もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第28話 精霊住まう新緑の森

早朝から出発をし……道無き道をなんとか進み……

僕たちは、精霊の森の入口に立っていた。

 

ルカ「ここが、精霊の森か……」

まだ入り口だというのに、うっそうと木が生い茂っていて先が見えない。

チリ「なんというか……不思議な感じがするね。」

ルカ「ああ……言い表せない神秘さを感じる。」

普通の森とは異様に違う、不思議な感覚を肌にヒシヒシと感じている。

この奥に、風の精霊シルフはいるのだという。

アリス「シルフのみならず、この森にはフェアリーやエルフが多く隠れ住んでいる。」

 

アリス「基本的に、人間に危害を加える連中はいるまい……フェアリーどもは、少々いたずら好きだがな。」

ルカ「ほっ……つまり、ほとんど戦いにはならないって事だな。」

ラクト「そんじゃ、さっさとシルフに会いに行くとするかね。」

ルカ「よし…行こう!」

精霊の森に一歩を踏み出そうとした時だった。

 

ルカ「あれ……」

ふと後ろを振り返ると……アリスは森の入り口に立ったまま、動く様子はない。

アリス「………」

カムロウ「アリスさん?」

ルカ「……来ないのか?」

アリス「魔王たる余が森を練り歩き、フェアリー達を驚かせるわけにもいかん。」

 

アリス「今回は、ここで待っているとしよう。」

仁王立ちを決め込むアリス。

 

ルカ「……いいのかな。」

ジョージ「良かろう。姫殿が決めたことだ。」

パヲラ「アリスちゃんの言う通りだしねぃ。」

 

ルカ「分かった……なるべく早く戻ってくるよ。」

そう告げ、僕たちだけで精霊の森へと踏み込んだのだった__

 

 

ラクト「……………」

アリス「……どうした。置いて行かれるぞ。」

ラクト「ん~ほらよ。」

ラクトはカバンから取り出したジャーキーを、アリスに渡した。

ラクト「俺サマのへそくり食料、分けてやるよ。内緒だぜ!」

 

ラクト「それ食って良い子で待ってるんだな。へへっ。」

ラクトは仲間たちに遅れながらも、森の奥に進んでいった……

アリス「……ふん。」

 

 

 

ルカ「___かなり広いんだな、ここをまっすぐでいいのか……?」

先頭を切って、茂みや草を掻き分けながら、森の中を突き進む。

といっても、ずっと一直線に進んでいるだけなのだが………

 

ルカ「ラクト、方角はどうなんだ?」

ラクト「そ、それがな……さっきから………方位磁針がグルグルしてんだ……」

丸い懐中時計のような円盤を見せてくる。

ガラス越しに見えた矢印が、不規則にグルグルと回転しているのが見える。

パヲラ「あらら……もしかしてこの森というか土地が、強い磁場が働く場所なのかもね。」

マモル「若、こんなこともあろうかと森の入口に式神貼って置いたんで、一度引き返すというのも手ですぜ。」

ルカ「ああ………とりあえず、このまま進んでみるか……」

汗を拭いながら、周囲を見回した時だった___

 

フェアリー「__お花~♪お花にお水~♪」

小人のような小さい体に、透き通った昆虫の羽を生やした生き物がいる……

ルカ「………あれが……妖精かな?」

フェアリーは歌を口ずさみながら、手に持ったジョウロのような花から滴る水を花畑に与えているのだ。

カムロウ「ちいさいなぁ~…」

チリ「かわいいねぇ~…」

 

パヲラ「ジョウロ花で水やりしてるわね。」

ラクト「第一魔物発見というわけなんだが、どうするよルカ。アイツにシルフの居場所でも聞き込みするか?」

ルカ「このまま立ち去ろう。向こうも気付いていないみたいだし、怖がらせるのも良くない。」

マモル「御意。」

忍び足で歩いて、その場を移動しようとしたときだった。

 

フェアリー「あっ、人間だ……」

ルカ「うっ。」

普通にバレた。

僕たちを見つけたフェアリーはふよふよと近づいてきた。

ルカ「こ、こんにちは……」

妖精に会うのは初めてなので、戸惑ってしまう。

 

フェアリー「ねぇ、お兄ちゃん。私とあそぼ?」

ルカ「え……?」

フェアリー「えへへっ……」

妖精は無邪気な笑顔を振りまいている……

 

ルカ「遊ぶって……何して遊ぶんだ?」

フェアリー「このお花であそぶの。」

持ってきたのは、スイカのように丸々とした蕾をした……植物だった。

この妖精はこれを花と言っているが、花弁が開いてない。

僕からすると、とても花には見えなかった。

 

すると、何かを思い出したようにパヲラが呟いた。

パヲラ「ちょっとソレ……もしかして【山火事で爆発する花】じゃないの?」

ルカ「え?ば、爆発する花だって…?」

なんだ?そんな物騒なことをしでかす植物は……

パヲラ「本で読んだことあるわ。火に耐性がある植物で、普段は花そのものが成長を抑制する成分を放出して蕾のままでいて……火気を感じると、文字通り爆発して大量の花粉や種子を放出する花よ。本当であれば火山地帯で群生しているハズなのだけれど……」

 

ルカ「ねぇ。これをどう使う気なんだ?」

まぁ、これほど丸々とした蕾ならボール代わりにできそうだ。

キャッチボールとかかな。蹴りあうのかな。

フェアリー「これをね。これをね。こうするの!」

おもむろに蕾の先に炎魔法で点火をし始めた。

蕾の先で、ジジジと火の粉が舞う。

フェアリー「そしたらこれをね、いっしょになげあうの!」

お手本を見せるように、誰もいない方向に向かってソレを投げたのだ。

……するとどうだろう。

文字通りボカンと大爆発した。

 

耳の奥まで響く爆発音と、火薬の臭い。

フェアリー「えへへ!おもしろい!」

その光景をみてキャッキャッと無邪気に笑うフェアリー。

ルカ「……………」

今、僕はとても肝が冷えているだろう。

それはもうキンキンに。

ルカ「……それが、君の遊び方?」

フェアリー「うん!」

満面の笑みでそう言うが……

ルカ「……………」

いくらなんでも、そのいたずらは度が過ぎている…!

むしろ、無邪気を通り越して逆に邪気がありすぎる!

 

ルカ「そ、そんな事しちゃダメだよ……!」

フェアリー「なんで?」

ルカ「ともかく、ダメなんだ。」

 

ルカ「僕にそんな事しようとしたら、すごく怒るよ。」

ラクト「ああそうだ。俺たちも怒るぞ。」

チリ「うん。良くないよ。とっても危ないことなんだから。」

 

ルカ「君に痛いことをするよ。」

ラクト「するの!?」

チリ「痛いことをするの!?」

 

フェアリー「……なんで?」

ルカ「なんでって……」

 

ルカ「驚かすのが楽しいのはわかるよ。けど、やり方が良くないんだ。」

ルカ「君が持ってたあのお花は、とても危ないモノなんだよ。それを使って誰かがケガをしたら、大変なことになるんだ。」

 

ルカ「だから、しちゃいけないよ。」

フェアリー「……やだもん。」

 

フェアリー「お兄ちゃんに、いたずらするんだもん!」

フェアリーはすばしっこい動きで飛び回り始めた!

ルカ「ちょ、ちょっと!待つんだ!」

あまりの速さに目が追いつけなくなった時、フェアリーが僕の服の中に入り込んだ!

ルカ「うわわわわわ……!」

僕たちだけにじゃなく、仲間たちの衣服にも入り込む……

そして、ふと飛び出して僕の前にもう一度姿を見せたとき、何かを脇に抱えていた。

あれって……?干し肉?

カムロウ「あー!?後でこっそり食べようと隠し持ってた俺の干し肉が!?」

ジョージ「あー!?後でこっそり食べようと隠し持ってた私の干し肉が!?」

ルカ「お前らか、隠れて食料を盗み食いしてたのは。」

「「ぎくぅぅぅ!?」」

最近、干し肉の減りが早いと思ったらコイツらの仕業か。

いやでも、そんなことより………

マモル「あんの妖精…手癖悪ぃ!」

ルカ「コラ!盗んだモノを返すんだ!」

フェアリー「やだもんやだもんやだも~ん!」

ルカ「くっ……!」

いくら論しても、聞いてはくれないらしい。

気は進まないが、少しばかりこらしめてやらないと!

ラクト「なにをー!あんなちっこいの、この虫取り網でバシッと捕まえりゃいいだろ!」

 

数分後。

 

フェアリー「やーい!つかまるもんかー!」

ラクト「ゼェ……ゼェ……ヒィ……す、すばしっこい…!」

チリ「ダメじゃん!」

ラクト「人手が欲しいな……ルカは?」

チリ「あっちで罰を与えてる。」

ラクト「罰…?」

 

ルカ「おやつは!いつも!与えてる!だろ!この!バカ!バカ!!」

ルカは、カムロウとジョージに往復ビンタを炸裂している……

 

…数分後。

 

ルカ「よーし捕まえてこい!」

カムロウ「ハイ………」

ジョージ「ショウチ………」

顔がパンパンに膨れ上がった2人も、フェアリーを捕まえるために出陣するも………

 

……さらに数分後。

 

「「だめです。捕まりません………」」

 

ルカ「ふざけるな。昼ご飯抜きにするぞ。」

チリ「(飯の恨みだ……!)」

 

カムロウ「あの、違うんです。前が見えないんです。」

ジョージ「顔が腫れて。視界が狭いんです。」

ルカ「知るかよ。」

チリ「(うわぁ、鬼だ……)」

 

ラクト「ハァ…ハァァ……脇腹がイタイ……」

ラクトも、スタミナが尽きたようだ。

フェアリー「おにさんこっち!おにさんこっち!」

フェアリーは8の字に宙を飛んでいる……

 

マモル「__捕ったァァァッ!!!」

その不意を突いて、なんとマモルが手づかみでフェアリー捕まえた!

ルカ「え!?すごいなマモル!」

フェアリー「わーいつかまちゃった!」

マモルの手に掴まれながらも、笑い転げるフェアリー。

ルカ「……もしかして楽しんでないか?この子。」

パヲラ「追いかけっこみたいな感覚なのかしらね。」

ルカ「やれやれ……」

妖精は人間に友好的という話だが、ここまで無邪気だと逆にタチが悪い。

 

 

 

???「__何ということを……」

 

マモル「うぎゃあっ!?」

ルカ「!?」

急にマモルが、痛みを感じたような声を発した。

ルカ「どうした!?」

マモル「あ…い、いや…い、痛みはないんですけど体が痺れてシビれて!」

ルカ「痺れ…?」

マモルの体を注視すると、背中に細い矢が刺さっていた!

ルカ「これか!」

すぐさま、体から矢を引き抜く。

どうやら深く突き刺さっているわけでも、矢尻が付いていたわけでもない。

先端に毒物を塗っていることから、標的を毒で弱らせるためだろう。

だが、明らかに明確な敵意だ。

ルカ「一体何処から…いや、誰が!?」

???「安心なさい、その矢に殺傷能力はないわよ。」

ルカ「え……!?」

???「エルフは流血を好まないから、傷は付けないわ。」

その場に駆けつけてきたのは__

 

エルフが現れた!

 

エルフ「私は、この森の守り手……あなたのような狼藉者(ろうぜきもの)は、絶対に許さないわ!罪無きフェアリーに暴力を振るうなんて、恥を知りなさい!」

ルカ「いや、これは違うんだ……!」

エルフ「なら、その網は何よ!」

ラクト「…あー。いや、あの…だな……」

エルフ「フェアリーを捕まえて売り飛ばすつもりでしょう!?」

 

カムロウ「フェアリーって売れるんですか?」

パヲラ「さぁ……」

 

どうやら、あらぬ誤解を与えてしまっているようだ。

ルカ「待ってくれ!僕たちは……」

エルフ「言語道断!この森の平穏を乱す者は排除するわ!」

エルフは素早く距離を取り、弓を構えた。

しかし、説得は通用しないようだ…!

 

エルフ「剣士相手に接近戦を挑むような愚は犯さないわ…!」

後方に飛び退いたエルフは、距離を取って弓を構えた!

エルフ「これがエルフの戦い方よ!」

静かに狙いをつけて、エルフは矢を放ってきた!

ルカ「くっ……!」

飛んで来る矢をひらりと躱す。

距離を取っている相手となれば、こちらの攻撃は当たらない。

一気に距離を詰める剣技を用いるか、接近してきた時を狙うかのどちらかだろう。

 

弓を構えている以上、あっちから接近してくることはまずないだろう。

ならば!一気に距離を詰めてやる!

ルカ「今だっ!」

剣で飛ぶ矢を迎え折り、すぐさま踏み込んで距離を詰めた!

ルカ「魔剣・首刈り!」

そのままエルフの懐に飛び込む!

 

エルフ「くっ、一瞬の隙を突くなんて……!」

すぐさまエルフは、僕に向けて弓を構えた…が。

ルカ「はぁっ!」

剣で弓を弾き飛ばし、突きを繰り出す!

エルフ「うあっ…!」

 

エルフ「あの()()ばかりか、人間まで侵入してくるなんて……!この森に、もう平穏は来ないの……?___」

 

エルフ「………あ、あれ……?」

地面に倒れたエルフはゆっくりと目を開け、呆然としていた。

エルフ「わ…私は、斬られて死んだはずじゃ……」

斬った。確かに斬った。

けど、僕の剣の特性なら……物理的な殺傷は無いはず。

エルフ「この感覚……これは、魔素封印……?」

ルカ「悪いけど、少しだけ力を封じさせてもらったよ。体は問題ないだろ?」

剣を納刀しながら、エルフに近づく。

そして立ち上がれるように手を差し伸べた。

ルカ「さっきはフェアリーに襲われたから、仕方なく…ってわけ。僕たちは、この森の魔物達に危害を加えるつもりはないよ。」

エルフ「………………」

 

エルフ「……確かに、誰彼構わず襲い掛かる人間ではなさそうね。」

僕の手を握って立ち上がるエルフ。

どうやら信頼を得ることが出来たようだ。

良かった。大事にならずに済んだ。

 

エルフ「けど、仕方なくというのはどういう……」

ルカ「この子が遊びたいからって僕たちのモノを盗んだのさ。」

エルフ「コラ。良い子なんだから返してあげて。」

フェアリー「は~い!」

 

フェアリーに盗まれたモノが戻ってきた。

カムロウ「やった~!俺の干し肉~!」

ルカ「これは没収。」

カムロウ「は~い……」

チリ「ああ、いじけちゃった………」

 

エルフ「ごめんなさい、旅のお方。殺意はなかったとはいえ、矢を放ってしまって。」

マモル「いやいや、お気になさらずぅ。」

エルフ「これを…満月草。」

マモル「あっ、いらないです。」

マモルは満月草が嫌いなようだ。

 

エルフ「それで、あなたは何をしにこの森に来たの?」

ルカ「僕は、シルフの力を借りに来たんだ。」

エルフ「そうだったの……」

近くの倒木に、エルフは腰掛ける。

エルフ「……人間がシルフに会いに来るのは、数百年振りね。」

カムロウ「すうひゃくねん!?」

ラクト「そらァ、エルフってのは長寿な種族だからなぁ。」

 

エルフ「話も聞かずに襲い掛かって、ごめんなさい。」

パヲラ「大丈夫よんマドモワゼル。あなた達からしてみれば、アタシたちは部外者。排除しようとするのは当然のことよん。許可もなく入ってきたアタシたちにも非はあるわ。」

エルフ「それはそうなのだけれど…今、状況が違っていて……」

 

エルフ「得体の知れない怪物がよく出没するから、少し気が立っていたみたい。」

ジョージ「……得体の知れない怪物?」

ルカ「それって、なんなんだい?」

エルフ「……あれが何なのか、私たちも全然分からないわ。」

魔物の一種である彼女達でさえ、「怪物」と呼ぶ存在。

いったい、それは何者なのだろうか……

 

ジョージ「その「怪物」……外見に特徴はあるか?」

エルフ「確かなのは、植物型の魔物である事だけよ。」

ルカ「植物型……?」

チリ「アルラウネ……みたいな?」

エルフ「そんなに可愛いものじゃないわ。」

 

エルフ「アルラウネなら、昔からこの森にも住んでるけど……あいつは、もっともっと別の生物よ。魔物かどうかも、正直怪しいくらい……」

彼女の口振りからして、相手はとんでもないバケモノのようだ。

ルカ「………………」

困っている者達を放置するなど、真の勇者のする事ではない。

相手が人間だろうが魔物だろうが、同じ事だ。

ルカ「そうだ。もし見かけたら、僕が退治してあげるよ。」

エルフ「冗談言わないでよ、とんでもなく恐ろしい奴なんだから。」

 

エルフ「あいつは、人間も魔物も関係なく取り込んでしまうの。」

チリ「と、取り込む…?」

エルフ「そう……目についたモノとか、動くモノは全部。私の同胞も、妖精たちも複数人、犠牲になったわ……」

パヲラ「説得はできる相手なのかしら。」

エルフ「出来ないわ。対話を試みた仲間がいたけれど、食べられたもの……私達の言葉も全く通じないし、そもそも意識や感情があるのか怪しいくらい。」

そんな言葉通りの「怪物」が、まだこの森をうろついているのだろうか……

ラクト「よっし……出会ったら即!いいかぁ、逃げるぞぉ。いいなぁ、逃げるんだぞぉルカ。」

ルカ「……………」

 

エルフ「私達じゃどうにもならないから、魔王様に直訴しようと思ってたのよ。あんたなんかじゃ、太刀打ちできないわ。」

魔王(アリス)に直接話をするつもりとは…そこまで厄介な相手なのだろうか?

ルカ「そ…そんなに厄介なのか……?」

エルフ「そうよ……逃がしてくれるかどうか怪しいけど。出会ったら逃げなさい。」

ルカ「わ、分かった……」

その怪物も放ってはおけないが、まずシルフに会おう。

 

ルカ「そうだ、僕たち………」

ここへ来た本来の目的は、シルフに力を借りる事なのだ。

エルフ「シルフがどこにいるか…って?」

ルカ「うん。」

エルフ「悪いけど、場所自体は易々と教えられないわね。私から言えるのは……そうね。風が感じるほうに進むと良いわ。」

ルカ「風が感じるほうに…か。」

なんというか、風の精霊らしい辿り方だな。

 

マモル「あぁ、風っていやぁ……」

ラクト「あそこでバカみてぇにバカやってるバカが1バカ……」

パヲラ「う、うわぁ!ここだけ猛烈なダウンバーストがぁ!」

エルフ「そんなに酷い風じゃないわよ……!?」

ルカ「すみません…ウチのバカがご迷惑を……」

あのバカ(パヲラ)は地面に倒れ伏してなにやってるんだ……

 

カムロウ「風か……そういやさっきから、こっちにやけに強い風が吹いてるんだよな。」

ラクト「あ、そうそう。俺もそれ気になって____」

 

__突如、2人が地面にフェードアウト。

ルカ「は!?」

落ちるように、土の中へ沈み込んだ……!?

 

ルカ「どうした!?地盤沈下か!?」

エルフ「そんなはずは……ここはそんな場所じゃないはずだけれど…?」

 

焦る僕たちをよそに、木陰から2体の妖精が姿を見せた。

フェアリー「わぁい、にんげんがおとしあなにひっかかった~♪ひっかかった~♪」

どうやら地盤沈下ではなく、妖精が用意した落とし穴だったようだ。

エルフ「こらっ、あなた達!またこんないたずらをして!」

それはそれで良かったが……めんどくさい悪戯をしてくれたな。

 

エルフ「それに、またふらふら出歩いて!こわい怪物が出るから、外に出ちゃ駄目って言ってるでしょう!ほら、早くお家に帰りなさい!」

フェアリー「ねぇ、エルフおねえちゃん。まえにいっぽ、あるいてみて?あるいてみて?」

エルフ「え…?」

エルフが、前に一歩踏み出したときだった。

突如地面に穴が開き、エルフはその中へと落ちていってしまった!

エルフ「きゃっ!ちょっと、何よこれ!」

フェアリー「おとしあな~♪おとしあな~♪」

フェアリー「フェアリー達はガミガミおねえちゃんをやっつけた!

ルカ「………………」

言われたままに前へ一歩踏むのか……普通、気付くだろ……

 

ずるずると、先に落とし穴に落ちた2人が這い出てくる。

カムロウ「…おいおいおいおいおい。」

ラクト「こいつら、ホントにタチが悪ぃな……」

僕たちが呆れていると……落とし穴からエルフが這い出てきた。

エルフ「あなた達、よくも……!こんないたずらばっかりして……!もう許さないわよ!」

フェアリー「わ~い、逃げろ~!逃げろ~!」

エルフ「こらぁ、待ちなさぁい!!」

ひらひら逃げていく妖精たちを、エルフは追い掛けていった。

ルカ「………」

チリ「行っちゃった……」

ルカ「はぁ……平和なのか、平和じゃないのかよく分からない森だな。」

 

ルカ「さて、先に進むか……」

足を進めようとした瞬間__地面に穴が空いた。

ルカ「うわぁ!?」

どうやらこの辺り……落とし穴だらけのようだ。

ルカ「おい、ここもかよ……みんな、ここら全部落とし穴だ。気を付けて。」

僕が落とし穴から脱出した時……地面から顔だけを覗かせるチリがいた。

チリ「ごめん、もう落ちてる。」

ルカ「………………」

注意喚起は時すでに遅く、もれなく仲間たちも落とし穴の餌食になっていた。

ジョージ「ぬおぅ!」ズボォ!

ラクト「ぎゃあっ!」ズボォ!

マモル「うわぁ。」ズボォ!

カムロウ「ぎゃっ!」ズボォ!

パヲラ「開脚!……失敗!」ズボォォ!

辺り一帯落とし穴のこの場所で、僕たちは予想以上に体力を消耗したのだった___

 

 

 

ルカ「__本当にこっちで合ってるのかな………」

それからしばらく、僕たちは森の中を歩み進んでいる。

ルカ「ふぅ……ここで少し休憩しよう。」

仲間たちにそう告げ、水筒を取り出して水分補給。

パヲラ「結構進んだと思うけれど……」

ルカ「ああ、この森…かなり広いな……」

ラクト「方位磁針がグルグル……」

風を感じるほうに着々と進んでいるが、未だにシルフに出会える気がしない。

昨日の夜、蒸留して補充した水筒も中身が少なくなってきた。

ここまでとなると、野営するか一度引き返すことも検討しないといけないな。

僕にも疲れが出始めてきた……

 

そしてまた、しばらく進んでいると……

むぎゅっ、と何か柔らかいモノを踏ん付けてしまった。

フェアリー「ふぎゃ!」

ルカ「え……?」

驚いて足を上げると……

踏んでしまった花の中に、フェアリーが隠れていたようだ。

いかにも強気そうなフェアリーは、僕を睨んできた。

ルカ「ご、ごめんよ。大丈夫……?」

フェアリー「いたいよ~!もぉ~!」

 

カムロウ「花の中にフェアリーが!?」

パヲラ「ホントだわねぇ。どうしてお花に隠れてたのかしら。」

フェアリー「わたしたちはね……こわくなると、お花の中に隠れるの。だからね、お花は踏んじゃだめなの。こんどから、気をつけてね。」

この森を歩くときには、足元にも注意しなければならないようだ。

ルカ「うん、わかった。」

フェアリー「それじゃあ、これあげる!」

フェアリーが差し出したのは……小さく可愛らしいどんぐりだ。

 

「妖精のどんぐり」を手に入れた!

 

ルカ「ありがとう……これは?」

 

フェアリー「それ、おともだちのしるし。お兄ちゃんにあげる!」

妖精からもらった、友達のしるし……

ルカ「ありがとう、大切にするよ。」

この小さなどんぐりは、僕の宝物になるだろう。

ルカ「わっ……!」

そのどんぐりを受け取った次の瞬間、掌の中でほのかな光を放った。

ルカの体に、暖かいエネルギーが流れ込んでくる!

 

__身体の疲れが取れた気がした!

 

ルカ「あっ…ちょっと元気になったかも?」

背中に張り付いていた重りが取れたような気分だ。

もうちょっと頑張れそうだ!

ルカ「それじゃあ、そろそろ僕は行かないと……」

フェアリー「ばいばい!ばいばーい!」

他のフェアリー達も物陰からひょこひょこ顔を出し、こちらに手を振る。

ラクト「うわ、ゴ〇ブリみてぇに結構いる……」

ルカ「そう言うの止めな。そのうち本当にそう見えるようになるよ。」

僕たちは手を振り返しながら、足元に気を付けつつ森の奥へと進んだのだった。

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