もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第19話 女王、クィーンハーピーとの闘い

ハーピー姉妹との戦闘から、ルカたちは逃げ出した。

ルカ「ふぅ、今度は見付からないようにしないとな…」

パヲラ「ゆっくりしていられなくなったわ。あの姉妹ちゃんが、侵入者がいる事を仲間に知らせちゃったら、本格的に警戒し始めるわ。」

カムロウ「ええっ!?もしそうなったら…どうしようもないよ!」

ラクト「なら、さっさとケリ付けたほうがいいんじゃねぇか?」

ルカ「仕方ない、人目もないことだし…!」

チリ「ええ、行きましょ!」

僕たちは茂みから飛び出し、一目散に駆け出した。樹上にある、ボスの家へと向かって__

 

???「私の家に、何か御用でしょうか?」

背後で、ばさっと羽音が響く。そして、尋常ではない気配。

ルカ「ま、まさか…」

ラクト「そのまさからしいぜ、ルカ…」

振り返ると、そこには…

 

いかにも立派なハーピーが、単身で立っていた。

ルカ「あんたが、ハーピーのボスなのか…?」

クィーンハーピー「全てのハーピーを束ねる長、クィーンハーピーとは私のこと。この私に、どのような御用でしょう?まぁ、察しはついておりますが…」

ラクト「その察しの通りだぜ、女王サマ?」

ルカ「村の男達を帰して、こんな事はやめてほしいんだ!こんなの続けてたら、人と魔物の関係は壊れる一方だ!」

僕は剣を抜く前に、まず口を開いた。正直なところ、説得に応じてくれる可能性は低いだろうが…

クィーンハーピー「人の子よ、それは因果が逆というもの。人と魔物の関係が壊れてしまったがゆえ、我々はこのような事をせねばならないのです。」

カムロウ「壊れたから、やらないといけない…?」

ルカ「どういう事なんだ…?」

クィーンハーピー「説明する義理もなければ、あなたの要求に応じる必要もありません。事は、我々にとっても死活問題なのです。」

パヲラ「死活問題…?」

ルカ「なんだか分からないけど、こちらの言い分を聞いてくれないのなら!」

仕方なく、僕は剣を構えた。あまり気は乗らないが、退治するより他に手はないのだ。決して、命まで奪う気はない。反省してくれるまで、この剣で封じるだけだ。

クィーンハーピー「実力行使というわけですね。ならばハーピーの女王の力、その見に教えて差し上げましょう!」

ルカ「みんな!戦闘準備!」

「「「「ああ!」」」」

みんなも、来るであろう強敵を前に武器を構えた!

 

 

クィーンハーピーが立ちはだかった!

 

 

ルカ「くっ…!」

間違いない、こいつはかなりの強敵だ。気合いを入れてかからないと…

クィーンハーピー「女王に剣を向けるのは、大いなる罪。いかなる理由があろうとも、懲罰としての性的陵辱は免れません。」

ラクト「それはそっちの話だろうがよぉ!」

チリ「怪我したらすぐに呼んで!」

カムロウ「行くよ!ルカ!」

パヲラ「最初から本気よ!」

ルカ「ああ!」

ルカの隣に、カムロウとパヲラが、後衛にラクトとチリが着いた。出し惜しみはしない。最初から全力で戦わなければ、こちらが負けてしまう!

 

ルカ「てやっ!」

ハーピーの戦い方を考えれば、この攻撃も飛んで避けてしまうだろう。そう思いつつも攻撃をした。

ルカの攻撃!なんと、クィーンハーピーは避けずにその攻撃を食らったのだ!

クィーンハーピー「なるほど…なかなかの太刀筋ですね。」

ルカ「当たった…!?空を飛んで避けないのか…?」

クィーンハーピー「ハーピーの女王たる者が、そのような姑息な戦い振りを見せるとでも…?」

ラクト「へぇ…さすがは女王サマ。ずいぶんと余裕をかますじゃねぇか!相棒!」

カムロウ「風薙ぎ(かぜなぎ)!」

カムロウは風の衝撃波を放った!

ラクト「ウインドシュート!」

ラクトはルーンの文字を描き、風の一枚刃を放った!

二人の風は、クィーンハーピーめがけて進んでいく!

クィーンハーピー「ふふふっ…」

クィーンハーピーは片手の翼から突風を放ち相殺した!

カムロウ「そんなっ…!」

ラクト「なんだって…!?」

クィーンハーピーは不敵に笑う。

クィーンハーピー「ふふっ、風を操れるのは人だけではないのですよ?」

パヲラ「だったら、これならどう!?」

パヲラはクィーンハーピーの腰に向かって、回し蹴りを放った!

パヲラ「スカ(アト)!」

クィーンハーピー「おっと。」

クィーンハーピーはジャンプし、パヲラの攻撃を避け、胸に鋭い脚でムーンサルトを放った!

カウンターを食らったパヲラは、後方に吹っ飛ぶ。

パヲラ「痛ったいわねい…!」

ハーピーの脚は、従来の鳥の脚と同様、鋭い爪がある。ましてはクィーンハーピーのような、立派なハーピーともなれば、その鋭さに磨きが増す!木の板ほどなら、ステーキを切るナイフのようにするすると引き裂くほど!

そんな凶器の攻撃を食らったパヲラの胸からは、赤い血がぽたぽたと流れていた。

ラクト「おい!回復!」

チリ「分かってるってば!」

チリ「ヒーリング(回復魔法)!」

チリの両手から、暖かい光が放たれる。流血は治まり、傷は塞がっていく。

ラクト「まずいぞ…!こいつがこんなんじゃあ…あの二人でも女王に勝てるのか!?」

 

その間にも、ルカとカムロウはクィーンハーピーに攻撃を仕掛けていた。

ルカ「はあっ!」

カムロウ「せいやぁ!」

二人の攻撃を受け止め、クィーンハーピーは回し蹴りを放った!

カムロウは盾で防いだが、ルカがダメージを負ってしまった!

カムロウ「ルカ!」

ルカ「なんて強さなんだ…!」

左腕のひっかき傷から、血が流れる。

カムロウ「よくもルカを…!」

カムロウは盾を前に突き出し突進した!

クィーンハーピー「ふふっ…」

クィーンハーピーの尾羽がふわふわと舞う!そのままクィーンハーピーは微動だにしない!

クィーンハーピー「さあ、攻撃を仕掛けてきなさい。」

ルカ「な、なんだ?」

良く分からないが、ひどく嫌な予感がする。うかつに攻撃を仕掛けてもいいものだろうか…?

ルカ「だめだカムロウ!戻るんだ!」

カムロウは止まらず突っ込んでいく!

クィーンハーピー「来ましたね。」

ルカの予感は的中した。やはりカウンターだ。

クィーンハーピーはカムロウを抱きしめ、そのまま空に飛んだ!

ハーピー版パイルドライバーといったところか。

空中で回転しながら、カムロウを地面に叩きつける!

カムロウ「うがっ…」

頭から地面を強打し、カムロウはバウンドしながら地面に倒れる。

ルカ「カムロウ!」

クィーンハーピー「隙あり…!」

クィーンハーピーはルカを強引に押し倒してきた!

ルカは、クィーンハーピーにのしかかられてしまった!

ルカ「くっ…!」

しかし、この一瞬にこそ隙がある!

ルカ「今だ!」

ルカは会心の一撃を放った!

クィーンハーピー「っ!」

攻撃を食らったクィーンハーピーはルカから離れた!

クィーンハーピー「なるほど…一瞬の隙を見切るとは…凡庸ではないようですね?」

ルカ「ああ!ここに来るまで、何度もハーピーと戦ったからな!」

 

 

 

 

 

凡庸…?

 

 

 

 

 

倒れこんでいたカムロウは、その言葉が引っ掛かった。

パヲラさんから教えてもらったことがある。確か、「優れた点や変わった点はなく、ありふれていて、つまらないこと」だったような…

 

 

 

 

 

 

 

 

……「つまらない」…?

ということは、さっきまで…

 

 

 

 

 

 

 

 

ル カ を 馬 鹿 に し て い た の か ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルカは、クィーンハーピーの威圧に押されていた。

クィーンハーピー「さぁ…どうします?まだ続けますか?」

ルカ「ぐっ…!」

怪我した左腕を抑えつつ、じりじりと後ずさりをする。

無論、降参なんてするつもりはない。ここで降参したら、残されたハピネス村の女性たちはどうなるんだ!負けるわけにはいかないんだ!

チリ「憤弩(ふんぬ)!」

チリはハンマーに岩石を乗せて、クィーンハーピーに向かって飛ばした!

クィーンハーピーは両翼から烈風を放ち、岩石を吹き飛ばした!

チリ「ルカ!パヲラと交代して!」

ルカ「ああ、助かった!」

その間に、ルカは後衛に、パヲラは前衛に出た。

チリ「ごめん、ラクト!前に出て!」

ラクト「無理とか言ってられる場合じゃねぇか…!」

震える足を手でガンガン叩きつつ、ラクトも前衛に出た。

ルカ「カムロウは!?」

チリ「距離が遠い!後で治しに行く!」

チリは、ルカの左腕を回復し始める。

クィーンハーピー「そうですか、あの子は回復魔法を扱えるのですね…」

その様子を見て、クィーンハーピーは少し考える。

クィーンハーピー「長い余興に付き合う暇はありません。一気に決めます!」

そう言うと、空に飛びあがった!周囲に風が吹き始める!

どうやら、クィーンハーピーは短期決戦を仕掛けるつもりだ!

パヲラ「ちょっと!何か策はないの!?」

ラクト「んなこと言われてもよぉ!あんな女王サマに、俺の魔法が当たると思うかぜ!?」

空を飛んでいるなら、ラクトのヘビーウェイトで重力を与え、地面に叩きつければこちらの攻撃も当たる。だが、相手はハーピーの女王。隙があるわけでもない。まさに打つ手なしの状況なのだ。

クィーンハーピー「喧嘩している場合ですか?」

クィーンハーピーは片翼から突風を放った!

ラクト「衝撃波!」

ラクトはルーン魔導の衝撃波を放った!

しかし、相殺しきれず、突風に押し返された!

突風は命中し、ラクトは吹っ飛ばされる!

ラクト「ぐああっ!!」

パヲラ「もうっ!」

パヲラは両手に魔力を込め、圧縮し、光る球体を造り出す!

パヲラ「風はやや南西…メガトンボ投球…」

パヲラ「魔凝球(フォトン)!!」

整った投球フォームから、バレーボールほどの輝く球体をぶん投げる!

クィーンハーピー「届きませんよ…!」

クィーンハーピーは竜巻を放った!パヲラの魔凝球(フォトン)は竜巻に呑まれ、こちらに向かって飛んでくる!

パヲラ「なっ__」

ラクト「うわあああっ!!!

そして、パヲラとラクトの目の前で、爆発を起こした。

二人は爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ。

ラクト「だ…だめだ!下手に遠距離の攻撃をすると、あいつの風で跳ね返されるぞ!!」

ルカ「僕が出る!回復頼んだ!」

チリ「わ…分かった!」

二人と交代するように、ルカが前に出て戦う。しかし、剣も届かない相手にはやはり不利のようで、劣勢を強いられる。

ラクト「わ、悪ぃな…」

パヲラ「………」

パヲラはある心配事をしていた。チリのことだ。

いくら彼女が回復魔法を使って自分たちを回復しても、彼女にもその魔力に限界という壁があるのだ。チリの額には、汗が噴き出ていた。まさにその壁が、そこまで来ていたのだ。

パヲラ「(チリちゃん、限界が来てるわ…このままだと、こっちが負けそうね…!)」

 

ルカ「だ…だめだ、攻撃が届かない…!」

さっきのようにのしかかってくるはずもなく、一方的な攻撃にどうすることもできなかった。

クィーンハーピーは優雅に空を飛びながら、勝利を確信したかのように、大技を放つ準備をした。

クィーンハーピー「さて、そろそろ終わらせましょうか__」

 

 

 

__後に、とある魔物からのインタビューで、ハピネス村の女性の一人はこう語った。

 

はい、私もあの時、ハーピーの里の、広場の近くまで来ていました。

安全なところにいるようにって言われましたけど…

やっぱり、村のみんなも、どうしても心配で…

広場近くの茂みから様子を見ていました。

でも私たちが来たときには…勇者様やそのお仲間も、傷だらけで…

ええ、劣勢です!文字通り!

どんなに攻撃を仕掛けても、風で吹き飛ばされたり、脚で蹴りを食らったり…手も足も出ないっていう感じでした。

だから、クィーンハーピーは止めの一撃を放つつもりでいたんでしょうね。

竜巻です!おそらく、ものすごい竜巻を。それを放とうとしたんです。

風がすごかったんですよ!台風がそこにあるかのような、ものすごい風が!

私も、負けを確信しましたよ。

そもそも魔物なんかに勝てるはずがなかったなんて。

ところがですよ?吹っ飛んだんです!クィーンハーピーが!

まるで飛んできた何かに、ぶつかったかのように!

少年です。少年が体当たりをしたんですよ!木よりも高いところにいたクィーンハーピーにですよ!?

…え?勇者様?違います!お仲間にいた、もう一人の少年です。

あの…剣と盾を持った、小さい子ども。あの子です。

私も含め、その場にいた全員が、びっくりというか、衝撃というか、とにかくあっけにとられましたよ。

クィーンハーピーも、驚いた表情をしていました。それはそうですよね。だって、子どもが、自分と同じくらいの高さまで飛んで、体当たりをして来るなんて、考えられませんよ。私も予想できませんでした。

あの子のどこから、そんな力があったのか。そんな感想しか言えないですよ。

初めて会ったときはですね、小さくて、可愛らしい、みんなの弟って感じの少年だったんですよ。

それがですね…あの時、別の何かになっていたんですよ。

眼が違うんです。眼が。

例えるなら…敵と遭遇したときの野生動物!ナワバリを主張するために威嚇する、怒りの眼と同じでした!

あとでその子に聞いてみたら、また驚きましたよ。「友達をバカにされて怒った」って。

それで…あそこまでなります?人間が、木よりも高く飛んで、ものすごい馬鹿力で魔物を吹っ飛ばす。そんな力が出ると思いますか?

私からしてみれば…あれはもう…化け物か何かかと思いましたよ!

 

 

 

 

カムロウ「はあああああ!!!」

クィーンハーピー「っ!!?」

クィーンハーピーは、突然の衝撃に反応できなかった。

カムロウが、後ろから体当たりをしてきたのだ!

思わず吹っ飛ぶが、すぐに空中で体勢を整える。カムロウは地面に着地をする。

クィーンハーピー「な…!?どういうことです…!?」

なぜ、人間が、私と同じ高さまで飛べたのか。

緊迫で加速した思考回路でも、答えは出なかった。

ルカ「えっ…カムロウ!?」

ラクト「あいつ…今、ものすごいジャンプしてなかったか!?」

カムロウ「ルカを…バカにしやがって…!」

カムロウの眼は、怒りの眼をしていた。怒りが動力になっているかのように、輝いていた。

カムロウは足をバネにし、力を込めてジャンプした!

そして、空中にいるクィーンハーピーの体にしがみついた!

クィーンハーピー「!?は…離しなさい!」

カムロウ「ルカをバカにするなあああ!!!」

しがみつきながら、盾や剣の柄で、何度も、何回も、クィーンハーピーの顔をぶん殴る!

 

パヲラ「す…すごい…!」

チリ「カムロウにあんな力が!?」

ラクト「そういや…以前、聞いたことがある。」

思い出したかのようにラクトが話す。

ラクト「パヲラに聞いたことがあってな、ナタリアポートで、カムロウが魔物と戦うことがあったんだ。俺は逃げたんだけどよ。あいつは逃げようとしなかったんだ。」

ラクト「後で、パヲラが駆け付けたときのカムロウは、まるでナワバリを主張する野生動物みたいに怒ってたらしいんだ。」

ラクト「カムロウになんで怒ってたんだって聞いたら、「ラクトをバカにされたと思った」ってよ。」

ラクト「もしかしてあいつ…友達が侮辱されるのが嫌で、それで怒りを爆発させてんのか!?」

ルカ「だからって…あんなになるか!?」

ラクト「俺も分からねぇ!けど、今はチャンスだ!」

カムロウの怒涛の攻撃に、クィーンハーピーは押されている。反撃のチャンスは今しかないだろう。

 

ラクト「そういやチリ、さっき岩石飛ばしてたな。すごい力だぜ。」

チリ「そ、そう?なにも今褒めなくても__」

ラクト「ならよ、人を乗せて飛ばすって出来るか!?」

チリ「はあっ!?」

ラクトは、ルカ、チリ、パヲラに向かって話し始めた。

ラクト「お前ら、俺が今から言うことをよく聞いとけ!__」

 

 

クィーンハーピー「いい加減に…したらどうです!」

やっと、カムロウを振り払うことができた。カムロウは地面に落とされる。

クィーンハーピー「はあっ!」

クィーンハーピーはカムロウに、突風を放った!

カムロウ「風薙ぎ(かぜなぎ)!」

カムロウは、剣から風の衝撃波を放った!

普段よりもとても大きく、さらに強い風の衝撃波だった。

それは、クィーンハーピーが放った突風に当たると、それすらも飲み込んでクィーンハーピーにぶつかる!

クィーンハーピー「な…あなた…一体…!?」

 

パヲラ「カムロウちゃん!」

カムロウの近くに、パヲラとラクトが駆け寄る。

ラクト「カムロウ!クィーンハーピーの隙を作ってくれ!それで、勝負は決まる!」

カムロウ「わかった!やってみる!」

クィーンハーピー「隙を作る…?まだ、勝負は終わっていませんよ!!!」

風が吹き荒れ、クィーンハーピーの元に集まる!

クィーンハーピーは大きな竜巻を繰り出した!

パヲラ「な…大きすぎるわ!二人とも、避けましょう!」

しかし、カムロウとルカはその場から動こうとしなかった。

パヲラ「!?何してるのよ!早く!」

ラクト「何言ってんだよバカ、カムロウを信じろ!」

ラクトとカムロウは顔を合わせた。

ラクト「…ぶちかませ!相棒!」

カムロウ「…うん!」

今のぼくにならできる。あの竜巻を斬ることが!

剣に風を、脚に力を。

今、自分が出せる、最大最強の技を、目の前にある障害を切り裂くために放つのだ!

カムロウはバッタの如く飛び上がり、竜巻に斬りかかった!

カムロウ「風蝗斬(ふうこうざん)!」

一刀両断。カムロウは、竜巻を縦に、真っ二つに切り裂いた!

クィーンハーピー「そ…そんな!?竜巻を…斬った!?」

今、隙が出来た。クィーンハーピーに一瞬の隙が出来た。

チリ「行くよ!ルカ!」

ルカ「ああ、思いっきりやってくれ!」

後衛にいたチリのハンマーに、ルカが乗っていた。

チリ「投撃(カタパルト)!!」

チリはハンマーをぶん回した!

チリ「射出(しゃしゅつ)!!」

そして、乗っていたルカをクィーンハーピーめがけて飛ばした!

ルカはそのまま、飛ばされた勢いで魔剣・首刈りを放った!

ルカ「魔剣・首刈り!」

斬られた竜巻をかいくぐり、喉元に鋭い突きを繰り出す!

しかし、僕たちの攻撃で、終わりではない!

ラクト「これで終わりだ!ヘビーウェイト!!」

ラクトは両手に魔力を込め、ルーン魔導を放った!

描かれた文字はクィーンハーピーに飛んでいき、ズンッと重い重力を付与した!

クィーンハーピーは、地面に叩きつけられる!

これが、ついさっきラクトが考えた連携攻撃だ。

クィーンハーピー「そんな、この私が…!」

僕たちの連携攻撃は深いダメージを与え、クィーンハーピーは地に膝を着いた。

おそらく、もう反撃の気力は残されていないだろう。

 

 

 

クィーンハーピーをやっつけた!

 

 

 

ルカ「よし、女王を倒したぞ!」

カムロウ「やった…!」

まだ致命的なダメージを与えていないので、封印には至っていない。

それでもダメージは深く、戦意は失ってしまったようだ。

パヲラ「今よ、ルカちゃん!作戦通りに!」

ルカ「えいっ!」

あらかじめ持たされた魔法信号筒を、真上へと投げつける。

それは空中で弾け、色とりどりの光を生み出した。

これが、クィーンハーピーを倒した合図だ!

 

おばさん「よし、突っ込むよ!」

女性「イリアス様…どうか私に力を!」

あちらこちらで茂みがざわめき、ハピネス村の女達がなだれこんでくる。

ラクト「あれっ!?入口で待機なはずだろ!?」

チリ「みんな、こんな近くまで来ていたの!?」

僕たちがクィーンハーピーと戦っている間に、すぐ近くまで来ていたのだ。

おばさん「このハーピーが女王だね!」

女性「女王さえ押さえてしまえば後は…!」

 

クィーンハーピー「そうですか…村の女性達までが、さらわれた男たちを救いに…」

そう呟くクィーンハーピーを、村の女性が取り囲んでいく。

 

ハーピーA「女王様、どうなされたのです!?」

ハーピーB「に、人間たちの襲撃!?」

さすがにこれだけの騒ぎになれば、眠っていたハーピー達も起き出したようだ。

僕は剣を掲げ、クィーンハーピーの前に立った。

ルカ「…頼むよ、村の男達は返して、こんなことはもうしないと誓ってくれ。そうでないと、僕はあなたを斬らなくちゃいけなくなるんだ。」

クィーンハーピー「…できない、と言ったはずです。」

覚悟をした顔で、クィーンハーピーは視線を落とす。

仕方ない、少しばかり封印させてもらうか…

 

僕が剣を振り下ろそうとした、その時だった。

おじさん「ちょ、ちょっと待ってくれぇ!やめてくれぇ!」

男性「待ってくれ!女王様は斬らないでくれ!」

ハーピーの家々から、若い青年から老人まで、人間の男たちが飛び出してきたのだ!

広場に飛び出した男達は、傷付いた女王を庇うように間に入った!

村の女性達にも、衝撃と動揺が走る。

どうやら、彼らはさらわれた村の男たちらしい。

男達は普通に服を着ており、その顔も健康そのもの。

どう見ても、ひどい目に遭ったような様子はない。

女性「あれは…まさか、お父さん!?」

おばさん「マルク、無事だったのかい!?」

ルカ「どうなってるんだ…?」

カムロウ「奴隷にされているはずじゃ…?」

 

おばさん「マルク!いったいどうして…」

青年「か、母さん…紹介するよ…妻のピアーナだ。」

マルクと呼ばれた青年は、隣に立っているハーピーを紹介する。

青年「それと…この子が、娘のピッピ。」

子ハーピー「…おばあちゃん?」

ちいさなヒナのハーピーは、おばさんを見上げてぱたぱたと羽根を振る。

 

女性「父さん…どういうことなの?」

おじさん「ああ…言い難いことだが、お前の義母さんになるレイナだ。」

ハーピー「…よ、よろしく。」

女性と同年齢ほどのハーピーが、おずおずと頭を下げる。

 

老婆「まさか、あんたは…一年前、ハーピー討伐に旅立って帰ってこなかった旅の方…」

旅人「いやいや、お恥ずかしい…今では私も、7児の父です。」

 

パヲラ「ふむ…男の人は、全員、ハーピーの子どもがいるようねい。」

さらわれたはずの男達は、みんなハーピーと婚姻を結んでいるようだ。

思わぬ光景を前に、僕たちも村の女性達も目を丸くするのみ。

おじさん「そういうわけで…ハーピー達をやっつけるの、やめてくれんか?」

男性「彼女達は、私達の妻子なんです。だから、戦うなんてやめて下さい…」

おばさん「じゃあ、この子は私の孫になるのかい?」

女性「私の義母さん…?ハーピーが…?」

 

老人「その通り…今やハーピーは、我々の妻子であり、家族でもあるのじゃ。」

一人の老人が、静かに進み出る。

おばさん「そ、村長!?」

老婆「お前さん、無事じゃったのか…!?」

老人「儂がいない間、迷惑をかけたのう。今や、ハーピー達は我々の家族、そして村に残された女達も、我々の家族じゃ。家族同士で戦い、殺し合うなど、愚かしいことよ…」

青年「そうだ。おふくろも、ピアーナも家族なんだ。家族同士でいがみ合うなんて、やめてくれ!」

男達「そうだ!そうだ!」

村の女達も含めて、僕たちは立ちとぼけるばかり。

 

パヲラ「なるほど、そういうことねい。」

ルカ「?」

パヲラ「以前、アリスちゃんが言ってたでしょう?魔物は繁殖するには、人間の男が必要だって。」

カムロウ「そういえば…言ってたね、そんな事。」

パヲラ「だから、死活問題なのよ。魔物からしてみれば、人間の男がいないと、自分たちは子を作ることが出来ない。さらってでもしないと、そのまま滅びる運命なのよ。」

傷付いたクィーンハーピーは口を開いた。

クィーンハーピー「その通り…ハーピーには女しか存在しない以上、繁殖には人間のオスの力を借りるしかないのです。」

ルカ「で、でも…何もさらわなくたって…」

クィーンハーピー「…人間の魔物に対する憎しみが高まっている今、誰がハーピーの里へ婿になど来てくれるでしょうか。」

クィーンハーピー「私達とて、ただ黙って滅びるわけにはいかないのです。たとえ無理矢理に奪ってでも、男は必要でした…」

ハーピーA「さらった男たちを決して粗末にはしてないし…」

ハーピーB「村の掟で外には出せなかったけど、男はとっても大切なんだから。」

ルカ「つまり、男達は特にひどい目に遭っていなかった…ってことか?」

老人「無論じゃ!儂など、若返った!むしろ返り咲いた!なにせ毎晩毎晩…」

ラクト「なにハッスルしてんだ爺さん!」

老婆「なるほどな…お前さんや、少しあっちで話でもしようかのう…」

老人「ひぃぃ…ばあさんや、これは違うんじゃ!」

チリ「ああ、村長の奥さん、あんな鬼の形相で…」

ルカ「…これはいったい、どうしたものか…」

 

おじさん「す、すまねぇ…その…俺には嫁がもう三人も…」

おばさん「…で、子どもは?」

おじさん「7人…来月にはあと2人…」

女性「お父さんが帰ってくるのは嬉しいけど…義母さん2人に、義妹が6人?」

見れば、あっちこっちで同様の揉め事が起きているようだ。

中には非常に深刻な表情をしている家族もいる。

男達を集落から出さないハーピーの掟のため、男側も村に帰ることができなかったようだ。

ルカ「どうしようか、アリス…」

アリス「余が知るか。」

ルカ「うーん、どうしたものか…」

ラクト「本当にどうするんだよこれ、ハチミツよりもドロドロの家族関係になってるじゃねぇか。最悪だぜ…。」

ルカ「とりあえず村の男達がみんな無事なら、ハーピーを退治するというのも違う気がするな…」

 

老人「いっそ家族!皆が家族!それでいいじゃろう!」

老婆に首を絞められながら、老人は高らかに宣言する。

若者「そうだ、その通りだ!」

おじさん「双方が家族としての付き合いをしていけば、問題ないはずだ!」

チリ「えぇ…それでいいの?」

ラクト「…はぁ、家族ねぇ。聞こえは良いんだけどよぉ…」

いつしか、そういう方向で、話はまとまっていく。

おばさん「あたしは、息子の嫁と孫が増えただけだから構わないんだけどねぇ…」

息子に嫁ならめでたいが、夫に第二、第三の妻や娘ができているケースが洒落にならないだろう。

 

アリス「これ以降は、ハピネス村とハーピーの里で解決するべき問題だ。ニセ勇者が関与できる段階は、もう終わりだろう。」

ルカ「うん、そうだね…」

後は、当事者たちの話し合いが望ましい。

正直なところ、これより先の泥沼には、あまり関わりたくない気もする。

僕は、人間と魔物が共存できる世の中を目指している。

しかし実現にあたっては、色々と大変だということが身に染みてわかったのだった。

 

 

ラクト「…なーんか、しっくりこねぇなぁ。」

ラクトは腕を組んで、首を傾げた。

ルカ「? なにがしっくりこないんだ?村の男たちは無事で良かったじゃないか。」

ラクト「いや…俺はよ、女王サマ倒して、村の男救って、はいチャンチャンってのを想像してたんだけど…なんか拍子抜けっていうか…」

しばらく考え込んだ後、ラクトは指パッチンをした。何か閃いたようだ。

ラクト「そうだ、ルカ!ここは一発、勇者サマの勝ち名乗りといこうじゃねぇか!」

ルカ「か…勝ち名乗り!?」

チリ「また変なことを…」

ラクト「頼む!締めてくれ!そうじゃねぇと気がすまねぇ!」

ルカ「勝ち名乗りなんて…どうやれば…」

アリス「ふむ、それは面白そうだな。」

アリス「それにしても、ニセ勇者なのに、勇者の勝ち名乗りか…」

ルカ「………」

ラクト「まだいじるかお前…」

 

ルカ「それで、勝ち名乗りってどうすれば…」

パヲラ「剣を、空高く掲げるっていうの、どうかしら?」

アリス「うむ、それが無難だろう。」

カムロウ「うん!かっこいいと思う!」

ルカ「えっと…じゃあ、やってみるよ。」

 

ルカは、堕剣エンジェルハイロウを、空高く掲げた!

ルカ「僕たちの、勝利だ!」

 

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