謎の男、アムロ・レイを探れ。これが新学期に入って父から受けた命令だった。ジェターク社の御曹司でありパイロット科2年のグエル・ジェタークはその内容に内心困惑した。今年から入る新任の教師に一体何があるというのか…ほんの一瞬硬直した後了解した旨を伝えた後で開示されている情報を弟のラウダと確認していたのだが…。
「所属がベネリット社?アーシアンで地球寮住まい…何だこの経歴」
「経歴が完全に伏せられているなんてそう簡単に出来る事じゃない。恐らくデリング総裁の強権によるものだと思われるけど…」
「クッソ、解らねえ。この男1人に何故こんな真似をしたんだ?怪しんでくれって言ってるようなもんだぞ」
「…一応パイロット科の教官だから関わる機会はある筈。2年生を担当するかは不明だけど、最低限の接点はある」
「…場合によっては決闘を申し込むか?」
「兄さん、それは…!」
決闘制度。ここ数年の間で採用された制度であり、成立さえしてしまえば勝利の事実のみをもって如何なる要求をも飲ませる事ができる。ここに教師・生徒の境は無く、勝つ事が出来るならば打ってつけの制度であった。
「事を急いでは仕損じるよ兄さん。まだ様子見をしても良い筈だ」
「…そうだな。デリング総裁お抱えのパイロットが楽な相手とは思えん」
この日は一先ず様子見をした上で、寮の生徒にも何かアムロ・レイの情報が入ったら伝えるように話を広めたのだが…。
「今年から3年間、このパイロット科で教官として務める事になった。アムロ・レイだ。よろしく」
まさか自分達の担当になるとは想像していなかった。新任の教師である以上、1年を担当するものだと考え、寮の1年に探るよう伝えたのだが…。更に想定外な事に、この授業は新任教師への質問時間となった。
(意味が分からねえ…隠してた意味って本当に何だよ)
疑問符が脳を埋め尽くすが、その一方で生徒からの質問を返すアムロの声を聞き流す事はなかった。
「どこ出身なんですかー?」
「地球生まれ地球育ちさ。燻っていた所をデリング総裁に拾われてな」
「アーシアンでもアスティカシアの教師になれるんですねー」
「前職は何をしていたんですか?」
「軍人だよ。尤も、特殊な立場だったが」
「どんな機体に乗ってるんですか?」
「教師の立場ながらワンオフに乗せてもらっている。どんな機体かは…決闘でも挑まれない限り明かせないな」
「じゃあ先生ってーーーーどれくらい強いんですか?」
少しだけ周囲の空気が変わった。正直な話パイロット科生徒としてのグエルが1番気になっていた点である。時に武力行使すら厭わない独裁者であるデリングがここまでするパイロット。実力が無ければあり得ない境遇なのだ。
「…そうだな…ドミニコス隊全員と戦って勝てるぐらい、かな?」
「全員に勝てるんならすごくない?」
「タイマン最強?」
「実力あるんだねぇ」
「いや、ドミニコス隊全員対俺で模擬戦して勝った、という意味だが」
『ーーーーー!』
ドミニコス隊。監査組織カテドラルお抱えの部隊であり屈指の精鋭が揃う、最強部隊の呼び声が高いエリート集団であり…グエルの目標である。その全員が一斉に襲ってくる戦場で勝つ。
ありえない。この空間の生徒達の思考は同じだった。
だがグエルには分かった。この男が嘘をつく時の眼をしていない事を。
なら…
「先生」
「君は…現ホルダーのグエル・ジェタークだったな?」
「はい。先生、質問を一つ、して良いでしょうか?」
「余程の事が聞きたいようだが…答えられる事なら」
「オレと決闘してくださいませんか」
驚愕の視線がグエルに突き刺さる。ラウダは正気か、と目で訴えかけている。だが試したくなったのだ、目の前の男を。真実であるなら自分自身の腕を。ずっとずっと幼く無邪気だった頃に見つけた、未知を楽しんでいた自分を思い出すように。
「受ける分には構わないが…君にも俺にも賭ける物が無い」
「勝ったら先生にはまだ開示されていない秘密を話してもらう。オレが負けたら…何でも要求すれば良い」
「なら…決まった。君は優秀なパイロットなんだろう、御曹司でもある以上いずれ如何なる形であれ人の上に立つ筈だ。だから君はアーシアンに対して差別をしないでくれ」
「…そんなので良いんですか」
「教師としてそんなつまらないモノに囚われて欲しくないという切なる願いさ」
「…分かりました。その条件で…」
こうして新年度最初の決闘は成立した。この話は瞬く間に学園に広がり、新任教師と現ホルダーの決闘という事も相まって最早当然と言わんばかりに授業は流れ、誰もが決闘の始まりを今か今かと待っていた。
『兄さん、相手のきっと新型だ。くれぐれも…』
「分かってる。勝つ。勝ってみせるさ」
グエルは既に自分専用のディランザで待機していたが、肝心のアムロがまだ来ない。逃げたとは思えない為にそれだけの『何か』がある機体なのかと思考を巡らせていると通信が入る。
『すまない。少々時間が掛かってしまった』
そう話すアムロが乗るMSに誰もが言葉を失った。
2本のブレードアンテナにツインアイ。トリコロールカラーに彩られ羽のようなブースターが2つ。目立つ白に傷は無く、『汚れる事は無い』と言わんばかり。
神話の英雄達は皆、こうして視線を釘付けにしたのだろうかとすら考えた。
グエルが正気に戻ったのは決闘立会人のシャディクの通信が入った時だ。
『この決闘、シャディク・ゼネリが立ち合わせてもらう。勝敗は…今更言うまでもないが、ブレードアンテナの破壊だ。それでは双方、口上を』
『「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず。操縦者の技のみで決まらず。ただ、結果のみが真実」』
『
「行くぞ‼︎」
グエルは、GUNDAMの始まりの当事者となる。
次回はようやっと決闘開始です。
本編で無双するグエル君超見たい。
次回予告は
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いる
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いらない