異世界追放エンチャンター、現代日本でアニメ観たりモンスター討ったり。   作:あるなし

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04 エンチャンター4/革命騎士団1

<鈴村圭(ケイ・ベルソン)/男性、個人事業主、被アニメ化経験有り>

 

 

『ああ! ケイさん! ケイさん! なぜこんなことを……どうして彼を!』

 

 お、おお……何だ、この感覚は。どういう顔をして観ればいいんだ。

 

『違う! ボクは彼を嫌ってなんかいない! 触らないで! もう嫌だ! もうたくさんだ! ケイさんを助けなきゃ……そうだ、聖剣なら! うるさい! 壊れたっていいんだ! こんなものがあるから、こんなことになる! ボクはケイさんを助けてみせる!』

 

 俺が魔力奔流に悶えていた時、こんなことが起きていたのか……おお、魔法障壁に斬りかかった……しかし奇っ怪な気分。ある種の再現ドラマなわけで居住まいを正して視聴しているが、どう見たってアニメはアニメであるからして、アニメファンとして声優の演技や作画、演出なんかにも注目しないではいられない。

 

 んー、良き。とてもよいアニメ。かなり金かかってそう。

 

 推定俺の声優も有名どころなんだよなあ。回想シーンで言葉少なに勇者へ語り掛けていたシーンは「そんなこと言ったっけかなあ」が半分で、もう半分は「そんなに色っぽく切なげな声出さないでくれよ勘弁してくれ」だった。

 

『ケイさん! 目を覚まして! 死なないで!』

 

 あれ? 何で俺がそこにいるんだ? 俺はここにいるのだし、消え去るものだと思っていた。

 

『ああ、よかった! ケイさん! ケイさん!』

 

 しかも生きている……ここまできて、やっぱり偶然だったということなのか? それともアニメだけは俺の実際と異なる?

 

『え、あれ……?』

『ボクはもう迷いません。本当に大切なのは―――』

『ひいっ! あ、あの、どちら様ですか!?』

『―――え?』

 

 だいたい、勇者、聖剣を手にすることもなく魔王軍にやられるんじゃないのか? そのエンディングに納得いかない憤懣が、あるいはこのアニメ版を作らせたのだろうか。

 

『ケイ・ベルソン? 違います。人違いです。俺の名前は、鈴村圭』

 

 は?

 

『ここはどこなんですか? 俺、買い物して、光が丘公園を突っ切って帰ろうと……』

 

 待て。待ってくれ。俺にしては優男の人相で、あの日の俺と同じ服装で、こいつは一体何を言っているんだ。

 

『お、おかしいな? 何この格好。鎖帷子なんてファンタジーみたいだ……ははは……俺はロボットものの方が好みで……今日だって、主人公機のエクストロバージョンが出たから、ゲットして……』

 

 それ、もしかして、あのプラモデルのことか? こっちで目が覚めた時に、手に引っ掛かっていたビニール袋に入っていたやつ。

 

 え、つまり、あれか? 中身が入れ替わったとか、そういうやつなのか?

 

 いや、でも、この顔は俺の顔だ。髪は整っていたし、服装も日本のものだったけれど……身体も萎えていたけれど……俺は俺として光ヶ丘公園で目覚めたはず。ああでも身分証を持っていた。鈴村圭の名義の運転免許証を。この世界の国籍を。他人としか思えなくとも、家族だって。

 

 全部、儀式の事故によるわけのわからない現象と考えていた。異世界が実在するなら、異生活もまたそれらしくねつ造されるものだと。夜に見る夢が、荒唐無稽なりに納得させられるように。

 

 もしかして、違うのか?

 

 何もかもがもっと実際的で……俺の今は、こいつの平穏な暮らしを奪ったものなのか?

 

 ここでCMかよ! いいところで! 知らないし興味ないよ超高級リゾートなんて! どういうスポンサードだよ、客層絶対にかぶっていないだろう!

 

 とりあえず、今の内にトイレだ。水も飲んでおく。見逃すわけにはいかない。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

<???/女性、革命騎士団団長>

 

 

 そうか。次席が死んだか。もとより、どんな顔をした輩かも憶えていないが。

 

 ほう、『粉砕剣』と『無限弾』が練馬へ入ったか。特環も思い切ったものだ。釣り餌がそれらならば相応の討っ手が伏せておろうな。そろそろ皇室の切り札とも斬り結びたいものだ。伝統とは踏みにじらない限り力を放ち続けるがゆえに。

 

「出し惜しみにも困ったものだな? ん?」

 

 返事をしないとは無礼だな。蹴飛ばしてやろう。おう、四肢なき図体はよく転がる。

 

「米帝も似たようなものだろう? 共和党政権のままならば、貴様ほどの戦士がかくも貧弱な装備で送り出されることもなかったろうよ……だから選挙工作を手伝ってやったのだが。皮肉ではないぞ。私は手ずから民主党支持戦力を斬ってまわりすらしたのだ……貴様に邪魔をされたがな」

 

 ふん。ノーマルのM500か。どれだけ弾丸の破壊力を高めたところで、霊威を孕むにいたったM629シグサントスペシャルには及ぶまいに。不憫な。

 

「貴様の躯を大使館へ届けたら、さて、どの程度の戦力を出させられるかな? アスター家辺りを動かせないものかな? どうした、面白かろう? この地でちょっとした世界大戦をやろうというのだから」

 

 この期に及んでも問いを繰り返すか。健気なことだ。通信機があるのはどこかな。

 

「ゲティングス老がなぜこの地に潜伏していたのか、米帝は調べもしなかったのかな? それとも引き継ぎのミスか……先の大統領選には嗤わせてもらったからな……知るがいい。ここは淀なのだ。ビロードのように広がる霊的パワーをつまみ、ねじり、歪ませる力が働いている。ひどく不安定で、好ましくおぞましい」

 

 だから、私がいる。革命騎士団などという無知蒙昧どもを率いて出向いている。

 

 今夜は特に素敵だ。肌が粟立つほどだ。あるはずもない記憶が闘争本能をくすぐってくる。とてつもない軍勢に蹂躙され、皮膚の欠片をすら喰い尽くされる死の感触……涙の微熱……取り返しのつかない罪を犯した無力感をともなって。

 

「貴様、恋をしたことがあるか? どうもそれらしいと思うのだが……んん?」

 

 事切れたか。しかし細胞は生きていよう。咀嚼される感触を手向けてやろう。大使館へは腕の一本をでも放り込んでおくさ。

 

「出でよ」

 

 怪異の類とはいえ馬の顎では、私の時とは違った風かもしれんな。それもよかろうよ。

 

 おい、諸々の始末をしておけ。知るか。席次など適当に繰り上げておけばいい。何なら私に挑んでもいいと伝えてまわれ。全員でかかってきてもいいぞ……冗談じゃないさ。

 

 どうぜ悪い冗談のような今を生きている。

 

 何もかも台無しになってしまえばいい。この夜風に無様をさらしぬいて。

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