もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
時は夕暮れ、イリアスベルクの中央広場。
魔王軍四天王グランべリアと対峙するルカ一行。しかし圧倒的な実力の前に成すすべなく、劣勢を強いられていた。
カムロウ「
炎の弾丸がグランべリアめがけて放たれる。
グランべリアは軽く巨剣を一振りした。そこから烈風が吹き、炎の弾丸がかき消された。さらにその烈風は止まらずカムロウに当たり、カムロウは吹き飛ばされる。
ルカ「はあああ!!」
パヲラ「せい!!」
別の方から、ルカとパヲラが攻撃をしかける。…が、グランべリアの姿が消えた。
次の瞬間、二人の腹部に衝撃が走り、その余波とともに後方に吹っ飛ぶ。
バンダナの少女「たあああ!!」
巨大なハンマーを大きく振りかぶり、叩きつける。しかし巨剣に受け止められてしまった。
グランべリア「威力は申し分ないが、その分、隙が大きいぞ!」
巨剣で薙ぎ払って少女ごと跳ね除けた。
バンダナの少女「うぅっ!」
少女はおもわず尻餅をつく。
ルカ「うえっ…」
パヲラ「全く…隙がないねい…」
四人はよろよろとしながらもなんとか起き上がる。
グランべリア「…最後の情けだ!降参しろ!」
カムロウ「えぇっ!?」
ルカ「なんだって…!?」
グランべリア「次に攻撃を仕掛ければ、死と思え!」
そう言うとグランべリアは仁王立ちをした。
ただ仁王立ちしているだけでも、威圧感が武器を振り回しながら動き回っているかのように感じる。
恐らく、僕たちの、すべての攻撃に備えているのだ。もし攻撃をしようならば、グランべリアの言う通り、本当に死んでしまうだろう。
その時、パヲラがルカに話しかけた。
パヲラ「ルカちゃん、あたしはね…「みんなを笑顔にする」ために旅をしていたの。」
ルカ「えっ…?」
思わずパヲラの方を振り向く。
パヲラ「でも人を笑顔にするにはね…自分自身が笑顔にならなくちゃいけないの。もしここで、ルカちゃんたちを置いて逃げ出すなんてしたら、あたしは後悔で笑顔になれない…!」
パヲラ「死ぬくらいなら笑顔で死ぬわ!」
そう言うとグランべリアに向かって走り出した。
グランべリア「…来るか。」
パヲラ「無論!」
加速しながら走り、右手に魔力を込める。
そして、グランべリアに殴りかかった瞬間、パヲラの姿が消えた。
その一瞬の間、グランべリアの後ろに、拳を構えたパヲラの姿が現れた。
バンダナの少女「残像!?」
パヲラ「カーディ
グランべリアの背中に正拳突きを放つ。
しかし、それが当たることはなかった。いや、当たった感触がなかった。
グランべリアも残像を残して、パヲラの後ろに立っていたのだ。
パヲラ「…っ!」
パヲラは左足で回し蹴りをした。
グランべリアは片手で脚を受け止め、力を入れた。
ボギッっという音が出た。パヲラの左足の骨が折れる音だ。
パヲラ「っ!ああああああ!!!」
グランべリア「残像を真似したのは見事だった。だが、まだ遅いな。」
パヲラ「ふふっ…指摘どうも…!」
それでもパヲラは攻撃を仕掛けようとした。右手に力を込めて、グランべリアの顔めがけて殴りかかる。
拳が顔に当たる間近、パヲラの体に重い衝撃が走った。グランべリアのボディブローが、パヲラの体に当たったのだ。体の中の、骨という骨が折れる音がした。骨が折れ、立っていることすらできないパヲラは地面に倒れこむ。
グランべリア「これで終わりだ!」
グランべリアの巨剣が、倒れたパヲラに向かって振り下ろされる。
カムロウ「パヲラさん!」
その間にカムロウが入り込み、左手の盾で攻撃を防ごうとした。
グランべリア「そんな盾で防げるとでも思ったか!」
カムロウの盾は木製の盾だ。流石にグランべリアのような重い一撃を防げるわけがなく、カムロウは攻撃をまともに食らい、地面に叩きつけられる。
持っていた盾は真っ二つになる。
バンダナの少女「そ…そんな…!」
少女はその光景を見て、恐怖で体を動かすことができなかった。
ルカ「う、うああぁぁぁ!!」
正気を失ったルカは奇声と共に突進し、メチャクチャに剣を振り回し、やたらめった斬りを放った。
グランべリア「なんなのだ…それは?」
グランべリアは手にしていた巨剣を地面に突き立て、一瞬のうちにルカの背後に回った。そしてルカの体を背後からホールドし、締め上げた。
グランべリア「降参すれば、命だけは助けてやろう。でなければ…このまま締め殺す。」
ルカ「あ…が…!あぁぁぁ…!」
パヲラ「ル…ルカちゃん…!」
カムロウ「ルカ…!」
じわじわと圧力が強まり、全身が締め上げられていく。まるで巨大な大蛇に巻き付かれ、いたぶられているかのようだ。
グランべリア「ほら、早く降参するがいい。それとも、本当に締め殺されたいのか…?」
ルカ「あ…ぁ…」
肋骨がミシミシと軋む音がする。意識が遠くなっていく。
だめだ…本当に死んでしまう…!
ラクト「待てぇぇぇ!!!」
遠くからラクトの叫び声が響く。
ルカ「えっ…!?」
カムロウ「ラクト…!?」
パヲラ「なんでここに…!?」
ラクト「俺だって戦う!戦うんだあああ!」
半泣きになりながらも、止まることなく、グランべリアに向かって近づいて行った。
ラクト「ルカを放しやがれぇぇぇ!!!」
ラクトはグランべリアの顔面に向かって、右手で殴った。
グランべリアは動じず、それを受け止めた、岩のように動かず、そのままラクトを睨んだ。
それを見てラクトは、恐怖で体を震わせた。
グランべリア「…青年。貴様、なぜ私の前に立つ?」
ラクト「お…お…俺はよ…お前なんかに勝てるなんか、微塵にも思ってねぇよ…」
グランべリア「では、何をしに来たのだ?」
ラクト「俺は…俺は!今まで戦いから逃げてきた臆病者の俺に勝ちに来た!」
ラクトは震える拳を下ろし、身震いしながらもグランべリアの前に立った。
ラクト「俺は今ここで戦わないと…!そこにいるそいつらに合わせる顔がねぇんだよ!!!」
カムロウ「ラ…ラクト…」
パヲラ「あいつ…」
グランべリア「…分かった。お前もここにいる戦士の一人として扱うぞ。悔いはないな?」
ラクト「わかったらとっととルカを放せってんだよ!!」
ラクトは指に魔力を込め、ルーン魔導の準備をした。
ラクト「俺様の名はコトラス・ラクト!この世で最も偉大な人が「勇気持って、人を繋ぐ」意味を込めて名付けてくれた最高の名前だ!よく覚えておきやがれぇぇぇ!!!」
衝撃波のルーン魔導を描き、グランべリアにぶつける。
グランべリアはルカを放し、腕を胸の前に交差させ、衝撃波を受け止めた。
ラクト「ひっ…!」
バンダナの少女「
少女は持っているハンマーをグランべリアに向かって思いっきりぶん投げた。
グランべリアはそのまま防御を続け、ハンマーも受け止めた。
ラクト「今だ…
ラクトの手から煙幕が放たれ、その場が白い煙に包まれ、少女以外の、グランべリアを含む5人の姿が見えなくなる。
ラクト「ルカ!走れるか!?」
ルカ「な…なんとか…」
ラクト「とにかく走れ!」
煙の中から、ルカが飛び出した。それに続いてラクトはカムロウとパヲラを引きずりながら出てきた。
ラクトは少女に話しかけた。
ラクト「おい!お前、回復魔法が得意なんだろ!?こいつら治療できるか!?」
バンダナの少女「出来るけど…一人ずつしか回復できないわ。それに…」
少女はパヲラの傷を見た。
バンダナの少女「この人が一番時間掛かる。骨の損傷が激しいの。」
ラクト「どうすっか…誰から回復させりゃ…」
カムロウ「ぼくは自分で回復できるから…パヲラさんを優先して!」
カムロウは右手で回復魔法を放ち、治療し始めた。
ルカ「僕も大丈夫だ!だから時間を_」
ラクト「いや、俺が時間を稼ぐ。その間に回復しろ!」
ルカ「えっ…!?で…でも…」
ラクト「ダメだ!あんな奴に締め上げられて大丈夫なわけないだろ!無茶するんじゃねぇ!」
ルカ「わ…分かったよ…」
バンダナの少女「ごめん、君はこの人の後でいい?」
ルカ「うん、いいよ。」
その会話をよそに、パヲラが口を開いた。
パヲラ「悪いけどあたし…これ以上戦闘が長引くとだめだわ。体力がもう持たない…」
ルカ「なんでだ?回復してるはずだろ?」
バンダナの少女「回復魔法は傷を回復するだけ、体力を回復するわけじゃないの。本来回復するのに費やす時間分の体力を、その場で一気に消費して傷を治す…命の前借りってこと。」
ラクト「そうか…回復すればするほど、体力も使うからずっと戦えるわけじゃないか。」
パヲラ「だから次、最後の攻撃を一気に仕掛けるわ!それでだめならその時はその時よ!」
ラクト「よしわかった、一気に畳みかけるぞ!」
ラクトは煙の中に飛び込もうとする。
ラクト「おおっとそうだった。おいカムロウ!」
カムロウ「?」
カムロウが振り向くと、ラクトが何かを投げた。受け止めて見ると、鋼鉄の剣と鉄の盾だった。
カムロウ「ラクト…これって…」
ラクト「わりぃ!適当に選んだ奴だからナマクラかもしれねぇ!」
カムロウ「ううん、いいんだ!ありがとう!」
その会話を終えると、ラクトは煙の中に消えていった。
グランべリア「…煙幕か。」
グランべリアは煙の中で、巨剣を持ちながら周りを見ていた。
グランべリア「ふん!」
手に力を込め、巨剣を薙ぎ払って煙を吹き飛ばす。
煙が晴れ渡ると、その中にラクトが立っていた。手に魔力を込め、戦闘態勢だ。
ラクト「よ…よぉ…」
グランべリア「…時間稼ぎか?」
ラクト「まぁそんなとこだ…」
ラクトは両手に魔力を込めた。
ラクト「アイスロック!」
ルーン魔導で文字を描く。描かれた文字が無数の氷の塊となる。
ラクト「アーススパイク!」
再び文字を描く。文字は地面に潜っていきモグラが掘り進むかのように隆起しながら動き、氷の塊とともに、グランべリアに向かって発射される。
グランべリアは巨剣で熱風を放ち、氷を蒸発させた後、地面に巨剣を突き刺し、大地を揺るがして地面の隆起を止めた。
ラクトは戦慄した。アーススパイクは標的の足元に届けば、そこから土の棘を生やして攻撃するルーン魔導だが、まさか地面を揺るがして無効化させるなんて思いもしなかった。
ラクト「が…がんじがらめの糸!」
ラクトの手から、魔力で作った複数の光る太い糸が発射される。それはグランべリアの体に巻き付いた。
グランべリア「まだ時間稼ぎをするつもりか…?手品に付き合う暇はない!」
グランべリアは全身に力を込め、その拘束を無理矢理破った。
ラクト「ひ…ひぃ!」
グランべリアはラクトに斬りかかろうとした、その時だった。
パヲラ「ワイ
ラクトの後ろからY字の衝撃波が飛ばされてきた。グランべリアはすぐに巨剣を構えて防御した。
パヲラ「待たせたわよラクト!」
後ろからカムロウとラクトが飛び出てきた。
ラクト「た…助かったぜ…!」
ラクトは慌てて後方に下がる。
パヲラ「カムロウちゃん!後は任せた!」
カムロウ「うん!」
パヲラも後方に下がり、カムロウがグランべリアの前に立った。
カムロウ「せぇい!」
カムロウは剣と盾を使った攻撃を放った。剣盾コンボといったところか。
グランべリアはその攻撃を巨剣で防ぎながらカムロウに話しかけた。
グランべリア「ふむ…新しい剣と盾を持ったか。だが、体に馴染んでないようだな。」
グランべリアの言う通り、ラクトからもらった剣と盾は、カムロウの体に見合ってないものだった。鋼鉄の剣は、前の剣と比べて大きく、重い。盾は鉄製になったためにやはり重い。全体的に重くなったため、動きが前の装備より遅くなってしまった。
その隙を突かれ、グランべリアの巨剣がカムロウに迫る。
左手の盾ですぐに防御した。しかし、粉々に砕かれた。
前の木製の盾よりも耐久力があったため、攻撃こそ防げたが、巨剣の威力に耐えられなかった。
パヲラ「もうOKよカムロウちゃん!退いて!」
カムロウ「わかった!」
カムロウはグランべリアから離れる。
パヲラの右手には、バレーボールほどの大きさの光輝く球があった。
カムロウがグランべリアの相手をしているときに、魔力を握力で圧縮して作ったものだ。
パヲラ「
パヲラの右手から、光る球がぶん投げられる。
グランべリア「面白い技だな…だが!」
グランべリアは巨剣で、光る球を縦に一刀両断した。真っ二つにされた球はグランべリアの後ろに飛んでいき、大爆発を巻き起こした。
グランべリア「それを__」
パヲラ「「私に当てるには隙が甘いぞ」ってね?」
グランべリア「!?」
口から出た言葉が同じタイミングで重なった。
パヲラ「今よ!カムロウちゃん!」
カムロウ「はあああああ!!」
グランべリアの後ろにカムロウが、剣に風を纏わせながら立っていた。
カムロウ「
風の塊が放たれる。
グランべリア「何かと思えば…」
グランべリアは後ろを向いて、巨剣で薙ぎ払って衝撃波を放った。
風の塊を跳ね除け、その衝撃波はカムロウにぶつかった。
とっさに剣で防御したが、カムロウが持っていた剣は砕け散った。
カムロウ「ううっ…剣が…!!」
グランべリア「…不意打ちか」
パヲラ「__不意打ちの不意打ちよ。」
グランべリア「なにっ!?」
背後からパヲラが、グランべリアの体を締め上げた。
パヲラ「ラクト!」
ラクト「ヘビーウェイト!」
ラクトが放ったルーン魔導の文字が、パヲラの体にスウッと入っていった。その瞬間、ズンッとパヲラの体が急激に重くなった。
グランべリア「__っ!!」
パヲラ「これで、そう簡単には解けないでしょう!?」
バンダナの少女「__回復終わりっ!」
ルカ「ありがとう!」
少女とともにルカが駆け付けた。ルカは動けないグランべリアに向かって突っ走る。
カムロウ「今だ!ルカ!」
ラクト「思いっきりぶちかましてやれぇぇ!」
グランべリアの前では、中途半端な攻撃なんて全く通用しないだろう。ここで使うのは、あの剣技しかない!
ルカ「うぉぉぉ!」
僕は全身全霊を込め、アリスに教わったあの技を繰り出した。
鋭く踏み込み、相手の懐に入りながら斬り上げる。いや、突き上げる感じだ。剣先を水平に寝かせ、足のバネを用いて…そして、喉元に刃を滑り込ませるのだ!
グランべリア「…何だと?この技は…!」
ルカは魔剣・首刈りを放った!
グランべリア「はああああ!!!」
パヲラ「えっ!?」
グランべリアは、滅茶苦茶な力でパヲラを振り飛ばした。
そして、ルカの魔剣・首刈りをひらりとかわした!
バンダナの少女「なんて力なの…!?」
ラクト「だめか…!」
ルカ「そ…そんな!」
僕が使える最強の技でさえ、通じないなんて…!
グランべリア「…なぜお前が、魔族の技を知っている…?」
ルカ「え…?」
グランべリア「踏み込みも稚拙ならば、突きも未熟。だが、その技を知っていた事のみが気に掛かる。お前程度の腕前で、偶然編み出したとも思えん。その技を誰に教わったのか、教えてもらおうか。」
ルカ「…」
アリスの事は、決して言うわけにはいかない。
別にあいつをかばっているわけではなく、僕自身の誇りの問題だ。
グランべリア「お前もだ。」
グランべリアはカムロウの方を向いてそう言った。
カムロウ「えっ…ぼく?」
グランべリア「そうだ。お前が放ったあの風の衝撃波…あれはただの「風」ではない。魔法で起こした風でも、力任せで巻き起こした風でもない。」
パヲラ「確かに気になってたわ…魔法じゃないのよね、あれ。」
ラクト「えっ…あれ、魔法じゃねぇのか!?」
パヲラ「魔力を感じないのよ。でも、魔力ナシでどうやって風を起こしてるのかサッパリ…」
グランべリア「…誰に教えてもらった?」
カムロウ「ぼくのお父さんだ!」
ルカ「(素直っ!」)」
グランべリア「…お前の父親はどこにいる?」
カムロウ「ぼくの__」
バンダナの少女「ダメ!教えたら、どうなるかわからないよ!」
カムロウ「わかった!教えない!」
バンダナの少女「(素直っ!)」
ルカ「…そんなの知って、どうするつもりだ…!?」
グランべリア「…知れた事よ。その技を知っている以上は、かなりの使い手に違いない。ぜひ、それほどの者と手合わせを願いたいと思ってな…さあ、教えるがいい。その者は、お前の師匠か何かか?」
ルカ「…それは、言えない。」
グランべリア「そうか、ならば。」
ルカ「あぐっ…!」
グランべリアはルカに強烈な攻撃を食らわした。
カムロウ「!?」
ラクト「ルカ!?死んでねぇよな!?」
バンダナの少女「あれ…大丈夫なの!?」
パヲラ「…一撃で命を奪わないよう、加減したわね。」
グランべリア「さぁ…喋ってもらおうか。」
ルカ「う、ぐ…」
一撃で瀕死のダメージを受け、体が全く動かない。これで加減したなんて…やっぱりこいつ、強すぎる。
ルカ「それでも…言うもんか…」
グランべリア「…そうか。弱者に剣を振るうことは好かんが…」
ラクト「おいおい…まずいぞ!?」
カムロウ「ルカ―ッ!!」
グランべリアが剣を振り上げたその時だった。
アリス「やれやれ…いつまで下らんことをやっている気だ?」
ルカ「ア、アリス…?」
カムロウ「アリスさん…?」
バンダナの少女「えっ…誰…?」
ラクト「あいつ、いつの間に!?」
パヲラ「気が付かなかった…気配を読み取れなかったの方がいいかしら…?」
グランべリア「そんな…貴女様は!?」
グランべリアの顔は驚愕に染まり、数秒ほど立ちすくむ。そして、おもむろにその場に片膝を着いた。
ルカ「え…?え…?」
バンダナの少女「なに…?どういうこと…?」
いったい、どういうことなんだ?あのグランべリアが、アリスにひれ伏すなんて。
アリス「グランべリア…貴様は何をやっている?いったい誰が、このようなことを命じたというのだ?」
グランべリア「これは、私の独断でございます。羽虫のようにうるさい勇者共を絶滅せんがため、イリアス神殿を_」
アリス「退け、邪魔だ。」
アリスは、きっぱりと断じていた。ここまで頭ごなしに命令できるなんて、いったい…
グランべリア「し、しかし…これ以上、勇者なる連中を放置しておくのも…」
アリス「いいから退けと言っている。貴様が暴れるから、名物の「あまあまだんご」が食べられんではないか。」
ラクト「それ食べたかったの、お前!?」
グランべリア「そのようなものがお望みならば、この町を制圧した後にいくらでも作らせましょう。ですので…」
アリス「そんな趣のない観光があるか、ドアホめ。」
バンダナの少女「趣も求めてる…」
アリス「ともかく…三度も同じことを言わせるのが、貴様の忠義なのか?余は、退けと言っている。」
グランべリア「…御意。それが貴女様のご意思ならば、ただちに。それでは、失礼致します。」
なんらかの移動魔法で、グランべリアは姿を消した。つまり、敵はこの町から撤退していったのだ!
グランべリアを追い払った!…アリスが。
ルカ「や…やった!」
いや、僕は何一つやっていない。が、それでも凄まじい脱力感に襲われた。緊張の糸が切れ、その場にへなへなとへたばってしまう。
それは他の4人も同じだった。
バンダナの少女「お…終わったんだよね…?」
ラクト「そうであって欲しいぜ…」
パヲラ「さすがにもうこれ以上ないでしょ…」
カムロウ「つ…疲れた…」
それにしてもアリスは、
ルカ「アリス…お前…」
なぜか、切なげに視線を逸らすアリス。
ラクト「パヲラ、あのグランべリアがあの対応をしたってことは…」
パヲラ「えぇ、あたしも確信したわ。」
バンダナの少女「もしかして…いや、もしかしなくてもあの方が…」
ルカ「__お前…けっこう偉かったんだな。」
ルカとカムロウ以外の、その場の全員がずっこけた。
アリス「…それだけか!?それで終わりなのか!?」
パヲラ「まさかルカちゃん…嘘でしょう!?」
ラクト「最悪だぜ…今のでわかんねぇのかぜ!?」
ルカ「え…?なんで…?」
ルカはきょとんとした。
ラクト「おめぇ、もう一度よく考えてみろよ!」
バンダナの少女「それでもわからないってなると…」
アリス「貴様、本当にアホなのか…?」
ルカ「なんで僕だけ、こんなに言われなきゃいけないんだ…?」
そんな会話のなか、カムロウは話についていけずオドオドしていた。
カムロウ「えっと?…えっと?」
パヲラ「あら~いいのよ。カムロウちゃんには難しい話だから気にしなくていいのよ~」
ラクト「あぁそうだぜ。お前はわかんなくても大丈夫だぜ!」
ルカ「なんで僕だけこんな扱いなんだ…?」
そんな会話を終えた時だった。
青年「ど、どうなったんだ?あの魔族、逃げていったのか…!?」
おばさん「ほら、あの少年たちと女性だ!なんだかわからないけど、あの人たちが追い払ってくれたんだよ!」
屋内からわいわいと住民が出てきて、僕達を取り囲み始めた。
ルカ「いや…僕達は…その…」
ラクト「いやいやルカ…ここは俺たちが追い払ったってことの方が丸く収まるぜ。」
青年「いやぁ、ありがとう!もう少しで、この町は魔物のものになるところだったよ!」
おばさん「お若いのに、すごんだねぇ。あんなに強そうな魔族、どうやって追い払ったんだい…?」
ルカ「いえいえ…どうも…」
どうやら細かいやり取りまではわからないらしく、アリスが魔族であることもバレていないようだ。
住民達はひとしきり僕達に礼を言うと、それぞれの日常に戻っていった。
叩きのめされた戦士達も命に別状はなく、ようやくイリアスベルクは平穏を取り戻したのだった。