異世界追放エンチャンター、現代日本でアニメ観たりモンスター討ったり。 作:あるなし
<???/女性、革命騎士団団長、『災厄』>
「ふと思ったのだが」
槍を拾い、柄にぶらさがった腕を捨て、問うてみた。
「空からこの場を見下ろしたならば、私は貴様らに厚く護られているように見えやしないか?」
返答らしき術力砲を斬り弾き、熱線を斬り止める。なかなかに練られた攻撃ではある。私と対戦する七人はどの一人も優秀だ。連携もいい。どこぞの精鋭部隊なのだろうよ。
だから、自衛隊の連中はこの場を囲う。私たちの戦いを囲って、この場に群がり寄せる夜鬼どもの迎撃に専念する。嫌いではないな、こういう思い切った戦術は。勝つための最善を選ばんとする気概はいかにも爽やかだ。闘争とはこうでなくては。
「フム。これはトリシューラ……いや、トライデントの模造品か。粗製もいいところだなあ。伝説武具とは唯一無二であるがゆえに霊妙なのだ」
だが、剣を抜くほどではないなあ。
槍を千々に斬った。斬る意志さえ表わせばそれは斬れているものだ。いちいち瞠目するな、若人たち。無手で斬り、打ち、射れてこそ武芸ぞ。得物選ばずの境地よ。
「どうした? まさか今しがたの攻め掛けが切り札でもあるまい?」
槍使いを、助け起こす機械使いごと斬った。最も長く戦った褒美だ。姉妹仲良く首級を転がすがいい。
「貴様ぁっ!!」
フ。手刀使いは技こそ速いが、術が甘いし遅い。勘働きで私の斬りつけへ応じるのはいいが、その度に手刀が崩れ、再成形に一瞬を要する。それでは防げても攻められんよ。
「猪上! あんたアレやんなさいアレ!」
「しかし!」
「十秒稼ぐから! 野神、原澤、いいわね!」
「承りましたわ!」
「了解……!」
フウム。一人の射撃とも思えぬ属性弾乱れ撃ち。その装填の間隙を埋める術力砲。それらへの対処を妨害する正確無比な熱線。なるほど。音と手数で圧倒せんとする攻撃だな。意気を認めよう。いちいちに応じてやろうじゃないか。
「おおお……!」
健気だなあ、手刀使い。両の手を合わせて祈るかのような姿勢だ。霊威の砂鉄を円錐状に……ほほう、ドリルか。高速回転する大きなそれで突撃してこようてか。捨て身の大技のように見えるし、そう見せたいのだがろうが。
射撃も、その突撃も、私の気を引くための欺瞞だろう?
あれなる黒髪の女……隙無き隠形をしているが、あの者だけは戦いに加わらない。直剣を手に、術式を練り上げ続けている。察するに切り札で、六人はそれを発動させるための囮にすぎまい。
「粉々に、なれええええっ!!」
おお、射撃も止めずの吶喊か。見事な覚悟だ。受け止めてやろうぞ。
「な!? 素手で受けるだと!?」
「億万を斬殺する手の平だ。礼は失していないだろう?」
さすがに活きがいいな。潰せないし、止まらない。銃撃もいよいよ盛んで手一杯だ。つまりは隙だらけなのだから……来たな。
「ふるへ、やつかのつるぎ」
「おお!?」
頭上より霊剣の一撃。重い。意志の斬撃では弾かれる。避けた。避けざるをえなかった。何としたことか、この私が半歩とはいえ動かされたぞ。
「ふるへ、ふるへ……ゆらゆらと……ふるへ」
四方八方から霊剣が来る。見えざる手に握られ振るわれる。なるほど、神降ろしの類か。強力な術式だ。伝統と信仰がそのままに威力として発揮されていよう……だから剣の数も増えよう。刃が大きくもなろう。私は今、一つの歴史と相対している。
「とつかのつるぎ」
おう、それが本命か。霊威すさまじき直剣。雷気をまとう。それを術者自ら握り、私を斬ろうという構え。素晴らしいではないか。
こちらも抜かねばなるまいよ。我が身の裏より解き放とうとも。
「聖大剣アスカロンという。知り、死ぬがいい」
まずは周囲と数合。いいぞ。超重量超霊威の刃と当たっても砕けない。そうでなくてはな。もそっと出力を上げたらどうだ……ははあ、霊刃にこぼれ。どうしたどうした。
本命の直剣。おお、荒ぶるではないか。強く鋭い。猛々しい。楽しくなってきた。
十合。二十合。剣の技量も相当のものだ。まさに神懸かって……ああそうか、神降ろしであるがゆえに時限的な力なのか。汗がひどいぞ。顔色も真っ青だ。惜しいなあ。いかにも名残惜しいことだが。
一閃。せめて首級は清らかに。
刃に乗ったそれの目蓋を閉じよう。首なき身体を横たえ、腹へ乗せよう。
「さて、どうする? もう終いにするか?」
策も銃弾も術力すらも尽きて、残り四人は……いや違うな。サブマシンガンを構えたあの女だけは違う。どういう目つきだ、それは。私を前にして私を見ていない? 何なのだ、その遠い視線は。
「みんな、退いて。あれはボクが押さえておく」
「原澤、お前」
「……猪上がフロント! 野神は対空! あたしは全体を援護する!」
味方を逃がすのか。夜鬼の一画を崩し、自衛隊を導き突破していく。追いはしないさ。もとより夜鬼は私のところへ集おうとしているのだから。
いよいよもって逃げようもなくなったお前は、それでも弾丸の一発も放たず、私を見ている。
「……どこかで会ったか? どうも、妙な心地になるのだが」
「そう……そうなのかもしれない。ボクも、あなたが何だか懐かしい」
どう思い返したところで、私の戦いの日々にこの女はいない。幼少期においてもだ。忘れるはずがないのだ。これほど印象深い術力を……かくも歪んだ在り様を。不自然な存在感を。見る間に歪みが増していく……歪むほどに力が増していく。
まるで、私だ。急速に私へ近しくなっていくではないか。
「いつも……あの時も、ボクは無力だった。大切な誰かを見殺しにした」
「……なぜかな。その誰かとやらが、貴様を恨んでいなかったなどと思うのは」
この霊威。女の背後から二本、三本と腕が生じはじめた。先の神降ろしを模倣したか? 手に手に銃が構えられ、私を照準している。
「ボクが死ぬ。だから死んで。ここで一緒に」
「ワガママを言う。聞いてはやれないなあ」
童のような泣き顔へ、親しみを込め、切っ先を向けた。