もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
ハーピー姉妹との戦闘から、ルカたちは逃げ出した。
ルカ「ふぅ、今度は見付からないようにしないとな…」
パヲラ「ゆっくりしていられなくなったわ。あの姉妹ちゃんが、侵入者がいる事を仲間に知らせちゃったら、本格的に警戒し始めるわ。」
カムロウ「ええっ!?もしそうなったら…どうしようもないよ!」
ラクト「なら、さっさとケリ付けたほうがいいんじゃねぇか?」
ルカ「仕方ない、人目もないことだし…!」
チリ「ええ、行きましょ!」
僕たちは茂みから飛び出し、一目散に駆け出した。樹上にある、ボスの家へと向かって__
???「私の家に、何か御用でしょうか?」
背後で、ばさっと羽音が響く。そして、尋常ではない気配。
ルカ「ま、まさか…」
ラクト「そのまさからしいぜ、ルカ…」
振り返ると、そこには…
いかにも立派なハーピーが、単身で立っていた。
ルカ「あんたが、ハーピーのボスなのか…?」
クィーンハーピー「全てのハーピーを束ねる長、クィーンハーピーとは私のこと。この私に、どのような御用でしょう?まぁ、察しはついておりますが…」
ラクト「その察しの通りだぜ、女王サマ?」
ルカ「村の男達を帰して、こんな事はやめてほしいんだ!こんなの続けてたら、人と魔物の関係は壊れる一方だ!」
僕は剣を抜く前に、まず口を開いた。正直なところ、説得に応じてくれる可能性は低いだろうが…
クィーンハーピー「人の子よ、それは因果が逆というもの。人と魔物の関係が壊れてしまったがゆえ、我々はこのような事をせねばならないのです。」
カムロウ「壊れたから、やらないといけない…?」
ルカ「どういう事なんだ…?」
クィーンハーピー「説明する義理もなければ、あなたの要求に応じる必要もありません。事は、我々にとっても死活問題なのです。」
パヲラ「死活問題…?」
ルカ「なんだか分からないけど、こちらの言い分を聞いてくれないのなら!」
仕方なく、僕は剣を構えた。あまり気は乗らないが、退治するより他に手はないのだ。決して、命まで奪う気はない。反省してくれるまで、この剣で封じるだけだ。
クィーンハーピー「実力行使というわけですね。ならばハーピーの女王の力、その見に教えて差し上げましょう!」
ルカ「みんな!戦闘準備!」
「「「「ああ!」」」」
みんなも、来るであろう強敵を前に武器を構えた!
クィーンハーピーが立ちはだかった!
ルカ「くっ…!」
間違いない、こいつはかなりの強敵だ。気合いを入れてかからないと…
クィーンハーピー「女王に剣を向けるのは、大いなる罪。いかなる理由があろうとも、懲罰としての性的陵辱は免れません。」
ラクト「それはそっちの話だろうがよぉ!」
チリ「怪我したらすぐに呼んで!」
カムロウ「行くよ!ルカ!」
パヲラ「最初から本気よ!」
ルカ「ああ!」
ルカの隣に、カムロウとパヲラが、後衛にラクトとチリが着いた。出し惜しみはしない。最初から全力で戦わなければ、こちらが負けてしまう!
ルカ「てやっ!」
ハーピーの戦い方を考えれば、この攻撃も飛んで避けてしまうだろう。そう思いつつも攻撃をした。
ルカの攻撃!なんと、クィーンハーピーは避けずにその攻撃を食らったのだ!
クィーンハーピー「なるほど…なかなかの太刀筋ですね。」
ルカ「当たった…!?空を飛んで避けないのか…?」
クィーンハーピー「ハーピーの女王たる者が、そのような姑息な戦い振りを見せるとでも…?」
ラクト「へぇ…さすがは女王サマ。ずいぶんと余裕をかますじゃねぇか!相棒!」
カムロウ「
カムロウは風の衝撃波を放った!
ラクト「ウインドシュート!」
ラクトはルーンの文字を描き、風の一枚刃を放った!
二人の風は、クィーンハーピーめがけて進んでいく!
クィーンハーピー「ふふふっ…」
クィーンハーピーは片手の翼から突風を放ち相殺した!
カムロウ「そんなっ…!」
ラクト「なんだって…!?」
クィーンハーピーは不敵に笑う。
クィーンハーピー「ふふっ、風を操れるのは人だけではないのですよ?」
パヲラ「だったら、これならどう!?」
パヲラはクィーンハーピーの腰に向かって、回し蹴りを放った!
パヲラ「スカ
クィーンハーピー「おっと。」
クィーンハーピーはジャンプし、パヲラの攻撃を避け、胸に鋭い脚でムーンサルトを放った!
カウンターを食らったパヲラは、後方に吹っ飛ぶ。
パヲラ「痛ったいわねい…!」
ハーピーの脚は、従来の鳥の脚と同様、鋭い爪がある。ましてはクィーンハーピーのような、立派なハーピーともなれば、その鋭さに磨きが増す!木の板ほどなら、ステーキを切るナイフのようにするすると引き裂くほど!
そんな凶器の攻撃を食らったパヲラの胸からは、赤い血がぽたぽたと流れていた。
ラクト「おい!回復!」
チリ「分かってるってば!」
チリ「
チリの両手から、暖かい光が放たれる。流血は治まり、傷は塞がっていく。
ラクト「まずいぞ…!こいつがこんなんじゃあ…あの二人でも女王に勝てるのか!?」
その間にも、ルカとカムロウはクィーンハーピーに攻撃を仕掛けていた。
ルカ「はあっ!」
カムロウ「せいやぁ!」
二人の攻撃を受け止め、クィーンハーピーは回し蹴りを放った!
カムロウは盾で防いだが、ルカがダメージを負ってしまった!
カムロウ「ルカ!」
ルカ「なんて強さなんだ…!」
左腕のひっかき傷から、血が流れる。
カムロウ「よくもルカを…!」
カムロウは盾を前に突き出し突進した!
クィーンハーピー「ふふっ…」
クィーンハーピーの尾羽がふわふわと舞う!そのままクィーンハーピーは微動だにしない!
クィーンハーピー「さあ、攻撃を仕掛けてきなさい。」
ルカ「な、なんだ?」
良く分からないが、ひどく嫌な予感がする。うかつに攻撃を仕掛けてもいいものだろうか…?
ルカ「だめだカムロウ!戻るんだ!」
カムロウは止まらず突っ込んでいく!
クィーンハーピー「来ましたね。」
ルカの予感は的中した。やはりカウンターだ。
クィーンハーピーはカムロウを抱きしめ、そのまま空に飛んだ!
ハーピー版パイルドライバーといったところか。
空中で回転しながら、カムロウを地面に叩きつける!
カムロウ「うがっ…」
頭から地面を強打し、カムロウはバウンドしながら地面に倒れる。
ルカ「カムロウ!」
クィーンハーピー「隙あり…!」
クィーンハーピーはルカを強引に押し倒してきた!
ルカは、クィーンハーピーにのしかかられてしまった!
ルカ「くっ…!」
しかし、この一瞬にこそ隙がある!
ルカ「今だ!」
ルカは会心の一撃を放った!
クィーンハーピー「っ!」
攻撃を食らったクィーンハーピーはルカから離れた!
クィーンハーピー「なるほど…一瞬の隙を見切るとは…凡庸ではないようですね?」
ルカ「ああ!ここに来るまで、何度もハーピーと戦ったからな!」
凡庸…?
倒れこんでいたカムロウは、その言葉が引っ掛かった。
パヲラさんから教えてもらったことがある。確か、「優れた点や変わった点はなく、ありふれていて、つまらないこと」だったような…
……「つまらない」…?
ということは、さっきまで…
ル カ を 馬 鹿 に し て い た の か ?
ルカは、クィーンハーピーの威圧に押されていた。
クィーンハーピー「さぁ…どうします?まだ続けますか?」
ルカ「ぐっ…!」
怪我した左腕を抑えつつ、じりじりと後ずさりをする。
無論、降参なんてするつもりはない。ここで降参したら、残されたハピネス村の女性たちはどうなるんだ!負けるわけにはいかないんだ!
チリ「
チリはハンマーに岩石を乗せて、クィーンハーピーに向かって飛ばした!
クィーンハーピーは両翼から烈風を放ち、岩石を吹き飛ばした!
チリ「ルカ!パヲラと交代して!」
ルカ「ああ、助かった!」
その間に、ルカは後衛に、パヲラは前衛に出た。
チリ「ごめん、ラクト!前に出て!」
ラクト「無理とか言ってられる場合じゃねぇか…!」
震える足を手でガンガン叩きつつ、ラクトも前衛に出た。
ルカ「カムロウは!?」
チリ「距離が遠い!後で治しに行く!」
チリは、ルカの左腕を回復し始める。
クィーンハーピー「そうですか、あの子は回復魔法を扱えるのですね…」
その様子を見て、クィーンハーピーは少し考える。
クィーンハーピー「長い余興に付き合う暇はありません。一気に決めます!」
そう言うと、空に飛びあがった!周囲に風が吹き始める!
どうやら、クィーンハーピーは短期決戦を仕掛けるつもりだ!
パヲラ「ちょっと!何か策はないの!?」
ラクト「んなこと言われてもよぉ!あんな女王サマに、俺の魔法が当たると思うかぜ!?」
空を飛んでいるなら、ラクトのヘビーウェイトで重力を与え、地面に叩きつければこちらの攻撃も当たる。だが、相手はハーピーの女王。隙があるわけでもない。まさに打つ手なしの状況なのだ。
クィーンハーピー「喧嘩している場合ですか?」
クィーンハーピーは片翼から突風を放った!
ラクト「衝撃波!」
ラクトはルーン魔導の衝撃波を放った!
しかし、相殺しきれず、突風に押し返された!
突風は命中し、ラクトは吹っ飛ばされる!
ラクト「ぐああっ!!」
パヲラ「もうっ!」
パヲラは両手に魔力を込め、圧縮し、光る球体を造り出す!
パヲラ「風はやや南西…メガトンボ投球…」
パヲラ「
整った投球フォームから、バレーボールほどの輝く球体をぶん投げる!
クィーンハーピー「届きませんよ…!」
クィーンハーピーは竜巻を放った!パヲラの
パヲラ「なっ__」
ラクト「うわあああっ!!!
そして、パヲラとラクトの目の前で、爆発を起こした。
二人は爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ。
ラクト「だ…だめだ!下手に遠距離の攻撃をすると、あいつの風で跳ね返されるぞ!!」
ルカ「僕が出る!回復頼んだ!」
チリ「わ…分かった!」
二人と交代するように、ルカが前に出て戦う。しかし、剣も届かない相手にはやはり不利のようで、劣勢を強いられる。
ラクト「わ、悪ぃな…」
パヲラ「………」
パヲラはある心配事をしていた。チリのことだ。
いくら彼女が回復魔法を使って自分たちを回復しても、彼女にもその魔力に限界という壁があるのだ。チリの額には、汗が噴き出ていた。まさにその壁が、そこまで来ていたのだ。
パヲラ「(チリちゃん、限界が来てるわ…このままだと、こっちが負けそうね…!)」
ルカ「だ…だめだ、攻撃が届かない…!」
さっきのようにのしかかってくるはずもなく、一方的な攻撃にどうすることもできなかった。
クィーンハーピーは優雅に空を飛びながら、勝利を確信したかのように、大技を放つ準備をした。
クィーンハーピー「さて、そろそろ終わらせましょうか__」
__後に、とある魔物からのインタビューで、ハピネス村の女性の一人はこう語った。
はい、私もあの時、ハーピーの里の、広場の近くまで来ていました。
安全なところにいるようにって言われましたけど…
やっぱり、村のみんなも、どうしても心配で…
広場近くの茂みから様子を見ていました。
でも私たちが来たときには…勇者様やそのお仲間も、傷だらけで…
ええ、劣勢です!文字通り!
どんなに攻撃を仕掛けても、風で吹き飛ばされたり、脚で蹴りを食らったり…手も足も出ないっていう感じでした。
だから、クィーンハーピーは止めの一撃を放つつもりでいたんでしょうね。
竜巻です!おそらく、ものすごい竜巻を。それを放とうとしたんです。
風がすごかったんですよ!台風がそこにあるかのような、ものすごい風が!
私も、負けを確信しましたよ。
そもそも魔物なんかに勝てるはずがなかったなんて。
ところがですよ?吹っ飛んだんです!クィーンハーピーが!
まるで飛んできた何かに、ぶつかったかのように!
少年です。少年が体当たりをしたんですよ!木よりも高いところにいたクィーンハーピーにですよ!?
…え?勇者様?違います!お仲間にいた、もう一人の少年です。
あの…剣と盾を持った、小さい子ども。あの子です。
私も含め、その場にいた全員が、びっくりというか、衝撃というか、とにかくあっけにとられましたよ。
クィーンハーピーも、驚いた表情をしていました。それはそうですよね。だって、子どもが、自分と同じくらいの高さまで飛んで、体当たりをして来るなんて、考えられませんよ。私も予想できませんでした。
あの子のどこから、そんな力があったのか。そんな感想しか言えないですよ。
初めて会ったときはですね、小さくて、可愛らしい、みんなの弟って感じの少年だったんですよ。
それがですね…あの時、別の何かになっていたんですよ。
眼が違うんです。眼が。
例えるなら…敵と遭遇したときの野生動物!ナワバリを主張するために威嚇する、怒りの眼と同じでした!
あとでその子に聞いてみたら、また驚きましたよ。「友達をバカにされて怒った」って。
それで…あそこまでなります?人間が、木よりも高く飛んで、ものすごい馬鹿力で魔物を吹っ飛ばす。そんな力が出ると思いますか?
私からしてみれば…あれはもう…化け物か何かかと思いましたよ!
カムロウ「はあああああ!!!」
クィーンハーピー「っ!!?」
クィーンハーピーは、突然の衝撃に反応できなかった。
カムロウが、後ろから体当たりをしてきたのだ!
思わず吹っ飛ぶが、すぐに空中で体勢を整える。カムロウは地面に着地をする。
クィーンハーピー「な…!?どういうことです…!?」
なぜ、人間が、私と同じ高さまで飛べたのか。
緊迫で加速した思考回路でも、答えは出なかった。
ルカ「えっ…カムロウ!?」
ラクト「あいつ…今、ものすごいジャンプしてなかったか!?」
カムロウ「ルカを…バカにしやがって…!」
カムロウの眼は、怒りの眼をしていた。怒りが動力になっているかのように、輝いていた。
カムロウは足をバネにし、力を込めてジャンプした!
そして、空中にいるクィーンハーピーの体にしがみついた!
クィーンハーピー「!?は…離しなさい!」
カムロウ「ルカをバカにするなあああ!!!」
しがみつきながら、盾や剣の柄で、何度も、何回も、クィーンハーピーの顔をぶん殴る!
パヲラ「す…すごい…!」
チリ「カムロウにあんな力が!?」
ラクト「そういや…以前、聞いたことがある。」
思い出したかのようにラクトが話す。
ラクト「パヲラに聞いたことがあってな、ナタリアポートで、カムロウが魔物と戦うことがあったんだ。俺は逃げたんだけどよ。あいつは逃げようとしなかったんだ。」
ラクト「後で、パヲラが駆け付けたときのカムロウは、まるでナワバリを主張する野生動物みたいに怒ってたらしいんだ。」
ラクト「カムロウになんで怒ってたんだって聞いたら、「ラクトをバカにされたと思った」ってよ。」
ラクト「もしかしてあいつ…友達が侮辱されるのが嫌で、それで怒りを爆発させてんのか!?」
ルカ「だからって…あんなになるか!?」
ラクト「俺も分からねぇ!けど、今はチャンスだ!」
カムロウの怒涛の攻撃に、クィーンハーピーは押されている。反撃のチャンスは今しかないだろう。
ラクト「そういやチリ、さっき岩石飛ばしてたな。すごい力だぜ。」
チリ「そ、そう?なにも今褒めなくても__」
ラクト「ならよ、人を乗せて飛ばすって出来るか!?」
チリ「はあっ!?」
ラクトは、ルカ、チリ、パヲラに向かって話し始めた。
ラクト「お前ら、俺が今から言うことをよく聞いとけ!__」
クィーンハーピー「いい加減に…したらどうです!」
やっと、カムロウを振り払うことができた。カムロウは地面に落とされる。
クィーンハーピー「はあっ!」
クィーンハーピーはカムロウに、突風を放った!
カムロウ「
カムロウは、剣から風の衝撃波を放った!
普段よりもとても大きく、さらに強い風の衝撃波だった。
それは、クィーンハーピーが放った突風に当たると、それすらも飲み込んでクィーンハーピーにぶつかる!
クィーンハーピー「な…あなた…一体…!?」
パヲラ「カムロウちゃん!」
カムロウの近くに、パヲラとラクトが駆け寄る。
ラクト「カムロウ!クィーンハーピーの隙を作ってくれ!それで、勝負は決まる!」
カムロウ「わかった!やってみる!」
クィーンハーピー「隙を作る…?まだ、勝負は終わっていませんよ!!!」
風が吹き荒れ、クィーンハーピーの元に集まる!
クィーンハーピーは大きな竜巻を繰り出した!
パヲラ「な…大きすぎるわ!二人とも、避けましょう!」
しかし、カムロウとルカはその場から動こうとしなかった。
パヲラ「!?何してるのよ!早く!」
ラクト「何言ってんだよバカ、カムロウを信じろ!」
ラクトとカムロウは顔を合わせた。
ラクト「…ぶちかませ!相棒!」
カムロウ「…うん!」
今のぼくにならできる。あの竜巻を斬ることが!
剣に風を、脚に力を。
今、自分が出せる、最大最強の技を、目の前にある障害を切り裂くために放つのだ!
カムロウはバッタの如く飛び上がり、竜巻に斬りかかった!
カムロウ「
一刀両断。カムロウは、竜巻を縦に、真っ二つに切り裂いた!
クィーンハーピー「そ…そんな!?竜巻を…斬った!?」
今、隙が出来た。クィーンハーピーに一瞬の隙が出来た。
チリ「行くよ!ルカ!」
ルカ「ああ、思いっきりやってくれ!」
後衛にいたチリのハンマーに、ルカが乗っていた。
チリ「
チリはハンマーをぶん回した!
チリ「
そして、乗っていたルカをクィーンハーピーめがけて飛ばした!
ルカはそのまま、飛ばされた勢いで魔剣・首刈りを放った!
ルカ「魔剣・首刈り!」
斬られた竜巻をかいくぐり、喉元に鋭い突きを繰り出す!
しかし、僕たちの攻撃で、終わりではない!
ラクト「これで終わりだ!ヘビーウェイト!!」
ラクトは両手に魔力を込め、ルーン魔導を放った!
描かれた文字はクィーンハーピーに飛んでいき、ズンッと重い重力を付与した!
クィーンハーピーは、地面に叩きつけられる!
これが、ついさっきラクトが考えた連携攻撃だ。
クィーンハーピー「そんな、この私が…!」
僕たちの連携攻撃は深いダメージを与え、クィーンハーピーは地に膝を着いた。
おそらく、もう反撃の気力は残されていないだろう。
クィーンハーピーをやっつけた!
ルカ「よし、女王を倒したぞ!」
カムロウ「やった…!」
まだ致命的なダメージを与えていないので、封印には至っていない。
それでもダメージは深く、戦意は失ってしまったようだ。
パヲラ「今よ、ルカちゃん!作戦通りに!」
ルカ「えいっ!」
あらかじめ持たされた魔法信号筒を、真上へと投げつける。
それは空中で弾け、色とりどりの光を生み出した。
これが、クィーンハーピーを倒した合図だ!
おばさん「よし、突っ込むよ!」
女性「イリアス様…どうか私に力を!」
あちらこちらで茂みがざわめき、ハピネス村の女達がなだれこんでくる。
ラクト「あれっ!?入口で待機なはずだろ!?」
チリ「みんな、こんな近くまで来ていたの!?」
僕たちがクィーンハーピーと戦っている間に、すぐ近くまで来ていたのだ。
おばさん「このハーピーが女王だね!」
女性「女王さえ押さえてしまえば後は…!」
クィーンハーピー「そうですか…村の女性達までが、さらわれた男たちを救いに…」
そう呟くクィーンハーピーを、村の女性が取り囲んでいく。
ハーピーA「女王様、どうなされたのです!?」
ハーピーB「に、人間たちの襲撃!?」
さすがにこれだけの騒ぎになれば、眠っていたハーピー達も起き出したようだ。
僕は剣を掲げ、クィーンハーピーの前に立った。
ルカ「…頼むよ、村の男達は返して、こんなことはもうしないと誓ってくれ。そうでないと、僕はあなたを斬らなくちゃいけなくなるんだ。」
クィーンハーピー「…できない、と言ったはずです。」
覚悟をした顔で、クィーンハーピーは視線を落とす。
仕方ない、少しばかり封印させてもらうか…
僕が剣を振り下ろそうとした、その時だった。
おじさん「ちょ、ちょっと待ってくれぇ!やめてくれぇ!」
男性「待ってくれ!女王様は斬らないでくれ!」
ハーピーの家々から、若い青年から老人まで、人間の男たちが飛び出してきたのだ!
広場に飛び出した男達は、傷付いた女王を庇うように間に入った!
村の女性達にも、衝撃と動揺が走る。
どうやら、彼らはさらわれた村の男たちらしい。
男達は普通に服を着ており、その顔も健康そのもの。
どう見ても、ひどい目に遭ったような様子はない。
女性「あれは…まさか、お父さん!?」
おばさん「マルク、無事だったのかい!?」
ルカ「どうなってるんだ…?」
カムロウ「奴隷にされているはずじゃ…?」
おばさん「マルク!いったいどうして…」
青年「か、母さん…紹介するよ…妻のピアーナだ。」
マルクと呼ばれた青年は、隣に立っているハーピーを紹介する。
青年「それと…この子が、娘のピッピ。」
子ハーピー「…おばあちゃん?」
ちいさなヒナのハーピーは、おばさんを見上げてぱたぱたと羽根を振る。
女性「父さん…どういうことなの?」
おじさん「ああ…言い難いことだが、お前の義母さんになるレイナだ。」
ハーピー「…よ、よろしく。」
女性と同年齢ほどのハーピーが、おずおずと頭を下げる。
老婆「まさか、あんたは…一年前、ハーピー討伐に旅立って帰ってこなかった旅の方…」
旅人「いやいや、お恥ずかしい…今では私も、7児の父です。」
パヲラ「ふむ…男の人は、全員、ハーピーの子どもがいるようねい。」
さらわれたはずの男達は、みんなハーピーと婚姻を結んでいるようだ。
思わぬ光景を前に、僕たちも村の女性達も目を丸くするのみ。
おじさん「そういうわけで…ハーピー達をやっつけるの、やめてくれんか?」
男性「彼女達は、私達の妻子なんです。だから、戦うなんてやめて下さい…」
おばさん「じゃあ、この子は私の孫になるのかい?」
女性「私の義母さん…?ハーピーが…?」
老人「その通り…今やハーピーは、我々の妻子であり、家族でもあるのじゃ。」
一人の老人が、静かに進み出る。
おばさん「そ、村長!?」
老婆「お前さん、無事じゃったのか…!?」
老人「儂がいない間、迷惑をかけたのう。今や、ハーピー達は我々の家族、そして村に残された女達も、我々の家族じゃ。家族同士で戦い、殺し合うなど、愚かしいことよ…」
青年「そうだ。おふくろも、ピアーナも家族なんだ。家族同士でいがみ合うなんて、やめてくれ!」
男達「そうだ!そうだ!」
村の女達も含めて、僕たちは立ちとぼけるばかり。
パヲラ「なるほど、そういうことねい。」
ルカ「?」
パヲラ「以前、アリスちゃんが言ってたでしょう?魔物は繁殖するには、人間の男が必要だって。」
カムロウ「そういえば…言ってたね、そんな事。」
パヲラ「だから、死活問題なのよ。魔物からしてみれば、人間の男がいないと、自分たちは子を作ることが出来ない。さらってでもしないと、そのまま滅びる運命なのよ。」
傷付いたクィーンハーピーは口を開いた。
クィーンハーピー「その通り…ハーピーには女しか存在しない以上、繁殖には人間のオスの力を借りるしかないのです。」
ルカ「で、でも…何もさらわなくたって…」
クィーンハーピー「…人間の魔物に対する憎しみが高まっている今、誰がハーピーの里へ婿になど来てくれるでしょうか。」
クィーンハーピー「私達とて、ただ黙って滅びるわけにはいかないのです。たとえ無理矢理に奪ってでも、男は必要でした…」
ハーピーA「さらった男たちを決して粗末にはしてないし…」
ハーピーB「村の掟で外には出せなかったけど、男はとっても大切なんだから。」
ルカ「つまり、男達は特にひどい目に遭っていなかった…ってことか?」
老人「無論じゃ!儂など、若返った!むしろ返り咲いた!なにせ毎晩毎晩…」
ラクト「なにハッスルしてんだ爺さん!」
老婆「なるほどな…お前さんや、少しあっちで話でもしようかのう…」
老人「ひぃぃ…ばあさんや、これは違うんじゃ!」
チリ「ああ、村長の奥さん、あんな鬼の形相で…」
ルカ「…これはいったい、どうしたものか…」
おじさん「す、すまねぇ…その…俺には嫁がもう三人も…」
おばさん「…で、子どもは?」
おじさん「7人…来月にはあと2人…」
女性「お父さんが帰ってくるのは嬉しいけど…義母さん2人に、義妹が6人?」
見れば、あっちこっちで同様の揉め事が起きているようだ。
中には非常に深刻な表情をしている家族もいる。
男達を集落から出さないハーピーの掟のため、男側も村に帰ることができなかったようだ。
ルカ「どうしようか、アリス…」
アリス「余が知るか。」
ルカ「うーん、どうしたものか…」
ラクト「本当にどうするんだよこれ、ハチミツよりもドロドロの家族関係になってるじゃねぇか。最悪だぜ…。」
ルカ「とりあえず村の男達がみんな無事なら、ハーピーを退治するというのも違う気がするな…」
老人「いっそ家族!皆が家族!それでいいじゃろう!」
老婆に首を絞められながら、老人は高らかに宣言する。
若者「そうだ、その通りだ!」
おじさん「双方が家族としての付き合いをしていけば、問題ないはずだ!」
チリ「えぇ…それでいいの?」
ラクト「…はぁ、家族ねぇ。聞こえは良いんだけどよぉ…」
いつしか、そういう方向で、話はまとまっていく。
おばさん「あたしは、息子の嫁と孫が増えただけだから構わないんだけどねぇ…」
息子に嫁ならめでたいが、夫に第二、第三の妻や娘ができているケースが洒落にならないだろう。
アリス「これ以降は、ハピネス村とハーピーの里で解決するべき問題だ。ニセ勇者が関与できる段階は、もう終わりだろう。」
ルカ「うん、そうだね…」
後は、当事者たちの話し合いが望ましい。
正直なところ、これより先の泥沼には、あまり関わりたくない気もする。
僕は、人間と魔物が共存できる世の中を目指している。
しかし実現にあたっては、色々と大変だということが身に染みてわかったのだった。
ラクト「…なーんか、しっくりこねぇなぁ。」
ラクトは腕を組んで、首を傾げた。
ルカ「? なにがしっくりこないんだ?村の男たちは無事で良かったじゃないか。」
ラクト「いや…俺はよ、女王サマ倒して、村の男救って、はいチャンチャンってのを想像してたんだけど…なんか拍子抜けっていうか…」
しばらく考え込んだ後、ラクトは指パッチンをした。何か閃いたようだ。
ラクト「そうだ、ルカ!ここは一発、勇者サマの勝ち名乗りといこうじゃねぇか!」
ルカ「か…勝ち名乗り!?」
チリ「また変なことを…」
ラクト「頼む!締めてくれ!そうじゃねぇと気がすまねぇ!」
ルカ「勝ち名乗りなんて…どうやれば…」
アリス「ふむ、それは面白そうだな。」
アリス「それにしても、ニセ勇者なのに、勇者の勝ち名乗りか…」
ルカ「………」
ラクト「まだいじるかお前…」
ルカ「それで、勝ち名乗りってどうすれば…」
パヲラ「剣を、空高く掲げるっていうの、どうかしら?」
アリス「うむ、それが無難だろう。」
カムロウ「うん!かっこいいと思う!」
ルカ「えっと…じゃあ、やってみるよ。」
ルカは、堕剣エンジェルハイロウを、空高く掲げた!
ルカ「僕たちの、勝利だ!」