もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第31話 たなびく風の守り

キメラドリアードが放った攻撃行動。

 

__花葬。

 

それはキメラドリアードの持てる全力……排除行動のように思える。

 

槍が降り、弾丸の雨が降り。

全てを微塵に帰す薔薇の突風。

 

一瞬にして、開花したあの花たちは。

突如として巻き起こされた、花の災害とも言い表せそうな猛攻は。

僕たちに降りかかった____

 

 

 

 

 

ルカ「__あ……危なかった……!」

 

その中で、僕に向かって放たれたあの【薔薇】……

死剣・乱れ星でスタミナが尽きかけていたとはいえ、とっさに避けなければ今のでやられていただろう……

 

ルカ「みんなは…!?どうなった……?」

僕の中に流れる、シルフの力がある影響か……周りを視ずとも仲間たちの状況がわかる。

 

ラクトは、ヒマワリの弾丸が腕にかすったようで、腕を手で押さえながら、必死に岩の裏に隠れている。

 

パヲラとジョージは互いに背を合わせて、拳や刀を構えている。

服もボロボロで、毒をくらったように変色した傷があるのと、百合の花弁が散らばっていることから、あのキメラドリアードの百合の猛攻をなんとかしのいだようだ。

 

カムロウは人の姿に戻って地面に転がっていたが、息はあるようだ。

そして、チリとマモルの2人と一緒にいた。

キメラドリアードの攻撃の余波で出来た、倒木の裏に身を潜めているようだ。

 

みんな、どうにか生きているみたいだ。

 

ルカ「くっ……!あいつ、強い……!」

とてつもない生命力と、強力かつ厄介な攻撃。

このままでは、僕たちに勝ち目はない__

 

 

とにかく、立ち上がろうとした時だった__

 

ルカ「……え?」

脚に力が入らない…?

そう感じて、右足を見た____

 

 

 

見たはずの右足が無かった。

違う。

一気に心臓の鼓動が跳ね上がった………

右足が無いんじゃない……さっきの攻撃で………

()()()()()()()()()()()んだ…!!!

 

ルカ「ハアッ……ハアッ……!!!」

そう自覚した瞬間……脚に痛みが走ったうえに、血がドパァッとあふれ出した…!

ルカ「おい嘘だろッ……!!!」

まさか切れ味が良すぎて、斬られたことに気付けなかったとでもいうのか…!?

焦って周りを見ても、斬られて落ちてるはずの僕の右足がない。

あの【薔薇】で、ブーツごとミンチになってしまったのか…!?

 

キメラドリアード「…………………」

すると、キメラドリアードの体に、再びあの薔薇が出現した!

ルカ「まずいッ……!」

狙いは僕だ。

足を負傷したから、排除しやすい対象から始末するつもりなんだ!

 

ジョージ「ル、ルカ殿!!早くそこから離れるのだ!」

仲間たちが心配する。

しかし僕は、痛みで体勢を崩してしまう。

 

ルカ「うぐっ……」

スタミナ切れで、身体が重く動けない……

そうだった……死剣・乱れ星で消費した分の体力がまだ……回復していない…!

キメラドリアードの薔薇は、回転を加速させている……!

 

ジョージ「(もしや…ルカ殿は今、動くことができぬとすれば……どうする…!?」

ジョージ「(では、囮になるか?そうなるとルカ殿か私、どちらかを一点に狙うだろう。二手に分かれるとはいえ、半分の博打に賭けるというのもな……)」

 

まもなく……キメラドリアードの高速回転する薔薇が、発射された!!!

 

ジョージ「(…………なれば!)」

毒で痛む体を無理にでも動かし、ジョージは奮起する…!

 

パヲラ「ジョージちゃん!?何を!?」

ジョージ「背に腹は……代えられん!!!」

 

ジョージ「おおおおおぉぉぉぉぉぉ……!!!」

ルカの前に庇うように立ったジョージは、腕を広げ、仁王立ちする……

ルカ「ジョ…ジョージ…!?何してるんだ!?離れるんだ!お前まで巻き込まれるぞ!!」

 

ジョージ「禍津鬼纏い(まがつおにまとい)修羅(しゅら)!!!」

ジョージ「(禍津(まがつ)で引き出した力を、全てを防御に……これでヤツの薔薇を受け止める!!!)」

 

螺旋する薔薇が突撃してきた!!!

高速で回転する薔薇を、腕を広げ、足を広げ、大の字で受け止めるジョージ!

 

ジョージ「ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」

 

全身、鉄のように硬化したジョージ。

腹部に、あの薔薇が高速で回り当たっている。

火の粉が舞い、ギィィッと鉄を擦るような音が響く………

 

ジョージ「うぅ…!う、ぐ、ぐ………!!」

 

勢いに負けそうになり、後方へ押し出されそうになるも……

それでもジョージは踏ん張って、受け止め続ける!

 

ルカ「ジョージ!早く退けるんだ!!そのままだとお前、とんでもないことになるぞ!!」

いや、もう既に手遅れなのかもしれない。

眩しいほどの火の粉が舞う中、細かくも赤い何かが一緒に散っているのが見える。

ジョージの皮膚が、血を含みながらえぐり削れているのだと直感した。

硬化したとはいえ、やはりあの薔薇を真正面から受け止めるのは……あまりにも無茶すぎるのだと……

 

ジョージ「心配…ご無用ッ…!ルカ殿は……瞑想で、脚の再生を……!」

ジョージ「我が命は…ッ!!!この身無くしても…勇者ルカと…主君と共に在り……ッ!!!」

 

ジョージ「……獄焔纏(ごくえんまとい)…………!!!」

全身から、紫色の炎が噴き出した……!!!

ジョージ「(獄焔纏(ごくえんまとい)の炎と、さらに摩擦熱で、【薔薇】の炎上を狙うッ…!いくら大木を微塵にするとはいえ、摩耗をしないというわけではあるまい…!)」

 

燃えながら耐え続けるジョージ。

擦る音が次第に鈍くなっているが、薔薇の回転は止める様子がない。

 

ジョージ「(私に穴が空くまで回転するつもりだ……!無謀すぎたか…!いかん……このままだと内臓まで削れかねん……!!!)」

 

痛みで思考もままならない中……ジョージは腕を伸ばし、薔薇の茎を掴んだ!!

薔薇の棘が手に刺さり血がにじむ。

 

ジョージ「くぅ……ぅぅぅああああ!!!」

 

それでもジョージは茎ごと、キメラドリアードを引っ張り上げ……キメラドリアードを投げ飛ばした!!!

キメラドリアードは宙へ浮き、地面に叩きつけられた!!!

 

ジョージ「ぬぅぅぅぅああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そのまま横に引き上げ、ぶん回し、遠心力を利用する!

周りに自生する木々に次々と激突させる!!!

ぶん回す中で、ジョージ遠心力に耐え切れずにそのまま手を放し、キメラドリアードを遠方にまで投げ飛ばした!!!

 

キメラドリアード「……………………」

硬いモノに強く当たる音が何度か聞こえて……しばらくして、まったく聞こえなくなった。

 

ジョージ「…は……ぁ…………ぁぁぁ…………」

 

息を荒くし、立っているのもやっとのようなジョージ。

腹部は……皮膚が抉れて崩れ落ち、赤い血肉が見えていた。

全身硬化していたためか、内臓まで達していなかったものの………

それでもこれは、致命傷だというのが目に見えて分かる。

 

ルカ「ジョージ……お前………!!!」

なんでこんな無茶を……と、出そうになったが、飲み込んだ。

本当に死ぬかもしれない。最後に恨み事で終わらせはしない。

今、ここで言うべき言葉を__

 

ルカ「__ありがとう…………!!!」

ジョージ「……は…………ぁ…………」

 

ジョージは安泰したような、振り絞るような笑顔を見せると……

膝をついてしまった。

倒れそうになったが、すぐさまパヲラがジョージの体を掴み抑える。

パヲラ「おい、ジョージ…!ジョージ…!いや、もうこの傷では……!」

 

仲間たちも心配して、僕やジョージの近くに来る。

マモル「おいジョージ…!死ぬな……!ジョージッ!!!」

何度か呼び掛けるも、脱力したように動かないジョージ。

痛みで意識を無くしたようだ………

 

パヲラ「……マモルちゃんはすぐに、ジョージちゃんに処置を。チリちゃんも補助に徹して!」

チリ「は…はい!」

 

マモル「姉さん!回復魔法は利きますかい!?」

チリ「…ここまで弱っていると……回復魔法(ヒーリング)が利きません……」

マモル「あぁ……まず、血が出すぎだ。圧迫して止血する!」

 

マモルは、身に着けていたサラシを外す。

マモル「これを洗濯魔法(クリーンアップ)で清潔に!」

 

魔法で綺麗になったサラシを、ジョージの腹に巻きつけ抑える。

サラシが血でじわりと滲み…染まる。

 

マモル「ここでジョージを死なせねぇ…道半ばじゃねぇか!!!気張れジョージ!気張れよ!!!」

必死に呼びかけ、止血を試みるマモル。

 

マモル「兄さん、道具出してくだせぇ!軟膏ありましたよね!」

ラクト「はいはいはいはいはい………!!!」

カバンから包帯やら軟膏やらを次から次へとポンポン取り出し、マモルに手渡すラクト。

チリ「……………」

その様子を近くで眺めていたチリは、重く口を開けた。

 

チリ「……強引な方法ですけど………1つだけ、回復を望める魔法があります。」

マモル「あるんですか。あるんですか!?」

 

チリは、ジョージの胸辺りに両手を添えると……魔力を身に纏った。

いや、魔力が体の内側から溢れているのか。

髪は吹き上がるようになびき、身体は薄く光を放っている。

 

マモル「アッシはどうすれば?」

チリ「そのままで、体を力強く抑えてて下さい。」

腕から魔力を流し込み始めた!

腕を伝った光が、ジョージの体の中に溶け込んでいく……

 

チリ「蘇生魔法(レイズ)!!!」

 

ジョージの体は光を纏い、強く痙攣し始めた!!!

マモル「うわわ…!」

マモルは慌てて式神を展開し…震えるジョージの体を無理矢理抑える。

 

ルカ「チリはいったい何をしてるんだ……?」

ラクト「蘇生魔法(レイズ)だよ……対象の蘇生を試みる魔法だ。魔力で細胞1つ1つを無理矢理動かして再起を促す………が、膨大な魔力を消費するもんだ。対象者にも使用者、どっちにも負担が大きい……」

 

ルカ「回復魔法との差異は?聞いた限りじゃ同じように思えるけど……」

ラクト「あぁ……回復魔法は対象の体力や自然治癒力に依存しているから、弱ってると効果も無くなる。蘇生魔法(レイズ)の場合、そんなもん関係無しで無理矢理身体を動かして再起させるんだ。だけど、それで復活するかどうかはまだ分からねぇ。無理矢理やったせいで早く死なせちまうかもしれねぇから……」

 

ラクト「どっちにしろ…なんつー魔法を使ってんだアイツ…!!!」

 

チリ「ジョージさんは体、丈夫ですからね…耐えれますよね……!」

そう言いながら呼吸乱れるチリ。

汗はどんどん溢れ、彼女の力んだ腕や手の血管は浮き出ている……

 

マモル「姉さんダメだ!アンタまで死んじまう!!!」

チリ「大丈夫ですっ……魔力の扱いは慣れっこですから………!!!」

 

目を見開き、歯を食いしばるチリ。

大量の魔力を消費して蘇生を試みているのだ。

集中力と体力も消耗するのだろう。

 

マモル「……………」

 

マモルは手ぬぐいを取り出していた。

 

マモル「……汗、拭きやしょうか?」

チリ「あ、はい……お願いします。」

 

ルカ「パヲラ……ジョージは、助かりそうか?」

パヲラ「すまない。こればかりは、死ぬことを覚悟したほうがいいな………」

 

わざわざパヲラに予測を聞かなくても、結果は十二分に見ればわかることだった。

けど、そうでもしないと…僕は、安心できない部分もあった気がする。

 

ルカ「…あの時、無理にでも僕が動ければ。」

僕は胸を痛めていた。

大事な仲間を傷つけられ、また僕のせいで、無くしそうだから。

パヲラ「反芻思考のしすぎだよ。」

そんな僕の後悔を鋭く裂いてくるパヲラの声。

僕はそれ以降口を開かず、脚の再生に専念した。

 

カムロウ「ルカ……脚、大丈夫か?」

ルカ「そういう君こそ………」

 

カムロウは倒れながらも、回復魔法を脇腹に当てて治癒をしていた。

どうやら、ドラゴンの姿と人間の姿は同期しているそうだ。

なのでダメージを受ければ勿論、同じ個所に傷が残る。

 

 

ラクト「おい…………」

声を震わせ、指差す方角に……

ラクト「来やがったよ………!!!」

 

キメラドリアード「___…………………」

遠くのほうから、キメラドリアードがこっちに向かって歩いているのが見えた。

 

ルカ「そんな……まだ脚の再生が終わってないのに……!」

 

なんて生命力だ……どれだけタフなんだ…!?

こっちはまだ、チリがジョージの蘇生中だというのに………

 

ラクト「………ジョージにルカにカムロウ……今ここで、負傷してるヤツらのトコまで、あのバケモンを近づかせるわけにはいかねぇよな………」

するとおもむろに、カムロウの剣と盾を装備し始めるラクト。

ラクト「剣と盾、借りるぜカムロウ!……剣振るのって、薪割る要領で良いんだよな?たぶん違うと思うけど。」

カムロウ「違うね。」

ラクト「分かってるからハッキリ言わないでぇ!」

 

パヲラ「お前…真向から立ち向かうのか。」

真剣な面持ちでラクトに問うパヲラ。

ラクト「あったりめぇだろ!やるしかねぇんだ!」

そう聞くと、静かにラクトの横に並ぶパヲラ。

 

パヲラ「よし…いけるか?」

ラクト「だから、俺と!お前で!何とかする!だろ?」

自分とパヲラを交互に指差すラクト。

ラクト「やれるだけやるって言っちまったしな………目にモノ言わせてやらぁよ!こんにゃろめが!!!」

 

パヲラは拳を構え……

ラクトは剣と盾を持ち……

キメラドリアードに立ち向かった!!!

 

 

ラクト「ルーンアロー(魔導弩撃)!!!」

 

まだキメラドリアードとは距離がある分、何発も放てる時間の猶予がある。

ラクトはルーンアロー(魔導弩撃)を連発するも……

ドスドスと刺音を立てて、キメラドリアードの体に突き刺さる魔力の矢……

 

キメラドリアード「………………」

するとキメラドリアードは、向日葵の花を咲かせた!

向日葵から種の弾丸を一斉掃射してくる……!!!

 

ラクトの前に立ったパヲラ。

パヲラ「はいぃぃぃッ!!!」

巧みな手さばきで、掃射させる弾丸の種を掴み、回収する……

 

パヲラ「お返しッ!(シャ)ッ!!!」

手のひらから、弾丸の種を一斉に投げ返した!!!

 

ラクト「ミサイル発射!!」

カバンから、マジックミサイルが放たれた!!!

 

カウンターも含めて被弾したキメラドリアードだったが……

キメラドリアード「………………」

それでも無表情のまま、距離を詰めてくるキメラドリアード。

 

パヲラ「これだけ受けてもなお…!!!」

ラクト「なんで怯まねぇんだよ…!!!」

 

キメラドリアードのツタが鞭のように振るわれる!

パヲラはどうにか防御姿勢で攻撃を受け止め……ラクトは鉄の盾を前に構え、キメラドリアードの攻撃を防いでいたが……盾の端が欠け始めた!

 

ラクト「うおっ…!?盾が持たねぇ!」

 

パキパキと亀裂が生まれ……盾が壊れるのと同時に、ラクトは身構えた!

 

……しかし、キメラドリアードの攻撃が来ることはなかった。

 

ラクト「……んん?」

恐る恐る目を見開くと……まるで抱擁するかのように柔らかい風が、ラクトを包んでいた!

 

可視化されたような、それほどにまで見える風の軌跡。

渦のように体の周囲を回るソレが……

風が、エアクッションのように、そして防壁のようにして……ラクトをキメラドリアードの攻撃から防いでいた!

 

ラクト「な、なんだこりゃ!?」

 

目を真ん丸に見開いて驚くラクト……

 

カムロウ「カミナリ落とし(落雷魔法)ィィィ!!!」

突如、暗雲が生まれ…一筋の落雷が、キメラドリアードに降り注いだ!

 

ラクト「カムロウの落雷魔法……!?」

ラクトは後ろを振り返ると………

なんとカムロウは、這ってまでして近くまで来ていたのだ!

 

ラクト「お、お前……まだ全身疲労で動けないはずなのに………まさかさっきの風…お前がやったバリア(防壁魔法)か!?いつの間にこんなの……」

 

カムロウ「分がんな゛い………」

ラクト「……?」

カムロウ「その【風】……俺の体から勝手に出て来た……でも、なんとなくわかるんだ……その【風】は、俺の意思で生まれてるんだ!」

 

カムロウの体から、ラクトを守っていた風に似たモノが発している……!

 

カムロウ「この【風】で、君を守る!!!」

ラクト「そんじゃあ安心して、ドンドン攻撃していいってワケだな!!!」

 

パヲラ「(そうか、レジリエンス……グランべリアが言っていた………再起する能力……!カムロウ君自身に宿るその力が、窮地に立たされたことでその真価を開花し、さらに体に馴染みつつあるのだろうか……!)」

 

カムロウ「ラクト!風薙ぎ(かぜなぎ)だ!風薙ぎ(かぜなぎ)を使え!!」

ラクト「はぁ!?いや、俺はそんなの使えな……」

カムロウ「いいやッ!使える!この【風】を、剣に纏わせれば…!!!」

 

ラクトが握る剣の刀身に、風が集まった!

 

ラクト「そうか。俺でも使えるってか!!!」

 

そして剣から衝撃波を放ち……

さらに魔導銃から魔力の弾丸を放ち、応戦するラクト。

ラクト「よっしゃ…まだやれっかァ!相棒!!!」

カムロウ「ああ、まだいけるぞ…!!!」

 

ルカ「………………」

 

ラクトは片手で剣を持ちながら、もう片手の魔導銃で発砲しながら戦っている。

パヲラは体術で応戦し……

カムロウは伏せながらも両手を前に突き出し、ラクトとパヲラの2人に風を纏わせて、キメラドリアードから攻撃を守っている。

 

ジョージは未だ戦闘不能で、チリとマモルが蘇生にあたっている。

カムロウも全身疲労で十分に行動できない。

かくいう僕も、まだ脚の再生で動けない。

 

……どうしよう。

そう思ってしまった。

絶対に勝たなきゃいけないのに。

 

まだ僕に、できることはないのか。

 

……どうすれば___

 

 

 

 

「__ルカ……あたしの力を使って……」

 

ルカ「え……!?」

不意に、僕の中から囁いてくる声。

これは……シルフの声だ!

 

シルフ「忘れたの?あたしは、ルカの中にいるんだよ。だから、あたしの力を使って……」

ルカ「わ、分かった……!」

力を使うにはどうすればいいのか……それも、シルフが囁いてくれた。

シルフ「魔力を込めて、あたしの名を呼ぶの………今のルカの体、魔力で満ち溢れているから………」

ルカ「魔力……そうかッ!」

そうだ!今の僕には、新たな力が目覚めているはずだ……!

 

ようやく、右脚の再生が完了した。

僕は立ち上がって、走り出した。

そして、キメラドリアードに立ち向かっている2人に向かって叫んだ。

 

ルカ「2人とも!もう少しだけ時間が欲しい!ホントに少しだけでもいいから!」

ラクト「何する気だ!?」

 

ルカ「シルフの力を使う!」

「「「「「 …! 」」」」」

 

ラクト「……ソレ、ぶっつけ本番で出来んのか…!?」

ルカ「なんか……出来る気がするんだ………」

 

そういうとみんな、互いに視線を合わせて頷いた。

 

ラクト「いくぜパヲラーッ!!!」

パヲラ「EEEERUKYUUUUURU(エエエエルキュゥゥゥゥゥール)!!!」

 

みんなが時間を稼いでくれる中、僕は静かに瞑想をした…………

 

ルカ「………………」

 

全身に意識を集中すると、流れのようなモノを感じる………

これが魔力なのだろう。

この流れに力を込めれば……シルフを呼ぶことが出来るはずだ!

ルカ「シルフ、僕に力を貸してくれ……!__」

 

 

 

ルカ「__来いッ!シルフッ!」

ルカはシルフを召喚した!

 

シルフ「やっほー!たつまきだよー!いっけー!!」

シルフは風の守りを放った!

ルカの周囲に力強い風が吹き荒れた!

 

ルカ「こ、これは……!?」

まるで、僕を中心に小さな竜巻が吹き荒れているような感じだ。

自分が台風の目にでもなったような気分だ。

 

しかし、初使用となる現状……

この風がどのような効果を発揮してくれるのか、文字通り実感が湧かない。

 

シルフ「ルカ。とりあえず、いつものように攻撃してみなよ!あいつの攻撃は、私の風で防いであげる!」

シルフとの戦いを思い出す。

相手の攻撃を受け止め、跳ね返す風の防壁……

この力をシルフは使っていた。

 

ルカ「よし……いくぞ!」

僕は雷鳴突きを放ち、鋭く踏み込んで突きを繰り出した!

キメラドリアード「……………」

ルカ「まだ倒れないか…!」

しかし、手ごたえは感じない。

ここまでは今まで通りと同じと思うが……?

 

キメラドリアードはツタを伸ばし、鞭のように振るってきた!

しかし、ツタは風の刃で切り裂かれた!

ルカ「え…!?」

僕を覆う小さな竜巻がツタを防ぐどころか……さらに切り裂いていく。

もちろん、僕が何かしたわけじゃない。

シルフが起こしたこの風が、僕を守ってくれたのだ!

 

パヲラ「キメラドリアードのあのツタを、こうもか……」

ラクト「すごいな。ズタズタにしちまったな。」

 

キメラドリアード「……………」

キメラドリアードは花から、陶酔の魔香を放った!!

しかし、突風が花粉を吹き散らした!

 

ルカ「おお………」

思わず、驚く。

今まで苦戦を強いられた花やツタが、シルフの力でこうも完封されている様だ。

 

ルカ「す、すごい……!」

シルフ「えへへ……風の力の使い方、分かった?」

ルカ「ああ……すごいな。この力。」

 

勝機が見えた。

僕の胸に勇気が湧いてきた。

 

ルカ「よし……ラクト、パヲラ。ありがとう、もう十分だ。シルフの力があれば、キメラドリアードの攻撃を相殺できそうだ。」

 

ルカ「でも……万が一がある。カムロウやジョージたちのことを頼んだ!」

パヲラ「ええ。」

ラクト「おう、分かった!」

ラクトとパヲラは静かに引き下がった。

ラクト「ルカ……頑張れよ!」

僕たちは互いに、サムズアップした!

 

ルカ「ここからは…僕がやる!」

 

顔を上げ、キメラドリアードと相対する。

 

シルフ「ルカ。あの相手は、風の力がとっても相性がいいみたい。風の力って、植物系の敵とは相性がいいから…あいつの技はほとんど無効化できそうだよ。」

 

シルフ「だから……思う存分、戦っちゃえ!」

ルカ「……ああ!!!」

 

___僕の全てをぶつける!!!

 

ルカ「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

雷鳴突きや魔剣・首刈り。

袈裟斬りに横一文字、次々と斬撃を放つ。

 

その間にも、キメラドリアードは何度も僕に攻撃を仕掛け、シルフの風の守りを突破しようと試みているようだ。

 

ヒマワリから種の弾丸を発射したり、百合の花を突き刺してきたが……

種は吹き返され、花弁は散る。

全て、シルフの風前で微塵になる。

 

キメラドリアード「…………………」

キメラドリアードは、【花葬】を解き放った!!!

身体から大量のツタやあの回転する薔薇、ヒマワリ、百合の花を一気に開花させ……

そのすべてを、僕に向けてきた!!!

ルカ「一斉攻撃か……!」

 

ルカ「シルフ!頼む!」

シルフ「わかったー!」

 

僕の周りに、再び力強い風が吹き荒れる。

竜巻が、キメラドリアードの花たちの行方を壁のように阻害し……僕から攻撃を守ってくれる……

 

……しかし、シルフの風の守りは……植物族と相性が良くても、決して無敵要塞というわけではない。

限界があるということだ。

キメラドリアードの全力攻撃を耐えきれる根拠も今は無い。

もしかすると…このままでは本当に突破されそうだ………!__

 

 

__その時だった。

 

僕の横を、淡い光が流星のように通り過ぎた。

光はキメラドリアードの体を照らすと、砂のように崩壊させる……!

 

風の流れで、感覚で感じた。

背後で様子を見守っていた仲間たち。

カムロウが……ドラゴンの姿になっていた。

あいつ、無理にでも変身して僕を助けようとしたのか………!

 

カムロウ「(今…これが……!俺にできる……!!最後の………!!!)」

ドラゴンの姿に変身したカムロウ。

四肢を地面に食い込ませ、大きく口を開ける!

そこから溢れる淡い光……!!!

 

カムロウ「(最後の……!!!)」

ドラゴンブレス(破壊光線)____」

 

カムロウ「(WOOOOOOORYAAAAAAA(ウオオオォォォリアアアァァァ)!!!___)」

 

ドラゴンの口から放たれた、二度目の淡い光線は……キメラドリアードに降り注ぎ、爆散。

爆炎は風にたなびき、焦げた花弁たちと共に過ぎ去って行く……

 

カムロウ「これが…俺の……最後の…精一杯………」

 

カムロウの体は空気がしぼむように縮んでいき、人間の姿に戻っていく。

全身疲労の最中、無理にでもドラゴンに変身したためか……

ドラゴンへの変身は、数秒しか持たなかったようだ。

 

カムロウ「勝って……勝てるよ……ルカ…!!!」

ルカ「___ありがとう……!!!」

 

ここから先は……僕が…!!!

 

 

キメラドリアード「…………………」

キメラドリアードは、身体からツタや花を咲かそうとしていた……

その蕾や茎が咲く寸前に斬り落とす!

 

ルカ「死剣……乱れ星!!!」

ルカは、無数の斬撃を繰り出したッ!!!

 

さらに斬撃を浴びせ、ダメージを与えた!!

 

ルカ「シルフ!上昇気流だーッ!!!」

シルフ「それ、浮き上がっちゃえー!」

 

僕の周囲を、上に向けて風が吹き抜ける!

その流れに身を任せ、空高く飛び上がった!!!

 

剣に全体重を乗せて、自由落下!

シルフの力で下降気流を発生させ……落下速度はさらに増す!!!

 

ルカ「これで散ってくれーッ!!天魔頭蓋斬ーッッ!!!」

空から堕ちる剣が、キメラドリアードの体を切り裂いた!!!

 

 

キメラドリアード「__!!」

キメラドリアードの体が、無数の粒子となって消散していく……

 

ラクト「お、おぉ!?」

パヲラ「封印の兆し……封印成功かしら!?」

カムロウ「勝ったんだ……勝てたんだ……!!」

 

ルカ「や……やった!」

 

すると、キメラドリアードの体に亀裂が走り始めた……

 

ルカ「ん……?」

 

そしてそこから、眩い光が発し___

 

ルカ「うわあっ!!___」

 

周囲にぶわっと花びらや葉っぱが散らばった!

 

__キメラドリアードをやっつけた!

 

 

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