カシウスと共に目的地向かう。道中で猟兵達と遭遇するが難なく撃破していき、あまり時間をかける事無く地下へと繋がる階段へと到着する。
「ここか?」
「あぁ。この地下に研究施設がある。例の教団残党が25名程な」
「そうか…」
「……(ま。だから断ったんだけどな)」
おっさんが主体となって行った教団一斉摘発。その件は俺達の耳にも入ってたし、頭領が東方の教団ロッジを潰していた。俺やシズナは『危険だからやめておけ』と言われたので参加していない。何を見たかも知らない。
「行くぞおっさん」
「あぁ。油断せずに行こう」
階段を降りて行くと小さな研究室のような場所に着く。見たことの無いような装置に小さな石造。奥に繋がる道もあった。他に何かないか周囲を見渡すと、大きな机があり、そこには書類の束があった。
「確認しろよおっさん」
「分かっている。お前は?」
「先に向かう」
おっさんと別れて奥に繋がる道を進む。数十アージュ進むと大きな部屋に辿り着く。部屋にはさっきの研究室で見た石造よりも遥かに大きい石造があり、その前には白い服を纏い両手足を縛られて目を布で覆われている子供が居た。
「さて…このまま前進してもいいのだが……」
考えるよりも行動に移すがモットーだが、教団が何をしてきたのか分かっている身とすると動く訳には行かないが、あの子供を放置するわけにもいかないか。
「まぁ周りを警戒しながら行くか」
目を部屋全体に広めてから石造の前に居る子供の前まで行く。それから両手足を縛っている紐を解こうとした時だった。
「何をしている貴様?」
「ーーー!」
背後から声を掛けられると同時に強烈な殺気を感じたので、直ぐに子供抱っこして部屋の入口まで移動する。子供を降ろして視界を石造方面に向けると、そこにはとても怪しい男がいた。
「ほぅ…噂の侍か。しかしこの気配は……」
「……成程な。あの小僧の残滓が気になっていたがそう言う事か。よく体が持っているな」
「あの小僧…?まぁいい。何をしに来た?」
「別に…。食えない兄弟子に頼まれただけの事。ほら…もうすぐ来るぞ。とっとと逃げたらどうだ?俺はアンタらに興味無いからな」
背後に指を指して教えると、怪しい男は含みのある笑みを浮かべながら姿を消す。後を追うつもりも無いし、取り合えず子供の解放しようか。
「やれやれ…流石にやりすぎ…おや?薬品の匂い?」
嗅いだことの無い妙な薬の匂い。そう言えば妙な薬を子供に飲ませてたって話か。確か名前はグノーシス……。その薬を服用したら人智を超えた力を手に入れる。その代償はバルクホルンの爺さんが目の当たりしたっけ。
「確か異形の魔人になるって。条件は龍脈が集約している場所……ちょっと待て。この場所は……しまった!」
煉獄の力を解放しようとしたが時すでに遅し。子供が苦しそうな声を上げながら体が変貌していき、大きな魔人と化した。全長は10アージュ程の禍々しい妖気を放っている。
「…ったく。罪のねぇ子供にやる事かよ。だから受けるの嫌だったんだよ。だが……」
もう後に戻れないあの子供を苦しませずに女神の元に送るのもまた、地獄を見た物の務めだろう。あの子が産まれ変わって笑顔で生きて行くためにも。
「一撃だ。一撃で苦しませずに女神の元に送ってやる」
腰に携えてある刀に手を置き、魔人の出方を伺いつつ呼吸を整える。
「遠からん者は音に聞け!」
心を落ち着かせて明鏡止水の領域に踏み入る。闘気を全て消し、心を水面にしその時を待つ。そして、魔人が右手を上げた瞬間に水面に雫が落ち、それと同時に刀を抜く。
「八葉一刀・明鏡」
神速の抜刀で魔人の首を斬り、音を立てること無く地面に落ちる。ゆっくりと刀を鞘に納めると、魔人は両膝を着いてからゆっくりと消えていった。
「次の人生は幸せであるように…」
次は天寿を全う出来ることを願う。俺が出来るのはこれぐらいだろう。命の重みは誰よりも知っているつもりだ。
「……で。そっちはどうだった?」
切り替えて背後にいたカシウスのおっさんに声をかける。彼の手には大量の書類があったのを見ると、それなりに成果はあったようだ。
「それはギルド監理か?」
「あぁ。本部に送るつもりだ。そちらは…ふむ。聞かない方がいいか」
「どっちでも良い。それより用がすんだなら帰るぞ。長居したくねぇ」
「そうだな。お前の家族の事も心配だしな」
「大丈夫さ、戻るぞ」
その場を立ち去ろうとした時だった。背中に担いでいた大太刀が僅かに青く光る。何かに反応したようで一旦足を止めると、背後から強烈な気配と焔を感じ取った。
「……?待ておっさん。なにか来る」
「何か…む、あれは…」
カシウスのおっさんの視線の先には、赤い魔法陣のようなものがあり、そこから気だるそうな雰囲気の男が現れる。
その男が現れた瞬間に、大太刀から凄まじい冷気が暴れ出てきた。
「何だ!?アイツに反応してるのか!?」
「どうしたヤクモ!?その冷気は何だ!?」
「良いから下がってろおっさん!」
カシウスのおっさんに下がって貰っていると、男が口角を吊り上げながら声をかけてきた。
「懐かしい気配を感じて来てみれば、まさか伝説の剣聖と…噂の侍がいるとはな」
「へぇ…おっさんはともかく俺の事知ってるんだな?」
「まぁな。それよりソイツを抑えろよ」
「言われなくても抑えるさ」
大太刀を掴み闘気で包み込んで冷気を完全に抑え込む。ソイツを見ていた男は興味深そうな顔を浮かべると同時に焔を纏う。
その焔見た俺は直ぐに気付く。大太刀が反応したのはあの焔。そしてアイツの中身だ。
「俺はマクバーン。似た者同士仲良くしようぜ侍」
「似た者同士…だと?どう言うことだ?」
「……あー」
成る程ね。ようはアイツも大太刀と一緒ってことか。この世ならざぬ者。すなわちーーー塩の杭や大太刀と出所一緒か。これは面倒臭いぞ。色々と。
「えっとマクバーンだっけ?残念だけと俺はアンタみたいに全部混じってない。あくまでとコイツに適した体になっただけだ」
「適した体…へぇ。そういうパターンもあるのか。なら余程の事がねぇ限り力を解放しても空間を壊さねぇのか。見たところ完全に制御出来てるみてぇだな?」
「……今はな。現れたときはそうじゃないさ。地獄を見たしね」
「……そうか。それは辛かったな。だかそれを乗り越えて前に進んでんだろ?そうじゃなければさっきの芸当は出来ない」
「…(何の話をしているんだ…?)」
話と見ただけでそこまて理解出来るのか。見た目と違って頭が良いというか、ただの好奇心か。それも剣を交えれば分かるだろうが、カシウスのおっさんが居る以上この手の話はやめておこう。
「行くぞおっさん。アレを相手にはしたくない。目を閉じろ」
懐から小さな黒い鉄球を取り出し地面に叩きつける、鉄球は爆発音と同時に濃い煙を周囲に散布する。俺達とマクバーンの視界が遮られると同時に、俺達は来た道を戻る。
「すまねぇなおっさん。まさかあんな化け物が現れるとは思わなかった」
「そうだな。あれ程の人間が居たのは驚いたが、お前の大太刀も驚いたぞ。老師から聞いてはいたが」
「忘れろ。あまりあの時の事は話したくねぇし……今知る必要もない」
「…そうか。またの機会にでも話してくれ。さて…お前の家族と合流するか」
「だな、行こう」
奮闘しているチヨメ達の所へと急ぐのであった。
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「ん。捕獲してきたよ若」
「……ご苦労」
かなりきつく痛い縛り方をした男性三人が目の前で倒れている。それぞれ社長と常務。そして専務で、ターゲットになっていた人物。無事捕獲出来て何よりだが…。
「もう少し優しく縛ってやろうよ」
「ダメ。悪人はきちんと逃げれないように縛らないとね」
「そうか…。で、この三人はどうするんだおっさん?」
「こちらで回収する。そろそろ来るはずだか……来たな」
「おや……?」
見覚えのある男が一人。カルバート共和国の遊撃士の一人である《不動》のジンがこちらに歩いてくる。自然とチヨメ達が警戒する中、カシウスが事情を説明する。
「そういうわけだから回収を頼む」
「了解だ旦那。しっかしお前さんとまた会うとはな」
「うるさい。俺も嫌だ。ただでさえ狼野郎に目をつけられてるのに」
「はは。それは大変だな。それと旦那。後で紹介したい奴も来るので、ソイツにも話してやってください」
「あぁ、例の新入りか。そうだな、弟弟子の事も話すか」
「話さなくていいわ」
面倒事を増やさないで欲しいな。ただでさえ色んな方面に敵が多いってのに。というかギルドに新人入ったのか。ま、機会があれば会う事もあるだろ。
「んじゃ帰るわ。ジジイの試しも近いから≪明鏡≫と奥義の練度をあげておかねぇと」
「そうか。元気でなヤクモ。次はお前が遊びに来ると良い。リベールに入れるように便宜は諮って置く」
「助かるよ。そん時は一戦頼むぜ。行くぞ二人とも」
「「了解」」
カシウスのおっさんと不動のおっさんに手を振ってから屋敷へと戻った。