もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第21話 誰も知らない隠れ里エンリカ

イリアスベルクから、僕たちは隠れ里エンリカなる場所に向かって森の中を歩いていた。

だいたいの場所は、イリアスベルクの商人から聞いていた。

ルカ「確か、この付近のはずなんだけど…」

ラクト「あー…なんかあるよな。「この辺にあるはずなのにそこにない現象」。」

ルカ「ないよ。どんな現象だよ。」

ラクト「嘘ぉ?お前ないの?「この辺にあるはずなのにそこにない現象」。」

パヲラ「あたしは「その辺にないはずなのにそこにある現象」ならあるけど。」

チリ「怖っ!なにそれ…」

アリス「何の話をしているのだ、お前らは…」

カムロウ「アリスさんはないの?」

アリス「余は…「そこにあったはずなのに無くなっている現象」なら…」

ルカ「それ食ってるときのことだろ!」

 

そんな雑談をしていると、アリスが急に足を止めた。

アリス「む…?なかなかに珍しい魔物だな。」

ルカ「え…?」

振り向いた瞬間、アリスの姿が消えた。

それと同時に、2体の魔物が僕達の前に立つ__

 

剣士のダークエルフが現れた!

召喚のダークエルフが現れた!

 

もう一人はごく普通の体をしていたが、もう一人は腕から触手を生やしていた。どうやら体から触手を召喚しているらしい。

ラクト「なんだありゃ…耳が尖がってるからエルフ?ってやつかぜ?」

ルカ「そうっぽいけど…なんか雰囲気がおかしいというか…」

パヲラ「そういえばさっき、アリスちゃんからメモ貰ってたわ。」

ルカ「メモ?」

パヲラ「ダークエルフについて、だって。」

ラクト「よし、読め。」

パヲラ「エルフとは、「森の番人」と言われる種族。基本的に心優しい彼女達だが、中には闇に堕ちた者も存在する。それがダークエルフだという。」

ラクト「ほーん。」

パヲラ「以上。」

ラクト「以上!?」

ルカ「えっ、それだけ!?」

パヲラ「それだけ。」

ラクト「もっとこう…なんか…こういう攻撃には気を付けろとか、こんな特徴があります…みたいな!ないのか!?」

パヲラ「ない。」

ラクト「なんでだよ!!」

ルカ「対して役に立たないメモだなぁ。」

 

ダークエルフ(召喚)「ここから先へは行かせないわよ…引き返さないのなら、私が召喚した触手の餌食にしてあげるわ…くすっ。」

ダークエルフ(剣士)「ただちに引き返しなさい、この辺りは人間の近付いていい場所ではないわ…」

ダークエルフ(剣士)は剣を抜き、その刃を僕の方に向けた。

ルカ「なんで、人間はダメって言うんだ?」

ダークエルフ(剣士)「あなたが人間だからよ。言っても退かないなら、堕としてしまうわ…」

最初から、話を聞く気もないらしい。

ここは、戦うしかない!

ルカ「それでも、通らせてもらう!」

あの剣は牽制。物理攻撃で隙を作り、本命は快楽攻撃だろう。

本気で剣を使って戦う気でないのなら、僕一人でも戦えそうだ!

ダークエルフに対し、僕も剣を抜いていた。

ルカ「僕の目的は、人と魔物が共存する世の中を築くこと…人間を排除しようとする魔物を、黙って見過ごすわけにはいかない!」

ダークエルフ(剣士)「退く気はないようね。じゃあ、堕としてあげる。闇で汚して、私のモノにしてあげるわ…」

 

ダークエルフ(剣士)の前にルカは立った。

ルカ「こっちは僕がやる!」

チリ「こっちのダークエルフは私達がやるわけね。」

カムロウ「ぼく、前に出る!」

ラクト「んじゃ、チリ(お前)も前に出ろよ。」

チリ「えっ、嫌。ラクトが出てよ。」

ラクト「やだよ。」

チリ「私もやだ。」

ラクト「ハンマーぶんまわせばいいだろ!」

チリ「戦いは苦手って言ったでしょ!?」

ラクト「だったら俺だって苦手だぜ!!」

チリ「私の方が苦手よ!!!」

ラクト「何だと!?」

チリ「何よ!?」

パヲラ「アンタたちは何で言い争ってるのよ…」

 

そんな矢先、ダークエルフ(剣士)とルカの戦いは始まっていた。

ダークエルフ「はあっ!!」

ダークエルフは剣を構え、攻撃を仕掛けてくる!

ルカはそれを避けつつ、突きを放つ!

…が、ダークエルフはその突きを剣で防いだ!ルカの剣を跳ね除け、横一文字で斬りかかる!

その攻撃を、ルカは剣を横に構えて受け止める。

そしてまた攻撃を仕掛け、ダークエルフは攻撃を防いで再び攻撃をし、ルカは防御してもう一度攻撃をする。

剣がぶつかり合う音が、何度もこだまする。

一進一退。まさにそんな戦いだ。

ダークエルフ「くぅ…!」

ルカ「くっ…!」

互いに後退して体勢を整える。

ダークエルフ「はあああぁぁぁ!!」

ルカ「うおおおぉぉぉ!!」

そして、二人は同じタイミングで、剣を構えて走り出す!このままいけば、剣と剣が受け止め合い、押し合い合うつばぜり合いが始まるだろう__

しかしルカは、ダークエルフの攻撃が当たるであろう瞬間に、足をバネにして空中に飛び、回避した!

ダークエルフは空振りをして呆気に取られた。

ダークエルフ「なにっ!?」

ルカ「せいやあああぁぁぁ!!!」

落下しながら、渾身の袈裟斬りをダークエルフに放つ!

ダークエルフ「うぅ…何…!?私の体が…!」

ダークエルフは、手のひらサイズの小人の姿になってしまった。

ダークエルフ「私を封印するなんて…覚えてなさい!」

そう言い残し、封印された剣士のダークエルフは走り去ってしまった。

 

 

___ルカが戦っている最中でも、ラクトとチリの口喧嘩は終わっていなかった。口喧嘩に夢中で戦えそうにもない二人に代わって、ダークエルフ(召喚)の相手はカムロウとパヲラになった。

 

だが、ダークエルフの体から生える無数の触手の相手に、カムロウとパヲラは難儀していた。

迫りくる触手を剣で斬り、盾で弾く。その繰り返しでなかなか間合いを詰められずにいる。

そして、カムロウの体に触手が巻き付く。

カムロウ「うわっ!!」

ダークエルフ「ふふっ…捕まえた。」

そのままダークエルフに引き込まれそうになる。

パヲラ「魔導拳・手刀「剣」!」

パヲラ「大切断(だいせつだん)!」

カムロウに巻き付いた触手を手刀で断ち切る。

パヲラ「あの触手、厄介ねい。」

カムロウ「切っても切っても…また生えてくる…!」

難儀していた理由はそれだ。触手を切っても、また生えてくるのだ。ダークエルフは体内に蓄えた魔素を元に触手を召喚しているらしい。なので、切ったところから再び触手を召喚すれば何も問題ない。つまり、触手を切ったところで本体にダメージを与えているわけではない。

あるとすれば、魔素がなくなるまで触手を切り続けるか、間合いを詰め、本体に攻撃するかだ。

前者だと、こっちがスタミナ切れを起こす可能性があり、後者だと、詰めたときに二人まとめて触手に絡め取られる可能性もある。

まさに苦戦そのものだ。二人はどうしようかと悩んだ。

 

_____そんな時だった。

チリ「__だから!私は援護担当でしょ!?」

ラクト「俺だって援護担当だぞ!?」

チリ「アンタ、回復できるの!?」

ラクト「お前こそ、俺様のような魔法が使えんのか!?」

チリ「何なのよ!!」

ラクト「何なんだよ!!」

チリ「あーっ!!もう怒った!!!」

チリ「豪萬(ごうまん)!」

チリはハンマーをぶん回し、連続で地面に叩きつけながら前進し始めた!

ラクト「うわっ!来るんじゃねぇ!!実力行使はやめろぉ!!」

そしてラクトを追いかけ回す。ラクトは、体から触手を生やすダークエルフの方に向かって逃げ始める。

ラクト「悪ぃ!そこどけ!」

ダークエルフ「えっ__」

チリが繰り出す、怒りの行進。そのとばっちりに轢かれたダークエルフは巨大なハンマーに何度も叩きつけられる。

ダークエルフ「あばばばばばば!!!」

ダークエルフは地面に倒れ込み、ピクピクと体を小刻みに震え動く。もう立ち上がる気配もない。

パヲラ「えぇ…うそぉん…」

カムロウ「お…終わった…」

チリ「待ちなさーい!!!」

ラクト「待つかアホーー!!!」

それでもなお、二人の追いかけっこは終わることはなかった。

戦いが終わったルカが戻ってきた。

ルカ「…何をしているんだあの二人。」

パヲラ「あぁルカちゃん。勝ったのねん。」

カムロウ「ルカ、早くあの二人を止めようよ。」

ルカ「そうだね…あのままだと、ラクトがサンドイッチになるかもな。」

ルカはダークエルフに軽く剣を突き刺した。

ダークエルフを、小人サイズの姿に封印した!

ダークエルフ「これはまさか、魔素封印!?こんな技を扱える人間がいるなんて…!」

ダークエルフは、そのまま逃げ去ってしまった。

 

ダークエルフ達をやっつけた!

 

ルカ「さて、二人を止めようか___」

ルカはラクトとチリの方に視線を向けた…が。

チリはハンマーをがむしゃらに、ラクトに何度も叩きつけていた。

チリ「このぉ!このぉ!!このぉ!!!」

ラクト「いでぇ!うぐぁ!!ほげぇ!!!」

ルカ「…もう手遅れだったみたい。」

パヲラ「カムロウちゃん、回復よろしく。」

カムロウ「どのくらい回復させる?」

ルカ「歩けるくらいでいいよ。」

 

しばらくして、歩きながらカムロウはラクトを回復魔法で治癒していた。

チリに叩きのめされ、ぺしゃんこになってしまいながらも歩き続けるラクトを眺めていたら、すぐ隣にアリスが戻って来ていた。

アリス「まさか、このような場所にダークエルフがいるとは。いったい、なぜだ…?」

パヲラ「あたし、ダークエルフなんて初めて見たわ。」

ルカ「イリアスヴィルからそう離れてないんだから、出現する魔物もそんなに変わらないはずなんだけどね…」

チリ「ダークエルフって集団でいるような人たちじゃないはず…」

ルカ「そもそも、ダークエルフって数は多くないんだろ?」

アリス「その通りだ。本来、エルフというのは清純な種族。しかし、ごくまれに魔素を蓄えてしまう者が出てくる。俗に言う「堕ちる」という現象だな。そうなると、好色かつ堕落を振りまく存在となる。他のエルフから疎外され、単身で行動するはぐれモンスターとなるのだ。また、ダークエルフがさらに多くの魔素を蓄えれば、別の魔物に変質してしまうこともあるのだが…何にしろ、そうウロウロしている魔物ではないはずだ。」

ラクト「詳しいな!!なんでその情報をメモに書かなかったんだよ!!」

ルカ「へぇ…詳しいんだね、アリスは。」

アリス「当たり前だろうが、余を誰だと思っている?」

ルカ「知らないよ…」

ラクト「悪食乞食意地悪ラミア。」

アリス「なんだと貴様…」

アリスはラクトの首を、ぐぎゅうううっ…と、絞めた。

ラクト「いやっ…!だってっ…!本当の事じゃんっ…!!」

アリス「このまま首の骨を折ってやろうか…?」

カムロウ「待って!まだ回復してるのに!!」

ともかく、こんな魔物が連続で襲ってきたら厄介極まりない。

早く、目的地に辿り着きたいところだ。

 

 

 

それから数時間、いい加減歩き疲れた頃だった。

ルカ「いったい…エンリカとやらはどこにあるんだ…?本当にこの辺なのか…?」

ラクト「ほら、この現象の事だぜ。「この辺にあるはずなのにそこにない現象」。何時間も見つかんないんだよ、こういう時って。」

ルカ「…ちなみに、何が見つからない時に起きるんだ?」

ラクト「落とした金を探してる時に。」

チリ「守銭奴かっ!!」

そんな雑談をしていると、森を抜けた。その先に、小さな村を発見したのだ。

カムロウ「もしかして…!」

ルカ「あれが、エンリカか…!」

喜び勇んで、僕たちはその小さな村へと入ったのだった。

 

ルカ「ここが、エンリカ?」

見たところ、狭く慎ましやかな村。

しかし、その雰囲気はどこか奇妙だ。

ラクト「静かっつーか…なんか寂れてんなぁ?」

パヲラ「こらっ。そんな事言わない。」

ラクト「そうかぁ?お前らはどう思うんだぜ?」

ルカ「僕は…神秘的というか…なにか、不思議な感じがする。」

カムロウ「ぼくも同じ。」

チリ「私も…この空気、なんだか苦手…」

アリス「…なるほど、そういうことか。あのダークエルフども含め、全て合点がいったぞ。」

アリスは何やら、一人で納得してしまったようだ。

ラクト「ぁん?何がだ?」

ルカ「どういうことなんだ…ん?」

 

村の奥から、一人の女性が歩み出てくる。

どこか普通とは異なる雰囲気の、不思議な人だ。

女性「あなたがたは…少なくとも、商人ではないようですね。」

ルカ「は、はい…イリアスベルクの商人から、この場所を聞いて__」

女性「…お引き返し下さい。」

ルカ「えっ…!?」

ラクト「な…なにぃぃぃ!!?」

女性「必要な物を搬入してくれる行商人以外、この村には足を吹き込ませないしきたりなのです。」

なんと、立ち入りさえ拒まれてしまった。

どうやら、恐ろしく排他的な村らしい。

ルカ「そ、そんな…」

ラクト「お、俺たちはよぉ!何時間も歩いてここまで来たんだぜ!?」

女性「お気を悪くされたでしょうが…我々は、ずっとそうして暮らしてきたのです。」

パヲラ「ふむふむ…そうなのねい。」

カムロウ「村の掟…なのかな?」

パヲラ「多分、そんなところ。」

女性「あなたがたが良識のある旅人ならば、どうか我々をそっとしておいて下さい。」

ルカ「………」

ラクト「なぁルカ、ここはよ、勇者特権で「特に問題を起こすわけじゃないから休ませてくれ」って頼もうぜ?お前だって歩き続けて疲れたろ?」

ルカは、カムロウたちの方に振り返った。

ルカ「…みんな、イリアスベルクに戻ろう。」

ラクト「はいっ!残念でした!それじゃ俺たちは入らせてもら__」

ラクト「何ぃぃぃぃ!!?ルカ、お前、今なんて…!?」

ルカ「静かに暮らしている人達の生活を、土足で踏み荒らす。真の勇者なら、そんな事はしないはずだ。」

パヲラ「確かにそうねい。あたしたち、ただ興味本位で来たんだもの。」

チリ「うん分かった。帰ろう。」

ラクト「また何時間も歩かなきゃいけないのかよ…」

パヲラ「筋肉足りてないんじゃないの?貧弱。」

アリス「貧弱。」

チリ「貧弱。」

カムロウ「ひんじゃく。」

ラクト「なんだよお前ら!!」

 

ルカ「…ご迷惑をおかけしました。」

僕たちは頭を下げ、その場から去ろうとした時だった。

女性の視線が、母さんの形見の指輪へと向けられる。

女性「その指輪は…!もしかして、あなたは…ルカ!?」

ルカ「え…?そうですけど…」

パヲラ「? ルカちゃん、お知り合い?」

ルカ「いや…僕が覚えてる限り、この村に来た事なんてないはずだけど…」

チリ「じゃあ、何でルカの名前を…?」

女性「やはり、ルカなのですね…あの子が、こんなに大きくなって…」

ルカ「あの…僕のことを知っているんですか?」

女性「…ええ、私の名は、ミカエラと申します。あなたの母上のことも父上のことも、よく知っているのですが__」

ミカエラと名乗った女性は、そこで口淀んだ。

その目に、深い決意の色が浮かぶ。

ミカエラ「…しかし今は、どうかお引き返し下さい。もし時が来れば…お話することもあるでしょう。」

ルカ「…分かりました。」

今は、何も話すことはできない。その決意は、僕にも見て取れる。

ここで食い下がったところで、話を聞くことはできないだろう。

ルカ「じゃあ、また来ることがあれば…」

ミカエラ「ええ、ご武運があらんことを、ルカ。」

こうして僕たちは、隠れ里エンリカを後にしたのだった。

 

 

ルカ「…不思議な村だったな。」

懐かしさにも似た、異様な雰囲気。

そして、僕のことを知っていたミカエラという女性。

アリス「どういう事だ…?あの村は、いったい…」

ルカ「どうしたんだ、アリス?」

ラクト「何か納得したんじゃなかったのかぜ?」

アリス「いったん納得したが、腑に落ちん点がまだまだあるのだ。てっきり、エルフの隠れ里かと思ったが…」

パヲラ「エルフの隠れ里…ねぇ。」

ルカ「おいおい、あの村の人達はみんなエルフだなんていう気か?」

カムロウ「ぼく、そんな気もする。」

チリ「そう?だとしてもあの空気、私は慣れない…」

アリス「いったんはそう思ったのだが…あのミカエラという女、間違いなく__」

アリスはぶつぶつと言っていたが、諦めたように溜め息を吐いた。

一人で納得したり悩んだり、変な奴だ。

アリス「まあ何にしても、あの村ではごちそうに期待もできんだろう。結局は無駄足だったな。」

チリ「えっ…ご、ごちそう!?」

ルカ「…結局、こいつは食べ物の事か。」

気になる村ではあったが、今は特にやるべきこともない。

けどあの村のことを、覚えておいた方が良さそうだ__

僕たちは、イリアスベルクに帰還するのであった。

 

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