もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第6話 道中でのピンチ

こうして僕達は、徒歩で北へと行く。イリアスベルクまでは、歩いて約一日。この調子で行けば、予定通り夕方には到着するはずだ。

ルカ「イリアスベルクには、数年前に一度だけ行ったことがあるんだよ。」

ラクト「そうなのか。ずっと村にいたわけじゃないんだな。」

カムロウ「ぼくは昨日初めて行ったんだ!」

パヲラ「あの時は急ぎだったから、今度はじっくり見てまわりましょ、カムロウちゃん。」

ルカ「あの時は馬車だったから、魔物にも襲われずに済んだよ。」

ルカ「大通りには人がいっぱいで、商人や冒険者で賑わってて…店には、色んな物が売ってるんだよ。楽しみだなぁ…」

アリス「ああ、余も到着が楽しみだ…くくっ。」

ルカ「…楽しみなのか?アリスが…?」

ラクト「もしかしてお前…何か悪いことを企んでいるんじゃないだろうな…?」

アリス「イリアスベルクの老舗店「サザーランド」では、「ハピネス蜜をたっぷり使ったあまあまだんご」が名物だという。いかなるグルメも舌鼓を打つ妙味、しかと味わおうではないか。」

ラクト「食べ物かよ!」

なんだ、やっぱり食べ物のことか…しかもそれは、500年前の旅行ガイドから得た情報のはず。

パヲラ「でもそのガイドブック、500年前のモノなんでしょう?」

ルカ「そうだよ。500年も前のことなんだから、今もその宿があるかは分からないぞ。」

アリス「何を言う、たかだか500年前ではないか。今もあるに決まっているさ。」

ルカ「…」

…僕は、人と魔物が共存できると信じている。しかし、この時間感覚の差を埋めるのは難しそうだ。

 

ラクト「…あーあ。この道だよこの道。日が昇る前に走ったよな。」

カムロウ「うん、見覚えある。」

歩いている途中、ラクトが口を開いた。

ルカ「どういうこと?」

ラクトはパヲラの方を向いた。

ラクト「こいつがよ…間に合わないから走るぞとか言い始めるからよ…日も出てない暗い時からずっと走ったんだよ。最悪だったぜ…」

カムロウ「ぼくは楽しかったよ!」

パヲラ「しょうがないでしょ。前日だったわけだし。」

ラクト「普通に馬車使えばよかっただろうが!」

パヲラ「何よ!あんた夜通し走ることもできないわけ!?」

ラクト「出来ねぇだろ普通!お前の基準どうなってんだよ!「筋肉ハイヒール」!」

パヲラ「何が「筋肉ハイヒール」よ!「白身マフラー」!」

ラクト「し…白身だとてめぇ…!」

二人は口喧嘩をし始めた。…この二人は仲が悪いのだろうか?そんな時だった。

ルカ「ん?」

道の真ん中に、なにか、妙なものがある。しかしラクトとパヲラは気付かず口喧嘩を続けていた。

カムロウ「なんだろうこれ。」

ルカ「なんだこりゃ?」

どうも、植物のようだが、よく見るとぴこぴこ動いていて、得たいが知れない。

カムロウ「ルカ、どうする?」

ルカ「…引っこ抜いてみるか。」

ルカはその葉っぱを掴み、思いっきり引き抜いてみた。

ラクト「別に赤身だから長く走れるってわけじゃ…ん?」

ラクトとパヲラが異変に気付いた。

ラクト「おい待て!それってもしかして…!!」

パヲラ「…!?待ってルカちゃん!それ引き抜いちゃダメ!」

ラクト「だめだ!俺は逃げるぜ!」

ルカ「え?」

その瞬間、悲鳴のような、変な声が周囲に響き渡る

???「い や ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! !」

それを聞いた瞬間、突然に体が麻痺してしまった。

僕が引き抜いたのはなんと…

 

マンドラゴラ娘が現れた!

 

マンドラゴラ娘「もう、何するのよ~!せっかく、のんびり寝てたのに~!」

ルカ「ごめんなさい…って、体が動かない…なに、これ…」

カムロウ「痺れる…」

妙なことに、尻餅を着いた体勢のまま動けなくなってしまった。全身が麻痺して、全く力が入らないのだ。

マンドラゴラ娘「そりゃ、私の悲鳴を聞いちゃったからね。心臓の弱い人間なら、死んじゃうこともあるのよ?」

そう言いつつ、マンドラゴラ娘は腰を抜かす僕たちをまじまじと眺めた。

マンドラゴラ娘「じゃあ…また、しばらく寝るとするわ。長く眠れるだけの栄養補給を済ませてからね…」

ルカ「くっ…体さえ動かせれば…」

体を動かそうとしても、全く身を動かせない。その間にマンドラゴラ娘は近寄ってくる。

標的は僕だ。栄養補給ということは…察しは付く。おそらくアレだ。男なら出せるであろうアレだ。

それはまずい。もしそんなことになれば、もうどうしようもないぞ…。

興味本位で引っこ抜かなければ良かった…

パヲラ「もっと周りを見たらいいんじゃない、お嬢さん?」

マンドラゴラ娘「えっ?」

そう反応した瞬間、マンドラゴラ娘の体に鋭い蹴りが入っていた。

パヲラ「采配(サイハイ)ブーツ!」

パヲラは動けないルカとカムロウを庇うように、蹴り技を放ちながら前に出た。

マンドラゴラ娘「なんで私の声を聞いたのに動けるの!?」

パヲラ「動けないふりをしてたのよ。声は直後に耳を塞いで凌いだわ。」

蹴り技を放ちながら、両手をT字の形にした。

パヲラ「ティー(シャ)ッ!」

T字の手から衝撃波が放たれ、それに当たったマンドラゴラ娘は後ろに吹き飛ばされた。

パヲラ「ふぅー…」

パヲラは後ろの二人を見た。まだ麻痺が治るのに時間が掛かりそうだ。

無防備の二人を守りながら戦うとなると、周囲に気を使いながら戦わなければならない。

出来るだけ時間稼ぎを…

パヲラ「闊歩卯戯(かっぽうぎ)!」

大股でステップを踏みながら近づき、蹴りを放った。

しかし、マンドラゴラ娘は地中に潜って回避した。

マンドラゴラ娘「こっちよ!」

別のところから勢いよく飛び出して体当たりをしてきた。

パヲラ「(サス)ペンダー!」

体当たりを避け、腹部に向かって貫手を当てようとしたが、再びマンドラゴラ娘は地中に潜った。

パヲラ「また!?」

カムロウ「パヲラさん後ろ!」

今度は後ろから飛び出てきた。

パヲラ「スカ(アト)!」

地面がえぐるほどの勢いで回し蹴りを放った。それもまた地中に潜って回避された。

これでは当てる事すらできないもぐら叩きではないか。

パヲラは拳を構え、静かに周囲を見渡した。次は…どこから来る…?

そよ風が吹き、草は揺れ、木から葉を揺らす音が聞こえ、長く短い静寂が流れる。

 

__そこか!

パヲラは地面から聞こえる小さな音を聞き逃さなかった。地面を蹴り、出てくるであろう場所に飛び掛かる。

予想通り、そこからマンドラゴラ娘が顔を出した。

マンドラゴラ娘「えっ!?」

こんな近くに接近しているなど予測していなかったために動揺した。その隙にパヲラはマンドラゴラ娘の顎に向かって右フックを放った。

パヲラ「()レス!」

顎に衝撃を与えれば、その影響で脳が揺れてしまう。一時的に脳と体の意識は切断される。

間髪入れず、攻撃を続ける。

パヲラ「散多(サンダ)ル!」

連続で蹴り技を叩き込み、最後に足を延ばして蹴り飛ばした。

パヲラ「素止鷺(ストロー)ハット!」

マンドラゴラ娘の腹部に攻撃が入り、後ろに吹き飛ぶ。

カムロウ「当たった!?」

ルカ「どうなんだ…?」

あれほどの攻撃を食らえばひとたまりもないだろう。このまま逃げて欲しいところだが…

マンドラゴラ娘「今のは効いたわ…」

マンドラゴラ娘はゆっくり体を起こした。

ルカ「まだ立てるのか…!?」

パヲラ「そうよね…あなたの体、硬いのよね。でも今の攻撃が効いたことは確か。もう体力も半分くらいしか残っていないじゃない?あたしたち、殺しなんてするつもりはないの。お願いだから退いてくれないかしら?」

パヲラはルカの信念に基づいて、マンドラゴラ娘に退いてもらうよう説得した。

マンドラゴラ娘はそれを聞いて黙り込んだ。悩んでいるのか…?

パヲラ「(…!違うわ!まさか…!)」

パヲラはすかさず耳を塞いだ。

マンドラゴラ娘「い や ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! !」

大声量の悲鳴をあげ始めた。辺りに悲鳴が響き渡る。

パヲラはなんとか声を聞かないようにしたが、まだ体が麻痺していたカムロウとルカはその声を聞いてしまった。

ルカ「またこの声か…!」

カムロウ「びりびりする…!」

パヲラ「(二人がまだ麻痺してるっていうのに…!)」

この悲鳴の嵐の中、攻撃をしかけようとしても、何かの拍子で手を耳から放してしまえば、パヲラ自身も麻痺してしまう。アリスやラクトがこの場にいない今、自分が麻痺してしまえば全滅であることに変わりはない。

マンドラゴラ娘「あ あ あ ぁ ぁ ぁ ! !」

悲鳴は止まない。パヲラが麻痺するまでやめるつもりはないようだ。

パヲラ「(どうすればいいの…これじゃ動けないわ…!)」

 

 

 

ラクト「マジかよあれ…手も足も出ねぇじゃねぇか…」

遠くからその光景を、木の裏で冷や汗を流しながらまじまじとその様子を見ていた。

ラクト「最悪だぜ…!あれじゃ誰も…」

アリス「どうしようもないな。」

ラクト「うおおっ!?」

気付いたら後ろにいたアリスに、ラクトは驚いた。

ラクト「お…お前か、びっくりさせんじゃねぇよ!」

アリス「貴様は行かないのか?」

ラクト「へっ?」

アリス「あいつらではどうしようもない今、貴様が行かなければどうにもならないぞ?」

ラクト「だ…だけどよぉ…」

俺一人でどうにかなるのかよ…と言おうとした。

アリス「まぁ…貴様が逃げようが、あいつらがあのままくたばろうが、余には関係ない話だ。」

ラクト「………」

こいつは魔物だ。俺たち人間がどうなろうと関係ない。

だけど俺は…あいつらを見捨ててこのまま逃げるっていうのは人として恥ずかしいんじゃ…?

ラクト「………っだあああ!わかったよ!行けばいいんだろ行けば!」

アリスにそう言い放ってラクトは走り始めた。

ラクト「(出来る事っていったらよ…あの悲鳴を止めさせるぐらいだろ…!?)」

走りながら策を練る。一か八かだ。ダメなら本当に逃げよう。そう思いながら走った。

 

 

 

マンドラゴラ娘の悲鳴はまだ止んではいなかった。

ルカ「このままだと…長期戦になるんじゃ…」

カムロウ「体が動ければいいのに…」

パヲラ「(厄介ね…麻痺する声っていうのは…!)」

ラクト「おーい!」

カムロウ「えっ!?」

パヲラ「!あいつ…何しに来たのよ!」

なんとラクトがこっちに向かって来ていた。

ルカ「だめだラクト!こっちに来たら!」

パヲラ「あなたも動けなくなるわよ!」

ラクト「遠くからでも攻撃はできる!ルーン魔導って知ってるか!」

そう言うと指で線を描き始め、空中に文字を作った。作った文字を手で握り締めた。

ラクト「衝撃波!」

ラクトの手から衝撃波が放たれた。その衝撃波はマンドラゴラ娘に命中した。

マンドラゴラ娘の麻痺する悲鳴は中断された。

カムロウ「やった…!」

ルカ「今のうちに動かせるように…」

マンドラゴラ娘「もう一人増えたところで変わらないわ!」

息を吸い込み、再び悲鳴を上げようとした。

パヲラは再び耳を塞ごうとする。

ラクト「おいパヲラ!攻撃の準備しとけ!」

パヲラ「はぁ!?」

ラクトは再び文字を描き、魔法を放った。

ラクト「高周波(ラジオウェーブ)!」

文字が弾けると高周波が発生した。マンドラゴラ娘は同時に悲鳴を上げたが、高周波によってかき消された。

マンドラゴラ娘「こ…声が!?」

ラクト「ボーッとしてる場合か!?」

ラクト「口封じ!」

ラクトが描いた文字が、マンドラゴラ娘の口を塞いだ。

マンドラゴラ娘「んん~!」

ラクト「今だ!」

パヲラ「やるじゃないのラクト!」

パヲラは駆け出し、マンドラゴラ娘の頭を鷲掴み頭突きを放った。

パヲラ「地獄(ヘル)メット!」

マンドラゴラ娘「~~~!」

渾身の頭突きにマンドラゴラ娘は怯んだ。声にならない声を上げながらその場でうずくまる。

カムロウ「はぁ…やっと動ける!」

ルカ「そんな…僕まだ治ってないのに。」

その間にカムロウが麻痺から治った。

カムロウは剣を抜き、火炎弾魔法(ファイヤーボルト)を放てるよう指を構えた。

ラクト「…どうだ?こっちは火を放つ奴もいりゃ、ボッコボコに出来る奴もいるぜ?それに俺はお前のお得意の悲鳴を無力化出来るんだぜ、まだやり合おうってのか?」

口封じの魔法が解けて、マンドラゴラ娘は喋れるようになった。

マンドラゴラ娘「…もう、いいわよ!別の場所で寝るんだから!」

マンドラゴラ娘は、地面の中へと潜ってしまった…

 

マンドラゴラ娘を追い払った!

 

ルカ「はぁ…はぁ…」

ラクト「危ないところだったぜ…あ~なんとかなったな…」

ラクトは緊張の糸が切れたようにぐったりした。

カムロウ「すごいよラクト!」

パヲラ「てっきり何もできない奴かと思ってたけど、見直したわよ。」

ラクト「お?そうか?俺様のことももっと褒めてもいいんだぜ?」

パヲラ「うるさい。」

ラクト「ほげぇっ!」

パヲラはラクトの腹にパンチを食らわした。

ルカ「でも…ラクトがいなければどうなっていたか…」

本当に危ないところだった。ラクトが駆け付けなければ、餌食にされていただろう。

パヲラ「それにしてもどういう風の吹きまわしよ?あんたが戦いに来るなんて。」

ラクト「アリスの奴に半ば脅されたって感じだ…悪いけど俺がこうやって協力するのはこれっきりだからな!」

カムロウ「えぇ~」

パヲラ「ほら、カムロウちゃん残念がってるじゃない。」

ラクト「本当にすまん!この際に言っとくけど…俺、戦うの苦手なんだよ。」

ルカ「魔法を覚えてるのに?」

ラクト「さっきの魔法…ルーン魔導は一応覚えてるってだけで、俺が使うってなるとそこまで強くねぇんだ。それに魔力の消耗も激しいんだ。」

カムロウ「…遠くからでもいいから、ラクトも一緒にいてくれるといいなぁ…」

それを聞いたカムロウは不満そうだ。

パヲラ「カムロウちゃんの気持ちを踏みにじるなんて…「お調子マフラー」…」

ラクト「てめぇ今なんて言った!?ぶっ飛ばすぞ!」

 

アリス「追い払ったのか、無茶をするな。」

ラクト「あぁやっと来たか…」

カムロウ「アリスさん!」

ルカ「あ…アリス、どこに行ってたんだ?」

アリス「もし戦闘が起きる可能性があれば、姿を隠す事にしている。余は、貴様の手助けをせんと言っただろう。」

アリス「しかし、大人しく眠っていたマンドラゴラ娘を追い払うとは…敵意を持っていない魔物にまで襲い掛かる野蛮人なのだな、貴様らは。」

ルカ「いやいや、向こうから襲いかかってきたんだろ…」

アリス「無理矢理に引っこ抜いたのは貴様ではないか。」

ルカ「あぅぅ…」

パヲラ「ルカちゃん、これは事故よ。でも次からは気を付けないとねい?」

旅人に襲いかかってくるような魔物なら、人と魔物の関係を乱す者として退治しなければならないが、そうでないなら戦う必要はない。

これからは気を付けないとな…大人しく暮らしている魔物なら、下手に刺激しないようにしなければ。

それはともかく、目的地であるイリアスベルクまであと少し。

僕達は、北へと進んだのだった。

 

 

そして日が暮れ、イリアスベルクは目前。その町並みは、ここからでも見える。

しかしこのまま町に入るわけにはいかないのだ。

アリス(こいつ)がいるから。アリスが今の姿のまま町に入ったら、大騒ぎになってしまうだろう。

ラクト「そういやこいつ…どうするか。外で待ってもらうか…」

ルカ「アリス…お前、人間の姿には化けられないのか?」

アリス「人に化けるのは簡単なことだが、少々不愉快だな。なぜ、余たる者が姿を偽らねばならんのか。」

ラクト「知らねぇよ、別にいいじゃねぇか人に化けるくらい。」

ルカ「そのまま町に乗り込んだら、あまあまだんごは食べられないぞ?」

ラクト「いやいや、それくらいでこいつが大人しく言うこと聞いてくれるか?」

アリス「く…それは困るな。」

ラクト「困るんだ…」

アリス「仕方ない、これでいいか?」

アリスは蛇の下半身と全身の肌の色を人同様に変化し、露出がある服を着た女性に変身した。

パヲラ「あら、その姿も素敵ねい。」

カムロウ「うん!綺麗だね!」

ルカ「ああ、うん。良い感じだね。」

これなら、ハレンチな格好の旅人ということで十分に通る。

こうして僕達は、イリアスベルクの町に入ったのだった。

 

 

 

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