異邦の男とクソ親父   作:舞波@現在進行形ゴールデン

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教え子2号、弟子1号

「えーと、先生こいつは」

 

「地球寮の新入生でパイロット科のチュアチュリーだ。地球寮としては待望のパイロット科生徒だし、折角なら鍛えようかと思ってな」

 

「…それ本当に大丈夫ですか?アレをやらせるんでしょう?」

 

 

グエルの目線の先にあるのはいつもグエルが使用しているシミュレーターだ。グエルがこう言うのも当然で、前に一度ジェターク寮のパイロット科の少女がグエルの訓練を体感したのだが…

 

 

『ちょ、はや、早いっす!ちょこまギャー‼︎』

『当たんないっす、目が回ってきたっす…あっ』

『た、大破したけどなんとかぶっ壊してやったっす…えっ…落ちるー!』

『げ、限界…、うぷっ…』

 

 

…それはもう酷い有様だったのだ。

グエルの頼みで不定期にジェターク寮生に訓練を行っているアムロだが、内容がマイルド版になったのはこの為である。

 

 

「…さっきからあーし抜きで話進めてるけどさ。スペーシアンがやるようなシミュレーターに意味なんかあんのか?」

 

「お前な…よりにもよって最初に言うことがそれかよ」

 

「別におかしな事は言ってないっつーの。『パイロットとして腕を伸ばしたいなら来い』って言われたから来たけどさ、やるのはシミュレーターって初歩の初歩じゃねーか」

 

 

そう悪態をつく大きなシニヨンの少女、チュアチュリー・パンランチからすれば、入寮した時から困惑しっぱなしだった。

 

地球出身の者しかいない筈の地球寮に何故か彼女が嫌うスペーシアンの大将とも言うべきベネリットグループ総裁の娘がいたり、噂になっている総裁の懐刀の凄腕パイロットが寮監になっている等、地球寮とは…状態である。

待望のパイロット科だからと連れて来られたらMSに乗った事も無いような者がするシミュレーターだ。正直期待外れだった。

 

 

「このシミュレーターは見た目通りの特注品でな。普通のシミュレーターとは一味も二味も違う」

 

「でもシミュレーターだろ」

 

「…先生、もう実際にやらせて実感させた方が早いんじゃないですか?」

 

「しかし…さっきグエルが言っていたようにまだ身体がコレを使える程では」

 

「舐めてんのか。こちとらパイロットだ、シミュレーター如きにへばるような鍛え方してないんだよ」

 

「そういう訳じゃない。ただコレは実戦さながらの体験が出来る装置だから…」

 

 

そこまで言ってアムロは溜め息のような深呼吸のような息を吐く。実際、グエルの言うとおり、口で説明するよりやらせた方が早いと思っているからだ。

 

 

「なら早速やってもらう。ただしつこいようだがコレを普通のそれとは思わない事だ」

 

「はいはい、ご忠告感謝しますよっと」

 

 

パイロットスーツとヘルメット持参で連れてこられたチュアチュリーはとっくに着替えており、その大きなシニヨンをヘルメットに押し込んでシミュレーターに乗り込んだ。

 

 

「…あの髪、ああやって入れるのかよ…」

 

 

グエルの呟きは、何処かへ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだコレ…」

 

 

シミュレーターを起動したチュアチュリーは投影された光景に早くも従来のそれとの違いを感じていた。

 

 

「では始めるぞ。最初は感覚を覚えてもらう為にスタンダードのレベル1からだ」

 

「はぁ?基本的な操作は変わんないんだろ、必要無いし」

 

「…後悔しないなら良いが?」

 

「…はいはいやりますよ」

 

 

訓練を始める前に投影された自身の機体のデータが表示される。

 

 

「今回使用する機体はジェガンだ。まだ君の機体は納入されてないからデータが無い。比較的近いこの機体を使用してもらう」

 

「了解、早く始めろ」

 

「よし…開始」

 

 

投影された敵機、ハインドリーが突撃してくるがチュアチュリーは容赦無くビームを叩き込む。結果、呆気なく爆散したハインドリーの後、同じ機体が先と比べて近い距離に現れるが、これもサーベルで切り飛ばして終わった。

 

 

「なんだよ、楽勝じゃん」

 

「では次だ、スタンダードのレベル2、開始」

 

 

出現した数は3機、先程と異なり連携を行いつつ1機が突撃、残り2機が援護射撃をする形になって攻めて来る。

 

 

「いきなり数が…!」

 

「難しいと感じるなら減らしても構わないが」

 

「いや、やってやる!」

 

 

突撃をする機体には先程と同様にビームを浴びせ爆散させるが、向けられる射撃はそれを意にも介さず正確なままジェガンを狙う。

 

 

「……ッ!」

 

 

ギリギリの回避で片方の射撃は回避するものの、もう片方は避けきる事が出来ずに盾に被弾する。

 

 

「気を抜くな、第二波が来るぞ!」

 

「んなっ⁉︎」

 

 

増援として現れたのは先程と同様に3機だが、まだ先の2機は残っており更に増援は3機とも射撃を行う為に距離を取りつつバラけている。

 

 

「クソッ、間に合わない!」

 

 

そうこうしている間にライフルが破壊され、取れる手段も接近戦のみとなってしまう。このまま撃たれ続ければジリ貧だ。

 

 

(このままじゃやられる…!)

 

「……ったく、大口叩いてこれか。無理なら無理って言えよ、別に恥でもなんでもないってのによ」

 

 

そう言いながら2機のハインドリーのコクピットを正確に撃ち抜き乱入したのはマゼンタのディランザ…グエルだ。

 

 

「な…、お前、邪魔すんな」

 

「文句は後だ。残りの3機はお前が倒せ。ライフル失くしたくらいでビビってんじゃねえ」

 

「あーしがビビるか!」

 

「ならさっさと突っ込め」

 

「それじゃあ撃たれてやられちまうだろ⁉︎」

 

「逆だ。ゼロレンジで相手はライフルを撃てない。あとバルカンもグレネードもあるだろ、牽制くらいにはなる」

 

 

詰まるところ、コレは引っ掛けである。距離に余裕があるうちに射撃で落とすと数の不利そのままで残りの二機と戦う事になるが、近接して一機落とせば残りの二機までの距離も先と比べてそう遠くない。向こう側からの射撃は盾で受けて迅速に倒す事が最も簡単な攻略法である。

…勿論モタモタしてるともう一機に撃たれて終わりだが。

 

 

「違ったら承知しねーかんな…!」

 

 

指示通り突っ込んで一機目のコクピットを突き刺すと実際に射撃が止んだ。この隙にチュアチュリーは倒した機体を盾に突っ込む。

 

 

「死ねオラぁ!」

 

 

そのまま蹴りを叩き込み、真っ二つに切り捨てる。そうなれば一対一、この状況で機能で上回るジェガンが下手をした所で負ける状況ではない。

 

 

「あんま性に合わないけどなぁ…!」

 

 

最後はバルカンとグレネードで蜂の巣にして、何とか訓練は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生意気な口利いてすみませんでした」

 

「気にしてないさ。このシミュレーターの凄さが分かってもらえれば今日は取り敢えずそれでいい。明日からより基礎の習熟と体力作りだ、今日はここまでにしてよく休んでくれ」

 

 

鍵を掛けるからと先に帰るよう促され部屋を出るチュアチュリーとグエル。出て息を吐いた瞬間崩れ落ちかけるチュアチュリーをグエルが支えた。

 

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

「…悪い」

 

「気にすんな、オレも最初にやった時はお前より酷い状態だったからな…ま、兎に角送ってやるよ、今日はスクーターで来てるからな」

 

「…それは」

 

「先輩の厚意には甘えるもんだぞ、後輩。まあお前は先生の教え子名乗るにゃまだまだ弱えが…一先ず生徒最強のオレが扱いてやる。先生と話してそう決まった、まずはオレの弟子って所か」

 

 

そう話しながらスクーターを走らせるグエルとそれに寄りかかる形になるチュアチュリー。まだ春の気候故か少しだけ冷たい空気が顔を撫でる。

 

 

「なあ、あの時の射撃、どうやったんだ?」

 

「ただ撃っただけ、としか言えないな。あの訓練をこなしていけばその内自然と出来るようになる。地道に頑張る事だな、チュアチュリー」

 

「…チュチュでいい」

 

「あ?」

 

「チュアチュリーだと長いだろ、チュチュでいい」

 

「そうか。改めてこれから宜しく頼むな、チュチュ」

 

「…宜しく、先輩」

 

 

 

アスティカシアに新しく吹いた風は、青かった。




最近の兄さんが放つ圧が凄く重い。
インキュベーションの時も発表された機体を食い入るように見ていたし、変わったな…
勿論余裕たっぷりでどっしり構えてる兄さんはとても良いけど。流石兄さん。
次回、「CEO、気圧される」
…何であそこまで案という名の文句出されて直さなかったんだ?

次回予告は

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