アムロがアスティカシアに来てから数日後。既に教員達との顔合わせも滞りなく済み、住んでいる地球寮の面々ともそれなりに打ち解けている。尚、初対面の時の地球寮寮長のマルタンからの第一声は
「うちの寮に住んでくれてありがとうございます!」
だったが。実際、ボロが目立っていた地球寮にアムロが住むからと公私混同甚だしい理由でデリングが押し進めた改築によって部屋数も増え、ハンガー増設、既存設備は新しいものにリフォームと地球寮寮生にとっても至れり尽くせりといった所だ。今日は新入生が入寮する日であり、顔合わせの日だ。
「マルタン、今日来る新入生は確か3名だったな?僕は席を外しておいた方が良いかい?」
「あー、じゃあ少し時間を空けてこっちの自己紹介が終わるまで待っててもらって良いですか?」
「構わないよ」
生徒達の初対面の時に教員の自分がいては微妙な空気になるだろうと思い、席を外す事にした。行き先は自室、本日の定時報告を行う為だ。
『学園はどうだ』
「深い差別の根を感じたな。まさか地球出身だと言っただけであそこまで空気が変わるとは流石に思わなかった」
『宇宙と地球の格差は事実であるが、それは個々人の能力に大きな影響を与えるモノではない。大多数のスペーシアンはその錯覚で偉ぶっているだけだ』
「…浅ましいな。宇宙に浮かんでいるだけで、地球を嗤えるものか。ジェガンの件、まさか」
『そうだ。最近の業績を悪化させ赤字を出しているのはどれも宇宙側の企業でな、危機感を与える為…言ってしまえばテコ入れだ』
「ジェガンのデータを地球側に与えて競走を促進させる、か」
ベネリットグループ内で最近赤字をたれ流している企業は大概が宇宙側だ。微量ながらも黒字を伸ばす地球企業と赤字を出す宇宙企業、どちらが評価されるかは言うまでもない。
『パイロット科の生徒がいない以上戦闘のデータは取れんだろうが、アレの出来ならば操作系さえ分かっていれば誰にでも操縦できる。何ならパイロット科が入るまでお前が動かしても良い』
「…あれはチタン製合金な上に宇宙産のパーメットを使用していないから、ある意味地球向きの機体だ。まさかそこまで読んでか?」
『当然だ。ジェガンの部品、或いはジェガンそのものを作るも良し、それを元に地球産のMSを作るも良し。何れにせよ最新鋭の機体であるジェガンを利用して結果を出せるならば、MS1機など私としては安い投資だ』
「生徒達に経験を積ませると同時にそこから地球側へデータを流し、更に競争の加速と危機感を煽る、か。流石だな、デリング」
『フン…で、だ。決闘委員会についての話だ』
「やはり決闘制度を使ってあれを奪おうとしてくる者はいる…という話か?」
『話が早い。決闘の賭け対象にMSも入っているが、今の地球寮生徒ではジェガンを守りきれん。よって、お前が赴任する3年間に限り地球寮にパイロット科の者が来るまでお前が代理として決闘を受けろ』
「勿論命令、だろう?あの子らにとっても貴重な経験になる。負けはしないさ」
『お前がいて負ける事など結果の捻じ曲げ以外に有り得ん』
「はは、ご期待に応えるとしよう」
ゴロゴロと転がる音が近づき、止まったと思えば高い声の機械音声が聞こえる。
『アムロ、ヨンデル、ヨンデル』
「…そろそろ時間か。生徒達にジェガンの件はいつ話す?」
『1週間以内だ。その間ならお前に任せる』
「分かった」
通信機器の電源が落ちるのを確認しドアを開ける。足元にゴロゴロ転がってきたのはアムロのハロだ。あまりにも流暢に話すハロに最初見た時はこの世界に来て1番のショックを受けたものだが。
ちなみにこのハロは故障して廃棄予定だったのをハヤトが持ってきて暇潰しにどうだと渡されたものだ。アレコレカスタムされており、馴染みあるカタコト音声になっているのもその一つで、アムロの数少ない私物の一つである。
「ハロから見て新入生のみんなはどうだ?」
『イイヤツ!イイヤツ!』
「そうか。…彼らにとって良い学園生活にする為に、俺も気張らなければな」
当面のアムロの業務はミオリネのお目付役とゼフィランサスのデータ取り、教官の3つだ。尚、アムロの技量故に実践訓練での教導が主になる。…が、1年生を相手にするには技量があり過ぎるので2年生を担当する事になるのだが。
次回はみんな大好きグエルくんの視点かな?
この小説、ガンド否定派のクソ親父サイドなので基本エアリアル等の本編の考察に行かないんですよね。もしよろしければ感想と一緒に一言二言でもついでに聞かせてくれると嬉しいです。
次回予告は
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いる
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いらない