居場所に関しては彼女らの武具にサフィーラの神気を込めているので、おおよその位置は特定出来る。

 

 

「着地っと。後は適当な場所で降ろしてもらうか」

 

 

 メルカバ甲板に着地し、出迎えてくれたケビンと情報交換。

 その際に魔人の姿に驚かれつつも、力自体は解除してあったので周りへの被害は皆無だった。

 ともあれ、情報交換をしてから適当な場所で降ろしてもらうと、既に空は暗くなっていた。

 

 

「もう夜か…チヨメ達と合流したいが…」

 

 

 物陰に視線を移すと、そこからカシウスのおっさんが現れる。

 棒を持っている所を見ると、俺を捕縛しに来たか。

 まぁ妥当な所だろう。

 既に例の約束期間は終わっているし、彼から見たら危険人物だから。

 

 

「さて…素直に拘束されてくれると助かるのだが?」

「簡単に捕まるかよおっさん」

 

 

 煉獄を顕現させて構える。

 カシウスのおっさんも無言で棒を構えて、両者の間に緊迫した空気が流れ始めた。

 

 

「始める前に1つ聞こう。その姿はなんだヤクモ?」

「教えることは出来ないな。アンタには関係ない事」

「そうか…ふっ―――」

 

 

 カシウスは強烈な踏み込みと同時に棒を振り下ろしてくる。

 俺は瞬時に右に飛んで回避するが、彼の棒は地面ギリギリで止まり、そのまま横に薙ぎ払ってきた。

 

 

「読まれてるか。ならば―――」

 

 

 その横薙ぎの一撃を残月で回避し、それと同時にカシウスの首を狙って神速の突きを放つ。

 

 

「むっ―――突き技か。しかし」

 

 

 カシウスは棒を片手持ちに変えて上体を逸らして突きを回避し、大きく後ろに下がると同時に姿と気配が消えた。

 直ぐに気配を探ると、下から影のようなものが現れて後ろに飛ぶと、目の前を凄まじい一撃が通り抜ける。

 

 

「っ―――(危ない。当たったら顎粉砕だな。しかし……)」

 

 

 今の技は弐の型の応用、そこに棒の特徴を加えた技だろう。

 理に至った者は武器を選ばない、カシウスのおっさんの棒術が何よりの証拠だ。

 

 

「まだまだ行くぞ!」

 

 

 怒涛の連撃が的確に急所を狙ってくる。

 無論当たるわけにはいかないので、残月で回避に専念しつつ防ぎ、互いに中々決定打が無い状態が続く。

 

 

「流石は先生の最高傑作。免許皆伝に至った肆の型と伍の型以外も同等だな。だが―――」

「…!(また大振り?おっさんが同じ手を二度も…狙いは後ろか、なら……)」

 

 

 背後にある一本の木。

 このまま防げば余波で飛ばされて背後の気に直撃。

 しかしおっさんの事だから先まで読んでいるはず、だがそれは俺も同じだ。

 

 

「伍の型・残月」

 

 

 カシウスの縦の大振りを残月で右に回避するが、カシウスの棒が追従するように跳ね上がる。

 無論、それは読んでいる行動で、その一撃を防ぎながら彼の棒に沿うように煉獄を滑らせて薙ぎ払う。

 

 

「ぐっ―――」

 

 

 しかしカシウスはギリギリのところで回避して距離を取って体勢を立て直そうとするが、そこを逃すわけにはいかない。 

 おっさんがどこまで読んでいたから分からんが、俺の狙いはここで本命はその次だ。

 

 

「零の型・双影」

(この技は老師の―――)

 

 

 零の型に肆の太刀を加えた独自の技を放つが、その一撃はカシウスに防がれて届くことは無かった。

 だが…防がれるのは織り込み済み、次が本命の一撃だ。

 

 

「もう一撃―――八葉一閃!」

「ならばこちらも。鳳凰――――っっぅ!?(体が―――動かん!)」

 

 

 カシウスの体が石の様に固まって動かない。

 その理由はさっきの零の型にある。

 彼の事だからジジイの使う技を見ると、最優先で警戒(・・・・・・)するだろうと思っていた。

 故に、さっきの一撃に鏡月の技を加えさせて貰った。

 少しの間体は動かないし、両手は暫く使い物にならない。

 

 

「勝負あり…だな」

 

 

 技の一撃目をカシウスの目前で止める。

 カシウスは、暫く俺の眼を見つめてから棒をしまった。

 それを確認してから俺も煉獄を戻したのち、完全に魔人化を解く。

 

 

「ふぅ…疲れた。それじゃあ俺は帰る。仕事も残ってるし、それまでは王都で大人しくしてるから。信用してくれると助かる」

「その仕事の内容次第だな。結局のところ一度も話していない」

「兄弟子でもそれは言えない。少なくともリベールに損害は出さない。それだけは約束する」

「……分かった。ただし全てが終わったら話せ」

「了解。じゃあまた」

 

 

 髪を束ねてからチヨメ達の所へと移動するのであった。

 

 

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