今回は前話の続きからです。
決闘が終わり放課後、グエルはアムロに呼ばれ地球寮に向かっていた。ホルダーについての話、らしい。
そもそもホルダーは学園最強にしてミオリネの婚約者の立場であるのだが、今回グエルが戦ったのは教師のアムロだ。
一応、決闘そのものは成立しているし、正式な場で負けた以上はホルダーがアムロに移るものと考えている。
「ここか…」
到着した地球寮はデリング総裁のテコ入れによって綺麗にリフォームされ、大きさこそ他寮に劣るものの設備自体は最新式のものへと改装されている。それに対してつまらない文句を言うジェターク寮生もいたが…。
「すまない、誰かいるか?アムロ先生に呼び出されて来たグエル・ジェタークだ」
「あ、どうも地球寮長のマルタン・アップモントです。アムロ先生からあなたが来るのは聞いてるので案内しますよ」
「頼む」
案内されながら歩く地球寮は他寮に比べて豪華という訳ではないが、落ち着いた雰囲気の過ごしやすそうな空間だった。…グエルは上流階級の人間であるが、豪華や贅沢とは無縁な空間はジェターク寮には無いもので、少しだけ羨ましく思った。
「…結構な大改装だったんだな」
「はい。アムロ先生が地球出身だから地球寮に入るってなったらしくて。でも以前の地球寮には個人用の部屋なんて無かったので」
「如何に業績を伸ばしていてもここまで金が回らないか…」
「…地球企業の業績も把握してるんですか?」
「どちらかと言えばこの手の話は弟の領分だがオレもジェターク家の御曹司なんだ、表面上の数字ぐらいは把握してる。それに数が多いとは言え最近赤字を垂れ流してるのは宇宙側だ、地球は総裁からしっかり評価されてるって事だろ。…意外だったか?」
「べ、別にそう言うわけでは…」
「気にするな。それに決闘の上で『アーシアンを差別しない』のが先生の提示した条件だ、そういう事にしておけば良い」
「…じゃあ、そういう事にしておきます。ここですよ」
話しながら歩いている内に着いたらしいアムロの部屋は生徒達の部屋からは少し離れた位置にあった。
「では、僕はこれで」
「ああ。案内ありがとよ」
マルタンが去った後、4回ドアをノックする。
「アムロ先生、いらっしゃいますか。グエル・ジェタークです!」
「入ってくれ。わざわざ呼んですまない」
グエルにとっては、ここからが本題だ。
アムロは地球寮の寮監であるが故に、自室の一部が応接室を兼ねている。2人はそこで対面する形で座っていた。
「早速だが本題だ。ホルダーの座は誰のものか、という話だが」
「…その言い方だとアムロ先生に移動する訳じゃなさそうですね」
「そうだ。今まで明言されていなかったが、ホルダーの対象となるのは生徒のみとなっている。要は生徒最強の称号だな」
「ならホルダーはオレのままって事ですか…」
生徒最強の称号。エリートが集まるアスティカシアに於いてそれは充分誇れるものであるが、グエルは釈然としない様子だった。
「言いたい事があるなら幾らでも聞こう。俺は君の教師なんだからな」
「…なら、言わせてもらいます。アムロ先生に手も足も出ずに負け、そのアムロ先生を含めない中での最強。そんなものに、何の価値があるんですか」
「…成程。君は僕が思っていたよりも更に高潔なんだな」
「茶化さないでください」
「茶化してなんてない。負けたのにも関わらず守られる今の地位に、情けなくて仕方ないんだろう?」
「!」
「分かるさ。昔の僕にも『勝ちたい』と思った人がいた。そのままでなんていられなかった。越えたかった」
「…はい。オレは…アムロ先生に勝ちたい!」
「そこでもう一つ話がある。ホルダーの実態と、そのメリットについてだ」
場の空気が変わったのを感じたグエルは姿勢を正した。真っ直ぐだなと思いつつ真の本題を始める。
「表向きホルダーはミオリネと婚約の権利を持つ者、とされているが…実際に求められているのはピエロとしての役回りだ」
「ピエロ、ですか?」
「ああ。もし仮にホルダーになった人間の何かがふさわしくないとデリングが判断したら、後でホルダーそのものを抹消する事もある」
「つまり、ホルダーになっても婚約者になれるかは分からない、って事ですか」
「そうだ。だが君は卒業するまでホルダーであり続ける可能性が高い上に、家柄も良く人格に大きな問題も無い。だから君には真実を話す事にした」
ミオリネの婚約者は現状、未定となっている。ホルダーすらもその対象とされていない。精々、デリングが候補の一人として一考するぐらいだ。
「そしてメリットについてだ。これは君自身にとっての、だが」
「オレ自身の…」
「先の話をした事もそうだが、もし君がこのままホルダーであるならデリングにひっくり返されない可能性は高い。ならいっその事君にホルダーであり続けてほしいんだ」
「それは分かります。もしこの話を父さんや他の大人にしたら大騒ぎになるし、強引な方法でミオリネに迫る輩が出てくるかもしれない…結局、オレのメリットって何なんでしょうか…?」
「俺が君に特別授業という名の訓練を行う。君は目標であるドミニコス隊に近づくし、ホルダーが不落であるならミオリネにそういった面で危険が及ぶ心配も無い。それに教師が授業を行う事に文句を言う輩はいないだろう?」
「そうですね…その話、受けます。先生程の実力者直々に訓練してもらえるなら文句はありません」
「決まりだな。訓練は時間が空いている時ならいつでも来て構わない。とっておきを用意しておこう」
「はい!改めて、よろしくお願いします!」
こうして、アムロはこの学園で『教え子』を得た。
明言されない限りは、基本妄想成分9割でこれからもお送り致します。
次回予告は
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いる
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いらない