英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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空中都市リベル=アーク

 赤い飛空艇での出来事の後、リベールにある四輪の塔に執行者が現れひと騒ぎ起こした後、リベール上空に大きな物体―――かつて存在した空中都市リベル=アークが現れ、同時に導力が停止する事態が発生しする。

 ということは、結社の狙いは、あの場所にある≪輝く環≫だろう。

 暫く大人しくしていた俺もやっと動くことが出来る。

 

 まずはエステル達の準備が出来るまでアルセイユ内で隠密全開で隠れ、動き出したのを確認してから甲板まで移動。

 周囲を警戒していると、一体の黒い何かが近づいてきた。

 

 

「ん…?あれは……城の地下で見た…トロイメライ?乗ってるのは……レオンハルトか。一体何を…っておいおいおい。こっちに近づいて―――」

 

 

 黒い何かは一直線にこちらに向かってくる。

 狙いはアルセイユの動力部分…今そんなところ狙われたら堪った物じゃない。

 

 

「サフィーラ!」

『仕方ないわね!足場は大気を凍らせて何とかしなさい!』

「助かる!」

 

 

 瞬時に魔人化し、迫ってくる黒い何かに狙いを定め、奴が動力部を狙って右腕を振り下ろした瞬間に飛び出す。

 

 

「豪氷撃ッ!」

 

 

 氷を纏った参の型で右腕を弾き返して、そのまま黒い何かの左腕に着地し、頭に乗っていたレオンハルトと向き合う。

 

 

「正気か貴様……。鋼ではあるまいし」

「あー…あの人やりそう」

 

 あの人ならやりかねないと思いながら愛刀を構えていると、アルセイユは全速力でリベル=アークへと向かっていく。

 これでひとまずは帰りの足に問題はない。

 加えて別方向からも空賊の飛空艇も飛んで行ったので、一安心だ。

 さて…問題はここからだな。

 

 

「ちょっとだけ付き合ってもらおうかな?俺もあの空中都市に用があって…あぁお前に話していいか。実は……」

 

 

 声に出さずに唇を動かしてレオンハルトに伝えると、彼は一瞬驚いた顔を浮かべつつも、直ぐに真顔に戻る。

 奴の事だから思い当たることが沢山あるんだろうな。

 というか思い当たることしかないのだろう。

 

 

「ふっ…奴にとって良い激薬になる…か。いいだろう。リベル=アークまで送ってやる。だが―――」

「っ―――」

 

 

 一瞬で間合いを詰めてながら魔剣を振るう奴。

 魔剣を正面から受け止めるが、視界の端で分け身が映り、そちらは鞘を突き出して対処するが、それと同時に足場が揺れる。

 

 

「機械人形と連動しているのか。面倒な」

「おかげで僅かに隙が出来たがな」

「ちっ!」

 

 

 機械人形の腕が振る上げられ、体が空中に浮く。

 大気を凍らせて足場を作ろうとするが、レオンハルトが俺の足を片手で掴む。

 

 

「何をする!?」

「言っただろう。リベル=アークまで送ると。だが…少々過激だが」

 

 

 レオンハルトが笑みを浮かべると、機械人形がリベル=アークまで超加速して向かっていき、ある程度近づくと加速した速度を利用してリベル=アーク向けて投げ飛ばす。

 

 

「過激にも程があると思うけど!?」

 

 

 瞬時に体勢を立て直してリベル=アークの外壁を一刀両断して内部に飛び込む。 

 それから外を見ると、アルセイユを追う黒い機械人形の姿があった。

 

 

「やってくれたな。こちらも追いかけよう。教授の場所を聞かないといけない。道は…こっちか」

 

 

 勧の眼で道を特定して進もうとした時、壁に今の自分の姿が映る。

 青銀色の髪に少女のような顔。

 小柄な体はチヨメより小さい。

 魔人化すると必ずこの姿になり、力を使い続けると姿が戻らなくなる時がある。

 俺が彼女に近づいている証だろう。

 

 

『急ぐわよ。もたもたしている時間は無いから』

「分かってる。魔人化を解くぞ」

 

 

 魔人化を解いてから教授の元へと走る。

 途中で何度も機械人形の妨害があったがすべて斬り伏せていく。

 そして、外への道を見つけたのでそこから外に出て、気配を頼りに上に進む。

 

 

「大分上がって来たけど…っとあれは…」

 

 

 前方に人影を発見。

 その場にいたのはエステル、シェラザート、オリビエ、クローディア姫の四人。

 加えて彼女達の先には、レオンハルトとヨシュアが熱い抱擁を交わしている。

 ということは…うん、答えが見つかったのか。

 

 

(良かったなレオンハルト。答えを得たならきっと―――っ!?)

 

 

 安心したのもつかの間。

 レオンハルトの背後に一人の人物が転移してくる。

 その人物は邪悪な笑みを浮かべながら、持っていた杖を振り上げ、電流のような物を放出する。

 

 

「それはやらせない!」

 

 

 地面を強く蹴り、レオンハルトの間に割って入って電流を斬り伏せる。

 

 

「何ッ!?」

「え?え?」

「あ、アンタは……」

「何故ここに……」

「……」

 

 

 居ないはずの人間がいきなり現れたので驚きを隠せない一向。

 だが、そんなことはどうでもよく、今は目の前で起きたことを見て欲しい。

 

 

「成程…余計な虫がいるのは知っていたが…まさか君だったとは」

「……俺の事を知ってるんだなゲオルグ・ワイスマン」

 

 

 ゲオルグ・ワイスマン。

 結社の第三使徒であり、七曜協会が生んだ最悪の外道である。

 こいつの事は良く知ってるさ、バルクホルン先生に聞いていたからな。

 

 

「無論知っている。君の事は結社もマークしていたからね。東方最強の剣士にして、侍衆≪斑鳩≫の筆頭侍。少し前に破戒が言っていたよ。随分痛い目を合わされたとね」

「ハーヴッドか…出来れば関わりたくない男だな。レティはいい女だから付き合いやすいが。と、そんなことはいい。無事かレオンハルト?」

「あぁ…感謝する」

 

 

 彼は笑みを浮かべながらお礼を言い、ヨシュアから離れると魔剣をワイスマンに向ける。

 どうやら不意打ちされたことがかなり頭に来てる様子だ。

 

 

「どういうつもりだ教授?」

「それはこちらのセリフだよレーヴェ。打ち解けるのは構わないが、彼らに手を貸すのは頂けないな」

「……だから容赦なくか」

「おや?君も容赦ないと思うがね?共和国の裏世界でどれだけの人をその刀で斬って来たのかな?」

「……依頼があれば斬る。猟兵だから当たり前だし、個人的にはロックスミスのおっさんの考えは理解できる。それと…アンタみたいな自分の手を決して汚さないクズには言われたくないな。さっさと首を出してもらおう」

 

 

 妖刀をワイスマンに向けるが彼の顔は変わらない。

 まだ策があるのかと警戒していると、ヨシュアがいきなり片膝を付いて苦しみ始める。

 それを見たエステル達が直ぐに駆け寄るが、ヨシュアは何も言わずに立ち上がり、ワイスマンの隣に移動して、光が全くない冷たい瞳を向けて来た。

 

 

「何…してるのヨシュア?」

「……」

「そんな冷たい目をしないでよッ!」

「……」

 

 

 エステルの言葉に答えず、ただ冷たい瞳を向けるヨシュア。

 これは…自我が一切ない。

 完全な操り人形だ。

 

 

「無駄だよエステル・ブライト。ヨシュアに埋め込んだ疑似聖痕は、彼の心の奥深くまで根を下ろしていてね。少し刺激を与えるだけでこの通り。さて…時間も押しているし、私はヨシュアと一緒に根源区画で待っているよ」

「あっ!」

「待って!」

 

 

 エステルとクローディア姫が飛び出すが、ワイスマンはヨシュアと共に転移術で移動する。

 彼の言葉が本当なら、転移術で根源区画に移動したのだろう。

 

 

「確か根源区画って言ってたわね。一体どこにあるのよ!」

「根源区画ならこの先の昇降機から向かえる。急ぐぞ!」

 

 

 この先にある昇降機に向かおうとしたが、上空から二体の大型の機械人形が現れ、門番のように立ち塞がる。

 それだけならいいが、機械人形の形状がこの上なく面倒だった。

 なぜなら…レオンハルトが使用していた機械人形と同じだったから。

 

 

「ドラギオン…俺の機体以外のも用意していたか…」

「ど、どうするのよ!これだといけないわ!」

「今からアルセイユに連絡しても時間がかかりますし……」

「こうなったら腹を括るしかないかな?」

「……(仕方ないか……)」

 

 

 サフィーラの力に頼るのはあまり気が進まないが、ここは俺が本気を出してこの場を引き受けるべきだろう。

 レオンハルトも、エステルもなすべきことがある。

 俺もワイスマンの首を取りにいかないといけないが、このドラギオンとやらを速攻で仕留めれば直ぐに追いつける。

 

 

「エステル・ブライト。ここは俺が―――」

「いや。ここは俺に任せて行くんだレオンハルト」

 

 

 彼の肩を叩いてから彼らの前に立ち、青銀色の冷気と共に煉獄を顕現させる。

 

 

「行くんだレオンハルト。君は俺とは違って全てを失ったわけではない。ヨシュアがいる。ハーメルだって再興の余地がある。まだ…幾らでもやり直せる」

「ヤクモ・ムラサメ…お前は……」

 

 

 俺の声色から、レオンハルトは何かを感じ取ったようで、彼は俺の背中をずっと見ている。

 そういえば、俺は彼のことをそれなりに知っているが、彼はあまり知らなかったな。

 

 

「俺は全て失ってしまった。家族も、友人も、故郷も全て。やり直すことすらできない。だから…だから君の様な人を放っておけないし、俺と同じような経験をして苦しんでいる人を一人でも多く救って生き続ける。それが…贖罪になると信じて」

「罪を…お前は犯したのか?そんな男には見えないが」

「……だろうな。バルクホルン先生にも言われたが、俺は大罪人だろう。不可抗力とはいえ、己が故郷を自らの手で氷漬けにして、故郷の皆の命を奪ったのだから」

「……」

 

 

 信じられないような顔を浮かべるレオンハルト。

 二度立ち合いをして、先ほどのように命を救った男がそのようなことをするはずもない。

 彼はそう思っているのだろう。

 だが事実だ、サフィーラがこの世界に現れ、幼かった俺は逃げてしまった。

 あの時逃げなければ、手を伸ばして受け入れていれば、故郷の皆は無事だっただろう。

 

 

「…といってもガキの頃の話だ。今はきちんと受け止めて、前向いて生きている。お節介なパートナーのお陰で壊れていた心は治ったし、親友も傍にいてくれるからね。だからレオンハルト。ここは俺に任せてエステル達と行くんだ。俺のように全てを失うな」

「……分かった。行くぞエステル。ここは彼に任せる」

「任せるって…幾ら何でも!」

「余計な心配だ。今はヨシュアを救ってワイスマンと倒すことだけを考えろ。このまま足止めを喰らって、取り返しのつかない事になってもいいのか?」

「それは……分かったわ。行きましょう皆」

 

 

 エステルを先頭に、ドラギオンの合間を通って昇降機に向かう皆。

 最後にレオンハルトが『いらぬ心配だろうが武運を祈る。死ぬなよ』と言い残して行き、昇降機で根源区画へと向かっていった。

 

 

「……さてと。本気―――出しますか。」

 

 

 煉獄に淡い青銀色の冷気を、全身に白銀の闘気を纏ってから魔人化する。

 もう一段階(・・・・・)上げたい所だが、姿が戻れなくなる可能性があるので控えておく。

 まぁ戻れなくなっても左程問題ではない。

 変わるのは側と顔を身長だけで体は男だし、シズナやチヨメは両刀だし。

 

 

『サクッと仕留めるわよヤクモ。サポートは任せて』

「了解だサフィーラ。黒葉の剣聖、参る」

 

 

 姿を顕現させたサフィーラと共に、ドラギオンへと立ち向かうのであった。

 

 

 

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