英雄伝説・黒葉の軌跡   作:八葉と黒神の剣聖

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間章①
すれ違う2人


 八葉一刀流の奧伝を託されてから早くも半年。俺は東方二大剣術の剣聖…黒葉の剣聖として名を広めている。そのためか任務の度に色んな連中に喧嘩を売られて困ったものだ。 

 そんなある日の事。いつものようにオババに呼ばれ、副官であるアヤメと一緒に来ていたのだが……。

 

 

「むぅ…何でヤクモもいる訳?」

「いたら悪いか姫?」

「ふんっ!」

 

 

 先に来ていたシズナに冷たい対応をされる。あれからずっとこんな感じだ。ろくに話もしないし、任務も一緒に行かないぐらい超避けられている。

 

 

「…若に図星刺されたからって若を避けるのは間違っている」

「こらアヤメ」

「事実」

「……」

 

 

 そして油を注ぐような発言をするアヤメ。皆に話したのはマズかったかもしれないな。色んな方面に迷惑かけている。特にクロガネの兄貴はとばっちりだろう。

 

 

「喧嘩をするな。ヤクモや。今回のシズナの任務に同行して欲しい。相手は面倒でな」

「それはーーー」

「必要ないよオババ。1人で十分だから。行ってくる」

「ちょっとー?」

 

 

 俺の言葉を遮って立ち去るシズナ。それを見たオババは思いっきり溜息を吐きつつ俺を睨んでくる。『どうにかしろ』と目で伝えてくるが、こればかりはアイツ自ら気付いて欲しいので何も出来ない。

 

 

「で、婆さん。シズナの任務って何だ?」

「あぁ。偵察だ。何でも西風が来ていると情報があっての」

「ふーん……何しに来たのかね?」

「そういうわけだからこそっと行ってやれ。猟兵王と連隊3つほど来ているらしい。念には念をじゃ」

 

 

 正直気乗りしないなぁ。連隊3つ事はあの3人だろ?絶対殺し合う羽目になるから行きたくねぇな……。

 

 

「……ヤクモ兄。上手いこと利用したら?シズナに猟兵王ぶつけて」

「うーん。あのおじさんの事だから乗ってくれそうだが…ま、それもアリか。んじゃ行ってくるよオババ。かるーくね」

「お前の軽くはアテにならんのだが…まぁいい。だがヤバかったら割って入れ」

「りょーかい。行くぞアヤメ。チヨメも一緒に」

「ん。準備してくる」

 

 

 準備に向かうアヤメを見送ってから、俺も策を練りつつ準備をし、西風がいる地点へと向かうのであった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 日付が変わる少し前。俺は西風の旅団が拠点にしている広地の近くの森で待機中だ。チヨメとアヤメは猟兵王と連隊長3人を上手いこと分断しつつ目標地点に誘導している。因みにクロガネの兄貴にも協力してもらって。

 

 

「さてさて。ルトガーのおっさんは乗ってくれるかね?」

 

 

 そこが心配だがノリのいいおっさんの事だ。きっとこちらの意図を読んでくれるはず。狙いは分かっているから。

 

 

(ま。狙いは俺だろうね。星座かと思ったがカルバート周辺にはいない。恐らく噂でも聞いて遊びに来たんだろ。シズナには悪いが)

 

 

 今猟兵王と戦わせるのは早いかもしれん。しかし斑鳩を背負うんだ。たまには1人で大きい壁を越えて貰わんと困る。そういった意味では良い相手だ。

 

 

「さて…こちらには誰が…おや?」

 

 

 こちらに近づいてくる気配を感じ視線を落とす。その先に居たのは銀髪の小柄な少女。武装している所を見ると西風の新人だろか?どう見ても子供に見えるのは気のせいか?アヤメと年が近そうだが。

 

 

「ん?誰?」

(っと。視線で気付かれたか)

 

 

 気付かれたからには降りるしかない。太刀を携えた後に飛び降りると、少女は警戒しながら二丁のツインガンソードを抜いて銃口を向けてくる。

 

 

「もしかして噂の剣聖?団長が気にしてた」

「さてどうだろうね?もしかすると今頃相対している女剣士が剣聖かもしれない。所で名前は?俺はヤクモって言うんだが」

「ヤクモ…?団長が気にしている剣聖と同じ名前。じゃあ今戦っているのは誰?」

「誰だろうね…?(って。もう戦っているのか。んじゃそろそろかな?)」

 

 

 少女が首を傾げて考える。何だろう、この守ってやりたくなる小動物感は。絶対西風の連中は重度の親バカだろうな。だからと言って過度に甘やかしている訳でもなさそうだし。

 

 

「で。君の名前は?それと俺は戦う気はないから銃を降ろして欲しい」

「……分かった。殺気も無いしゼノ達から無駄に戦闘するなって言われてる」

「ゼノ…≪罠使い≫と呼ばれている元殺し屋か。確か戦士の一族もいるんだっけ?」

「それはレオだね。あと私はフィー。一応宜しく」

「はい宜しく。あと早く拠点に戻った方が良い」

「…?それはどうして?」

 

 

 再び首を傾げてから聞いてくるフィー。疑問に思うのは当然だが、出来れば聞かずに帰って欲しい。そろそろあの3人がこちらに来る頃だ。こんな場面をみられたらどうなるか。

 

 

「いいから聞かずにーーーはっ!?」

「っぅ!?」

 

 

 後ろからの殺気と同時にしゃがむ。すると俺の頭があった位置に一発の銃弾が通り抜けた。いかん、予想よりも数分速いが、それも織り込み済みなので問題ない。あとは誰が先陣を切ってくるかだが。

 

 

「今のはゼノの狙撃…?狙いは剣聖さんみたいだけど?」

「そりゃまぁこの状況見れば血眼にーーーとぉっ!?」

 

 

 今度は地面が隆起したのですかさず後ろに飛ぶ。今のは地面に衝撃を与えて正確に俺の足元を隆起させたな。そんな頃が出来るのはレオニダスの大型ガントレット。となると残りの1人は。

 

 

「こっちに来なさいフィー!」

「え?アイーダ?何してるの?」

「いいから来るのよ!あの男はゼノ達が抑えてくれるから!?」

 

 

 物陰からフィーをよぬ1人の女。確か連隊長の1人アイーダだったかな?指揮能力が優秀と聞いたことがある。しかしこの状況、もしかしてもしかするのだろうか?

 

 

「えっとアイーダさんだっけ?ひとまずこちらの話をーーーぬぉっ!?」

 

 

 今度は左胸と脳天めがけて銃弾が飛ん出来たので苦無で弾き落としつつ周囲の気配を探る。アイーダ以外に1つ気配を感じ取り、そちらに苦無を投げるが何も反応が無かった。

 

 

「これは非常に困ったぞ。俺として貴方達と殺し合うつもりなんて全くないんだがなっ!」

 

 

 太刀を握り一瞬だけ周囲に殺気を放ち警告。それから抜刀し周囲に斬撃を放って周りにある邪魔な木を伐り飛ばすと、大きなガントレットを盾にしてフィーとアイーダを守った巨漢の男が姿を現す。

 

 

「っぅ…大丈夫か?」

「助かったわレオ。フィーも大丈夫?」

「全然平気。それよりなんであの人攻撃するの?普通に話していただけだけど。別にやりあう気もないみたいだし」

 

 

 そうフィーは2人に言った。だが2人は信じる訳ない…よな。出来れば信じて欲しいが。

 

 

「……ふむ。確かに奴から殺気は感じないが…」

「だからといって警戒と解く訳にはいかない。相手は東方最強の一角なのよ」

「東方最強の一角?俺がか?別に大したことねぇぞ。あと本当にやる気ないから。俺は姫の護衛だし」

「姫……?それに護衛?」

「そう。だから矛を収めてくれないか?フィーとも偶然会っただけだし」

 

 

 太刀を鞘に納めて両手を上げつつ後ろに視線を向ける。敵対意思が無い事をアピールすると、流石のアイーダ達の警戒も薄まり獲物を仕舞う。それとほぼ同時に後ろからバスターライフルを持った眼鏡の男が姿を現した。

 

 

「なんや本当にやる気ないみたいやんか」

「当たり前だ。やるならもっと事前準備するっての」

「その割には上手い事団長と分断したわね」

「それぐらいは簡単だ。ま、流石にカシウスのおっさんの様にはいかねぇが…っと。帰って来たか」

 

 

 音を立てる事無くチヨメ姉妹が姿を現す。という事はあちらの決着も付いたかな?大方結果は見えているが念の為聞いておこう。

 

 

「不味い事になった若。シズナが諦めない」

「え?諦めない?」

「はい。倒されても何度も立ち上がって果敢に挑んでます。ですが太刀筋が……」

「まぁそうだろうな」

 

 

 さてどうした物か。クロガネの兄貴が言いに来ない所を見ると限界まで引っ張るつもりか。間に割って入ってもいいけどそれだと意味無いし…。かといってこのまま更にややこしい方向に行かれても困るか。

 

 

「…行くか。大怪我されたら雷落ちる。2人は彼等の拠点で治療の準備を」

「承知しました若」

「……了解」

「済まないな」

 

 

 アヤメの頭を軽く撫でてからシズナの元に向かう。気配を頼りに向かった先は開けた場所。その中央でシズナと1人の男ーーー猟兵王ルトガー・クラウゼルが戦っていた。しかし、その戦いは酷い物で、シズナが一方的にルトガーにやられていた。

 

 

「予想通りだが…。あそこまでやられて折れないのかよ…」

 

 

 服はボロボロ。至る所に切り傷。息も上がり太刀筋が乱れている。それでもシズナは気合いと根性だけで戦い続けていた。いつものシズナなら、あぁなる前に折れるか近くにいるクロガネの兄貴に助けを求めていただろうに。

 

 

「やれやれ…こうなったら殴られるか」

 

 

 シズナに一発殴られるのを覚悟してから心を落ち着かせ、2人の得物が衝突する瞬間に割って入ろうとするが、一瞬シズナと目が合い、彼女は足を止める。

 

 

「ヤ、ヤクモ!?な、何で!?」

「……なんででしょう?」

「……」

 

 

 逆に聞き返すが無言で睨み返してくる。まぁ当然と言えば当然か。本来いるはずの無い男がいるんだ。睨まれても仕方ない。

 

 

「諸突猛進の姫を助けて来いってオババがな」

「余計なお世話だって言ったじゃない!邪魔しないで!」

 

 

 そう言ってから再び猟兵王に立ち向かうシズナ。俺はやれやれと思いつつ決着が付くのを待つのであった。

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