更新無いのにお気に入り登録やコメントしに評価までしてくれる人がいてすごく嬉しい…。
エラン・ケレスはここ最近、焦燥感に駆られていた。
彼は本当は『エラン・ケレス』ではなく『強化人士4号』と呼ばれるGUND-ARMを扱う為の改造を施された存在である。
禁じられた兵器であるGUND-ARMを扱う為に何もかもを忘れ、捨て去ったのだが…。
(あの『ゼフィランサス』にGUND-ARMは追いつけない)
既に自分以外の3人を壊した『呪い』は、それを越えて走る流星によってその優位性…強さを粉々に打ち砕かれてしまった。
CEOの4人がどう考えているのかは実験動物兼影武者でしかない『エラン』には分からないが、少なくとも自分を調整しているベルメリアの見立てではあの機体にGUNDフォーマットは積んでいないらしいが…。
(空気が重い…)
更に変わった事といえば決闘委員会の空気感だ。元々決闘委員会の人員は各寮から代表的な者が選ばれる為に、何処か余裕を感じさせる空気があった。が、ここ最近はそれが無い。
エランも自身が焦りを感じている自覚はある。が、一週間程前からシャディクは思い詰めた表情をしている事が増えた。ほんの薄らだが隈があるように見える。
セセリアはずっとつまらなそうな顔をしている。グエルが弄りに一切反応を返さなくなった為だ。
1番変わったのは言うまでも無くグエルで、荒い部分が鳴りを潜めてより実力に磨きがかかっている。驕りの無い余裕の空気を纏い、性格も少し変わったような気もする。
なにより決闘委員会のメンバーはグエルがセセリアに言った
「そんなつまらない事をオレに言って、一瞬の愉しみの為に時間を浪費して。それで満足か?その間にオレは更に先に行くぞ」
という言葉と、その時の眼差しが頭から離れない。
もうグエルは自分達とは違う世界の人間になってしまったと、全員が意識させられた。…その違う世界が自分達より『先の世界』である事に、気付かないふりをして。
別にグエルが自分達を邪険に扱う様になった訳ではない。何なら対応そのものは以前より丁寧な程で、些細な疑問や相談に真摯に向き合ってくれる。他愛のない会話にも乗ってくれる。だが目が大人のそれになっていたというだけで、精神性で上回られているのは実感出来てしまっている。
『流石に早すぎだな。まだ挑戦のステージにすら立ててねえよ』
『何で、何で当たらない⁉︎』
目の前のモニターに映される決闘は一方的な展開だった。グエルの相手は同じパイロット科の2年生だが、その射撃はディランザに傷一つ与えられていない。全て
『狙いが単調で動きも鈍い。一か八かで突っ込んでくる一年の方がまだマシだな、思い切りが悪い』
『クソっ、ふざけーーー』
そこで決闘は決着となった。今まで斬り払いに徹し受けに回っていたグエルがほぼ0からの急加速を行い、ブレードアンテナを切り落としたからだ。
『出直してきな。その腕じゃあホルダーは愚か、アスティカシアのパイロット科卒業なんて名乗れないぜ』
「戻ったぞ」
「お疲れ様。どうだった、今日の相手は?」
グエルが戻ってきて声を掛けるのはシャディクだけだ。セセリアは先の通り、エランは声を掛ける事自体が少ない。
「ビームの試し斬りには丁度良かったが、踏み込みが浅い。教科書通りで工夫も無いし、ありゃ3年になってもどうだか」
「辛辣だねぇ」
「事実しか言ってねぇ。『使われる側』の人間だ、あれは」
「…そこまで言っちゃうか。ホルダー様は違うね」
「当然だ。あの人以外に負ける訳にはいかないからな。もう今日は決闘委員会の業務は無いな?」
「うん、無いよ。自由解散」
「ならもう行く。じゃあな」
その背を見た瞬間、エランは無意識に口が動かし、言葉を発していた。
「待って」
「何だ?」
「…今から行く所、ついていっても良い?」
「意外だな。君はあまりこういう事に興味が無いと思っていたのだが」
シミュレータが置かれている特別訓練室(仮)にて。グエル以外の人物がやって来て、更にそれがエラン・ケレスである事にアムロは少し驚いていた。
「急に連れてきてすみません」
「いや、構わないさ。それで、君は何故ここに?」
「…何をしているか、気になったからです」
知りたくなった。それはエランにとって事実ではあるが、それだけでは無い事に、まだ本人も気付けていない。
「そうか。ならいつもの準備運動から見てもらうとするか。グエル、用意は?」
「いつでも行けます!」
いつの間にかグエルは仰々しい機械の中に入っていた。目を離したのはほんの一瞬の筈だったが…。
「よし、始めるぞ!」
「ッ!」
モニターに投影されたのは射出されたグエルのディランザで、その先には総数にして50のMSが待ち構えていた。ディランザはスラスターをふかし、変則的な軌道でその中心へと突っ込んでいく。
「そこだぁッ!」
振り回させるパルチザンによって敵機は次々と火球になっていくが、当然離れた位置から射撃を行う機体もいる。が、そのビームすらも斬り飛ばして、次々と敵を屠り続ける。
(狂ってる)
GUND-ARMですらこれだけの数を相手にするのは難しいというのに、グエルはカスタマイズされているとはいえ量産機のディランザでここまでの戦いをしている。向けられている射撃も的確にグエルを狙っている筈なのに。
「終わりだっ!」
「よし、記録更新だ。機体の損傷も少ない上に処理速度の向上が著しいな」
「ありがとうございます!」
「このままある特殊な機体と戦ってもらう。機体の状態をリセットする」
画面のディランザから傷が消え、最初の状態に戻る。
そして出現したのは青緑色のアンテナの無い2機のMSだった。
「機体名はガンダム・ルブリス試作型。禁じられたGUND-ARMそのものだ。またそれを持ち出す輩がいないとも限らない、この手の相手は対処法を覚えるなら実践が1番だ」
「了解です!」
動き出すルブリスだが、初手からビットを展開し、かつ一般機の比にならない速度で飛び回る。今のルブリスがどういう状態なのか、エランには分かる。
(最初からパーメットスコア4…!データだから負荷は関係なしか…!)
「速い…だがな!」
射出されたビットは2機合わせて20。人魂の様なそれはディランザを屠るべく追いかけてくるが、届かない。
ビットが吸着し爆発する為には0距離まで接近しなければならない。だがパルチザンは近接武器であるが長く、致命的な距離に入られる前に処理が間に合っているのだ。ライフルでは正確な射撃で1発でビットを破壊しており、近づききる前に落とされるかそもそも近づけないかのどちらかだ。
そのままグエルは武器の優位性をフルに活かしながらビットを斬り落としていく。
(でもあれは360°をカバーできる兵器だ、背後から…)
「甘い!」
背後から迫るビットが吸着する前にビットの側面に向かって蹴りを叩き込むディランザ。音も無く近寄るそれに何故対応出来たのか…エランには理解できなかった。
「幾ら速かろうが、赤10に比べりゃ遅すぎんだよ!」
よく分からない事を言いながらも放たれるビームは高速移動するルブリスに吸い込まれる様に直撃し、2機揃ってパルチザンで胴体から真っ二つにされ爆散した。mission completeの表記が出て、グエルが機械から出てくる。
「ふう…終わりましたよ」
「流石だな、グエル。背後からの殺気も感じられるようになってきたな」
「はい、段々分かるようになってきました。甘い狙いだったのもありますが」
「いや、充分さ。まだまだ磨く時間はある。…申し訳ないが今日はこれまでだな」
「何かあったんですか?」
「ミオリネが正式に地球寮に入る事になったから手伝ってくれとせがまれててな」
「分かりました。今日も有難うございました」
そのままグエルは帰って行くが、エランはそこに立ち尽くしたままだった。
負荷を考慮せず戦う完全なGUND-ARMの敗北。データとはいえそれはまるでその為の犠牲である自分が無意味だと示されたようで、どうすればいいのか分からなくなってしまったのだ。そして自覚した。グエルがガンダムに乗った自分より強い訳はない、と確認したくてここに来たのだと。
「君は戻らないのか?」
「……ッ!僕も戻ります。急に来たのに有難うございました」
「…その身体」
「ーーーー⁉︎」
「いや、何でもない。ただ困った事があれば相談にのるが」
「…大丈夫です。それでは」
足早に去るエランの背を見るアムロがどのような顔でどのような眼をしているのか。エランには分からなかった。
…いよいよ地球でもMS製造計画が動き出した。
1年前に比べてこの寮も明るくなったな…
先生の影響は凄まじい。
ふとした時にMSの改良案とか、考える余裕ができた気がする。
次回、「メカニック、模索する」
…ニカとミオリネの先生への懐きっぷりは見ていて少し面白い。
あと最近よく喋るって言われた。そうでもないと思うけど。
次回予告は
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いる
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いらない