ベネリット社、開発ドック。アムロとνガンダムによってもたらされた技術によって開発されていた機体は試作号機のテストも完了し、現在はその量産モデルが開発進行中だ。
また、同時進行で工業機械としてMAが開発されている。此方も現在量産に向けた改良が続いている。
「お疲れ様ですな。アムロさん」
「お疲れハヤト。MAの方ももう少しだな」
アムロとやり取りする中年の男の名はハヤト・イチジョウ。この開発ドックを仕切るドック長である。
「あ、聞きましたよ。アスティカシアに赴任するんだそうで?」
「一応教官としてだが本職には劣るし、実際はミオリネのお目付け役だな。まあストレス解消に付き合ってやれ、という言外のお達しだが」
「持っていく機体の件は聞きましたかい?」
「特別にチューンしたデミトレーナーか、Gの試作量産型じゃないのか?」
「いやそれが『ゼロワン』にしろとデリング総裁から直々に命令が来まして」
「『ゼロワン』をか⁉︎あれはとてもじゃないが教導に使える機体じゃないぞ」
「勿論承知の上でしょうな。それに必要になるかも、というなら尚の事で…」
「…ミオリネの身柄を強硬策で奪いに来る輩か。恨みか、金か。何方にせよ針の筵は避けられないか…」
言うまでもないが独裁者であるデリングの周りに彼を恨み妬む者は非常に多い。ミオリネに護衛が付くのも当然の事であるのだが、学校とは小社会かつ閉鎖空間である。まして将来家を継ぐか関連企業で働く生徒達が殆どである以上、未来社会の尺図でもある。
「MSすら駆り出す輩がいないとも限りませんからな。ならばアムロさんの要求水準を満たした『ゼロワン』を、という事でしょう」
「そういう事が起こるかもしれないと考えた事はあったからな…命令である以上従う他はないし、喜ぶべきことかもな」
「それまでに量産モデルの方もカタをつけたい所ですな」
「MAは量産モデルも含めて完成したから、暫くはそちらに注力する事になるだろう」
これは先んじてベネリット社から発売された人型重機
「ガンダリウムの本格的な精製が始まった以上、よりMAとMWの重要性は高まっていく事でしょう」
「ここからだな。…ところで、開発側的には『ゼロワン』を持っていって構わないのか?」
「最終調整も背中のアレも調整完璧ですんで。デモンストレーションの準備は万全ですよ。早くデータが欲しいくらいです」
「…本当、良くやってくれたと思うよ」
「まあ仕事は増えましたがね。ドミニコス隊の連中の注文が増えること増えること」
超人的なパイロットであるアムロとの模擬戦は彼等にとって金にも勝る経験を与えてくれるものであった。実際に隊全体の練度は著しい向上を見せている。
「世話をかけるな」
「頼られてナンボのメカニックですよ」
「ふむ…」
場所は変わって総裁室。アムロを捩じ込む為の書類の確認をデリング自ら行っていたのだが、そこで気になる点を見つけたのだ。
「…あまり良い環境ではないな」
そう評されたのはアスティカシア学園の地球寮だ。
アムロ本人から地球出身である事を聞いていたデリングはまだアスティカシアにスペーシアンの教員しかいなかった事を思い出し、余計なトラブルが発生しないように地球寮に教員部屋を作ってそこをアムロの自室にしようと考えていたのだが、あまりにもアーシアンの設備に金が使われていない事に顔を顰めた。
そもそもデリング本人はスペーシアンであるが意外な事に差別意識は無い。徹底した実力主義であるが故に出身など飾りでしかない、と考えているからだ。
だが地球の企業は総じて金が無い。そこにアムロを置くのは些か気が引ける。それにミオリネを何処の寮に入れるかと考えた時に、御三家とはある種別枠である地球寮に入れるのも選択の一つだと認識していた。
取り敢えず今回も強権を使って地球寮を整備するよう命じる事に決めて、執務机の上にある籠に積まれたトマトを手に取った。赤く熟れたそれをこの部屋に置いた人物など1人しかいないだろう。
「…人の強さに地球も宇宙もない。ならば例の量産機を回して地球を活発化させるのも手か……地球を目指すのならば、励めよミオリネ」
小さく呟いてトマトに齧り付く。これは不器用かつ似た者親子の物言わぬやり取りであった。そして机の上に置かれた一枚の書類。
そこには持ち込む予定のアムロ用MSについて書かれていた。
その名は
ガンダム試作1号機、略称
この世界の始まりのGUNDAMの名だった。
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ハヤトさんの名前の元ネタがわかる人いますかね?
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