もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第11話 堕剣エンジェルハイロウ

とりあえず町を出たところで、アリスはルカを呼び止めた。

アリス「そういえば、貴様の戦い方を見て、一つ気が付いたことがある。貴様がモンスターを殺したくないというのは、嘘ではないようだな。そのせいで剣のキレが悪く、本来の技能を生かしきれてはおらんようだ。」

ルカ「うん、そうかもしれないね…」

チリ「えっと、ルカの旅の目的って人と魔物の共存だもんね。」

確かに、僕は命を奪うことに対して恐怖心を抱いてしまう。

人に危害を加えるモンスターとはいえ、本心では殺したくない。ただ、悪いことをやめさせたいだけなのである。

パヲラ「そのせいで、無意識ながら剣の腕が鈍ってしまっているのね。」

アリス「仕方ない、貴様にこの剣を貸してやろう。」

アリスの手には、禍々しいような、おどろおどろしいような、呪われているかのような剣があった。

ルカ「うげ…なんだこれ!?」

カムロウ「うえぇ…」

チリ「なに…これ…?」

パヲラ「へぇ、随分な剣ね。」

ラクト「き…気持ち悪い…悪趣味にもほどがあるぞ…」

アリス「堕剣エンジェルハイロウ。この世に一本しか存在しない。極めて貴重な剣だ。今後の戦いでは、この剣を使うがいい。」

ルカ「うぇぇ…?こ、これを?」

いったい、何の嫌がらせなんだ?その剣は見るからに不気味で、邪悪なオーラが溢れ出ているかのようだ。

正直なところ、使うどころか触りたくもない。

ルカ「やだよ、気味悪い…」

アリス「貴様達人間が喜ぶ天使が、柄や刀身に埋め込まれているだろう。ありがたいとは思わんか…?」

ラクト「天使だからってなんでもありがたみがあると思うなよ!どんだけ嫌いなんだよ!」

ルカ「その天使、苦悶の表情を浮かべているけど…」

どう見ても、ありがたみはなさそうだ。

アリス「いいから受け取れ、ほら。」

僕は眉をひそめつつ、堕剣エンジェルハイロウとやらを受け取る。

ルカ「…あれ?軽い…」

ラクト「嘘ぉ!?呪われるとかじゃなくて!?」

ルカは堕剣エンジェルハイロウをぶんぶん振り回す。

ごつい外見に似合わず、その剣は異様なまでに軽かった。

???「ォォォ…」

チリ「ひっ!…ねぇ、今の…!」

ルカ「うん…今、なんか呻き声みたいなのが聞こえなかったか…?」

アリス「当然だろう、666匹の天使を溶かして精製した剣なのだから。」

ラクト「どういう当然だよ!」

ルカ「その…正直、本気で嫌なんだけど…」

こんな剣を使ったら、イリアス様に見放されてしまうんじゃないか…?

 

アリス「いいから聞け、その剣には天使の怨念が込められており、聖素の含有率が極めて高いのだ。その効果により魔素を消散し、生骸から引き離すという効果が得られる。そうなると、魔素を固着することが極めて困難となり__」

カムロウ「え…えーと…?」

ルカ「ちょ、ちょっとまってくれ、話が難しすぎて、何が何だが分からないんだけど。」

パヲラ「つまり…その剣で致命傷を与えられたモンスターは、一時的に退化した姿に封印することができるわけねい?」

アリス「あぁ、その通りだ。命を奪うことなく、しばらくの間、無害な姿に封印できる。」

ルカ「この剣が?魔物を封印して無害化?」

正直、あまりピンと来なかった。魔物を一時的に退化させ、封印してしまう。そんな説明だけ聞いても、実感としてわからない。

アリス「む、ちょうどいい相手が近づいてきたではないか。」

ルカ「え?」

少し離れたところの地面が、こんもり膨らんだ。それは、もこもこもことこちらに近づいてくる。

チリ「なにあれ、モグラ?」

ラクト「馬鹿言え、あんなでかく膨らむか。」

アリス「良い機会だ。試し斬りでもしてみるがいい。では、余は少し場を離れるぞ。」

そう言い残し、アリスはふっと消えてしまった。

ルカ「あっおい!アリス!?」

カムロウ「試し斬りって…もしかして…」

うろたえている間にも、地面の膨らみは接近してきて_

 

ミミズ娘が現れた!

 

チリ「………」

ラクト「………」

チリ「でかい蛇?」

ラクト「でかい蛇?」

パヲラ「ミミズでしょ!どう見ても!」

 

ミミズ娘「あんたたち旅人?体液吸ってもいい?」

ルカ「いいわけないよ、だめって決まってるんだ!」

僕は自分の剣を抜こうとして…少し思い直し、アリスから受け取った堕剣エンジェルハイロウを構えた。

パヲラ「あら、気になるのねそれ?」

ルカ「まぁね…」

この剣で大ダメージを与えたら、モンスターは封印されて無害な姿になるというが、本当なのだろうか?

パヲラ「あたしも気になっていたところなの!みんな!ルカちゃんを援護するわよ!」

「「「おう!」」」

一行はそれぞれ武器を構えた。

 

ミミズ娘が先手を打った。ルカたちめがけて突進をしてきた。

パヲラ「ここはあたしが!」

パヲラは四股を踏んで、気を高めた。

そして両手を前に突き出し、ミミズ娘の突進を受け止めた。

パヲラ「ぬううううう…!」

突進の勢いは徐々に、緩やかに止まった。

パヲラ「そぉい!」

パヲラはミミズ娘の顔にアッパーカットを放った。

ミミズ娘の体は大きくのけぞる。

ルカ「今だ…!」

ルカはミミズ娘に斬りかかった。

ミミズ娘「痛っ!…あれ?なんなの、その剣…斬られたところから、力が抜けていくみたいな…」

ルカ「効いてるのか…!?」

アリスが言っていたことは、どうやら本当のようだ。しかし、この程度のダメージでは完全封印には至らないらしい。もっとダメージを与えなければ__!

ミミズ娘「っ!」

ミミズ娘は地面に潜った。

そして地面を掘り進みながら、ルカたちの周りをぐるぐると囲む。

チリ「一体どこから__」

チリが言いかけたその時、カムロウの後ろからミミズ娘が飛び出して来た。

カムロウ「危ない!」

カムロウがとっさに、チリを庇って攻撃を受け流す。

ミミズ娘はそのまま、また地面に潜る。

ラクト「さっさと出て来きたらどうだぜ…アーススパイク!」

ラクトは指に魔力を込め、文字を描いた。その文字は地面に潜っていく。

ミミズ娘「いっ!!!」

するとミミズ娘が地面から勢い良く飛び出てきた。体には土の棘が突き刺さっている。

チリ「天誅(てんちゅう)!」

チリは大きなハンマーをぐるぐると回して投げつける。

それはまだ空中に舞っているミミズ娘の体に当たり、ミミズ娘を地面に叩きつける。

ルカ「でやぁ!」

再びルカは、ミミズ娘に攻撃する。

ミミズ娘「なに、これ…力が抜けていくような、不思議な感じ…」

ルカ「よし…!」

やっぱり、この剣の効果は確かなようだ。敵に肉体的ダメージを与えるにつれ、力を封じていくらしい。

ミミズ娘「だったら__」

ミミズ娘は再び地面に潜った。

そして遠くから体を出すと、粘液を発射してきた。

カムロウ「ルカ!ここはぼくが!」

カムロウが前線に立つ。鉄の盾を前に突き出し、粘液を弾き飛ばす。

ルカ「ここだ!魔剣・首刈り!」

その弾幕を掻い潜って、ルカは魔剣・首刈りを放った。

ミミズ娘「なんなの、これ…!きゃぁぁ…!」

ミミズ娘に致命傷を与えた次の瞬間__その姿が、たちまち消散してしまった。

 

ミミズ娘をやっつけた!

 

ルカ「え?どうなったんだ?まさか、死んじゃいないだろうな?」

カムロウ「ねぇ!あれ!」

カムロウが指差す場所に、小さな生物がにょろにょろと這っている。あまりにもサイズが違うので、すぐには気付かなかったのだ。

ルカ「ミミズだ。」

チリ「そこら辺で見るような…普通のミミズだね。」

アリス「…理解したか?そいつは、さっきまでミミズ娘だったモンスター。なんら害のない、ちっぽけなミミズの姿に封印されたというわけだ。」

僕たちの勝利を知り、アリスも戻ってきたようだ。

ルカ「へぇ…」

チリ「確かに、無害、そのものの姿だね…これじゃ、悪さなんてできようもないね。」

ミミズ娘は諦めたのか、もこもこと地面に潜っていった。

ルカ「でもなんか、可哀そうな気もするなぁ。」

カムロウ「でも、殺しちゃいけないんだよね?」

アリス「生命力の高さは変わらんから、あのような姿といえども簡単には死なん。他者から力を与えられるなり、自分で蓄積するなりすれば、元の姿に戻ることも出来るのだ。」

ルカ「そうか…元の姿に戻った時には、反省してくれるといいな。」

パヲラ「反省してくれるどころか、人間への憎しみが増したりしてるかもねい…」

それも、否定しきれないところなのが悲しい。

改心してくれることを祈るばかりだ。

パヲラ「ところで、魔物以外の相手にこの剣を使ったらどうなるのかしら?」

ルカ「確かに、たとえば、人間とか…もちろん、試す気はないけど。」

アリス「人間でも、その剣でダメージを与えれば封印することができる。おそらく、小人の姿になるはずだ。」

ラクト「なんだ、こんな見た目しておいて、意外と優しい剣なんだな。」

アリス「また、その剣は天使の体を練りこんでいるから、聖素の濃度が極めて高い。だから天使を斬る場合にも、その剣は絶大な威力を発揮するぞ。」

ラクト「なにしれっと恐ろしいこと言ってんだお前!」

ルカ「なんで、天使様を斬らなきゃいけないんだよ…」

そんなの、神への冒涜だ。

ルカ「でも…ありがとう、アリス。おかげで、精一杯戦えるよ。」

僕は初めて、アリスに心から感謝していた。この剣ならば、僕の信念に相反せず武器を振るうことができるだろう。

アリス「予想通り、貴様の動きは今までより遥かに良くなっていた。魔物を殺したくないという思いが、貴様の剣技を無意識に鈍らせていたようだな。」

ルカ「そうだね。あんな風に戦ったのは初めてだよ…」

パヲラ「確かにルカちゃん、生き生きとしていたわね。」

ようやく、戦闘らしい戦闘をしたという気さえする。

アリス「とは言え、まだまだ未熟なのは事実。決して慢心はするなよ。」

ルカ「わ、わかっているさ…」

アリスに言われるまでもなく、僕は弱い。これからいっぱい経験を積んで、魔王を倒せるほど強くならなければ!

 

ルカ「さて、次の目的地だな…」

現在地点はイリアスベルク近郊。

カムロウ「このまま北に行けば、セントラ大陸への船が出ているイリアスポートだよね?」

チリ「魔物の盗賊団のアジトに向かうには、ここから西のイリナ山地か…。」

ラクト「そうだ、ルカ。ハピネス村も忘れるなよ?」

ルカ「そういえば…「サザーランド」のおかみは、ハピネス村がどうとか言っていたな。」

アリス「ふむ…ハピネス村に、寄り道してみるのもいいのではないか?」

ルカ「おいおい…反応が違うじゃないか。寄り道は面倒だ、とか散々渋っている癖に。」

アリス「旅の書物によれば…ハピナス村特産のハピネス蜜を、ふわふわのパンに塗りつけて食べるとたまらないのだそうだ。」

パヲラ「あら、おいしそう。」

ラクト「お前、この旅を世界食べ歩きツアーか何かと勘違いしてねぇか!?」

それはともかく、もう一つ、気になる場所がある。

隠れ里エンリカ_商人によれば、そこにひっそりと暮らしている人達がいるという。なぜか僕は、その村のことも心に引っ掛かっていた。

さて、次の目的地は__

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