超昂大戦SS 超昂戦士・全感情エナジー化計画、ここに発動!   作:環 藍河

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第1次実験【精査】全部見せます! エスカチーム・あれこれドキドキ大集合!(やめてーーっ!!)

【余罪1・アカリと『勇気』…?】

 

「ヒビキさんに関して、残念ながら今回エナジーが採れた感情が『忠誠心』ではなく『依存心』であったことは、概ね立証されました。

続いて、アカリさんの『勇気』によるDチャージと被告が主張する点について、反証します。」

 

メイドにして秘密結社DDD団(従来通りの性的昂奮Dチャージ至上主義集団)メンバーの検察官・マドカが、ハッキングで得たアカリのドキドキデータを司令室モニターに投影する。

 

「検察側第3号証拠、アカリさんの3日間のエナジー生成量のグラフです。確かに、戦闘中や人助け時…この3日間では、アカリさんが勇敢な行動に出た際、エナジーが生成されています。」

 

勇敢な、アカリの行動記録をマドカが披露。

 

「必殺技モーションに入りかけたジシャフラストの前に、大ダメージ覚悟で果敢に前衛出撃。

 

信号無視の暴走トラックから中年サラリーマンを救助。

 

そして、基地居住棟に出没したゴキブリに、職員を呼ばず自らフーマンキラーで応戦。

 

…やはりアカリさんの行くところ、危機一髪のトラブルばかりですね。」

(…最後のは…?)

 

「ねっ! ほら! 合ってるでしょ!?」

「被告人は静粛に。」

…被告人・高円寺さやかは、ななかに羽交い締めにされたまま抗弁。饒舌にマドカの弁論に口を挟むあたりが、逆に怪しい。

 

「ですが、2日目の昼と夜、そして最終日昼に感知した、この高エネルギー出力は、『勇気』では説明が付きません。」

「…このときは、アカリちゃんは何をしていたの?」

「ユーノさん、良い質問です。順番に、昼食中、入浴中、そしてショッピング中でした。」

 

…勇気の要る、ランチと、お風呂と、ショッピング…?

 

「検察は証人を申請します。」

「ウチの完璧な記録に、おまかせください! エスカチームの皆さんの、おはようからおやすみまで、暮らしを見つめるクルルです! ふんす!」

 

喚問されたのは、現在はダイビート指揮下にある、元ジークフリート師団の諜報員・クルル。

敵だけでなく、チームを組む仲間へのリサーチを欠かさず、外から陰から天井裏から、彼女はターゲットを徹底マークする。

任務に忠実…なわけではない。

人見知りの究極形態ゆえの行動である。

 

「その日の園崎アカリさんは、昼食でダイビート食堂の隠れ名物《爆盛りラーメン・肉野菜アブラ全マシマシ》にチャレンジ、みごとに完食しました! 

しかし、食べ過ぎを後悔して夜はお風呂で発汗ダイエットに挑戦、最後はのぼせてダウンしていましたね。」

 

「…それは…」

「…勇気と言うより…?」

「ルカさん、このときのアカリさんの心情は、勇気ではなく…?」

「ああ、『無鉄砲』だねえ。」

 

無鉄砲…やってみて、引っ込みがつかなくなるヤツ。勇気とは紙一重の感情である。

 

「クルルさん、3日目の買物についても情報を。」

「はいっ! その日の買い物は、ハロウィン合わせの洋服を選んでいました! すごくかわいいコーディネートで、お値段的にもかなり勝負したみたいですよ! 長官さんに喜んでもらいたいみたいで、思い切ってお給料から大枚はたいたようですから、長官さん、ぜひ精一杯褒めてあげてください!」

 

……。

「…あ、あれっ? 皆さん、どうしましたか?」

 

「クルルちゃん…それ、多分サプライズよ…」

「当の本人に言うたら、絶対アカンやつや…」

「『高い買物をした』くらいで留めるべきでしたね。」

「ぴ…ぴいいっっ!!!」

「…ま、まあ、楽しみにしておく…。」

 

証人クルル、青ざめながら、ふらふらと退席。

 

「ところでご同輩、こちらも映像化済だ。ご覧あれ。」

(えっ…?)

(それってVRの…?!)

 

【超昂大戦エスカレーションヒロインズ・ANOTHERストーリー

 向こう見ずDチャージ! アカリの勇猛果敢ドキドキ急上昇!】

 

ハロウィンかあ…ダイビートでも仮装イベントをやるけど、ホンモノの魔女さんたちにはかなわないもんね…。

…い、いやいやっ! モンスターに仮装するだけが、ハロウィンじゃないよねっ! 

ダイビート基地にやってくるゲストの市民の皆さんに、ちゃんと親しみやすく、おもてなしできる服が…要るよねっ! やっぱり、いつもの普段着じゃ…失礼だもん!

 

…うわ〜っ…、やっぱりこういう服って、お高い…。いつものファストファッションと比べちゃダメなのは、わかってたけど…はうう。

 

…はっ!!

どうして! みんなに見せる服選びなのに!

長官が見てくれたときのことばかり考えてるの、わたしーーーっっ!!

 

…で、でも、長官が喜んでくれたら、誰に見せても喜んでくれる…よね?

…うん、長官基準で選ぶのは、みんなに見せる基準になるから、ってことで。うん。

 

「…といった心情と結論づけられるぞ、ご同輩。」

「君は! 姫路くんかっ!?」

心の内面を見るだけなら適役だが、呼べば全員振り回されて収拾がつかなくなるから、姫路は混ぜずに審理しているのに、ルカが引っかき回しポジションに入ってしまった…頭が痛い。

 

無鉄砲でDチャージ…。

(無茶をするほど採れるエナジー…?)

(行動がハイリスクになるんやろか…?)

(バレたときの心のダメージ、デカ過ぎ…?)

(少なくとも、表立って投入すべき方法ではないだろうなあ…)

…かくして、参加者の見解は否定的方向で一致し、この技術は凍結が決定した。

 

 

【余罪2・うららの『正義感』…?】

 

「続きまして、うららさんの『正義感』に関する誤認識についての審理に移ります。

検察側は第4号証拠を提出します。」

 

「正義感でエナジー補給ができると聞いた被験者は、特撮ブルーレイを大人買いし、それはそれは楽しそうに一昼夜にわたってヘビロテしました。」

「…それはうららちゃんの平常運転、よねえ…?」

「しかし、被験データは意外なものでした。」

ユーノのツッコミをスルーし、マドカ検事の意見陳述が続く。

 

「クルルさんが記録した、当日のうららさんのプレイリストによりますと、昭和に遡るヤルトラシリーズでは、理想的エナジーを確保。一方、平成ロイダーなどでは生成エナジーゼロだったのです。」

 

ざわ…ざわざわ…!

 

「い…異議ありっ!」

さやかの異議申し立て。

「平成令和の特撮は、善悪くっきりしないシリーズも多いでしょ! わかりやすい正義が描かれた旧作の方がエナジー出やすいだけっ!」

 

「異議を却下し、追加実験の結果を述べます。うららさんが実験最終日、ヒーロー特撮無しで驚異的なエナジーを二度にわたり生成していることが判明しました。」

 

ざわ…ざわざわ…

 

「一つは任務中…地域の幼稚園・小学校との合同イベント『超昂戦士とお花を植えよう』の植栽中。

もう一つは夕方の『ダイビートまつり』の縁日屋台で、買い食いに射的に型抜きにと遊びまくった時間帯ですね。」

百歩譲って前者は、参加したちびっ子たちのヒーローになろうと頑張って…くらいの説明がつくが。

「食べて遊んで正義感、ってのは…」

「ちょっと無理があるわねえ。」

 

「では第5号証拠を。ルカさん。」

「はいはい。対照実験した、アメリカンジャスティスヒーロー・Ms.ライトニングからは、一切エナジーが採れなかったようだねえ。」

「ぐっ…!」

 

「一方、この波形のドキドキが得られたのは、ノノノくん、こもりくん、マリアくん。」

(えっ…?)

ダイビートのちびっ子トリオ…?

 

『わははっ、西洋の神とやらも、やるのう! 当日はお菓子食べ放題、イタズラし放題とは、現世の天国じゃー!』

『…こもりは、お菓子が欲しいわけじゃないけど…ハロウィン準備でてんてこ舞いの、くさりちゃんが楽しそうなのは、嫌いじゃない…。』

『すごーいっ! 電飾の洪水、蓄音機も幻燈機も電気仕掛け! こっちの世界は、ハロウィンも科学尽くしなんだーーっっ!! 

ああ…当日はどうなっちゃうんだろーー?!』

 

 

「さらに、春霞くん…ハルカリバースが談話室で教育番組を観ている間、顕著に波動が得られた点は興味深いと言えよう。」

ぴたぴた、ごらごら、自動旗揚げマシーンまでギミックが連鎖稼働する、アレ。

 

「つまり、この鼓動の正体は『正義感』に非ず。

我輩の見解を述べるなら、ズバリ『童心』だねえ。」

 

……

【超昂大戦エスカレーションヒロインズ・ANOTHERストーリー

 あどけなきDチャージ! うららの天真爛漫ドキドキ急上昇!】

 

「待てーいっ! この先に悪の栄える世界なし! 絶対正義・ハルヒーナ見参っ!」

 

ふふん、ブランニューモデルのこっちの変身スタイル、トパーズの縛りが無くて、エスカチームの…ダイビートの活動と切り離せるから、ガンガン動けて最高ねっ!

そんなわけで、今日も3つの正義を執行っ!

 

商店街と、遮断機の降り始めた踏切をノーブレーキ自転車で突っ切ったオバサン。危ないっての!

 

奥さんに「すぐやって」と頼まれた洗濯物干しを後回しにして生乾きにしたダメパパ。臭くなるでしょーがっ!!

 

みんなで取り分ける唐揚げに、誰にも断りなくレモン汁を満遍なく掛けたバカ係長。衣のサクサクを殺す愚行…許すまじ!

 

ことごとく私が成敗し、今日も市民に正義を示したってワケ!

 

…あ、ハロウィンが近いもんね。

正義の執行はトリックオアトリートじゃないんだけど、行く先々でお菓子いっぱい大盤振る舞いだったわね。

ふふん、悪い気分じゃないわっ!

 

原色バキバキのチョコ、ペロペロキャンディ、うまし棒(12円)にしるこサンド…あっ、冷たーいコーラは欠かせないっ!

 

…懐かしいわね。

小さいときは母さんたちが寝静まるのを見計らって、リビングのテレビにヘッドホン付けて、お小遣いで買ったポテチにコーラ、レンタルDVDでひとりヤルトラ鑑賞会を週3でやったっけ。

カーペットに散らばったポテチのクズでバレたときは大目玉だったっけ…!

 

……

「…と、こんな具合だねえ。」

またもルカ作製・うららのドキドキ解説イメージムービーが炸裂する。

…というか、フェイクムービーじゃないのか…?

 

「…執行する正義が、小さすぎよねえ…」

「ユーノ…ツッコむところはそこじゃない…」

なぜルカが、うららの幼少期のエピソードまで知っているのか…聞くと余計怖いのでスルー。

 

「い…いいじゃないっ、童心からエナジー採ったって! どんな感情からでも、D2エナジーはD2エナジーよ!」

(あっ…さやかちゃん、開き直った…!)

 

「…お正月のブラックルビーに使ったら、エナジー切れ無しで無限暴走しそうだけど…」

 

『どきゅーん! ばきゅーん!

 私が来たから、毎日が謹賀新年っ!

 わははははーっ! 羽子板アターーック!』

 

(…ぞお〜っ…!!)

一同青ざめ、肝を冷やす。

(…アレが、止められなくなるのか…!)

 

「それに…ダイビートの戦闘スタッフを、みんな童心に帰すの…?」

ここで止めればまだ良かったのだが、トキサダがうっかり、余計な一言。

「…集団で、幼児プレイとか?」

 

  ランラランラランラランラ たのしいな

  ランラランラランラランラ あそぼうよ

  たのしいダイビートようちえん

  みんななかよく でぃーちゃーじ

 

『やめてえーーーっっっ!!!』

想像してしまったななかが悲鳴を上げる。

10代から人妻、未亡人まで勢揃いの超昂戦士が、こぞって特殊プレイに走る事態は…避けたい。

 

(運用方法を、あまりにも選びすぎるだろう、コレ…。)

満場一致で、童心でのDチャージ、計画凍結。

 

 

【余罪3・エリーの『リーダーシップ』…?】

 

「こちらは特に、他の戦士の方々と比較しなくてもわかります。」

「そうかね? 一応、文句なしのリーダーシップを備える想破七閃の一位・ゴウカくんから波動が採れなかったことは申し添えよう。」

 

「あんなー、トキサダくん?」

プカルルが努めて明るく声をかけて。

「ちょっと席、外して?」

「(…俺に聞かれたくない中身か…)わかった。」

 

トキサダの退室を見届け、プカルルがきびすを返す。

「他のみんなも。これからココで解説したコトは、あんじょう内緒にしてやー。頼んますっ。」

「守秘義務違反は懲戒処分、さやかさんやルカさんから漏れた場合は、クラリスさんに指示して研究費90%カットの刑に処します。」

「ギャーーーっ!? い、言いませんーー!!」

「はっはっはっ、それは困るねえ。」

「お師匠様も、笑い事とちゃいまっせー。」

 

「では、第6号証拠です。エリーさんが実際にリーダーシップを発揮していた、エリザベス派代表としての任務中や、NAU代表としての業務中にエナジーを採ることはできませんでした。」

モニターのエナジー発生量のログは、日中ほとんどゼロの軸を横這いであった。

だが。

 

「この、夜に急増しているエナジー量は…!?」

「はい、そのときの音声記録をお聞きください。」

 

……

「アカリ、これお土産。」

「えっ…こ、これ、香水?」

「うん、うちのトップパフューマーに、アカリのイメージで調合してもらったんだー。」

「え…NAUの…世界ブランドの、特注品…? 

そ…それってお高いのでは…?!」

「うふふっ、そーのーかーわーりー。

今度のDチャージ、必ずコレを付けること! 捗るわよ〜。」

「…えっ、えええっっっ!!!」

「いい? 嗅覚は人間の本能、原始的欲求を直撃するの。超鈍感の長官くんにアカリをマーキング、心底わからせて、ぐいぐい押しちゃいなさいっ!」

「ま、待って! わたし、そんな…」

 

ずいっ。

「…アカリにも、問題はあるのよ。いつまでもDチャージだけの…体だけの関係で、ホントにいいのかなあ〜?」

エリーが上目遣いで、アカリに迫る。

「エリーちゃん、言い方が酷いっ!

わ…わたしは、長官とは、個人の関係じゃなくて! 私はエスカルビーで、長官はダイビートのみんなの長官で、地球を護るためにみんなで戦っているのに、私だけ長官をそんな風に…」

 

「…女のコはね、もう少しわがままな方がステキなのよ? みんなのために、アカリが自分を押し殺す必要なんて、無いんだぞ?

いい? きょう伝えられる思いが、明日も言えるとは限らないのよ? た、と、え、ばー、私が長官くん取っちゃったりー! そのとき後悔したって遅いのよ?」

「エリーちゃんっ! も、もーっ!!

だから、私と長官は、そういう関係じゃないんだってばーー!!」

 

……

(…アカリちゃん…。)

(…ま〜だ、ソコで足踏みなんだ…。)

天然記念物級・超モジモジのアカリはさておき。

 

「じゃあ…エリーちゃんのこの感情は、リーダーシップじゃなくて…?」

「まあ…いちばん近いのは『老婆心』やね。恋人はん、アカリちゃんに限らず、トキサダくんとデートする女の子みーんなに、首ツッコみたがるさかい。」

「…、あ〜…。」

 

老婆心。必要以上の親切心で他者の世話を焼きたがる気持ち。

アメちゃん差し出して井戸端会議に首をツッコんでくるおばちゃんや、「近頃の若者は」を枕詞に説教かますおっさんの心情を指すことが多いが、若者でも普通に持ちうるので、意見を押しつけないことが肝心である。

 

「弟子よ、まだまだ甘いなあ。レディ・エリザベスはあれで、心は裏腹なのだよ? とくと観たまえ。」

 

【超昂大戦エスカレーションヒロインズ・ANOTHERストーリー

 おせっかいDチャージ! エリーの恋バナドキドキ急上昇!】

 

…アカリの、バカ。

いっつもみんなのことばかり考えて、自分のコトなんか、ぜーんぶ誰かに譲りっぱなしで…。

欲しいものを、欲しいって、何で言えないかなあ…。そっちがこんな調子じゃ、私だって長官くんのこと、全力で攻め落とせないじゃない。

そりゃあ、ライバル覚醒前の略奪愛だってアリだけど…。

アカリには…アカリからは、したくない…!

 

たっぷり援護射撃して、アカリを全力で長官くんにアタックさせなきゃ。

私とアカリ、長官くんにどっちが選ばれても、それならきっと、先に進めると思うんだ…!

 

……

「レディの心中、お察しするにこんな按配かなあ。」

「…容赦ありませんね。」

…ルカの仮説の域を出ないとはいえ、アカリやうららとは違う方向で、エリーの深層心理の重くて際どいところに触れてしまった、ユーノたちであった。

 

 

 

【被告人さやかの弁明】

 

これで、マドカ検事の用意した全ての証拠が出揃った。

トキサダを呼び戻し、マドカが被告に語りかける。

「さやかさん、カツ丼をご用意しますね。」

「それは取調室じゃーーっ!!」

被告・高円寺さやかの最終陳述が始まる。

 

「わかってたわよっ! 今回エナジーが採れた感情が、勇気だ愛だ、正義だ忠誠心だ、とかのカッコいい感情じゃなくて、もっと俗な感情だって!

でも、一つひとつを本人たちにバラしたら、エスカチームみんなヘコむでしょーーっ!?

最終的には全ての感情からエナジー採るんだから、それまで何のエナジーか、内緒にするつもりだっただけっ!」

 

…?

 

「全部の感情からエナジー採れれば、知られて恥ずかしい感情も、他の感情とまぜこぜにできるから、当人にとって何の問題もなくなるの!」

 

…確かに、エスカルビーアステライズのインテグラルフォームなら、負の感情(嫌だったこと、悲しかったこと…)も全部引っくるめて、正の感情(嬉しさ、幸せ、笑顔…)で採ったエナジーとまとめてぶつけられた。

 

「でも…今みたいに、エナジーを採れる感情が限定されてたら…!」

 

【超昂大戦エスカレーションヒロインズ・ANOTHERストーリー

最強エナジーは○○心!? エスカルビーアステライズ、最終決戦ドキドキ急上昇!】

 

近い未来、訪れた人類最大の危機。

ネオ・ダイラストの地球侵略は苛烈を極め、ダイビートはそれでも辛うじて幹部を打倒してきた。

だが、追い詰められた総帥・ゲッツェンは、エスカルビーに一騎打ちを挑む。

 

対峙するルビーは、決死の覚悟のゲッツェンに戦慄しながらも、一歩も退かない。

 

「あなたの地球征服の野望は…私が、阻止してみせます!」

「エスカ・ルビーよ。貴様のADDDは不完全…インテグラル・フォームが使えない貴様が、私にかなうと思うのか?」

 

「…勝ちます! 不完全なままの、私で!」

ルビーの揺るがぬ決意。

 

「人間の持つ可能性は、無限です!

だから、どんな不完全な心だって、全部、全部…私は力に変えてみせる!」

「…ほほう。」

 

「退くに退けなくて、無茶する気持ちも…、

誰かを助けて、自分が救われる気持ちも…!」

「…は?」

 

「恋バナに割って入るおせっかいも…

ひとりの夜の欲求不満も…全部、全部…!

私の持つ全ての感情をエナジーに変えて、あなたを倒しますっ!!」

 

……

「…ちょっと、待て…。

…エスカ・ルビーよ…。貴様のエナジーは、そんな下世話な感情でできているのか…?」

「えっ…?!」

 

…?

……!!!

「あ…、いっ…イヤあああーーっっ!!!」

自分が何を口走ったのかを悟ったルビーは…!

 

『そんな…これまでに無い、このエナジーの高まり…! どうして…!!』

かつてないエナジー量に驚愕するさやか。

 

「きゃあーーーっっ!!!」

その全てを込め、ゲッツェンに放つ拳は。

ネオ・ダイラストの野望を灰燼に帰し、地球を救う希望の連撃。

 

顔を真っ赤にし、半べそをかきながら、ルビーは拳を繰り出す。

ゲッツェンのライフがゼロになっても。

何度も、何度も、何度も。

 

地上で戦いを見守るサファイア・トパーズ・アメイズは、固唾を呑みながらも。

ルビーの想いに生暖かく寄り添い…赤面する。

「拳を繰り出すたびに、ルビーのエナジーが上昇していく…!」

「あれは…、だだっ子パンチ…よねぇ…?」

「後先考えず繰り出すパンチは…ルビーが童心に返っているというのか…」

 

「うわああああんっっ!!

忘れてっ! 忘れて、くださーーーいっっ!!」

…要するに、幼稚園児のケンカ。

 

「も…もう、やめてえーーっ!!

ルビーよりも、あたしが恥ずかしくなるのよーーーっっ!!」

童心のDチャージを生み出したトパーズは、自分の恥ずかしいところをルビーが再現している気持ちに捉われ、悶えていた…。

 

…この日、ネオ・ダイラストは、壊滅。

人類を救ったルビーの最終兵器は…

『羞恥心』だった。

 

…後日。

「アっカリちゃーん、実験しーまーしょー!」

「も…もう許してください…カンベンしてください〜っ!!」

…アカリは自室に立てこもり、実験を拒絶していた。

「つ…次にインテグラルフォームが使えるようになったら、そのときはガッツで頑張りますから…、でも、も…もう、私の心は深掘りしないでくださ〜いっ!」

 

 

……

「ふう…さしずめ、こんな未来だねえ。」

トキサダが記憶の未来をみんなに見せた装置の応用で、ルカが自分の想像を即座に映像化できるシステムを実装。

…そんな凄い技術を、なぜこんなことに…?

 

「…うわ〜……。」

「ルビーちゃんやなくても、ヒくわあ…。」

「あ…あたしはイヤよっ! お断りよっ!!」

「…でしょ?」

 

さやかの…ダイビート技術陣がインテグラルフォームを再現する前に、アルダークやオルタナスタインを凌駕する新たな脅威が地球に迫るなら。

従来のDチャージで対抗しえないほどの難敵なら。

我らが超昂戦士たちは、このような羞恥プレイで戦わねばならないのである。

 

だが、その時は今ではない。

頑張れ、ダイビート技術部!

超昂戦士たちのハートを護るため!

 

【結審、そして…】

 

ダイビート技術主任・高円寺さやかについて、研究結果の秘匿については有罪となるも、公開に伴うエスカチームの精神的苦痛を鑑みて、司法取引がなされた。

その罪を問わない代わりに、もっと多種多様な感情からエナジーを回収する技術が確立されるまで、今回の実験結果は秘匿されることとなった。

 

当該実験にまつわるデータは、2箇所に分割保管。

1つはダイビート基地地下、長官の生体認証を経て、10m離れた2つのノブを同時に回さないと解錠できない保管庫。

もう1つは想破の里の奥深く、物議を醸した秘具・時渡りの鐘と並べて幾重にも封印し、安置。

 

そして、クルルを含めた7人には箝口令が敷かれ、この実験結果は被験者4人にはもちろん、他のなんぴとにも漏れぬよう、凍結されたのであった。

 

……だが。

(他の感情をエナジー化できれば、全て解決なんだから。科学者として、私は…あきらめないっ!!)

 

いつかこの封印も、破られる日が来るのかもしれない。

さやかの飽くなき探求心、未だついえず。

 

(…あれ? 続くの? コレ…?)

 




お読みいただき、ありがとうございました。筆者の環藍河です。
「全感情エナジー化計画」第1次実験完結編をお届けしました。

ドキドキできれば、何でもエナジーにできるっ!
…超昂大戦の全年齢版が出たら、あるいはこんな方向…?
(やめろっ! 生ぬるいだろうがっ!!)

初めはギャグ全振りで書いていましたが、だんだんラブコメ方向に暴走したのは…まあ、ギャグの振り幅が広がったので、結果オーライでした。

さて、お気づきでしょうか。
「第1次」と銘打つからには、第2次実験がございまして。
もう1つ「マジメかー!」系のSSと平行で執筆中です。
どちらが先になるかは、書いてみないとわかりませんが、完成・投稿の暁には、またお立ち寄りいただければ幸いです。
ありがとうございましたっ!
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