異世界追放エンチャンター、現代日本でアニメ観たりモンスター討ったり。   作:あるなし

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18 エンチャンター14

<鈴村圭(ケイ)/男性、個人事業主、友人手伝い>

 

 

 電磁石により弾丸を加速・発射するコイルガン。EMGー02とやら。

 

 中々のロマン武器で、普通に撃つと音と反動のないフルオートハンドガンといった威力だが、精密電子機器であるがゆえにエンチャントで化ける……とか思った俺を叱りたい。

 

「お、おおオオ……!?」

 

 鎧巨人の左肩、吹っ飛んだし。

 

 その斜線がまだわかる。空気がバチバチと帯電しつつ虹色の軌道を空まで伸ばしている。途中、大樹の枝ぶりも吹き飛ばした。今もあちこちがパチパチ燃えている。あと、見間違いであってほしいけれど、かすめたと思しきビルの屋上端からも煙が上がっている。まずい。剣崎に怒られる。

 

 そっと影へ沈めておいて……と。

 

 よいしょと取りだしたのは数字のゼロのような形の羽なきファンヒーター。コンセントの先は影の中。エンチャントしてスイッチオン。

 

「グ、これハ……!」

 

 部屋中を暖めつつ空気清浄という機能だから、肺を焼く灼熱烈風を叩きつけつつ瘴気浄化という効果になる。魔術って概念だからな。鈍ら刃が研がずとも鋭利になるように、物理的限界に縛られない。何なら電気もほとんど消費しない。馬鹿みたいに増幅された魔力がエネルギー源だ。

 

「おオオッ!」

 

 回避。そんな大振りをもらうほど元勇者隊は甘くない、が、不可視の概念斬撃は厄介だ。スマートウォッチで魔力盾を発動。細かく防ぎつつ移動。対処の仕方はわかっている。女傑騎士の気まぐれ訓練で散々やられたからな。

 

 死角へ回って、またファンヒーター。武術主体の重装備にはこれが効果的なんだ。

 

 熱風は攻撃じゃない。避けられないし防げない。

 

 大顎峠の戦いだったかな。千を超える重甲冑の堅陣に、魔女伯爵は幻霊術ではなく熱風の魔術を使った。単純だからと出力を上げて、長いこと重甲冑どもを熱し続けた。その結果、連中、バタバタと倒れていったりギャアギャアのたうち回ったり……焼き肉と茹で肉の臭いがひどかったっけ。

 

 さあ、苦しいな? 鎧は熱いし中も暑い……この威力なら小一時間もしないうちに決着するかな。科学による合理的な設計なら、換気ファンとか放熱板とか色々と工夫されるんだろうが。

 

「ギョ、る、る、るオおおオ!!」

 

 なるほど、のたうち回るタイプだったか。魔力が弱いと熱中症で脳が死ぬんだが。

 

 で、その特大の剣を振り回すと。いやあ、すごい。木も墓石も地面も、まるでミキサーにでもかけたみたいにメチャクチャになる……これ、もしかして怒られるやつか?

 

 ね、熱風作戦はここまでだぜ。

 

 とりあえずレーザーポインターを試してみるか。ほい。やっぱり硬い。攻撃を防ぐという概念が熱線に抵抗する。あと、うわっと、俺の居場所がバレる。また環境破壊ががが。

 

 仕方がない。あれをやるか。

 

 風操作術で瘴気だまりを作って……そこへこのプロジェクターを照準して……エンチャント。迫力の映画鑑賞をしたくて開発した趣味魔法だが、いい目晦ましになるだろう。

 

「お、オオお……みんナが……」

 

 こいつ『はをてず』のファンみたいだったからな。内容はアニメ第一話……を観た俺の記憶イメージだ。録画していなかったし。

 

 そう難しい魔術じゃない。幻影術のちょっとした応用でしかない。本物を知る俺ならではの思い出補正やら映像修正やらがかかっているかもしれないが……むしろドキュメンタリーとしては強くなったと信じよう。サイレント上映ではあるが。

 

「ああアア……ああアア……」

 

 勇者の回想の中の俺は、そう、本来はこんな感じだった。生真面目に戦士の顔だったんだよ。

 

 だいたいアニメのあれ、何なんだ。任務中に照れたりはにんだりするわけがないだろう。あと幼馴染聖女を寂しげに見やったりもしない。むしろあいつの視界に入らないよう避けていた。ああだこうだ無駄な労働をさせてきて面倒だったから。うん、こんな感じで割と露骨にさ。

 

「あああ、アア、あああ……!」

 

 そうそう。女傑騎士と魔女伯爵による俺の捕縛はこれくらい容赦がなかった。普通に手足の切断狙ってきていた。俺の表情もこっちの敵愾心バリバリのやつが正解。アニメだと意味不明な涙を流していたけれど。

 

「あ、ア、ア……」

 

 いやあ、どいつもこいつも目が血走っていたよなあ。追い詰まった最前線なんてそんなもんだ。色恋とかあるわけがない。ま、エンタメとしてはアニメの描き方をすべきだろうけれども。

 

 さあて、と。

 

 予想以上に鎧巨人が首ったけだったから準備をやりたい放題だったぜ。除湿器、ポータブルクーラー、スタンガンと三段構えだ。エンチャント最大出力で時間差つけつつスイッチオン。

 

「グワッ!? あ、ギャアアアあああッ!!」

 

 大いに耕された地面へ大量の水を発生させて、その重量を捉える。容易なこと。池だか沼だかになりかけたところへ凍てつく風。足元も鎧全体も一気に冷やして凍らせる。急激な温度差は装甲によくないとマンガで学んだからな。そこへ壊れる覚悟の出力でスタンガンライトニングだ。

 

「オ、あ、ア……」

 

 何か電気が凄かったな。低温と関係しているのかもしれない。あとでそこら辺りの科学法則を学んでおこう。うまく理解すれば概念を強められるからな。

 

 ガラガラと鎧が割れて落ちて……胸部に潜んでいたか、大柄の美人。人に害なす獣。

 

 トドメを差していいのか、剣崎に確認した方がいいな……む? 足音?

 

「どうして、そんなにひどいことするの?」

 

 おいおいこの戦場に非武装の一般女性が……いいや、違うな。この女も魔力持ちだ。

 

「あんた、誰よ。さっきから見てたら、魔導甲冑をバカにするみたいなやり方ばっかしてさ……変な映像も見せて! 何だよあれ!」

 

 うお、衝撃波。まるで神聖術だ。威力も高い。

 

「ケイは、あんなんじゃない! 誹謗中傷やめろ! アンチ! キモイんだよ!!」

 

 アンチ? どうも聞いたことのあるような声だが、新手の獣ということでいいんだろうか。どうなんだ、剣崎。どうにかしちゃっていいのか?

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