英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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兄弟子襲来

 これはとある日のカルバート共和国へチヨメと共に赴いた日の事である。

 

 

「さて…今日は買い出しだったか?」

「はい。来週老師がお帰りになられるのでお酒やら色々と」

「未成年にお酒を買わせるなよ……(会いたくねぇな……)」

 

 

 その理由は簡単だ。老師が帰ってくる理由が八葉の奥伝の試しだから。黒神の奥伝に至ってから2年。あっという間だった。無論ジジイの宿題はきちんと終わらせている。俺だけの型と奥義は完成済みだ。

 

 

「酒を買うならベルの店か。早く済ませよう」

「了解です」

 

 

 ベルモッティにお店に向かい、事情を話してジジイが好きな酒を分けて貰う。礼を言って店を出ようとした時だった。背後からとても強い気配を感じ取り、思わず振り返ってしまう。そして背後に居た人物を見てやや警戒してしまった。

 

 

「カシウス…ブライト」

「……まさか本当に会えるとはな」

 

 

 カシウス・ブライト。リベール王国の伝説の剣聖にしてS級遊撃士。即ちーーー俺の兄弟子である。そういえば共和国に来てるって話だったか。彼が言ったように会えるとは思ってなかったが。

 

 

「…カシウス・ブライト。まさか若を―――」

「待てチヨメ。そちらの様子を見る限り偶然だ。多分ベルの情報網を頼りに来たのだろう。殺気を抑えてくれ」

「っ…すみません。カシウス殿も申し訳ない」

「気にしないでくれ。警戒するのは当たり前だろう。さて…俺は仕事があるからまた機会があればな」

「そうだなおっさん。縁があればどこかで会うだろ。行くぞ」

 

 

 改めて店を出ようとするが、今度はベルモッティに声を掛けられる。次は何だと思っていると、彼はカシウスが聞いて来たある件の事を話してくる。

 

 

「この話。一週間前にヤクモちゃんに依頼入ってたよね。例の首都に出来た新しいビルと会社の話し」

「おや?その話は確か…あの人からの依頼でしたか」

「あぁ。でもオババに相談して『割に合わぬから断って欲しい』って言われたんだよ。まぁやべー物ばかりだしな

「ほぅ…ベルモッティより詳しそうだな。一杯付き合え」

「「えぇ……」」

 

 

 あぁ…やっぱりか。そんな気はしていたよ。というか結局あの人は遊撃士に頼んだのか。まぁおっさんと繋がりはありそうだし、俺としても結構苦しいかったからな。

 ともあれ、必要な情報を明け渡すのは問題無いし、おっさんなら大丈夫だろう。元剣聖な訳だし、腕は鈍って無いだろ。

 

 

「いいだろう。おっさんの奢りだぞ」

「そうですね。手持ちもありませんしご馳走様です」

「やれやれ…まぁいいだろう」

 

 

 カシウスのおっさんの了承も得たので空いてる席に座り、俺とチヨメにはノンアルコールでお高いカクテルを作って貰い、おっさんはバーボンを頼み、ベルモッティが順番に俺達の前に置いてから話を始める。

 

 

「さて…まずはお前が何処まで知っているか教えて欲しい」

「了解。まず…このビルに入っている会社は裏世界で結構有名でな。人身売買に武器に密輸。怪しい薬にヤバい草。あと…最近消えた例の教団の残党がいるって話か」

「……知りたい事を何故全部知っている?」

「俺の副官は情報収集が得意だからね。後チヨメの妹の修業も持ってこいだし」

 

 

 今は別行動中だがチヨメの妹であるアヤメが忍びの試験を合格して俺に就いてくれている。

 

 

「なら潜入ポイントも絞っているのか?」

「あぁ。月に一度子供を運ぶトラックがあるからそこから潜入出来る。後は裏口か」

「成程…そうなると一人では厳しいか……」

「……(おい、ヤな予感するけど)」

「……(私もです)」

 

 

 チヨメも同じ様に嫌な予感を感じている様子。ひとまずカクテルを飲んで待っていると、おっさんはバーボンを一気に飲みほし、満面の笑みで言った。

 

 

「今から行くか。手伝え弟弟子」

「言うと思ったよおっさん!というか俺猟兵!遊撃士のアンタが俺達に依頼したらダメだろ!」

「ふっ…俺は弟弟子のお前に頼んでいる。猟兵のお前の事は知らん」

「こ、この中年親父……」

 

 

 一発ぶん殴ってもいいだろうか?無手の型と泰斗を交えた一撃をお見舞いしたいが、一応兄弟子だ。ここはぐっと堪えよう。

 

 

「分かった。だが行動に移すのは夜だ。そうだな……10時ぐらいでどうだ?」

「了解だ。潜入するのは俺達3人と……」

「私の妹も連れて行きましょう。そろそろ仕事が終わる頃でしょうし」

「そうだな。じゃあまた後で。行くぞ」

「あぁ。よろしく頼む」

 

 

 おっさんに会計を押し付けて、俺はチヨメと一緒に準備に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 暗く静かになった夜。俺はチヨメとアヤメと共に大きなビルの前に来ていた。このビルこそ昼にカシウスのおっさんと話していた場所だ。

 

 

「さて…先に言っておくがかなり面倒だぞ。目当ての場所は地下で会社の社長は最上階。手分けしないといけない」

「ご安心を若。社長と幹部は私とチヨメで捕らえます」

「ん。ヤクモ兄はオッサンと地下に」

「おぅ任せろ」

「……」

 

 

 おや?チヨメがえらく怒っているような気がするぞ。何か不味い内容でもあっただろうか。アヤメが俺の事を兄呼びするのは昔からだし、現に俺達は斑鳩に来る前からの付き合いだし。

 

 

「アヤメ。今は任務中。公私混同は避けるように」

「別にいいじゃん。それに任務じゃないし」

「ま。気は抜かないでくれ…来たぞ」

 

 

 俺達の後ろから闘気に満ちたカシウスが姿を現す。時間もぴったりだ。軽く打ち合わせをしてから俺達はビルの近くにあるガレージに向かう。ガレージには武装した猟兵が2人が入口で警護していた。

 

 

「あそこから侵入か?」

「あぁ。運よく誘拐した子供たちが搬入されるらしい。トラックが来て油断している時にカードキーを奪って無力化する。頼むぞ2人共」

「承知。お任せを」

「確実に仕留める」

 

 

 適材適所。隠密行動はこの2人に任せた方が早い。なので暫く息を潜めて待っていると、一台のトラックがガレージの前に来る。トラックの運転席から男が一人降り、警護を担当していた猟兵と書類の手続きを始める。そのタイミングで手を上げるとチヨメとアヤメは音を立てる事無く姿が消えた。

 

 

「よし。後は待つぞ」

「鍛えられているな。アレが忍びの隠密か」

「まぁな。すぐ終わるぞ」

 

 

 視線を戻して数秒後。猟兵2人と運転手は見えない糸で両足を縛られ真っ逆さまに釣られ慌てる3人。それとほぼ同時にアヤメが姿を現して、それぞれの鳩尾に強烈な一撃をお見舞いして意識を奪う。あの一撃は無手と泰斗を交えた一撃か。最小限の力で最大威力をお見舞いする一撃だ。

 

 

「む。カードキー発見。しかもパスワード付き」

「でかしたアヤメ。トラックはどうするおっさん?」

「アレはジンに頼んである。それと3人も降ろしてやって欲しい。こちらで確保する」

「承知しました」

 

 

 3人を降ろして両手足を縛る。それからカードキーを受け取り装置に通してからパスワードを打ち込んで扉を開ける。周囲を警戒しながら中に入ると、地下に繋がるエレベーターがあった。操作盤を確認すると地下にしか進めないようで、取り合えず地下に進む。

 

 

「所でヤクモ。このガレージからビルに向かえるのか?」

「あぁ。地下道があったはずだ。事前に情報収集した時はビル側から入ってな。こちらから潜入するのは初めてだ」

「あの時は会社員に混じって潜入しましたからね。正面からの潜入は容易かったです」

「潜入する時間によって場所を変えるのは当たり前。幾つものルートを模索しないとね。地図も手に入れたし、場合によったらベルモッティに教える予定だったし」

「そいうわけだから心配すんな」

 

 

 情報収集に関してはこの2人の右に出る物はいない。斑鳩の中でも極めて優秀だ。オババも頭領も認めている。必要な情報以上の物を確実に得てくるし。

 

 

「っと。止まったな」

 

 

 エレベーターが止まり扉が開くと、真っ白な壁の細長い通路が現れる。その通路を小走りで進んで行くと再びエレベーターが現れ操作盤を確認すると今度は上にしか行けないようで、素直に操作して上に向かう。

 

 

「さて…そろそろ気合入れねぇとな」

「はい。高レベルの猟兵も待ち構えているでしょう」

「ヤクモ兄と私達の敵じゃないさ」

「だからと言って油断すんなよ。ビルに入ったら別行動なんだから」

「分かってる」

 

 

 要らぬ心配だろうが念の為。猟兵だけではなく、教団の残党が居る以上は魔人の類も居るかもしれない。警戒して損は無いだろう。

 

 

「着いたな。警戒怠るなよ」

「了解」

「承知しました」

「さて、何が出るやら」

 

 

 エレベーターから降り周囲を確認。薄暗い照明と上に繋がる階段。受付があるのを見ると、俺達が居るのはビル一階のエントランス。となるとビルの地下深くに行くには一旦2階に上がらねぇとな。

 

 

「ここからは別行動か?」

「いや。一旦2階までは一緒だ。そこから下に繋がる階段がある。俺とおっさんは―――危ねぇ!」

「っ!アヤメ!」

 

 

 殺気と同時に銃弾の雨が襲ってくる。瞬時に柱の後ろに隠れて回避し、銃弾が飛んで来た方向を確認。そこには武装した猟兵が15人程居て、加えて階段からも10人程の猟兵が降りてくる。

 

 

「どうするヤクモ?」

「正面突破は難しそうですね……」

「良い案ある若?」

「そうだな……」

 

 

 キョロキョロと周りを見ると、鏡の破片に映った豪華なシャンデリアが視界に映る。あぁ…アレは使えるな。高さも申し分ないし下は階段。アレを落とせば階段から降りてくる連中を止めれる。

 

 

「ちょっと待ってろ」

「若!?」

「ヤクモ兄!?」

 

 

 柱から飛び出し全力疾走。猟兵共は俺目掛けて銃弾を放つが俺には当たらない。銃口と殺気。それらをきちんと読めば避ける事等動作もない。

 

 

「悪いがお前達に付きあうつもりはない」

 

 

 懐から苦無を取り出してシャンデリアを吊るしているワイヤーを斬る。無論猟兵共は俺のこの行動を理解している訳も無く銃を乱射し続けている間に、シャンデリアが階段を降りてきていた猟兵10人に直撃し大きな音が響き渡る。

 

 

「な、何!?」

「アレを狙ったのか!」

 

 

 驚きを隠せない猟兵達。その隙を逃す事無く太刀を抜刀する。

 

 

「おいおい…いかなる時も敵から目を逸らしたらいけないじゃないか」

 

 

 氷を纏った超高速の斬撃。黒神の九十九颯と八葉の弐の型。そこに陸の型を加えた合わせ技で一網打尽にしする。

 

 

「ふぅ…こんなものか。もういいぞ」

 

 

 隠れていた3人に声を掛ける。チヨメ達は周囲を警戒しながら姿を現し、気絶した猟兵達を拘束した後にビル内部の見取り図を確認。改めて担当を決めてから行動を開始する。

 

 

「では社長をを含めた役員の拘束はお任せを」

「ん。痛い縛り方しておく」

「あぁ。地下は任せてくれ」

「済まないが任せたぞ」

「「承知」」

 

 

 音を立てる事無く姿が消える2人。さて…こちらも行動開始だ。一体地下には何があるのやら。

 

 

 

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