もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
イリアスベルクから少し歩いたところで、ルカは地図を広げながら、次の目的地を考えていた。
カムロウ「ルカ、次はどこに行く?」
ルカ「えーと…」
すると後ろからささやき声が聞こえた。
ラクト「ハピネス村…」
ルカ「………」
ラクト「ルカよ…ハピネス村に行くのです…」
ルカ「………」
こいつ、そんなに行きたいのか?
そう思っていると、今度は声を高くして喋り始めた。
ラクト「ルカよ、ハピネス村に行くのです。」
ルカ「もうやめろ!」
ルカ「分かったよ、ハピネス村に行ってみよう。」
ラクト「よっしゃ!待ってたぜ!」
目を金のように輝かせ、悪そうな笑みを浮かべなからラクトは言った。
ラクト「ただでさえ出費が激しかったんだ。ハピネス村のハチミツを大量に買って売りさばけりゃ、どんだけ儲かるか…ひっひっひっ…」
ルカ「金稼ぎが目的じゃないか…」
チリ「サザーランドのおかみさんによれば、ハピネス村で何かあったみたいだけど…」
ルカ「やっぱり、何か大きな事件が起きてるんだろうな…」
アリス「ああ、様子を見に行く必要があるだろう。ハピネス蜜が取れなくなるなど、大問題だ。あまあまだんごが食べられんばかりか、各地の名産にまで影響が出るぞ。」
ラクト「…流通に影響あるのはそうだけどさ。」
ルカ「やっぱりこいつ、食い物のことしか考えてないな…」
ともかく僕達は、ハピネス村目指して東に進んだのである。
道を歩いている時、不意にアリスが質問をした。
アリス「ところで貴様ら。なぜハピネス村という名前なのか知っているか?」
ルカ「村人がみんな、ほのぼのした農園で幸せそうに養蜂にいそしんで暮らしているから…かな?」
チリ「えぇ…」
ラクト「いくらなんでも、安直すぎやしねぇかぜ?」
アリス「貴様は本当にドアホだな。ハピネス村の名は、近くにあるハーピーの集落に由来しているのだ。」
ルカ「なるほど、ハッピーじゃなく、ハーピーが語源ということだったのか…」
カムロウ「ハーピーって?」
パヲラ「女性の頭に鳥の姿をしているモンスターよん。」
アリス「ハーピーの習性を考えると、村での問題とやらもおおかた検討がつくが__ん?」
アリスは不意に目を瞬かせると、そのまま姿を消してしまった。
ラクト「おい待て、習性って何のことだぜ__」
ルカ「__アリスが逃げたということは、またモンスターか!」
ミツバチ娘が現れた!
ミツバチ娘「ふふっ…洗礼を受けていない旅人ね…初々しくて、おいしそう。」
ミツバチ娘は舌なめずりをする。その腹部にくっついている大きな巣からは、ダラダラと蜜が滴っていた。
ミツバチ娘「この蜜を、あなたの体に塗りつけてじっくりなめとってあげる。ふふっ…」
パヲラは顔を白くしながら驚愕した。
パヲラ「は…ハチミツプレイ!?」
ラクト「何に衝撃を受けてんだよ!!」
カムロウ「行こう!ルカ!」
パヲラ「あたしも!ハチミツの無駄遣いなんて、美容の敵よ!」
ルカの横に、カムロウとパヲラが立った。
ルカ「よし…行くよ!二人とも!」
一行は武器を構え、戦闘態勢に入った。
ルカ「先手必勝!」
ルカは誰よりも早く、ミツバチ娘に向かって走り出した。
ミツバチ娘「ほら、蜜にまみれなさい!」
するといきなりミツバチ娘は、蜜を飛ばしてきた!
ルカ「な…なんだこれ!?」
蜜は粘着性を帯び、ネバネバとまとわりついてくる。
そして、とろけそうなほど甘い匂い。ルカの全身はハチミツまみれになってしまった!
ミツバチ娘「ふふっ、良かったわね…あまい蜜にまみれながら、全身をナメナメしてもらえるのよ。」
パヲラはその光景を見て、頭を抱えながらガクガクと震えた。
パヲラ「あああああ!!ハチミツをあんなに!!!ゆ…許さん!!!」
ラクト「お前、何にキレてんだよ!!」
カムロウ「ぼくが相手だ!」
カムロウは盾を前に突き出し突進した。
そしてそのままミツバチ娘を、盾で殴った。
ミツバチ娘「痛いわね…!」
ミツバチ娘は尻餅をついたがすぐに立ち上がり、カムロウにも蜜を飛ばしてきた!
カムロウ「それくらい、
剣から風の塊を放ち、飛ばされた蜜に当てる。
跳ね返された蜜は地面にボトボトと落ちる。
その光景を見て、パヲラは戦慄した。
パヲラ「あああああ!!!ハチミツがあんなに!!!」
ラクト「うるせぇ!!もういいだろ!!」
ラクト「おい、ルカ!」
後衛にいたラクトがルカに呼び掛けた。
ラクト「ちょっと痛ぇが、これでハチミツ吹き飛ばせ!」
ラクトの手から衝撃波が放たれ、ルカはそれを受け止めた。全身に付いていたハチミツはほとんど吹き飛ばされ、体が軽くなった。
ルカ「ふぅ、助かった!」
ミツバチ娘「あら…残念。じっくり舐めとろうとしたのに。」
ルカ「ああ、残念だな!僕はもう蜜なんかにまみれないぞ!」
パヲラ「蜜をかけるんだったら、あたしにしなさい!」
ラクト「さっきから何なんだよお前!」
ハチミツ娘「えぇ…」
ハチミツ娘は困惑した。
パヲラ「んんん!!もう我慢できない!!!」
パヲラはビュンッと、猛烈な勢いで、ハチミツ娘に向かって走り出した。
ミツバチ娘「だったらあなたもまみれなさい!」
ミツバチ娘はパヲラに向かって、蜜を飛ばした!
パヲラ「ああ、もったいない!ああ、もったいない!」
パヲラは飛んできた蜜を余すことなく全部、体で受け止めた。
ミツバチ娘「えぇ…」
ハチミツ娘は困惑した。
チリ「なんで片っ端から受け止めてるの!」
しかも、勢いはとどまることなく、ミツバチ娘に突進していく。
パヲラ「もっとハチミツ「寄越しなさいや
ミツバチ娘「なっ…!?」
両手で、連続で、手のひらを突き出し掌底を放つ。
ミツバチ娘の体に、無数の衝撃が走る!
ミツバチ娘「うぅっ…!」
パヲラ「ぬうううん!!」
そして、パヲラはミツバチ娘の腰を掴み、バックドロップをした!
ミツバチ娘は脳天から、地面にぶつかった。
ミツバチ娘「がっ……!」
パヲラ「まだまだぁ!!」
さらにパヲラは、ハチミツ娘の両足を脇で挟み、ジャイアントスイングをし、投げ飛ばした!
ミツバチ娘「う…あ…あぁ…」
投げ飛ばされたミツバチ娘は仰向けで小さく呻く。
パヲラ「まだ終わってなあああい!!!」
ラクト「おいもうやめとけ!…うわっ!ベタベタするっ!」
我を失い暴走するパヲラを、慌ててラクトが止める。
ラクト「ルカ!さっさと封印しちまえ!じゃねぇと、このバカはハチミツを求めてずっと暴れるバカになる!」
ルカ「わ…わかった!」
ルカはミツバチ娘の元に駆け寄り、堕剣エンジェルハイロウを突き刺した。
ミツバチ娘「なに、これ…力が抜けて…きゃぁっ!」
ミツバチ娘の姿は消滅し、小さなミツバチの姿になった。
ミツバチは、そのままどこかに逃げ去ってしまった。
ミツバチ娘をやっつけた!
ルカ「よし!やったぞ!」
カムロウ「ぼくたちの勝ち…かな、ほとんどパヲラさんが戦ったけど。」
なんとか、ミツバチ娘を倒すことが出来た。
今回の戦闘でも、非常に学ぶことが多かったようだ。
ルカ「蜜で動きを封じてくる…厄介になりそうだ。」
チリ「これからは、誰かに助けてもらうか、交代するかでどうにかするしかないね。」
ルカ「そうだね、そうしよう。」
正気に戻ったパヲラは、ハチミツに塗れた自分の体を見て、物足りない顔をした。
パヲラ「うーん、まだハチミツ足りないわ…ルカちゃん、残ってるハチミツであたしとハチミツプレイしない?」
ルカ「えっ……」
ラクト「お前、その発言は誤解を生むぞ…というかもう生んでる。」
パヲラ「ところであんた、あたしのことバカって言った?」
ラクト「いいや、気のせいじゃねぇかぜ?」
ルカ「ハチミツ求めて暴れるバカって言ってた。」
それを聞いてパヲラはラクトに突っかかる。
パヲラ「やっぱり言ってたじゃないのアンタ!」
ラクト「なんだよ!あん時のお前はバカに変わりなかっただろうが!たかがハチミツぐらいで暴れやがってよぉ!」
そう言って二人は喧嘩をしようとする。
ラクト「ちょっ…お前、ハチミツでベタベタするから近寄んな。」
パヲラ「いや!あなたもハチミツプレイしなさい!」
ラクト「やめろ!来るんじゃねぇ!」
どうやら喧嘩はパヲラが優勢のようだ。
チリ「ルカ、これで体拭いて?」
ルカ「ああ、ありがとう。」
チリはハンカチを差し出した。ルカはそれで体に付いていたハチミツを拭きとった。
アリス「…相変わらず、あの程度の雑魚に苦戦するのだな。」
いつしか戻ってきたアリスは、辛辣な言葉を吐く。
ラクト「辛辣ぅ…」
ルカ「そんな事言わなくても…」
アリス「まぁ、戦いらしきものにはなってきたな。塩を投げつけていた頃から考えれば、マシになったかもしれん。」
ルカ「(言葉にトゲがあるけど、一応褒めてもらっただけマシとしよう。)」
塩という単語を聞いて、チリはびっくりした顔でルカを見た。
チリ「えっ…塩、投げてたの?」
カムロウ「うん。思いっきり。」
パヲラ「中身、全部投げてたわ。」
ルカ「やめてよ!恥ずかしいから!」
ともかく、ハピネス村はもう目前。
僕たちは、何やら異変が起きているという養蜂の村に向かったのだった。