英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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祝賀会

 空中都市リベル=アークと≪輝く環≫を巡る事件から数週間後経った。

 俺達はいまだにリベールにいて、王都にて復旧作業を手伝っている。

 カシウスのおっさん曰く、『こういう時のお前達の経験は役に立つ』とのこと。

 だからと言って好き勝手使われたら困るのだが、女王陛下に頼まれたら断るわけにもいかないので、チヨメやアヤメ、レオンハルトと協力して復旧作業に当たっている。

 そんな中、異変が終息した祝いのパーティーが開かれるということになり、何故か俺達にも招待状が届いた。

 

 最初は断ろうと思っていたが、色々と皆に隠していたこともあるし、ジンやケビンといった人物とも今後の事を話しておきたかったので参加することに。

 というわけなので、せっかくだから゛今の姿にあった゛和装をチヨメと一緒に四苦八苦しながら選んで祝賀会に参加し、女王陛下と王太女のスピーチの後、俺たちはそれぞれ分かれて各方面と話をしに行くことになった。

 

 俺が最初に向かったのはジンのところである。

 リベールのいる間はあまり話せなかったからね。

 

 

「やけに飲んでるなジン。エレインに言うぞ」

「なんでエレインに言うんだよお前…それよりやっぱり来てたんだな。しかも随分可愛い姿で」

「……」

 

 

 そう、今の姿は魔人の姿である(ただし力は未使用で、あくまで姿だけ)。

 というのも、リベル=アークから脱出後、かなり無理をしていたのか一週間程動けなくなってしまった。

 サフィーラ曰く『魔人化で無理に姿を変えてる影響ね。仕方ないけど』と言われ、腹を括って魔人の姿でいることにした。

 いつかはこうなる運命だったし、里の皆には周知済みだし、変わるのは外観だけで性別までは変わらないから。

 

 

「まぁ…可愛いのは事実だから言わないけど、力を負担なく使うにはこっちの方がいいわけ。外出以外では元の姿だから」

「成程な。それはそうと、お前さんたちはいつまでいるんだ?」

「来週には帰るよ。仕事も溜まっているだろうし、次の目的地も決めないとね。クロスベルか…帝国かな?」

 

 

 一番行きたいのは帝国、例の弟弟子には一度会ってみたい所。

 それと子爵閣下とも改めて剣を交えたいとも思ってる。

 そのためにも、出来る限り早く里に帰って仕事をしないとね。

 

 

「お手柔らかに頼むぞ剣聖」

「こちらこそ。乙女共々お手柔らかに。じゃあまた」

 

 

 ジンと別れて次に向かったのはオリビエをシェラザードの二人、この二人ともあまり話していなかったな。

 個人的にはオリビエと接点を持っておきたいことろだけど……。

 

 

「やぁ剣聖殿。君も来ていたんだね」

「復旧作業を手伝ってくれたそうね。感謝するわ」

「兄弟子と女王陛下に頼まれたからね。というか女王陛下が猟兵に頼むってどうかと思うんだが」

「そこは先生の人望と、アンタに害がないって分かってるからよ」

「あとは老師の件もありそうだね」

 

 

 それはないと言えなさそうだな。

 あの女王陛下がジジイの正体を知らないわけではないだろうし、こっそり会いに行ってそうだしな。

 

 

「そういえば彼。今はユミルにいるそうだね?もしかして弟弟子でもいるのかい?」

「……そうか今はユミルにいるのか。最後まで付き合う…訳ないか。その辺りも考えないとな」

「どうやら訳アリのようだね。もし帝国に来るなら便宜を図らせてもらうよ。無論タダとはいかないけど」

「殺しの依頼以外なら構わない。特別料金だけど」

 

 

 ジジイがユミルにいるはちょっと意外だったが、こちらとしてもその辺りは考えていかないといけない。

 アイツの事を誰かが気にかけてやらないと。

 カシウスのおっさんやアリオス辺りは簡単に動けなさそうだし。

 

 

「特別料金か…東方最強と謳われている君を雇うとなると、それなりに高く付きそうだね」

「冗談だよ。代理戦争とお得意さん以外からは基本取らない。なんだったら復旧作業や王国軍の相手も無償だ」

「意外ね。先生の事だからきちんとしてると思ってたわ。兄弟弟子関係なく」

「そんな事ないさ(というか兄弟子に金を請求出来るかって……)」

 

 

 そもそもそんな立場じゃないし、そんなことすれば後々面倒ごとになるに決まっている。

 ともあれ、これでオリビエとも接点が持てたわけだし、帝国方面の事はどうにかなりそうだろう。

 なので次に行くことに、クローディア姫かヨシュア辺りかと考えていると、会場の端で一人で酒を飲んでいるレオンハルトの姿を見かけたので、テーブルの置かれてあるワインを一本持って行くことに。

 

 

「空っぽなら注ごうかレオンハルト?」

「君か…そうだな。せっかくだし貰おう」

 

 

 グラスを差し出してきたのでぎりぎりまで注いでから、自分のグラスにも注いで乾杯する。

 

 

「ようやく酒を飲む場が出来たな」

「結局なんだかんだ時間取れなかったしな。それで…これからどうするんだ?」

「あぁ…。暫くは自由に過ごそうと思う。為すべきこととやるべきことは分かっているが、改めてこの世界を見て回りたいと思う。それからハーメルの真実を調べるつもりだ」

 

 

 ハーメルの真実か…確かにあの出来事は不可解な事は多い。

 誰かがハーメルの名を当時追い詰められていた機甲師団内にいた貴族派につぶやいた程度であれ程の事が起きるのかと。

 普通の人間なら踏み止まって冷静な判断をするはずなんだが…。

 

 それはそうとして、俺の次の目的地もクロスベルと帝国の予定だし、色々と協力できそうだ。

 

 

「実はレオンハルト。俺も帝国に行く予定でね。その前にクロスベルにも寄るんだ。手伝えることがあったら言いなよ」

「それには及ばない…と言いたいが、結社の次の計画のメンバーを考えると、お前の力が必要になってくるかもしれん」

「次の……(俺の力が必要ってことはアイツか…)」

 

 

 脳裏に浮かんだあの男。

 結社の次の計画にはあの男が組み込まれているのか。

 いつかは相対すると思っていたが、予想よりも早く来そうだ。

 

 

「火焔魔人…ってちょっと待ってレオンハルト。結社には戻らないのか?」

「あぁ。答えを得た今、あの組織にいる必要が無い。馴染みの連中とは個人的に付き合うことはあるかもしれんが、執行者としては活動しない。これからはただのレオンハルトだ」

「いいんじゃない。肩書とか重いもんね。俺だってたまには剣聖とか忘れて思いっきり刀を振るいたいし」

「……(剣聖か。異界の王の力も踏まえて背負っている物は多いはずだ。それなのに…いや。あまり詮索しない方がいいか)」

「……そうだな。詮索はしない方がいい。俺も覚悟は決めている身だ。この姿も…近いうちに完全にこの姿になる。その時も君の話を聞いて確定した」

「マクバーンか。奴の焔は絶大だ。いくらお前でもきつい戦いになるぞ」

 

 

 レオンハルトが言うなら事実なのだろうが、俺も無策で挑むことなどしない。

 剣技に至っても、シズナとジジイにしか見せていない物もある。

 剣聖としての真髄をね。

 

 

「そこはゆっくり考えていく。色々と考えているし。何なら見せてもいいぞレオンハルト。剣聖としての真髄」

「真髄だと?その言い方だと俺と剣を交えたときは本気ではないということになるぞ」

「……アレも本気。俺の真髄は抜刀術。八葉と黒神の肆ノ型に各型の技を組みこんでいる俺だけの剣技。リベル=アークで見せたのはその一端。俺だけの型もあるけど」

「抜刀術…いわれてみれば俺とやったときは殆ど見せていなかったな。理由を聞きたいが…大方≪剣仙≫の戒めか」

 

 

 察してくれてとてもうれしいよレオンハルト。

 あんな戒めがなっかたら遠慮なく振るえるというのに。

 どういった意味で言って来たのかは分からないけど、何となく理解はしている。

 まだ黒神一刀流の事を知られたくないのだろう。

 その気持ちは分からないことはないけど。

 

 

「……ふむ。ジジイからの戒めがあったが…ちょっと顔貸しなレオンハルト。人気のいない所に移動しよう。そうだな…君がクーデターの時のエステル達と戦った場所に行こう」

「……いいだろう」

 

 

 周りに気づかれないように場所を変える。

 クーデターで彼がエステル達戦った場所だ。

 幸いにも人がいないので、多少は暴れても大丈夫だろう。

 

 

「じゃあやろうか?お互い一撃のみの手合わせ」

「ふっ…望むところだ」

 

 

 どこからともなく魔剣を取り出して構えるレオンハルト。

 俺も太刀サイズになった煉獄を顕現させて抜刀術の構えを取る。

 

 

(さて…どのように仕掛けてくるかな)

 

 

 レオンハルトの纏っている剣気を肌で感じて様子を伺いつつ、こちらも剣気で牽制する。

 剣気が衝突する度に目に見えない火花が散り、互いの剣が衝突する陰が見えてくる。

 

 

(壱、弐、参は止められる。陸と七は相殺。となると……)

 

 

 何度も何度も繰り返し、彼に届く一太刀を手繰り寄せる。

 相手が自分と同等かそれ以上の達人となると、これがかなり難しい。

 

 

(よし―――決まりだな)

 

 

 深く呼吸をして煉獄に手を置く。

 あとはタイミングだけ…今の状態だとその時は中々訪れそうにないと思っていたが、予想外の人物が来た事を気に状況が一変する。

 

 

「レーヴェ…?ヤクモさんも何を―――」

「「―――!」」

 

 

 ヨシュアの声と同時に、俺とレオンハルトは同時に地面を蹴り、互いの剣が交差する。

 

 

 

「「……」」

 

 

 しばし無音の時間が流れたのち、俺とレオンハルトの間に黄金の魔剣が突き刺さる。

 それを確認してから、俺はゆっくりと鞘に煉獄を納めた。

 

 

「ふぅ…やっぱりその線で来たか。大丈夫レオンハルト?」

 

 

 地面に突き刺さった黄金の魔剣を抜いてから手渡すと、彼はどこか嬉しそうな顔をしながら魔剣を受け取る。

 

 

「嬉しそうだけどどうした?」

「いや…剣の世界は広いと思ってな。先ほどの逆袈裟の抜刀術は見事だった。もしやあの技は……」

「……。君の剣の道の足しにでもしてほしい。本当はもっと見せたいけど…またの機会にしよう。そうだな。共和国に来た時にでも」

「ふっ…楽しみにしておく(あれが黒神一刀流の技か。八葉の伍ノ型に似ているが…)」

「うん。楽しみにしておいて。ところでヨシュア君はレオンハルトに用事かい?邪魔だったら外すけど」

「あ…いえレーヴェではなくてヤクモさんに用があって。ちょっとお話いいですか?」

 

 

 お話と言われてちょっと身構えてしまうが、彼はレオンハルトを助けてくれたお礼を言いたかったらしい。

 別にお礼を言われるほどではないが、ここは素直に受け取っておこう。

 

 

「本当にありがとうございました。レーヴェだけではなく、皆を助けていただいて」

「いやいや。レオンハルトの件に関してはあの人の頼みだったし……む。待てよ。もしかして教授を斬ったのはまずかったのでは……鋼の姉さん乗り込んでこないかな……」

「教授を斬った?」

「それに鋼だと?詳しい話を聞かせてもらおうか」

「あー……うん。えっと……」

 

 

 ワイスマンが逃げた後と、少し前にあった鋼の姉さんの事。

 別口で教授の始末を頼まれていたことも伝えておく。

 

 

「そうか…あの人が君に。しかし随分顔が広いようだな。教会の聖女に関しては噂程度に聞いていたが」

「その件は俺達だけの秘密ってことで。カシウスのおっさんにも秘密な」

「分かりました。秘密にしておきますね(というか中身は濃すぎてちょっと言えないかな……)」

「助かるよ。さて…俺はチヨメ達と合流して宿に帰るかな。そろそろ帰り支度しないといけないし」

「来週には帰られるそうですね。共和国に行くようがあれば宜しくお願いします」

「お手柔らかにね。じゃあまた」

 

 

 二人と別れて、チヨメ達と合流してから会場を後にするのであった。

 

 

 

 

 




リベール編はこれにて終了です。
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