もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
キメラドリアードが放った攻撃行動。
__花葬。
それはキメラドリアードの持てる全力……排除行動のように思える。
槍が降り、弾丸の雨が降り。
全てを微塵に帰す薔薇の突風。
一瞬にして、開花したあの花たちは。
突如として巻き起こされた、花の災害とも言い表せそうな猛攻は。
僕たちに降りかかった____
ルカ「__あ……危なかった……!」
その中で、僕に向かって放たれたあの【薔薇】……
死剣・乱れ星でスタミナが尽きかけていたとはいえ、とっさに避けなければ今のでやられていただろう……
ルカ「みんなは…!?どうなった……?」
僕の中に流れる、シルフの力がある影響か……周りを視ずとも仲間たちの状況がわかる。
ラクトは、ヒマワリの弾丸が腕にかすったようで、腕を手で押さえながら、必死に岩の裏に隠れている。
パヲラとジョージは互いに背を合わせて、拳や刀を構えている。
服もボロボロで、毒をくらったように変色した傷があるのと、百合の花弁が散らばっていることから、あのキメラドリアードの百合の猛攻をなんとかしのいだようだ。
カムロウは人の姿に戻って地面に転がっていたが、息はあるようだ。
そして、チリとマモルの2人と一緒にいた。
キメラドリアードの攻撃の余波で出来た、倒木の裏に身を潜めているようだ。
みんな、どうにか生きているみたいだ。
ルカ「くっ……!あいつ、強い……!」
とてつもない生命力と、強力かつ厄介な攻撃。
このままでは、僕たちに勝ち目はない__
とにかく、立ち上がろうとした時だった__
ルカ「……え?」
脚に力が入らない…?
そう感じて、右足を見た____
見たはずの右足が無かった。
違う。
一気に心臓の鼓動が跳ね上がった………
右足が無いんじゃない……さっきの攻撃で………
ルカ「ハアッ……ハアッ……!!!」
そう自覚した瞬間……脚に痛みが走ったうえに、血がドパァッとあふれ出した…!
ルカ「おい嘘だろッ……!!!」
まさか切れ味が良すぎて、斬られたことに気付けなかったとでもいうのか…!?
焦って周りを見ても、斬られて落ちてるはずの僕の右足がない。
あの【薔薇】で、ブーツごとミンチになってしまったのか…!?
キメラドリアード「…………………」
すると、キメラドリアードの体に、再びあの薔薇が出現した!
ルカ「まずいッ……!」
狙いは僕だ。
足を負傷したから、排除しやすい対象から始末するつもりなんだ!
ジョージ「ル、ルカ殿!!早くそこから離れるのだ!」
仲間たちが心配する。
しかし僕は、痛みで体勢を崩してしまう。
ルカ「うぐっ……」
スタミナ切れで、身体が重く動けない……
そうだった……死剣・乱れ星で消費した分の体力がまだ……回復していない…!
キメラドリアードの薔薇は、回転を加速させている……!
ジョージ「(もしや…ルカ殿は今、動くことができぬとすれば……どうする…!?」
ジョージ「(では、囮になるか?そうなるとルカ殿か私、どちらかを一点に狙うだろう。二手に分かれるとはいえ、半分の博打に賭けるというのもな……)」
まもなく……キメラドリアードの高速回転する薔薇が、発射された!!!
ジョージ「(…………なれば!)」
毒で痛む体を無理にでも動かし、ジョージは奮起する…!
パヲラ「ジョージちゃん!?何を!?」
ジョージ「背に腹は……代えられん!!!」
ジョージ「おおおおおぉぉぉぉぉぉ……!!!」
ルカの前に庇うように立ったジョージは、腕を広げ、仁王立ちする……
ルカ「ジョ…ジョージ…!?何してるんだ!?離れるんだ!お前まで巻き込まれるぞ!!」
ジョージ「
ジョージ「(
螺旋する薔薇が突撃してきた!!!
高速で回転する薔薇を、腕を広げ、足を広げ、大の字で受け止めるジョージ!
ジョージ「ぬおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」
全身、鉄のように硬化したジョージ。
腹部に、あの薔薇が高速で回り当たっている。
火の粉が舞い、ギィィッと鉄を擦るような音が響く………
ジョージ「うぅ…!う、ぐ、ぐ………!!」
勢いに負けそうになり、後方へ押し出されそうになるも……
それでもジョージは踏ん張って、受け止め続ける!
ルカ「ジョージ!早く退けるんだ!!そのままだとお前、とんでもないことになるぞ!!」
いや、もう既に手遅れなのかもしれない。
眩しいほどの火の粉が舞う中、細かくも赤い何かが一緒に散っているのが見える。
ジョージの皮膚が、血を含みながらえぐり削れているのだと直感した。
硬化したとはいえ、やはりあの薔薇を真正面から受け止めるのは……あまりにも無茶すぎるのだと……
ジョージ「心配…ご無用ッ…!ルカ殿は……瞑想で、脚の再生を……!」
ジョージ「我が命は…ッ!!!この身無くしても…勇者ルカと…主君と共に在り……ッ!!!」
ジョージ「……
全身から、紫色の炎が噴き出した……!!!
ジョージ「(
燃えながら耐え続けるジョージ。
擦る音が次第に鈍くなっているが、薔薇の回転は止める様子がない。
ジョージ「(私に穴が空くまで回転するつもりだ……!無謀すぎたか…!いかん……このままだと内臓まで削れかねん……!!!)」
痛みで思考もままならない中……ジョージは腕を伸ばし、薔薇の茎を掴んだ!!
薔薇の棘が手に刺さり血がにじむ。
ジョージ「くぅ……ぅぅぅああああ!!!」
それでもジョージは茎ごと、キメラドリアードを引っ張り上げ……キメラドリアードを投げ飛ばした!!!
キメラドリアードは宙へ浮き、地面に叩きつけられた!!!
ジョージ「ぬぅぅぅぅああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのまま横に引き上げ、ぶん回し、遠心力を利用する!
周りに自生する木々に次々と激突させる!!!
ぶん回す中で、ジョージ遠心力に耐え切れずにそのまま手を放し、キメラドリアードを遠方にまで投げ飛ばした!!!
キメラドリアード「……………………」
硬いモノに強く当たる音が何度か聞こえて……しばらくして、まったく聞こえなくなった。
ジョージ「…は……ぁ…………ぁぁぁ…………」
息を荒くし、立っているのもやっとのようなジョージ。
腹部は……皮膚が抉れて崩れ落ち、赤い血肉が見えていた。
全身硬化していたためか、内臓まで達していなかったものの………
それでもこれは、致命傷だというのが目に見えて分かる。
ルカ「ジョージ……お前………!!!」
なんでこんな無茶を……と、出そうになったが、飲み込んだ。
本当に死ぬかもしれない。最後に恨み事で終わらせはしない。
今、ここで言うべき言葉を__
ルカ「__ありがとう…………!!!」
ジョージ「……は…………ぁ…………」
ジョージは安泰したような、振り絞るような笑顔を見せると……
膝をついてしまった。
倒れそうになったが、すぐさまパヲラがジョージの体を掴み抑える。
パヲラ「おい、ジョージ…!ジョージ…!いや、もうこの傷では……!」
仲間たちも心配して、僕やジョージの近くに来る。
マモル「おいジョージ…!死ぬな……!ジョージッ!!!」
何度か呼び掛けるも、脱力したように動かないジョージ。
痛みで意識を無くしたようだ………
パヲラ「……マモルちゃんはすぐに、ジョージちゃんに処置を。チリちゃんも補助に徹して!」
チリ「は…はい!」
マモル「姉さん!回復魔法は利きますかい!?」
チリ「…ここまで弱っていると……
マモル「あぁ……まず、血が出すぎだ。圧迫して止血する!」
マモルは、身に着けていたサラシを外す。
マモル「これを
魔法で綺麗になったサラシを、ジョージの腹に巻きつけ抑える。
サラシが血でじわりと滲み…染まる。
マモル「ここでジョージを死なせねぇ…道半ばじゃねぇか!!!気張れジョージ!気張れよ!!!」
必死に呼びかけ、止血を試みるマモル。
マモル「兄さん、道具出してくだせぇ!軟膏ありましたよね!」
ラクト「はいはいはいはいはい………!!!」
カバンから包帯やら軟膏やらを次から次へとポンポン取り出し、マモルに手渡すラクト。
チリ「……………」
その様子を近くで眺めていたチリは、重く口を開けた。
チリ「……強引な方法ですけど………1つだけ、回復を望める魔法があります。」
マモル「あるんですか。あるんですか!?」
チリは、ジョージの胸辺りに両手を添えると……魔力を身に纏った。
いや、魔力が体の内側から溢れているのか。
髪は吹き上がるようになびき、身体は薄く光を放っている。
マモル「アッシはどうすれば?」
チリ「そのままで、体を力強く抑えてて下さい。」
腕から魔力を流し込み始めた!
腕を伝った光が、ジョージの体の中に溶け込んでいく……
チリ「
ジョージの体は光を纏い、強く痙攣し始めた!!!
マモル「うわわ…!」
マモルは慌てて式神を展開し…震えるジョージの体を無理矢理抑える。
ルカ「チリはいったい何をしてるんだ……?」
ラクト「
ルカ「回復魔法との差異は?聞いた限りじゃ同じように思えるけど……」
ラクト「あぁ……回復魔法は対象の体力や自然治癒力に依存しているから、弱ってると効果も無くなる。
ラクト「どっちにしろ…なんつー魔法を使ってんだアイツ…!!!」
チリ「ジョージさんは体、丈夫ですからね…耐えれますよね……!」
そう言いながら呼吸乱れるチリ。
汗はどんどん溢れ、彼女の力んだ腕や手の血管は浮き出ている……
マモル「姉さんダメだ!アンタまで死んじまう!!!」
チリ「大丈夫ですっ……魔力の扱いは慣れっこですから………!!!」
目を見開き、歯を食いしばるチリ。
大量の魔力を消費して蘇生を試みているのだ。
集中力と体力も消耗するのだろう。
マモル「……………」
マモルは手ぬぐいを取り出していた。
マモル「……汗、拭きやしょうか?」
チリ「あ、はい……お願いします。」
ルカ「パヲラ……ジョージは、助かりそうか?」
パヲラ「すまない。こればかりは、死ぬことを覚悟したほうがいいな………」
わざわざパヲラに予測を聞かなくても、結果は十二分に見ればわかることだった。
けど、そうでもしないと…僕は、安心できない部分もあった気がする。
ルカ「…あの時、無理にでも僕が動ければ。」
僕は胸を痛めていた。
大事な仲間を傷つけられ、また僕のせいで、無くしそうだから。
パヲラ「反芻思考のしすぎだよ。」
そんな僕の後悔を鋭く裂いてくるパヲラの声。
僕はそれ以降口を開かず、脚の再生に専念した。
カムロウ「ルカ……脚、大丈夫か?」
ルカ「そういう君こそ………」
カムロウは倒れながらも、回復魔法を脇腹に当てて治癒をしていた。
どうやら、ドラゴンの姿と人間の姿は同期しているそうだ。
なのでダメージを受ければ勿論、同じ個所に傷が残る。
ラクト「おい…………」
声を震わせ、指差す方角に……
ラクト「来やがったよ………!!!」
キメラドリアード「___…………………」
遠くのほうから、キメラドリアードがこっちに向かって歩いているのが見えた。
ルカ「そんな……まだ脚の再生が終わってないのに……!」
なんて生命力だ……どれだけタフなんだ…!?
こっちはまだ、チリがジョージの蘇生中だというのに………
ラクト「………ジョージにルカにカムロウ……今ここで、負傷してるヤツらのトコまで、あのバケモンを近づかせるわけにはいかねぇよな………」
するとおもむろに、カムロウの剣と盾を装備し始めるラクト。
ラクト「剣と盾、借りるぜカムロウ!……剣振るのって、薪割る要領で良いんだよな?たぶん違うと思うけど。」
カムロウ「違うね。」
ラクト「分かってるからハッキリ言わないでぇ!」
パヲラ「お前…真向から立ち向かうのか。」
真剣な面持ちでラクトに問うパヲラ。
ラクト「あったりめぇだろ!やるしかねぇんだ!」
そう聞くと、静かにラクトの横に並ぶパヲラ。
パヲラ「よし…いけるか?」
ラクト「だから、俺と!お前で!何とかする!だろ?」
自分とパヲラを交互に指差すラクト。
ラクト「やれるだけやるって言っちまったしな………目にモノ言わせてやらぁよ!こんにゃろめが!!!」
パヲラは拳を構え……
ラクトは剣と盾を持ち……
キメラドリアードに立ち向かった!!!
ラクト「
まだキメラドリアードとは距離がある分、何発も放てる時間の猶予がある。
ラクトは
ドスドスと刺音を立てて、キメラドリアードの体に突き刺さる魔力の矢……
キメラドリアード「………………」
するとキメラドリアードは、向日葵の花を咲かせた!
向日葵から種の弾丸を一斉掃射してくる……!!!
ラクトの前に立ったパヲラ。
パヲラ「はいぃぃぃッ!!!」
巧みな手さばきで、掃射させる弾丸の種を掴み、回収する……
パヲラ「お返しッ!
手のひらから、弾丸の種を一斉に投げ返した!!!
ラクト「ミサイル発射!!」
カバンから、マジックミサイルが放たれた!!!
カウンターも含めて被弾したキメラドリアードだったが……
キメラドリアード「………………」
それでも無表情のまま、距離を詰めてくるキメラドリアード。
パヲラ「これだけ受けてもなお…!!!」
ラクト「なんで怯まねぇんだよ…!!!」
キメラドリアードのツタが鞭のように振るわれる!
パヲラはどうにか防御姿勢で攻撃を受け止め……ラクトは鉄の盾を前に構え、キメラドリアードの攻撃を防いでいたが……盾の端が欠け始めた!
ラクト「うおっ…!?盾が持たねぇ!」
パキパキと亀裂が生まれ……盾が壊れるのと同時に、ラクトは身構えた!
……しかし、キメラドリアードの攻撃が来ることはなかった。
ラクト「……んん?」
恐る恐る目を見開くと……まるで抱擁するかのように柔らかい風が、ラクトを包んでいた!
可視化されたような、それほどにまで見える風の軌跡。
渦のように体の周囲を回るソレが……
風が、エアクッションのように、そして防壁のようにして……ラクトをキメラドリアードの攻撃から防いでいた!
ラクト「な、なんだこりゃ!?」
目を真ん丸に見開いて驚くラクト……
カムロウ「
突如、暗雲が生まれ…一筋の落雷が、キメラドリアードに降り注いだ!
ラクト「カムロウの落雷魔法……!?」
ラクトは後ろを振り返ると………
なんとカムロウは、這ってまでして近くまで来ていたのだ!
ラクト「お、お前……まだ全身疲労で動けないはずなのに………まさかさっきの風…お前がやった
カムロウ「分がんな゛い………」
ラクト「……?」
カムロウ「その【風】……俺の体から勝手に出て来た……でも、なんとなくわかるんだ……その【風】は、俺の意思で生まれてるんだ!」
カムロウの体から、ラクトを守っていた風に似たモノが発している……!
カムロウ「この【風】で、君を守る!!!」
ラクト「そんじゃあ安心して、ドンドン攻撃していいってワケだな!!!」
パヲラ「(そうか、レジリエンス……グランべリアが言っていた………再起する能力……!カムロウ君自身に宿るその力が、窮地に立たされたことでその真価を開花し、さらに体に馴染みつつあるのだろうか……!)」
カムロウ「ラクト!
ラクト「はぁ!?いや、俺はそんなの使えな……」
カムロウ「いいやッ!使える!この【風】を、剣に纏わせれば…!!!」
ラクトが握る剣の刀身に、風が集まった!
ラクト「そうか。俺でも使えるってか!!!」
そして剣から衝撃波を放ち……
さらに魔導銃から魔力の弾丸を放ち、応戦するラクト。
ラクト「よっしゃ…まだやれっかァ!相棒!!!」
カムロウ「ああ、まだいけるぞ…!!!」
ルカ「………………」
ラクトは片手で剣を持ちながら、もう片手の魔導銃で発砲しながら戦っている。
パヲラは体術で応戦し……
カムロウは伏せながらも両手を前に突き出し、ラクトとパヲラの2人に風を纏わせて、キメラドリアードから攻撃を守っている。
ジョージは未だ戦闘不能で、チリとマモルが蘇生にあたっている。
カムロウも全身疲労で十分に行動できない。
かくいう僕も、まだ脚の再生で動けない。
……どうしよう。
そう思ってしまった。
絶対に勝たなきゃいけないのに。
まだ僕に、できることはないのか。
……どうすれば___
「__ルカ……あたしの力を使って……」
ルカ「え……!?」
不意に、僕の中から囁いてくる声。
これは……シルフの声だ!
シルフ「忘れたの?あたしは、ルカの中にいるんだよ。だから、あたしの力を使って……」
ルカ「わ、分かった……!」
力を使うにはどうすればいいのか……それも、シルフが囁いてくれた。
シルフ「魔力を込めて、あたしの名を呼ぶの………今のルカの体、魔力で満ち溢れているから………」
ルカ「魔力……そうかッ!」
そうだ!今の僕には、新たな力が目覚めているはずだ……!
ようやく、右脚の再生が完了した。
僕は立ち上がって、走り出した。
そして、キメラドリアードに立ち向かっている2人に向かって叫んだ。
ルカ「2人とも!もう少しだけ時間が欲しい!ホントに少しだけでもいいから!」
ラクト「何する気だ!?」
ルカ「シルフの力を使う!」
「「「「「 …! 」」」」」
ラクト「……ソレ、ぶっつけ本番で出来んのか…!?」
ルカ「なんか……出来る気がするんだ………」
そういうとみんな、互いに視線を合わせて頷いた。
ラクト「いくぜパヲラーッ!!!」
パヲラ「
みんなが時間を稼いでくれる中、僕は静かに瞑想をした…………
ルカ「………………」
全身に意識を集中すると、流れのようなモノを感じる………
これが魔力なのだろう。
この流れに力を込めれば……シルフを呼ぶことが出来るはずだ!
ルカ「シルフ、僕に力を貸してくれ……!__」
ルカ「__来いッ!シルフッ!」
ルカはシルフを召喚した!
シルフ「やっほー!たつまきだよー!いっけー!!」
シルフは風の守りを放った!
ルカの周囲に力強い風が吹き荒れた!
ルカ「こ、これは……!?」
まるで、僕を中心に小さな竜巻が吹き荒れているような感じだ。
自分が台風の目にでもなったような気分だ。
しかし、初使用となる現状……
この風がどのような効果を発揮してくれるのか、文字通り実感が湧かない。
シルフ「ルカ。とりあえず、いつものように攻撃してみなよ!あいつの攻撃は、私の風で防いであげる!」
シルフとの戦いを思い出す。
相手の攻撃を受け止め、跳ね返す風の防壁……
この力をシルフは使っていた。
ルカ「よし……いくぞ!」
僕は雷鳴突きを放ち、鋭く踏み込んで突きを繰り出した!
キメラドリアード「……………」
ルカ「まだ倒れないか…!」
しかし、手ごたえは感じない。
ここまでは今まで通りと同じと思うが……?
キメラドリアードはツタを伸ばし、鞭のように振るってきた!
しかし、ツタは風の刃で切り裂かれた!
ルカ「え…!?」
僕を覆う小さな竜巻がツタを防ぐどころか……さらに切り裂いていく。
もちろん、僕が何かしたわけじゃない。
シルフが起こしたこの風が、僕を守ってくれたのだ!
パヲラ「キメラドリアードのあのツタを、こうもか……」
ラクト「すごいな。ズタズタにしちまったな。」
キメラドリアード「……………」
キメラドリアードは花から、陶酔の魔香を放った!!
しかし、突風が花粉を吹き散らした!
ルカ「おお………」
思わず、驚く。
今まで苦戦を強いられた花やツタが、シルフの力でこうも完封されている様だ。
ルカ「す、すごい……!」
シルフ「えへへ……風の力の使い方、分かった?」
ルカ「ああ……すごいな。この力。」
勝機が見えた。
僕の胸に勇気が湧いてきた。
ルカ「よし……ラクト、パヲラ。ありがとう、もう十分だ。シルフの力があれば、キメラドリアードの攻撃を相殺できそうだ。」
ルカ「でも……万が一がある。カムロウやジョージたちのことを頼んだ!」
パヲラ「ええ。」
ラクト「おう、分かった!」
ラクトとパヲラは静かに引き下がった。
ラクト「ルカ……頑張れよ!」
僕たちは互いに、サムズアップした!
ルカ「ここからは…僕がやる!」
顔を上げ、キメラドリアードと相対する。
シルフ「ルカ。あの相手は、風の力がとっても相性がいいみたい。風の力って、植物系の敵とは相性がいいから…あいつの技はほとんど無効化できそうだよ。」
シルフ「だから……思う存分、戦っちゃえ!」
ルカ「……ああ!!!」
___僕の全てをぶつける!!!
ルカ「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
雷鳴突きや魔剣・首刈り。
袈裟斬りに横一文字、次々と斬撃を放つ。
その間にも、キメラドリアードは何度も僕に攻撃を仕掛け、シルフの風の守りを突破しようと試みているようだ。
ヒマワリから種の弾丸を発射したり、百合の花を突き刺してきたが……
種は吹き返され、花弁は散る。
全て、シルフの風前で微塵になる。
キメラドリアード「…………………」
キメラドリアードは、【花葬】を解き放った!!!
身体から大量のツタやあの回転する薔薇、ヒマワリ、百合の花を一気に開花させ……
そのすべてを、僕に向けてきた!!!
ルカ「一斉攻撃か……!」
ルカ「シルフ!頼む!」
シルフ「わかったー!」
僕の周りに、再び力強い風が吹き荒れる。
竜巻が、キメラドリアードの花たちの行方を壁のように阻害し……僕から攻撃を守ってくれる……
……しかし、シルフの風の守りは……植物族と相性が良くても、決して無敵要塞というわけではない。
限界があるということだ。
キメラドリアードの全力攻撃を耐えきれる根拠も今は無い。
もしかすると…このままでは本当に突破されそうだ………!__
__その時だった。
僕の横を、淡い光が流星のように通り過ぎた。
光はキメラドリアードの体を照らすと、砂のように崩壊させる……!
風の流れで、感覚で感じた。
背後で様子を見守っていた仲間たち。
カムロウが……ドラゴンの姿になっていた。
あいつ、無理にでも変身して僕を助けようとしたのか………!
カムロウ「(今…これが……!俺にできる……!!最後の………!!!)」
ドラゴンの姿に変身したカムロウ。
四肢を地面に食い込ませ、大きく口を開ける!
そこから溢れる淡い光……!!!
カムロウ「(最後の……!!!)」
カムロウ「(
ドラゴンの口から放たれた、二度目の淡い光線は……キメラドリアードに降り注ぎ、爆散。
爆炎は風にたなびき、焦げた花弁たちと共に過ぎ去って行く……
カムロウ「これが…俺の……最後の…精一杯………」
カムロウの体は空気がしぼむように縮んでいき、人間の姿に戻っていく。
全身疲労の最中、無理にでもドラゴンに変身したためか……
ドラゴンへの変身は、数秒しか持たなかったようだ。
カムロウ「勝って……勝てるよ……ルカ…!!!」
ルカ「___ありがとう……!!!」
ここから先は……僕が…!!!
キメラドリアード「…………………」
キメラドリアードは、身体からツタや花を咲かそうとしていた……
その蕾や茎が咲く寸前に斬り落とす!
ルカ「死剣……乱れ星!!!」
ルカは、無数の斬撃を繰り出したッ!!!
さらに斬撃を浴びせ、ダメージを与えた!!
ルカ「シルフ!上昇気流だーッ!!!」
シルフ「それ、浮き上がっちゃえー!」
僕の周囲を、上に向けて風が吹き抜ける!
その流れに身を任せ、空高く飛び上がった!!!
剣に全体重を乗せて、自由落下!
シルフの力で下降気流を発生させ……落下速度はさらに増す!!!
ルカ「これで散ってくれーッ!!天魔頭蓋斬ーッッ!!!」
空から堕ちる剣が、キメラドリアードの体を切り裂いた!!!
キメラドリアード「__!!」
キメラドリアードの体が、無数の粒子となって消散していく……
ラクト「お、おぉ!?」
パヲラ「封印の兆し……封印成功かしら!?」
カムロウ「勝ったんだ……勝てたんだ……!!」
ルカ「や……やった!」
すると、キメラドリアードの体に亀裂が走り始めた……
ルカ「ん……?」
そしてそこから、眩い光が発し___
ルカ「うわあっ!!___」
周囲にぶわっと花びらや葉っぱが散らばった!
__キメラドリアードをやっつけた!