異世界追放エンチャンター、現代日本でアニメ観たりモンスター討ったり。   作:あるなし

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16 サレム財団3

<???/女性、サレム財団総帥(魔女伯爵)、異世界転生者>

 

 

 使い魔の視界越しでも鳥肌が立つ。恐るべし『災厄』。東京都の精鋭部隊を一蹴とは。

 

 かの部隊は日本国でも有数の異能者揃い。装備も優良。特に古神道の使い手は大妖討伐で名の知れた戦士だった。それを正面からねじ伏せる戦闘能力……得物の正体もすさまじい。聖大剣アスカロン。ローマ帝国の聖騎士に由来するドラゴンスレイヤーね。

 

 ただ……あの、最後戦った銃手は何?

 

 聖別されているわけでもない銃火器でああも抗うだなんて……激情をぶつけるような戦い振りは見ていてひどく懐かしいのよ。それをあしらう剣技もそう。稽古事のような気息……銃手の力が引き出されていく様子にも強く既視感を覚えたわ。

 

 簡易観測ではあるけれど、二人の戦いは世界の歪曲度を大きく強め高めもした。ううん、鶏か卵かという話ね。歪曲が二人を戦わせ、二人の叩きが歪曲を加速させる。

 

 コンセントレートが生じたのかもしれない。連鎖反応が始まるのかもしれない。

 

 世界が破綻するレベルの歪曲へ……ついに私は到達できる。

 

 だから、そう、貴方も対決なさい。『一刀斎』を名乗る魔将ソードアズマ。

 

 すでに自衛隊練馬駐屯地は落ちて、夜鬼の残余八百余りを従えた『災厄』は幹線道路を南東へと移動している。迎撃戦陣は池袋。貴方はその戦いの要よ。

 

 迎撃が始まった。

 

 やはり『災厄』は動かないわね。契約獣であろう異形黒馬の上で悠然と構えて。戦場を睥睨して。眼差しは空虚で。それでいて微笑んで。

 

 その態度も在り様も違うというのに……どうして彼女を思い出すのかしら。私たち四人の内の誰よりも真っ先に決断し、戦死した、誇り高き近衛騎士たる彼女……対面した時はそんな風には思わなかったのに、今は二人の印象が重なってしまって離れない。

 

 対決する相手が相手だからかしら?

 

「ほう? これはまた結構な使い手が現れたものだ」

「そうかい? 全盛期と比べたら弱体化もいいところなんだけどね」

 

 あの日、彼女はソードアズマに討たれた。

 

 今、ソードアズマの転生体である一刀斎が、彼女を思わせる『災厄』と向き合っている。オートバイと異形馬とはいえ、互いに騎乗していることも連想を強めるのだろうか。

 

「若いだろうに、歪んだやつだ」

「お互い様かなあ。君、歪んでいるよ。死にたいくせに殺して回るなんてさ」

「ほう、わかるか」

「わかるさ。そういう女騎士と対峙するのは二回目なんでね」

「……そうか。それは因縁だなあ」

 

 走り出した? 陣地の全てを無視して、突破される形で南西へ。使い魔で追える限界の速度。近づいて……ぶつかった。ノイズ。いえ、使い魔が損傷した。ただの一撃で何という衝撃。霊威が視認できるほどの攻防。どちらの得物も技量もとてつもない。使い魔を増やさないと追い切れない。

 

「ハハハ! やるなあ! その程度の伝説武具で我がアスカロンを相手取るとは!」

「日本国国宝になんてこと言うんだ……そっちは腕が鈍ったんじゃないかい?」

 

 剣と剣のやり取りだけではない。見えない無数の斬撃が、両者の間で斬り結び合っている。そちらの優勢はソードアズマね。異形馬の鬣が散る。馬体にも傷がつく。

 

「おお、これは失敬した。どうも真面目に戦う機会に恵まれなくてな……詫びに、こういう技はどうだ?」

 

 短剣が四本、飛ぶ。回転し、あるいは直進してソードアズマを襲う。『魔操剣』だ。殺した者の異能を奪ったか。

 

「手品じゃん」

 

 何をした? どう斬った? 刀がゆらめいたと思いきや四本とも切断された。

 

「遊びたいだけならもう終わりなよ。暴力自慢の拡大自殺なんて、迷惑を越えて災害じゃないか……そういえばそういう異名だったっけ……やれやれ」

 

 拮抗が崩れた。『災厄』の髪がひと房斬り散った。腕が、脚が、わずかでも確実に血を飛び散らせた。世界最強を攻め立てている。

 

「あとさ、学習しなよ。あの時も教えたでしょ? 騎馬の隙って……ここさ!」

 

 異形馬の首が飛んだ。刎ねられた。道路に頭をこするような下方からの斬り上げ。何という絶技。

 

 乗騎が転げた『災厄』は……既に空中。先読みし、跳んでいた? 振り上げられた大剣が、いやに大きい。更に、刃が長く広くなっていく。霊威が質量へ作用していく。それがアスカロンの権能か。

 

 一撃。地を裂くような。いいえ、比喩じゃないわね。アスファルトが断たれ真っ直ぐな地割れが生じた。

 

 オートバイも壊れ散らかり火を噴いて……ソードアズマは苦り顔。

 

「高かったんだけどなあ」

「……首無し青馬はどうした?」

「世界が違うんだ。呼べるわけないでしょ」

 

 数メートルからの超大剣を構え直して……『災厄』の雰囲気が変わった?

 

「魔将ソードアズマか……ククク……随分と可愛らしい姿形じゃないか? ええ?」

「仕方ないじゃないか。若い上に鎧がないんだから……久しぶり、とでも言っておこうか?」

「どうなんだろうなあ……奇怪な記憶だぞ、これは……クハハッ! この私が秘めたる恋をし、想い人のために死んだのか? 本当に? 安っぽい映画のようにい? アハハハハ!!」

 

 何。何が起きている。地震は確実。でも雷鳴? それを追うように暗雲。昼間なのに暗く、暗く、景色から色が落ちていく。『災厄』を中心にして世界が変質していく。

 

「愉快だなあ! だって貴様、私の仇だ! その上更に……どうなんだ? 勇者たちは……あの人はどうなったのだ? 貴様は砦を落としたのだろう? その後のことも知っているのだろう?」

 

 今、勇者と言ったか。その目その口振り……まるで彼女のように、あの日のことをあの人のことを、貴方たちは語っているの?

 

「勇者と聖女は僕が殺した。魔女はしぶとく逃げ延びて、ある種の自殺を遂げたよ。彼女の名誉のために補足しておくと、目的解決手段としての自死さ……ね?」

 

 目が合った。ソードアズマめ。しっかりと使い魔を把握している。

 

「あの人……というか、付与術士の身体は黒ドラゴンに喰われた。魔鎧、君たち風に言うのなら魔導甲冑か。それを使った代償としてね。無残なものだったよ。生きながら、日を置いて、徐々に徐々に喰われていくんだからね」

「……聖堂のやりそうなことだ」

 

 聖堂は人類存続のためならば手段を選ばない。個人の幸不幸など眼中にない。

 

「なるほど、なるほどなあ……まったくもって世界というやつは、どうにもこうにも度し難い……」

 

 『災厄』……彼女の周囲がいよいよ歪む。世界が異常に染まっていく。これもまた連鎖反応なのね。私が企図したものであり、自らの責任でもってコントロールすべきものよ。

 

「滅びよ人類、とでも言っておこうか。生き意地が醜悪に過ぎる」

「いいんじゃない? 攻守交替しただけのことさ」

 

 再びに剣と刀が突きつけ合われた。

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