超昂大戦SS 超昂戦士・全感情エナジー化計画、ここに発動! 作:環 藍河
一方、今夏のイベントシナリオ「夏に咲く雪月花~129940日目の告白~」から新登場のキャラに関する内容が含まれます。未見でネタバレ懸念の方はご注意を。
「ハイ、そんなわけで、みんなのADDDからエナジー回収が見込めるドキドキ、既に抽出済みです!」
「【〘『ぎゃあーーーっっっ!!?』〙】」
突如、ラボに強制召喚されたエスカチームの4名は、さやかに告げられた一言で羞恥の悲鳴を上げる。
「何よ〜、今さら恥ずかしがることも無いじゃない? Dチャージの効率化のために、とっくにみんなの性的昂奮は解析してきてるんだし。」
「心を覗かれて恥ずかしいのは、えっち絡みだけじゃないでしょーっ!?」
エリーの必死のツッコミも虚しく、話が進む。
※なお、ダイビートの戦士はその辺、異議を申し立てない雇用契約になっている。本来はダイビート側が各戦士の性格や性向を暴露しない守秘義務なのだが、今回は戦士側不利。
「まあまあ、ご心配なく。幸い4人とも、『◎◎心でチャージしてます〜』って他人に知られて、恥ずかしくなるような心じゃなかったから。」
…ごくり。
「まず、アカリちゃんの心から強いエナジーを採れるのは…『勇気』よ!」
「は…はいっ!」
トキサダに初めて出会った日から…恐れず、ためらわず、いつもはじめの一歩を真っ先に、果敢に踏み出すアカリ。
その強い心は、きっと強力なエナジーを生むはず。
「次っ。ヒビキちゃんのはズバリ『忠誠心』!」
「あっ…!」
誇りを持ってトキサダに仕え、不惜身命で任務にあたる、ヒビキの揺るぎない心がエナジーになる…!
「続いてうららちゃんのは『正義感』ね。」
「おっしゃああっ! さすが私っ!!」
行動原理は常にジャスティス、ヒーローたらんと動くうららなら、常時エネルギー生成も夢じゃない…?!
「ラスト、エリーちゃんのは『リーダーシップ』!」
「えっ…、私のだけ、ちょっと重くない…?」
しかし、エリザベス派とNAUグループを束ね、若くして魔女たちの舵取りを担うエリーなら…!
「以上、4つの心でこれから3日間、どれだけD2エナジーが取れそうか、記録を取ります。勇気と忠義と正義と責任感…どんどん発揮してねっ!」
「や…やります!」
「ふふ〜ん、平常運転でオッケーよっ!」
さやかの呼びかけに、前向きなアカリとうらら。
その一方で。
「い…一層、若頭領への、忠義を…?」
「んー、箱舟のお仕事、頑張ればいいのかな?」
当惑しながらも決意を新たにするヒビキとエリーだった。
…
……
3日後。
「さやかさん? 実験の結果は…」
「い…いや〜、悪くはないんだけど、どうも今ひとつ冴えないんだよね〜。」
…芳しくない、らしい。
「…で、でも、3日間のデータはムダじゃないよっ!? むしろ貴重、貴重っ! ホント、4人とも、ありがとねっ!」
…饒舌である。不自然なまでに。
その結果。
…
……
「またも研究成果を隠蔽した科学者を拘束しました。これより尋問を始めますので、立会をお願いします。」
「な…ナンノコトカナー…?」
「申し遅れました。我々は、従来型の性的昂奮によるDチャージ至上主義を是とする、秘密結社・DDD団であります。」
…際どいアンドロイドジョークを放つマドカと、助手のななかに両腕を脇で固められ、頭以外ダメダメな研究者が、司令室でうなだれる。
「被告人。結局、エスカチームのD2エナジー採取は、失敗だったのですよね?」
「し…失敗じゃないわよっ! エナジーは採れたんだからっ!」
検察官マドカの冷静な言葉を、ムキになって否定するさやかだが…
「ならば、4人になぜ真実を告げないのか。その謎を解く鍵が2つあります。」
(げっ…!?)
マドカがモニターに表示した映像は、いろんな閃忍やら魔女やらに追加実験を呼びかけるさやかの姿。
「この科学者、昨日から後付けで対照実験を始めていやがりました。具体的には、エスカチーム以外でも勇気や忠誠心や正義感やリーダーシップを強く持つ戦闘スタッフを調べ始めていやがったわけです。」
「ぐうっ…!」
「既にADDDを装備している戦士や久世だけでなく、魔女や閃忍まで巻き込んだのは、迂闊でしたね。」
淫力とD2エナジーとは干渉し合うため、閃忍にADDDを装着してもエナジーは取れないのだが…
『はいはいはーいっ! 頭領のためなら、チルカは喜んで協力しまーす!』
『ふーん、このリコリス様を試そうと…?
まあ、最近退屈してたところだし、トキサダの為になるなら、やぶさかでないわよ。
あ、サイカ。お前も協力しなさい。』
『わ…わたくしもですか?』
…頭以外ダメダメ、尻尾を掴まれない隠蔽工作など微塵も考えないさやかは、四方堂三姉妹はじめ各方面に声をかけ、ドキドキのデータをとりまくっていた。
「あの3人のデータから…何が分かるんだ?」
「はい、その立証のため、検察側証人をここへ。」
メイドでDDD団で検事のマドカが、合図する。
「いやあ、実に興味深いねえ。」
「あははっ、トキサダくーん、ようけエグいデータやったわー。」
NAUの科学者コンビ、ルカとプカルル登場。
「こちらが2つ目の鍵。このダメダメ研究者が獲得したドキドキのデータを、私がハッキングし、お二人に解析を依頼したのです。」
「あ…ありえないわっ! 堅牢に暗号化して…」
「その堅牢な暗号化の解除キーが、よりによって生体認証でしたからねえ…」
「お姉様を呼ぶまでもなく、あたしの指紋と虹彩で一発だったわ。…てか、アホなの?」
「ぬ…ぬかったわあああっっっ!!!」
高円寺さやかと生体データが100%一致する人物が3名(沙由香・ななか・ユカ)もいる世界線ゆえの悲劇である。
「まず…ヒビキ君に試した『忠誠心』と思しきエナジーだが、確かにヒビキ君からは予想以上のエナジーが採れた。
だが、同じ戦士でご同輩への忠誠心も負けじ劣らじのビートスラッシャー・ショウコ君からは、3日間さっぱり採れなかったようだねえ。」
「えっ…?」
「そんな…?!」
「もっと言えば、忠誠心の塊みたいな閃忍・チルカ君とリコリス君からも、一切エナジーを採ることができなかったようだねえ。」
「なっ…!?」
あり得ない、という風に、トキサダが即応。
「ちなみに、ご同輩以外への忠誠心からエナジーが採れるか、も実験済み。神騎の忠義者代表、エルカエルくん。魔女からはイレーナにレイヴン…然るに、この3人からも、さやか君が『忠誠心』と見込んだエナジーの採取には失敗した様子だ。」
「被告人。ここまでの起訴事実について、弁明はありますか?」
「…認否を! 留保します!!」
…まだしらを切る様子。
「まあ、続けて聞き給え、ご同輩。一方、サイカ君からは、求めるドキドキが顕著に得られたのだよ。」
「サイカさんが…? じゃあ、それは何を意味するの…?」
「ほな、そこはウチから。」
ユーノの問いに、ルカから説明を引き継ぐプカルル。
「チルカちゃんもリコリスちゃんも、トキサダくんへの忠誠心は疑いあらへん。つまり、もともとさやかちゃんの拾ったドキドキは、忠誠心の波動とちゃう、ちゅーこっちゃ。」
「なっ…!?」
「じゃあ、サイカさんとヒビキちゃんに共通するドキドキって…?」
「サイカはんから波動が採れたんは、チルカちゃんやリコリスちゃんのお世話焼いとるときや。言うたら、二人に尽くして、自分が満たされとるときやねー。」
…
……
【回想VTR(サイカに装着したADDDの記録音声からダイビートVRルームでAI作成)】
『チルカ様ー、服は畳むかハンガーに…
ああっ! リコリス様っ、また買い食いを…!』
今日も変わらず妹に振り回されるサイカだが。
とくん。とくん。
『罪の呵責に未来永劫焼かれて過ごすよりないと…墨塗りの未来しか私には無いと、諦めていたのに…!』
〘サイカ姉様ー、ありがとー!〙
《命令よ。サイカは一生、リコリス様にかしずきなさい。》
『…リコリス様、いま、私、幸せなんです…!』
…
……
「このあたりで波動ギュンギュンやったみたい。サイカはんの心境を推し量ったナレーションは、AI生成のアテレコやけどな。」
「…それは…忠誠心ではなくて…?」
「『依存心』やねー。」
大切な人の助けになることは、本来は自分が頼られ、相手を癒やすこと。
しかし、助けて世話を焼くことで、逆に助ける側も心の癒しを得る。
そのため、時として、助ける相手への依存…甘え、欲し、助けたいと請い願う心情が発生するのである。
※行き過ぎると、ダメ男やDV息子を守りたがる『共依存』に歪む危険があるが、程度を守れば決して悪い感情ではない。
「つまり…ヒビキちゃんの場合は…?」
「僭越ながら我輩、イメージVTRを作成済だ。ご覧頂こう。」
【超昂大戦エスカレーションヒロインズ・ANOTHERストーリー
幸せのDチャージ! ヒビキの世話焼きドキドキ急上昇!】
「若頭領、少しはデスクの整理をしてください。…ああ、昼食後の歯磨きも怠ってますね? ソースが口の端に付いたままですよ…!」
(ふう…)
トキサダの身嗜みを整え、お茶をすすり一息つくヒビキ。
(全く…これがダイビートと想破を導く若頭領とは…。私がしっかりして、若頭領を凛々しく保たねば…!)
だが裏腹に。
(…この私が…。
若頭領の支えになれていて…。
ダイビートと上弦衆に貢献できているなんて…。)
つい1年前、閃忍試験に落ち続け、さらに兄の乱心で上弦衆に居場所を失ったヒビキは、ダイビート設立から間もないトキサダの采配で、側仕えとなる。
その恩義に応えようと、いささか前のめりに、がむしゃらに走り続けた、この1年。
どきん。どきん。
ヒビキの心の奥底で芽生え、育まれた感情。
(申し訳ありません、若頭領…。
私は、貴方にお仕えできることが…幸せと感じてしまうのです…)
…
……
「…と科学的かつ論理的に推察されるなあ、ご同輩。」
「わかっていたけど! 想像以上に酷いなあ! 君は!」
「はっはっはっ、我輩は真実の徒、ただ帰納的結果に隷属するのみだよ、ご同輩。」
デリケートな人の心を無断で推し量り、よりによっていちばん秘匿したいであろうトキサダに晒すことに、何の躊躇もない。
そんなルカに改めて戦慄するトキサダであった。
…ヒビキには絶対言えない。
まして、この心情でDチャージして戦え、なんて言えるはずが無い。
内面で、秘めた気持ちのままならいざ知らず、こんな深掘りを本人に晒したが最後…!
『煩悩を断つ修行の旅に出ます。探さないでください。』
…という失踪ですら、まだマシ。最悪は切腹。
…ここにいる7人だけの秘密にしよう。
リークしても、誰も得しない。
横で、耳を真っ赤にし視線を逸らす研究者。
図星と見える。
「被告人。弁明はありませんか?」
「弁護士を呼んでー! 弁護士が来るまで黙秘じゃーい!」
「却下です。では、尋問を終わります。」
…?
「あ…あのさあ、尋問終了でしょ? この両腕、放してほしいかなー、なんて…?」
「余罪3つの審理がまだですので。」
「ギャーーーっ!!
やーーめーーてえーーっっ!!」
アカリの勇気、うららの正義感、エリーのリーダーシップ…に誤認された感情。
次回、その真の姿が赤裸々にされる…!【続く】
作者の環藍河です。
ギャグ全振りで書いていたはずなんですが、なんか途中からハートウォームでドキドキ方面に迷走してます(なぜだー!?)。
次章、乞うご期待!