異世界追放エンチャンター、現代日本でアニメ観たりモンスター討ったり。   作:あるなし

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15 エンチャンター12

<鈴村圭(ケイ)/男性、個人事業主、居候(二年振り二回目)>

 

 

 だだっ広いリビングでノートパソコンをカチカチと動かしている。

 

 小説版『はをてず』の解説サイトを、ジンジャーエール片手に見ている。

 

 

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<『聖剣は魔鎧を断てず』の登場人物>

 

ケイ・ベルソン

 付与術士。黒髪黒目でやさしげな風貌。面倒見のいい性格。

 

 辺境の村に生まれ、幼馴染の誘いで冒険者となる。もとより堅実な仕事ぶりで騎士団や魔術組合からの評価も高かったが、孤児院事件で後に勇者となる少女と知り合い、幼馴染が聖女認定されもして、ついには勇者隊へと抜擢されるにいたった。

 

 一般魔術を広く修める他に、触れた物体の性能を強化する付与魔術を得意魔術とする。武芸の腕前は中級騎士未満。勇者隊においては主要四人をサポートする立ち回りが多い。戦闘の激化する物語後半では戦闘以外の役割が多くなる。特に馬車への付与魔術は難所における物資運搬に欠かせないものとなった。

 

 しかし「聖剣の呪い」によりそれらの貢献が評価されることはなく、蔑視と虐使の果てに儀式魔術の犠牲となった。

 

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 俺はやさしくないし面倒見もよくない。

 

 どんな時も効率よく物事を進めたいだけだ。そうした方が全体として面倒が少ないからだ。

 

 村で一番に頭が良かった。武術も魔術もすぐに大人を追い抜いた。だから二人前にも三人前にも働いて、村から出されるように仕向けた。幼馴染の誘いは渡りに船だっただけ。都会でどこまで通用するか試したかった。

 

 すぐにわかった。武術も魔術も優秀なれども秀才の域を出ず。十分だと思った。替えのきく有能であればどうとでもなる。自由に生きる場所を選べる。

 

 勇者隊に引っ張り込まれたのだって、短期的には割に合わない仕事だが、長期的に考えれば協力しないわけがないものだからだ。人類社会が存続してこそ暮らしが成り立つ。超一流である四人が、天才であるがゆえの責任を全うする様には敬意を払ったし、心から応援していた。俺とは違って替えがきかず、逃げられない四人に対して、同情すらしていたよ。

 

 あの儀式は心底嫌だったが……実際に逃げ出そうとしたが……それ以外の諸々を、俺は不当とも悲惨とも思わない。検索タグにアンチ・ヘイトがあることに違和感を覚える。感想欄が見当違いとも感じる。

 

 小説に描かれているような恋慕や思慕の情……本当かどうかはわからないし、本当だったとしても年若い女性だったところの四人なりのストレス発散法だったのだろうと思うが……あんなものは寝耳に水で、我関せずというか、鬱陶しいしわずらわしいし面倒くさい。

 

 つまるところ、あの四人のことなどどうでもよかったんだ。俺は。

 

 その証拠に、名前を憶えていない。

 

 勇者、幼馴染聖女、女傑騎士、魔女伯爵……どれも役割でしかない。小説でもアニメでもちゃんと名前は出てくるが、どうにも頭に入らない。まったく興味がないんだ。

 

 戦友というには立場が違い過ぎた。仕事仲間というよりは奉仕すべき上位チームで、友人であるわけもなく精々が知人で、幼馴染にしたところでさしたる特別ではなかった。親兄弟を知るがゆえに他よりも義理を感じるくらいのものだ。村社会は横のつながりだからなあ。

 

 今、異世界である日本で暮らしていて何の後悔も未練もない。

 

 敗残した事実はショックだったさ。でも、もう過去の話だろう?

 

 母さんがどうなったかだけは気になるが、お互いに一人前の大人であるからには、それぞれに人生の始末をつけるのが当然だ。死も別れも不自然なものじゃない。

 

 だた、なあ……アニメ版がどうにも俺をモヤモヤさせる。

 

 クリック。アニメ版『はをてず』の公式サイトは、と。

 

 

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鈴村圭/ケイ・ベルソン

  CV‐酒田将吾

  日本人大学生が付与術士の身体へ異世界憑依した存在。

  記憶や技術を引き継いでおらず、身体つきも異なるが、顔立ちは瓜二つ。

  凶悪な魔導甲冑を身にまとい、魔王軍と人類軍の双方へ牙を剥く。

 

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 鈴村圭のことだけが後ろめたい。

 

 顔が瓜二つの身体へ異世界憑依って、これ、正確には「異世界憑依交換」とでもいうべき怪現象なんじゃないか? 彼が魔法陣の中で目覚めた時のセリフから判断するに、どうもそう思われる。

 

 俺の身体へ鈴村圭が乗り移り、同時に、鈴村圭の身体へ俺の意識が乗り移った……どう考えてもあの儀式魔術が原因だ。

 

 そうだとすれば、絶対的な被害者は鈴村圭だけだ。彼は平和な日本に暮らしていただけなんだから。

 

 俺は違う。俺もあっちの世界でなら被害者面をできるだろうが、こっちの世界へ戦禍を及ぼしたという意味では加害者側だ。自分たちだけで戦争を決着できないで、何らかの力を欲し、こっちの世界へと迷惑をかけた人類の中の一人でしかない。

 

 あとさ……この「魔王軍と人類軍の双方へ牙を剥く」ってのがなあ。

 

 これ、俺のせいじゃないか?

 

 具体的には、あの遺書。声優さんがめっちゃエモーショナルに読んだやつ。

 

 まだ詳しくはわからないが、聖剣のそれと同じような呪いが彼の世界認識を歪めているというのは見て取れた。勇者たちの善意が悪意に受け取られたり、逆に聖堂の悪意が善意に受け取られたり……ただ、その程度では人類に牙を剥く理由には足らないだろう。

 

 俺の遺書を誤解したからじゃないか? 俺が無念を抱いて死んだと思い込んで……彼、すごくいい人そうだから大いに同情しちゃって……義憤に駆られてしまったんじゃないか?

 

 俺を虐げた勇者たちが、俺の意識が消失しているとも気づかず性懲りもなしに悪意を向け続けてきて……なんて。少し想定しただけでもかなりのヘイトストーリーじゃないか。しかも戦争を知らないだろう彼が、最前線で戦いながら体験するんだ。極論を下し暴走してしまっても不思議じゃない。

 

 申し訳ないなあ……赤心からそう思うよ。

 

 全てが推測通りだとして……アニメが本当にあったことだとして……戦うべきじゃない彼をかくも戦わせてしまって、俺はといえば彼のものであるべき平穏を享受しているなんて。

 

 なあ、この煩悶はどうすりゃいいんだよ。剣崎。

 

 ノートパソコンの画面に映る超カッコイイバイク……お前のバイクコレクションの中でも特に大きいヤマハXV1700ASロードスターにまたがって、剣崎、すごくイカした姿だ。背中に国宝の太刀を背負っちゃって。

 

 使い魔にした電気ハムスターをさ、カメラ付きのドローンに乗せているんだ。動力もエンチャントも使い魔の代理性で解決している。いいアイデアだろ?

 

 こういう魔術のこともちゃんと全部説明するからさ……愚痴を聞いてくれよ。なあ。

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