異邦の男とクソ親父   作:舞波@現在進行形ゴールデン

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皆さんお久しぶりです。
最近創作意欲が戻りつつあるので帰って来ました。
マイペースに続けていくのでよろしくお願いします。


新しい朝を待つなら

「…………」

 

「…………」

 

 

いつもの地球寮。寮監室もといアムロの自室には何とも言い難い重い空気が漂っていた。

事の発端は先日のガイアスを巡る急な決闘の後からニカが沈痛な面持ちをしているのを凡そ1週間ほど見ていたミオリネが

「何があるのか知らないけど言わなきゃ分かんないでしょ、私達がダメならアムロに言いなさい!」

と半ば強引にこの場を設けた為だ。

 

 

「…まあ、諜報部から情報を貰っている以上ある程度話の内容は察せるが」

 

「…やっぱり、知ってたんですね」

 

「あくまでもこれは僕自身が調べた情報ではないから事細かに理解している訳ではない事は承知してくれ。この場で話したい事は三つだ。

君がシャディク・ゼネリと繋がっている事。

君を推薦した企業が零細どころかペーパーカンパニーであった事。

君がここに来るまで何処にいたのか、だ」

 

「…全部、話します。もう取り繕うのも限界です」

 

「それは地球寮の皆に対して、か?」

 

「皆にも、私が元いた場所にも」

 

 

恐らく先の情報はその殆どが正しいのだろうと判断して、アムロは椅子に座り直した。既にニカの顔は罪悪感で塗り潰されている。

 

 

「では、やはりシャディクと君は繋がっているんだな?」

 

「…はい。『彼』との連絡役以外にも、ジェガンのデータ提出を求められました。他にもミオリネさんを地球寮に入る様に薦めたのも、近況を報告する様求められた為です。勿論私に拒否権は有りません」

 

「…そうか。次に君の推薦先だが…登録されている住所には廃ビルが一つあるだけで何も無かったらしい。更に言えば名目上はグラスレー社の下請けの下請けになっていた。これは先の繋がりと関係のある話か?」

 

「はい…彼は元々孤児で地球の出身です。そこから『組織』と繋がりを持ったんだと思います。そのペーパーカンパニーも私を学園に入れる為の装置でしかない筈です。それに…」

 

「それに?」

 

「もし彼が『組織』との繋がりを疑われても、私とその会社を切れば良いから」

 

 

アムロは久方ぶりに感じる不快感を頭の片隅に押し込みつつ話の続きを促した。

 

 

「…最後に…君が元いた『組織』とは?」

 

「…反スペーシアン組織『フォルドの夜明け』です。『彼』…代表であるナジ・ゲオル・ヒジャは私の義父です」

 

「…………それなりに『裏』では名の知れた存在だが、思っていたより迂闊らしい」

 

「……えっ?」

 

「本当にベネリット社の諜報部門は軍のそれに劣らぬ程優秀でな。それを使い熟すデリングも大概とんでもないが」

 

「あの…」

 

「先に言っただろう?これはあくまで『確認』に過ぎない」

 

「じゃあもしかして…」

 

「情報としては知っていたし、それにミオリネに促されずとも近日中にこのような場を設けるよう言われていた」

 

「…そうですか…じゃあ、私退学ですよね?私の言った事がどれくらい信用されるかは分からないけれど、裏は取れたんですし…」

 

 

そう言ってまた俯くニカの頭を軽く撫でながら語る。

 

 

「拒否権は無い、というのは真実だろう?世の中には、自分のした凶行を集団に正当なモノだと信じさせる者もいる。目的の為だ、と言いながらな。

その顔を見れば分かるさ。それに君は自分を過小評価している」

 

「過小評価…ですか?」

 

「既に君にはジェガンのデータ収集やスタークジェガンの改修案という実績がある。それに考えてもみろ、一生徒がデリングに名前を覚えられるなんて本来あり得ない事だぞ」

 

 

地球寮の面々からすればすっかり『仕事に厳しいが柔軟な思考を持つ子煩悩で似た者親子な父親』、という認識になってしまっているが、世間一般から見たデリングは『元軍人の独裁者』である。

 

 

「君はあいつに期待されているんだ。間違いなくな。俺から見ても君は腕のいいメカニックだし、このままこの学園で研鑽を積んでほしい」

 

「でも、私…」

 

「この学園から去りたいか?それとも残りたいか?どちらでも良い。どちらの道も取れるようにする」

 

「なんで…、」

 

「ん?」

 

「なんで、そうまでして助けてくれるんですか…」

 

「『僕』を助けてくれる『誰か』はいなかったからな」

 

 

脳裏に浮かぶのは沢山の大切なものと出会い、別れ、失った、たった3ヶ月の事。アムロはかつて、戦うしか無かったのだ。

死にたくなくて、死なせたくなくて必死だった。

 

 

「君は『そこ』から逃げて良いんだ。誰も咎めはしない」

 

「私…」

 

「あー、もう‼︎」

 

「「⁉︎」」

 

 

場の空気を引き裂くけたたましい音をドアから出しながらずかずか部屋に入って来たミオリネは酷くご立腹の様だった。

 

 

「鍵を掛けていた筈なんだが」

 

「ハロを脅して開けさせた!そんな事より、ニカ!」

 

「は、はい⁉︎」

 

「あのヘタレ馬鹿とクソな義父に嫌な事させられてたとか盗み聞きさせて貰ったけど」

 

(殆ど全部じゃないか?)

 

「あんたはどうしたいの⁉︎ハッキリ言いなさい!」

 

「み、みんなといたいです!」

 

「ならこのまま居なさい、学費は全部クソ親父が出すわ!」

 

「ちょっと待て、どうしてそうなった?」

 

「スタークジェガンの報酬は学費無料にしろって言ったら二つ返事だったわ」

 

 

要は、ミオリネは最初からニカを逃すつもりは無かったのである。

父譲りの『言われる前にやる』行動力は伊達ではない。ついでに言えばこの件に関してはデリングも関係者なのでよりスピーディーに進んでしまった様だ。

 

 

「…ま、色々思う所は有るだろうけどさ。テロリスト絡みのゴタゴタなんてうちの父やアムロ含めた大人に投げれば良いのよ。そうでしょ、アムロ?」

 

「そうだ。確かに俺個人では大した事は出来ないが、頼れる人達はいる。まして子供が背負うには重いそれを取っ払ってやる為に手を差し出すのを厭う奴は大人じゃない。後は君が今を塗り替える勇気を持つだけだ」

 

「……ありがとう、ございます…」

 

「じゃあもうこれで一件落着。辛い事があったならさっさと私に吐けば良かったのに、本当バカね…」

 

「ばかじゃないもん…」

 

 

赤子をあやす様にニカを抱きしめるミオリネに目配せを行って、アムロは静かに部屋を後にした。その後は広間で2人が戻ってくるのをのんびり待っていたのだが、結局3時間の間、2人は出て来なかった。

 

 




一先ず目下の憂いは片付けられたか?
ニカの件は根の深い問題だが、俺自身は彼等に何をしてやれるだろうか。
…この時期に水星からの編入生?
妙な胸騒ぎがするな。
次回、「呪いの光、灰の星より」
まさかあのMSは…!

次回予告は

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