英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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至宝の力

 トロイメロイ・ドラギオン。

 空中都市リベル=アークにあったものを結社が回収し、十三工房の手によって魔改造された機械人形。

 その力は強大だが、弱点は以前斬ったトロイメロイと同じだったのでサクッと終わる…かと思いきや、小型から中型の機械人形が大量に現れ、非常に面倒な状態になっていた。

 

 

「強さは大したことないが、数が厄介だな…。秘技・裏疾風」

 

 

 兄弟子の十八番とも言える技で小型の機械人形を一網打尽にしつつ、冷気を周囲に放って中型を氷像アートに。

 それからドラギオンの方を向くと、さっそく一体が襲って来たので残月で回避の後に、四肢を一呼吸で切り落として戦闘不能にする。

 もう一体は足元を凍らせて転倒させてから解体する。

 

 

「自己再生機能はないからこれで大丈夫だろう。あぁ…中型は一応破壊しておくか」

 

 

 念の為に中型も破壊し、増援が来ないことを確認してから根源区画に移動を開始する。

 まずはレオンハルト達が使った昇降機に向かうが、上昇しておらず下降したままの状態だった。

 とりあえず飛び降りて、地面が見えてきたところで剣風を巻き起こして着地。

 周囲を見渡してルートを模索していると、サフィーラが目的の方向に指をさす。

 

 

『こっちよ。案内するわ』

「助かる」

 

 

 サフィーラの後を付いて行くと、道中で大量の機械人形に襲われるが、ばっさばっさと斬り伏せて止まることなく進んでいく。

 しかし…サフィーラの奴、内部に詳しいんだな。

 まるで一度来た事がある(・・・・・・・・)ような感じだ。

 

 

『ここをまっすぐ―――あっ!ヤバッ!』

「あれは―――」

 

 

 視界の先には、妙な結界を張った巨大で異形な存在と、その前で膝をついているレオンハルト達。

 あの異形の存在からは≪輝く環≫とワイスマンの気配を感じる。

 状況から察するに、追い込まれたワイスマンがやけっぱちになって至宝と融合…するかな?

 腐っても使徒だし、多少は粘ると思うけど…。

 

 

『ふふ…この力の前では何人たりとも無力。諦めるんだ』

「あ、諦めないわよ。絶対に!」

「いくら貴方が至宝と融合して人智を超えた力を得ようとも僕たちは諦めない!」

「その通りだワイスマン。俺たちに諦めるという言葉はない(だが…あの障壁をどうにかしないといけない。ケルンバイターならいけるか?)」

『そうか…残念だよ…』

(力があの異形な存在…ワイスマンに集まってる?あれを喰らったらひとたまりも―――)

 

 

 ワイスマンの胸元に強大な力が集まっている。 

 あの力を解き放たれれば、レオンハルト達はひとたまりもないだろう。 

 あれを防ぐには、結界を破壊して直接攻撃を与えるか、あるいはあの結界と同様の物を張るか。

 断ち斬るという手段もあるが、リスクが高い。

 

 

「だったらやることは一つだな。行くぞサフィーラ。絶対零度の氷で防ぐ」

『了解よ。綺麗な氷の花を咲かせるわ!』

 

 

 サフィーラの承認を得たのち、レオンハルト達を飛び越えてワイスマンの前に立ち塞がる。

 

 

「あ…ヤクモさん…?」

「来てくれたんですか?」

「勿論。ここまで来た以上は最後まで付き合うさ。レオンハルト。彼らを下がらせてくれ。あぁついでにクローディア姫とオリヴァルト皇子にも事情説明を」

「それは構わないが…どうやってあの一撃を防ぐ?」

「人智を超えた力には同じ力をぶつける。それで十分か?」

 

 

 彼の問いにそう答えると、レオンハルトはすぐに頷いてヨシュア達を少し後ろに下がらせてからクローディア姫とオリヴァルト皇子に説明する。

 その間にワイスマンとの距離を詰めて左手を上げると、ワイスマンがこの姿に反応する。

 

 

『……ほぅ。異能持ちだったとはね。随分可愛らしい姿じゃないか』

「……残念だがただの異能ではない。 アンタ達が嫌というほど経験している力だ」

 

 

 冷気を左手に集約して一気に放出。

 目の前に氷で大きな花を形成する。

 この花はただの花ではなく、サフィーラが使用する技。

 この世界でいう魔法だ。

 

 

『待て…貴様その力をどこで手に入れた?その花を形成している冷気から感じる高潔な神気は…いや、そもそも貴様が右手に持っている刀も…まさか…いやそんな事があり得るのかッ!?』

「……」

 

 

 至宝と融合している影響か、どうやらサフィーラの事…というよりこの力の事に気が付いたようだ。

 どうやら鋼の姉さんやマクバーンから全く聞かされていない様子。

 となれば、あの驚きようも納得できる。

 

 

『ありえん…マクバーン以外に異界の王と融合した存在がいるというのかッ!』

「い、異界の…?」

「王…ですか?」

「ふむ…姿こそ変わってるが、王には見えないね」

「……今は知る必要が無いことだよ」

 

 

 詮索をしてくるエステル達に一瞬だけ殺気を向ける。

 今もこれからも知る必要が無い話、いや、知らない方がいい話だから。

 

 

「ワイスマン。()は彼とは違って融合ではなく共存。力こそ全て譲り受けたけど、彼女の魂は残り共に生きてる」

『だとしてもだッ!なぜ…なぜそちら側にいるッ!貴様はこちら側の人間だろうッ!なぜ我らが主は干渉しないッ!?』

「私に聞かないでくれる?盟主の考えていることなんて分からないし、知りたくもないから」

『っぅ…ならばこれだけでも答えろ。貴様の事は―――』

「あぁ…老師と親父は知っている(・・・・・・・・・・・)それ以外の皆も(・・・・・・・)家族同然に接してくれる」

『……』

 

 

 ワイスマンの言葉が止まる。

 あぁ…きっと信じられないだろう。

 下手をすればこの世界をぶっ壊してしまう程の力を持った人物を、わざわざ引き取って家族のように接する人たちが居る事に。

 俺だって最初は信じられなかったけど、お節介なパートナーのお陰で≪斑鳩≫の皆やジジイを信じれたし、ワイスマンが思ってるほど人は腐ってないよ。

 

 

「さて…これ以上交わす言葉はないとみる。アンタは…どうする?」

『決まっているだろう。貴様から始末する。レーヴェとヨシュアは後回しだ』

 

 

 彼の胸に集まっていた力が消失し、代わりに小さな人形兵器が現れる。

 俺も氷の花を冷気に変換してから煉獄を構える。

 

 

『君の様な災厄を放置するわけにはいかない。至宝の力を最大限使って始末させてもらうよ』

「そうか。出来るものならやってみるがいい」

 

 

 刀の先をワイスマンに向けるとほぼ同時に、小型の機械人形から光弾が放たれる。

 俺は地面を蹴り、放たれた光弾の中心を突破してから手始めに一発叩きこむ。

 

 

「七の型・夢想破斬」

 

 

 八葉の中で一番威力の高い一撃を叩きこむが、障壁の様なものに阻まれるが、直ぐに切り替えして肆の太刀を一呼吸の間に五度程打ち込む。

 だがこれも障壁に阻まれ手ごたえがなかった。

 

 

 

(……成程。どれだけ技を打ち込もうとあの障壁の前では無意味―――。空の至宝の力を利用した空間操作の様なものか)

『無駄だよ。いくら極められた剣技を打ち込もうと絶対障壁の前では無意味だ』

「それはやってみないと分からない。八葉一閃ッ!」

 

 

 今度は八葉の集大成を打ち込むが、やはり手応え無し。

 となると、技ではなく得物の問題になってくる。

 この世の理の得物だとあの障壁が突破出来ない。

 ならば…自然と答えは出てくる。

 

 

「よし。枷を外すとしよう。煉獄―――抜刀」

『む―――』

 

 

 煉獄に神気と限界まで込める。

 すると、煉獄の刀身が淡い光を放って側が剥離していき、真の刀身が現れる。

 水晶の様に透き通り、強烈な神気を放った刀身が顕現する。

 

 

『その―――刀はッ!』

「相手が悪かったなワイスマン。刀や力の前に、そもそも相性が悪すぎる。俺の眼は他の兄弟弟子とは違って゛物事の本質を見抜く゛。観の眼の予測に加えてな」

『本質だと…まさか。待て…ヤメ―――』

 

 

 何かを察したワイスマンが力を障壁に回すが、そんなものは無意味だ。

 既にその障壁は…もう終わっているのだから。

 

 

「絶技・冥月一閃」

 

 

 4回ほど斬撃を放ったのち、居合抜刀で音を立てることなく絶対障壁を一刀両断してゆっくりと煉獄を鞘に納める。

 

 

「なっ―――」

「障壁が……」

「真っ二つに斬れた……」

「見事―――の一言に尽きるね」

(見事なり黒葉の剣聖。貴方の絶技、しかと見させてもらった)

  

 

 うん…今のはいい手ごたえだった。

 久しぶりにとてもいい感覚で斬れたと思う。

 やはり斬るなら人間よりもあぁいう化け物の方がいい。

 遠慮も情けも一切不要だから。

 

 

『おのれぇ…よくも障壁を…しかしその力。刀と異界の王だけではないな。貴様の剣は理すらを…』

「否。我が太刀など、師に比べれば赤子同然。さて…邪魔な障壁も消えたことだし、後は彼らの仕事かな?」

 

 

 後ろにいるエステル達に視線を送ると、彼女達はすぐにワイスマンに立ち向かっていく。

 今度はさっきとは違って彼女達の一方的な展開となる。

 ワイスマンは障壁が斬られたのと、体の至る所を凍らされた影響で身動きが殆どとれず、ただ一方的にやられていた。

 

 

「マクバーンの炎は呼吸器官等に影響が出るが、お前の氷は細胞や筋肉等に影響が出るのか。あれは…きつそうだな」

「それだけでないけどな…っと。終わったぞ」

 

 

 エステルとヨシュアの一撃がワイスマンを穿ち、彼は断末魔を上げながら元の姿に戻る。 

 勝負あり…だが、少しワイスマンの様子がおかしいのと、あるべきものが消失している。

 そう…≪輝く環≫が無かったのだ。

 

 

「環が…消えただと…ちぃっ!」

「あ―――!」

「教授!?」

 

 

 苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべながら転移していくワイスマン。 

 あの様子を見る限り、余程の事態なんだろうと考える。

 

 

「どういうこと…?」

「輝く環が消えてしまいましたが…」

「加えてあのワイスマンの様子は一体……」

(レオンハルト。嫌な予感がするのだが…まさかまさかか?)

(……)

 

 

 俺の問いに答えないレオンハルト。

 となると、俺の予想が的中していることになるので、今すぐにでもこの都市から逃げないといけない。

 

 

「急ごう皆。都市が崩れる。核となった環が消失した影響で」

「崩れる?そ、そうなのレーヴェ?」

「あぁ。急ぎ離脱するぞ」

 

 

 撤退を始めようとするヨシュア達にアルセイユで待機していたメンバーが合流し、この場で起きたことを一通り説明を始めたので、その隙にワイスマンが居た位置にあった転移の陣を起動させて移動する。

 移動した先は通路の様な場所だった。

 

 

「ここは…っと。ちょっとしんどくなってきた」

『じゃあ力は解除するわ。姿はそのまま』

「えぇ……」

 

 

 どうせなら姿も戻せよと訴える前に力が抜けていき、地面に反射して移った己が顔も少し変わる(といっても髪が黒く染まっただけだが)。

 ひとまず、時間は無いことだし髪を束ねてワイスマンを探すと、思ったよりも早く満身創痍のワイスマンと遭遇した。

 

 

「っ…貴様は……追って来たのか」

「あぁ。依頼だからな。首を貰うよ」

 

 

 居合抜刀の構えを取ると、ワイスマンは逃走を図ろうと振り返るが、直ぐに足を止める。

 彼の後ろにはもう一人の追跡者、ケビン・グラハムがいたからだ。

 

 

「教会の神父だと…そこをどけ!」

 

 

 攻撃を仕掛けるが、ケビン。グラハムは涼しい顔で防ぐ。

 その光景に驚きを隠せない中、彼は冷たい瞳でクロスボウをワイスマンに向けながら告げる。

 

 

「俺か彼。どっちにやられるか選んだらいい破壊僧。あいにくとあまり言葉を交わす時間ないからな」

「おや第五位?選択肢を与えるなんて優しいね」

「アンタの方がきっつい殺し方してくれるやろ」

「言ってくれるね…ならその言葉通りに」

「待つんだヤクモ・ムラサメ。君は―――」

 

 

 彼の言葉を聞かずに首をストンと斬り落としてから全身を凍らせる。

 仮死状態にするのではなく、魂と肉体を凍らせ、二度と復活出来ないようにする。

 

 

「これでいいだろう。問題は輝く環だが……」

「一体どこに行ったんやろうか……?」

 

 

 回収したい物が見つからない。

 お互いに意見を出し合うが中な答えが出ず、後日改めて調査…かと思いきや、転移陣と共にカンパネルラが現れた。

 

 

「おやおや。物騒なメンツだねぇ。第五位の≪外法狩り≫に情け無用の人斬りか」

「…誰が人斬りだって?」

「おっと怖い怖い」

 

 

 物騒な事を言って来たので軽く殺気を向けると、カンパネルラは軽く流してから指を鳴らす。

 すると、ワイスマンが持っていた杖の下に転移陣が現れて、杖はどこかに飛ばされる。

 

 

「杖…まさか…」

「その通りだよ若き剣聖。それではごきげんよう。また会える日を待っているよ。特に君と精霊女王殿は」

「っ―――待て道化師!」

 

 

 彼をここで逃すのは良くないと直感が告げ、斬りに掛かるが転移で逃げられて空を斬る。

 ちっ…逃がしてしまうとはらしくない、力の使い過ぎで体力が落ちているのか。

 

 

「…事情は分からんけど今はここから逃げるで。崩壊に巻き込まれたらシャレにならん」

「そうだな…急ぎ撤退を…うっ……」

 

 

 ズキっと全身に痛みが走る。

 筋肉が悲鳴を上げるような痛み…あの時と同じだ。 

 シズナが暴走して止めるのに無理をしたあの時と。

 やっぱり力を使うときは常にこの姿でいた方がいいのか。

 その方が体への負担も殆どないし。

 

 

(まぁこの姿も結構好きだし、シズナもチヨメも何も言わないし…先の事を考えると早い方がいいか)

「剣聖の兄ちゃん急ぐで」

「分かっている。急ごう」

 

 

 急ぎこの場を離れ、エステル達と合流して何とか崩壊する前に空中都市から脱出するのであった。

 

 

 

 

 

 

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