(当たらない…!)
決闘開始と共に勢い良く突っ込んだグエルだったが、ライフルから発射されるビームを掠らせる事すら出来ずに翻弄されていた。
無論、グエルも無意味に突っ込んだ訳ではない。
ブレードアンテナを破壊する事が勝利条件の決闘に於いて、射撃装備でそれを狙うのは難しい。動く相手の頭部に直撃させなければならないが、そうやって勝った事はホルダーであるグエルですらほんの数回だ。
となれば決定打を与えやすい近接戦が自然と多くなる。が…
(迂闊に近づいて良い相手じゃねえ…それにあのブースター、仕掛けて来たら一瞬で勝負が決まる…!)
『機体の特徴を見て戦術を考察。隙を晒さないよう動きつつ戦術を練る、か。一対一の戦場ですべき事は良く出来ているようだ』
アムロから現時点での自分の動きを評価する声が入るが正直な話、どれだけの余裕があるのかと戦慄する。
ディランザの射撃装備は胸部バルカンとライフルの2種類。無論濃密な弾幕を張ることは出来ないのだが…当のアムロは最小限の動きでそれを避けており、じっくりとこちらを観察していた。
そしてそれを実行出来るゼフィランサスという機体の異常なまでの過敏性…あのスラスターは伊達ではない。
『さて、そろそろいいかな。デリングからは派手にやれと言われている、少々大人気無いが…勝たせてもらう』
「‼︎」
急速に後方に旋回するアムロを視界の中心に捉えながらもその速度に驚愕する。爆発的な加速性能はペイル社のMSすら軽々と上回っているように見えた。
(ふざけてやがる…どんな性能してんだ⁉︎)
『行くぞ!』
盾すら構えず突撃してくる相手にひたすらライフルを撃ちまくるがそのままの速度で避けられる。欠片も減速せずに突っ込んでくる相手に近接戦用のビームパルチザンは相性が悪いと判断し、すぐさまアムロに向かって投げつけるが、これも当然のように躱される。
急いでビームトーチを引き抜いた時には既にサーベルを振るアムロが眼前に迫っていた。
『そこぉ!』
「うっ⁉︎」
防御動作を行う前にグラリと揺れた視界に何が起こったのかと思案した瞬間アラートが鳴り響く。既に視界にその姿は無く、何処にいるのかと探す間も無く強い衝撃が襲う。ようやく確認したその内容は…肘から先の腕、足の付け根から先の喪失であった。先程の衝撃は文字通り手も足も切り飛ばされ胴体のみが地に落ちたが故のものだったのだ。
(これが…最強…のMSパイロット…)
そして視界が消え、作動したサブカメラが映し出したのは撥ねられ、宙に浮く頭部を撃ち抜かんとライフルを掲げる白いMSの姿だった。
爆発する頭部と共に決闘の結果が映し出されるが、グエルはあるものに思いを馳せていた。
「あの映像で…1人で戦ってたのは、本当に先生なんだな…」
グエルが入学する少し前に見つけたある動画があった。一機のMSが瞬く間に襲い掛かる敵機の群れを無力化する…最初に見た時は合成で作られた何者かのフェイク映像なのではと疑い、それでも忘れる事が出来なかったのだ。その後いくら探してもそれは見つからず…夢でも見ていたのかと思っていたのだが…。
「…なんて偶然…、いや運命だ…」
言葉が零れる中、アムロから通信が入る。
『手荒くやった身で言うのもなんだが、無事かグエル』
「ええ、大丈夫です…」
なんとかそう返しながらコクピットを開く。視界に映る白いMSに汚れはない。散った羽根飾りに一刀で切り伏せられたディランザの四肢。その中心に立つその姿を見た時、これこそが真に目指すべきものだと感じ何処か眩しさを覚えながら、グエルはポツリと呟いた。
「…これから2年間、よろしくお願いします。アムロ先生」
その眼には、未来を担う心の光があった。
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